５．

　１階に戻った俺は、この家の一番奥へ向かおうとしていた。
　廊下は突当たりで左右に分かれ、一方はこの家の住人の寝室に続き、もう一方は、来客用の寝室につながっていた。
　左側の部屋の扉には鍵が掛かっていた。
　右側の部屋の扉をそっと開けてみる。そこは小さな寝室だった。
　彼女はそこで一人で眠っていた。
　智佳・・彼女は花柄模様の寝具の上で、細長い抱き枕を抱いて、静かに横たわっていた。
　身に着けているのは、ショーツとブラの白の下着だけ。
　眠っているのか、あるいは眠らされているのか、俺が部屋に入っても全く起きる気配は無かった。
　最初に彼女の姿を見た瞬間、俺は、赤地に黄色の花柄模様のそのシーツを俺の精液で真っ白に汚したい、そう思ってしまった。
　だがすぐに、これはおかしいと思い始めた。
　誰もこの部屋に入った形跡が無い。
　まるでこの後、この部屋に入ってくるのは誰なのか、既に決まっているような感じだ。
　その誰かのために、智佳が用意されているような気がする。
　まるでこの夜会のための生け贄のようだ・・
　俺は智佳に近づき、そっと彼女の身体を揺すってみた。
　やはり起きない。何か薬を飲まされて眠っているようだ。
　その時、背後のドアが音もなく開いて、真司が部屋に入ってきた。
「何をしてるんですか？」
　無表情な顔で、そう詰問してくる。
「彼女、起きないみたいだけど・・」
　寝室に勝手に入ったことに、軽いうしろめたさを感じていた俺は、咄嗟にそう言い逃れをした。
「きっと飲み過ぎたんでしょう。彼女、あまり強くないから。」
　真司は笑いながらそう呟く。それから、今、閉めたばかりのドアをもう一度開けながら、
「すいませんけど、彼女に話があるので・・」
　と、暗に、俺に部屋を出ていくようにと促した。
　俺は嫌々部屋の外に出ると、真司がそのままじっとこちらを眺めているので、仕方なしにその場を離れた。
（「何をするつもりなんだろう？、友達なら、薬なんか飲ませなくてもいいだろうに・・」）
　俺は真司に不審を抱きながらも、それ以上何もすることが出来ずに、黙って来た道を戻った。


　居間に戻ってみると、先程の奥さんが、黒人たちに身体中を、舐め回されているところだった。
　旦那の方は、近くのソファで別の女を膝の上に乗せている。
「普通、あそこまで出来ないよな。ずっと舐めっ放しだぜ。」
　近くの男の独り言が聞こえる。
「黒人ってセックスに対して貪欲だから、なんでも喜んでやるし、逆に女に対して優しいんだろうな。」
　一人の黒人が台の端に捉まり、仰向けに寝た奥さんの股の間に、白い舌を差し込んでいる。
　さらにもう一人が上から、６９の格好で奥さんの股間に舌を伸ばしていた。
　二人は其々、指で彼女の前と後ろの穴を押し拡げて、その中に尖った舌先を差し込んでいる。
　残ったもう一人の男は、奥さんの両足首を掴んで左右一杯に拡げながら、彼女の脚の指一本、一本を丁寧に口に含んでいた。
　きっと奥さんはずっと天国を彷徨っていたのだろう。もうどうしたらいいのか判らなくなっている彼女は、目の前にぶら下がっている上の黒人の長いペニスを、両腕できつく抱き締めていた。
「あぁ・・あ〜〜」
「あぁ・・歓んでる。あんなことされた事ないもんな。」
　奥さんの蕩けるような笑顔を見て感激した旦那は、思わず相手をしている女の腰に抱きつき、その胸に顔を埋めた。
　すこしすると、感極まった奥さんが顔を起こし、黒人たちになにか話しかけた。
　すると黒人たちは、一旦、奥さんの身体から離れて、その中の一人がペニスに被せていたコンドームを外した。
　待ちかねた奥さんが彼の下半身に縋りつき、黒光りしている先端に、熱い口唇愛撫を施し始める。
　自慢の舌技を受けた、その黒人のペニスは更に太さを増して勃ち上がり、奥さんの小さな口には入り切らなくなった。
　再び奥さんが、黒人の顔を見上げながら、なにかを囁きかける。そしてすぐに、仰向けに寝て脚を左右に大きく開き、自分で両膝を胸まで抱え上げた。
相手の黒人がゆっくりと奥さんの上に伸し掛かり、下から刳るように腰を前に進める。
　奥さんが下から黒人の逞しい腰に両脚を絡め、首に回した両腕できつく彼にしがみつくと、上に乗った黒人はゆっくりとその大きな尻を上下させ始めた。
（「生の精液が欲しいと言う女性には、たっぷりと注ぎ込んであげますよ、か・・」）
　俺は奥さんの歓びと、黒人たちの希望を理解した。彼らの好みは、この可愛らしい奥さんなのだ。
　陶器みたいにつるつるの素肌に、両手で掴めそうな細いウェスト。おもちゃのように小振りで可愛い、尻や胸。そして子供の様に、小さく引き締まったあそこ。
　本国では望んでも手に入らない、これらの貴重な愛玩品を、彼らは欲しがっていたのだ。
　その後、黒人の尻の動きは徐々に速くなって、そのうちに奥さんの股間に腰を密着させたまま、尻をぐるぐると回す動作を繰り返すようになる。
　やがて、猛烈な速度でピストン運動を始め、ついには、深く差し込んだまま尻をピクピクと引き攣らせ動かなくなった。
　その瞬間の奥さんの様子を窺うと、彼女は下からビクッ、ビクッと腰を突き上げながら、夢中で彼に口づけをしていた。
　暫くして、奥さんが黒人の頭を抱き締めていた両腕の力を緩めると、彼は身体を起こし、代わって次の黒人が、ペニスを扱きながら彼女の上に覆い被さってゆく。
　奥さんを包み込んだ黒人が、濡れ光る割れ目に長いペニスを深々と挿入すると、彼女の膣からは夥しい量の白い精液が溢れだし、彼女の頭は後ろへ反り返ったままになった。

　悶え歓ぶ奥さんの様子を、ただ漫然と眺めていた俺は、突然、プロデューサーの男の事を思い出した。
（「そういえば、彼も欲しがってた。」）
　あの時の女の子の話が気になり始めた俺は、先程覗いた書斎の様子を、もう一度見に行くことにした。