４．

　長い廊下を進む。
　その先は、左側が物置の扉。右側が地下室に通じる階段になっている。
　俺は右側の階段を降りた。
　地下室は、室内運動場として使われていた。
　広い室内に、運動機具が点在している。
　いつもはもっと明るいのだろうが、今夜は照明が落とされて、非常用の照明だけが仄かに燈っていた。
　どこからか、女性の喘ぎ声が聞こえてくる。
　部屋の奥、ウェイトトレーニング用の器材が置いてある、向こう側あたりからだ。
　俺は耳を澄ましながら、その器材を迂回して部屋の奥に向かった。
　暗闇に目が慣れるのにいくらか時間がかかったが、やっとそこで何が行われているのかが、わかってきた。
　トレーニング用の長台の上で、一人の女性と複数の男性が絡み合っている。
　女性は全裸、男性の方は全員、興奮した下半身を剥き出しにしていた。
　女性の細く白い身体が、微かな照明にボーッと浮かび上がり、その裸体の上を、男たちの黒い身体が忙しなく這い回っている。
　俺がすぐ近くでその光景を眺めていると、何人かの男性が俺の存在に気がついた。
　しかしすぐに、男たちはまた女体に熱中し始める。
　俺は暫くその場に留まり、彼らの行為を鑑賞する事に決めた。
　少しすると、眼が更に闇に慣れてきて、彼らたち一人一人の表情が、よく見えるようになってくる。
（「えっ！？、まさか・・」）
　俺はそこで大変なことに気がついた。
　なんと目の前にいる全裸の女性は、女優のＨではないか。
　彼女は、地方の中学生だった時に、スカウトされてデビューした。
　すぐに、陸上競技で鍛えたしなやかな肢体と、ボーイッシュな魅力で、トップアイドルになる。
　その後も、映画やテレビに出演しながら、大学に入学する。
　だがそこから転落が始まった。
　ドロップアウト発言から、恋愛、妊娠、結婚、出産、離婚・・
　仕事から離れている間に、嫌な噂もいくつか流れた。
　曰く、セックス狂い。薬漬け。
　俺も若い頃、彼女のファンだった事がある。
　男たちに身体中を愛撫される、Ｈのあられもない姿を呆然と見詰めながら、俺は、そんな事を思い出していた。

　その時、男の中の一人が彼女の股間に深く顔を埋めた。
　途端に、彼女の身体は台の上でアーチ状に反り返り、のたうち回る。
　さらに、男の顔の動きに合わせて、細いウェストが激しく何度も上下している。
　よく見ると、みんなで群がり、次々に交代で舐めている。いれかわり、たちかわり・・執拗に何度も、何度も。
　俺は無意識のうちにズボンを脱いでいた。
　それはまるで、はるか昔１０代の頃に、誰もいない部屋で、週刊誌に載ったＨの水着写真を一心不乱に見詰めながら、条件反射のようにズボンを降ろしていた時のようだった。
　彼らはＨの身体中に愛撫を施しながら、彼女の手で自分自身を扱かせていた。
　なんと贅沢なことか・・俺はいつの間にか、痛いほど勃起した自分自身を激しく扱きたてていた。

　夢中で手を動かしているうちに、彼女が俺の動きに気がつく。
　そのまま右手を俺の方へ伸ばしてきた。
　俺はまたしても、無意識のうちに彼女の手を握ってしまっていた。
　彼女の方から手を引いて、俺を仲間に引き入れてくれる。
　まさに夢のようだった。
　俺の下にＨがいる。若い頃、何度、こんな情景を思い浮かべながら、彼女のグラビアで抜いたことか。
　俺は夢中で服を脱いで全裸になると、彼女の上に覆い被さった。
　それから、他の男たちに混じって、Ｈの乳房に唇を押しつけながら、彼女の手を自分の股間へ誘う。
　細い指が優しく俺の裏側を摩り始めると、もう後は無我夢中だった。
「あんっ、はあぁ〜・・あーー」という、懐かしい声で悶える彼女に、異常に興奮してしまう。
　俺は無理矢理、彼女の顔を自分の方に向けさせて、その唇に吸い付いていた。
　彼女の良く動く柔らかい舌に、自分の舌をきつく絡めながら、激しく腰を前後に動かす。
　頭の中では、純真だった頃のＨの清々しい笑顔が、はっきりと甦っていた。
　それから長い時間をかけて、彼女の全身を隅無く舐め回し、好きなところの匂いを全て嗅ぎ回った頃には、俺はもう限界に達してしまっていた。
　ヌルヌルになったＨの太股を両足で挟み込み、夢中で腰を振る。（彼女の股の間はもう既に、別の男の腰で占領されていた。）
「あ・・お・・んッん〜〜」
　すぐに強く絞り出すような、息をするのも忘れる程の深い絶頂がやって来た。
　つい先程、あれだけ激しく射精したぼかりなのに、驚くほどに大量の精液が高く噴き上がる。
　１回、２回、３回と、高く飛び散った白い精液は、遠く彼女の額まで届き、一旦へその上の窪みに溜まった後、だらだらと下に滴り落ちた。
　精も根も尽き果てた俺は、そのまま踞まる様にして後ろに倒れてしまう。
　俺は尻餅をついたまま、暫くそのまま動けなかった。

　しかし、俺のその行為をきっかけとして、その場は雰囲気は一変してしまう。
　男たちはみんな、自分の精液でＨを汚すことで彼女を征服しようと、先を争って動き始めた。
　いわゆる、スペルマパーティだ。
　Ｈの股の間で激しく腰を振っていた男が、素早くペニスを引き抜き、彼女の太ももに溢れ出る精液を降りかける。
　次の男が、怒張したペニスを彼女に挿入している間に、二人の男が彼女の胸に自分のペニスを擦り付けながら、白濁液を撒き散らした。
　同時に彼女の頭を下腹部に抱えた別の男が、無理矢理彼女の顔を前後させて、その喉奥に大量の精液を迸らせる。
　忽ちＨの身体は、男たちが吐き出す大量の精液で、べとべとに汚れてしまった。
　しかし、薬の影響だろうか、男たちは射精後もＨの周りを離れようとしない。
　他の男たちが彼女の身体を使うのを眺めながら、勃起したままのペニスを扱いている。
　俺は後退りをして、徐々に彼らから離れながら、Ｈの噂を思い出していた。
（「本当だったのかもしれないな・・」）
　素早く服を着た俺は、静かにその場を後にした。
　俺が最後にＨの事を見た時、彼女は恍惚とした表情で、為すがままに男たちに身体を使われていた。
　その顔は嫌がっているようにも、歓んでいるようにも見えた。
　時間はいつの間にか、午前０時を過ぎていた。