「しかし、許せませんな。私にとって神様のような純潔な奥さんなのに、こうして素っ裸にひン剥くと、あんたの股グラには、ほうれ、こんなエッチな縮れ毛に囲まれて、ぼてっと、見てみ、おお、なんちゅうことや！　娼婦とおなじ形の卑猥な生貝を付けている。おおおお、このビラビラ、淫売のビラビラと同じ色！　ああ！　許せん、ビラビラの間からちらっと見えてるいやらしい色の肉！　あああ、なんというエッチな見せ方やろ。街の淫売と同じ見せ方やおまへんか！　……か、神様のような上品な顔をしながら、股グラには娼婦と同じカッコのスケベーたらしい生き物を付けている。許せん。許せんわ。……奥さんだって、こうして素裸にしてみると、なんのことない単なるメスやおまへんか」
　淫靡な単語を、さらに淫靡にいやらしく連ねて男は言葉で恭子をなぶっていく。茫漠とした深い酔いの底で、恭子は、男が卑猥な言葉を重ねるごとに、何か名状の出来ない異様な感覚がゆっくりと身内に隆起してくるのを感じていた。
「おう、まあ、じ、じっとりと潤んで……。ええ具合や。ええ具合。なんとまあ、ええ具合な濡れ方。婆さんのみたいにカサカサやなんて、奥さんのご主人もいい加減なことをいう人や。どうしてどうして、このままでもすぐに使えそうな濡れ具合やおまへんか」
　男は舌なめずりをした。恭子の陰毛や陰部に触れる男の手つきは言葉とはうらはらにひどく優しくいとしげであった。
「まず、に、匂いの検査、さしてもらいまっせ」
　飢えた獣のように鼻を鳴らした。男は不格好に深く背を折って鼻孔を恭子のクレバスに近付けた。恭子は必死になって体を反らせた。しかし大きく開股された両の足首は、ベッドの左右の端にしっかりと結わえられていて、わずかに揺らぐだけであった。
　よく発達した透きとおるように白い大腿部が、男の眼前にあられもなく大きく割り裂かれていて、恭子が力を入れるたびに、ガクっガクっと震えた。その震え方が、恭子の意思に反して、男にとってはかえって淫らで挑発的な動きになっていた。両足に力を込めるたびに腰がゆらぎ臀部が捻れ、その都度、下腹部が祈るようにやるせなく切なく、微妙に宙にせり上がっていく。
「やめて！　やめてください、お願い！」　
「まあまあまあ、そう気張りなさんな。いまからそんなに張り切っていたら、体がもちまへんわな」
　男はかまわず、両手で恭子を押し広げた。
「信じられんな、これが不感症とはな」
　それからクンクンと犬のように鼻孔を恭子の谷間に這わせた。
「匂う、匂う、奥さんが匂う！　た、たまらんなこの匂い！　うーん、男心を、と、とろかす匂いや。……奥さん、あんた、ほんとに不感症？」
　恭子は唇を噛んだ。屈辱と羞恥で涙が出た。
「ああ、お願い、やめて、やめて、やめて下さい！」
「おや、ちょっとアンモンニャくさい。ウーン、こりゃあションベンの匂いや。奥さん、あんた、シャワーのあとでオシッコしたの？　……ションベンの匂いちゅうやつは、よっぽどしっかり拭いたつもりでも、なかなか落ちまへんよってな。まさか、オシッコ、やりっぱなしやおまへんやろな？」
　聞くに耐えない言葉で、恭子の全人格をいたぶっていく。耳を覆うにも手の自由はきかなかった。両手は頭上でしっかりと縛られていて、その縄尻はベッドの枕頭の金具に巻きつけられている。恭子は大きく首を左右に振り、固く目を閉じ、唇を噛んでいるだけだった。
　男の頭部が恭子の下腹部に重なった。恭子はあっと呻き、透き通るような白いうなじを大きくのけ反らた。
「うわー。ち、ちょっとしょっぱい。ほろ苦いアンモンニャの匂いがする。ションベンそのままの味！　こ、これが憧れの人のションベンの味か。チーズの匂いとアンモンニャの匂いと。この匂いの混ざり具合！　これは男に飢えたメスが発する匂いや。奥さんがこんなエッチな匂いで男を惑わせるなんて、ちょっと信じられん」
　男は呻いた。　
「不感症のクセしてどういう加減でこんな匂いになるのやろ。……奥さん、あんたいまメンス前かなにかでっか？」
　さらに鼻孔を押し込んだ。
「おお、たまらん。天使もくそもあらへんわ！！　ああエエ匂い！　こ、これがほんとのオ×ソの匂いちゅうやっちゃ！　どうして亭主が、あんたのここ、避けているのかさっぱり分からん！　……うう、に、匂っているだけでは、体がもたん！　すんまへんけど、ちょっと失礼して舐めさしてもらいまっせ」
　それから男は、ちょっと笑った。
「さっきギョウザ、食ったあとで、口の中、まだ、ニンニクとギョウザのカスだらけやけど、勘弁してもらいまっせ。ションベンも拭いてないオ×コねぶるんや。どっちもどっちでっしゃろ」
　犬のように恭子に武者振りついた。おぞましさに恭子は悲鳴をあげた。
「おう、うめえ！　さ、最高や、最高の味！」
　獲物にありついた野獣のような声を発しながら、男は恭子を侵食していった。
「信じられん、信じられん、不感症がこんなエエ味する筈ない！」
　赤いなめくじのような男の舌と分厚い唇が、恭子の神秘な部分を無遠慮に蹂躪していった。長い長い蹂躪の仕方であった。猪のように荒い息を弾ませながら、男の唇は奇妙な軌跡を描いて、執拗に、丹念に、恭子をねめまわしていく。男の唇と恭子の性器が触れ合う淫靡な摩擦音がぴちゃぴちゃと、静かな部屋の内部に響いていった。
　どれくらい時間がたっただろうか。突然、恭子がぴくりと腰を捻った。
「うう……っ」
　得体の知れない不気味なうずきが、背骨の奥深い未知の部分でおぞましいうごめきかたをするのを、恭子は感じた。恭子は驚き、大きく息を吸い、固く奥歯を噛んだ。そして再び、ぴくりと腰を震わせた。
「わわわ！　お、奥さん、見てみなはれ！　ここ、奥さんのここ、ふっくらと膨らんできて。交尾期の牝犬のあそこみたいにじっとりとエエ色に色づいてきたわな。おお、ヒクヒクとここ、物欲しそうに震えてる！」
　屈辱で涙が出た。
「わわ。……ありゃりゃ？　なにや、これ？　底の方からなにやらずるっとしたトコロテンみたいな透明なもん、湧きでてきたがな」　
　男は唇を離して、恭子の股間を覗きこんだ。
「ひょっとして、これ、奥さんの淫液？」
　男は両手の指を恭子に添えると、唾液でずるずるに光ったとろけそうな柔らかな恭子の肉のクレバスを無雑作に割った。たおやかな恥毛に囲まれた豊かな膨らみが消え入るようになよなよとくびれると、ぬるりと切なげに開口部が開き、複雑に入り組んだ淡紅色の肉襞が、無残に押し広げられて白い蛍光燈のもとに盛りあがった。見ると、軟体動物がうごめくような不気味なうごめき方で、その内部の複雑な肉層は大きくのたうつように反りかえって、そしてぬるぬると身を揉んで伸縮した。と、不意にそこからたらりとひと雫、恭子のものとも男の唾液ともしれぬ透明の粘液が、迫るように湧出してきて、恭子の両肢の付け根をつたって、音もなく股間にしたたり落ちた。
「うっ、出た」　
　男はうなった。
「エッチなもん、つーとたれましたぜ。淫らな色してる。も、もし、これが淫液やったら、奥さん、あんた、不感症どころやあれへん。……スケベーもいいとこや。知らない男にちょっと舐められたけで、こんな立派に淫液を垂らすなんて。……たいした度胸や」
　ねばっぽい男の唾液が、神秘な谷間の周辺の短い恥毛にべっとりとこびり付いて醜く光っている。男の舌と唇でこすれて、唾液はすっかり白濁してしまい、繊毛の間に微小な泡粒を作ってネバネバと不気味に光っていた。恭子の恥毛は温室の可憐な植物が凶暴な野獣に遮二無二、片っ端からなぎ倒されてしまったようになすすべもなく蹂躪されたてなよなよと萎れ、しとどに濡れそぼって蛍光燈の光りを反射させていた。それでもクレバスはなおたおやかに息づいている。