両の手首を互いに擦り合わせながら、恭子はベッドの上に上体を起こした。同時に自由になった両足をすぼめ、本能的に浴衣の裾で下半身に纏っていた。
「水……」
　喉がからからに乾いていた。
「……お水、ちょうだい」
　男が離れ、裸体のままキッチンに立った。その隙に両肢を組直した。と、股間からぬるりと不快な粘液が溢れて出た。驚き、あわててとっさに浴衣の裾をその部分に当て、そっと拭ってみた。すると、かえって逆に、堰を切ったように多量の粘液が、ぬるぬると溢れてきた。恥ずかしいほどの多量な粘液の溢れかたであった。浴衣の裾がぐっしょりと湿りを帯びた。男が戻る迄にいま少し体を清めておきたかった。しかしこれ以上浴衣の裾で拭えば、裾はすぐそれと分かるほどの湿りを帯びる。恭子は、とっさに枕カバーを外していた。男が、コップに水を満たして戻ってきた。恭子は枕カバーを股間に挟んで両足を閉じた。
「水だ、奥さん」
　恭子は男からコップを取ろうとした。
「とっとっとと……」
　いいながら男はコップを引き、
「冷たいなあんたも……。あせらんでもちゃんと、飲ませてあげますがな」
言いながら、コップを自分の口許に持っていった。
「……他人やないのやもう。よろしいか、あんたはわしとオ×コした。ええな、わしとオ×コしたンや。そして気イまでやった。ええな、このわたしの×ンポコでな、イッタんや。……こうなった以上、あんたはわしの女。わしと一心同体や。これからは遠慮は無用。恥ずかしがることなど、何もない」
　男は水を自分の口に含んだ。それから自分の口内で温かくなった生温い水を、唇に重ねて否やもなく口移しに恭子の口腔に流し込んだ。水と一緒にぬるりとした得体のしれない糸のようなものが、恭子の喉を伝って胃の内部に流れ落ちていった。
「亭主とやってイッたことがなかったのに、俺となら三擦り半で簡単にイく。どうなってるんやろ。……よほど飢えていたんかいな」
　再度、生暖かい水を口移しに恭子に流しこんだ。二度めの水が喉を伝たって恭子の渇きを癒していった時、恭子の内部に異変が起こっていた。
「ほな、約束や、見せてもらいまっせ、いきたての湯気の出てるオ×コ……」
　男は無造作に浴衣の裾を広げた。恭子はされるままになっていた。豊かな肢体が露わになった。
「なんじゃ、これ？」
　肢間に布ぎれを見つけると、無造作に剥ぎとった。「枕カバーやないか、これ……」
　おかしそうに声をたてて笑った。恥ずかしさに全身が硬直した。
「アホ。これで拭いてたんかいな」
　犬のようにクンクンと布を嗅いだ。
「匂うわ、奥さんが匂う。ああ、なんていい匂いなんやろ。……伜のやつ、また逞しくなってきよりましたがな」
　恭子は男から目を逸せて、起こした上体を左手で支え、右手で浴衣の裾を重ねていた。男は、斜めからその恭子の上半身を軽く抱くと、また唇を重ね、激しく吸った。恭子は無言で吸われるままに唇を吸わせていた。不思議と男の不快な口臭は感じられなくなっていた。ふと気がつくと、恭子の自由になった両手は、男に呼応するように、男の大きな背を抱いている。ゆっくりと恭子の肢間に男の手が伸びてきた。
「うわあー、ビチャビチャ！」
　大げさな言い方をした。
「……でも、何も自分でこっそり拭くことあれへん。これ、半分以上はわしの出したやつやおませんか。責任はわしにだってあるんだから、わしが拭きます。まだまだ、ここでエエことして遊ばせてもらわなあかんのや。大切に大切に拭かせてもらいまっせ」
　男は、唇を離すと何枚かのテイッシュを重ねた。
「そのかわり、拭いて……といってくれますね」
　恭子は答えるかわりに、男の唇に自分の唇をそっと重ねた。
「拭いて」
　耳許で囁くように言った。
「拭いて下さい」
　言いながらゆっくりと男の背から手をずらし、体を横たえていった。
「うわーあ、なんちゅうエッチなこというんやろ、この奥さん！　もうあかん！　息子の奴、喜んでしもてからにビンビン。言うことを聞きよらん」
「ね、拭きながら……」
　と、恭子は挑戦するように言った。
「……拭きながら、見て」