21．Ｃ棟-601号（笹原 真帆−１）

　部屋に戻った徹は、真帆から頼まれたツールをＣＤに焼いた。
（これでいいだろう。簡単なＨＰを立ち上げて・・・）
　頭の中で段取りを整えた徹は、真帆のことを考え始めていた。
（しかし、可愛いと言うか、美人と言うのか・・・とにかく、パッと見て、目を引く女性だったなぁ〜独身、じゃないよな・・・新婚さんかな？22〜3歳くらいかな？体形は標準的な感じに見えたけど・・・裸にしないと・・・おっと、いけない！また、すぐに、セックスを考えちゃって。さっき文さんと、あれだけ激しくやったばかりなのに・・・）
　徹は自分の淫欲に呆れていた。

　翌日、充分に睡眠をとった徹は、10時少し前にＣ棟に向かった。
（加奈子さんに見られないように・・・）
　別に悪さをする訳じゃないのに、日頃の習慣だった。
　601号のチャイムを鳴らすと、セミロングの髪を少し乱した真帆が顔を出した。
「すみません！わざわざ・・・」
　中に入ると、真帆はすぐに徹を部屋に案内した。
（昨日は服装が違ったから分からなかったけど・・・凄いよ！）
　徹は真帆の全身を眺め、そのスタイルの良さに驚いていた。
　薄手の白いブラウスにミニのタイトスカート姿の真帆は、ウエストが滑らかに括れ、太股が長く伸びていた。
（いいプロポーションだな〜乳房は・・・あぁ、分からないな〜）
　大きな二重の目、鼻筋が通り、小さな口唇に細い顎と、その身体つきは、理想的に思えた。

　ＰＣは既に立ち上がっていた。
「すぐにＨＰを立ち上げますから・・・ブログでもと思ったけど、やはりＩＤで制限する方が・・・」
「その辺は、岩下さんにお任せします。どのくらい時間、かかりそうですか？」
「そうですねぇ・・・２時間ぐらいあれば・・・」
「じゃあ、コーヒーをお持ちしますので、宜しくお願いします」
　そう言うと、真帆はキッチンに向かっていった。
　まもなくコーヒーを運んできた真帆は、徹の邪魔にならないように静かにしていた。
「あっ、僕のことなら構わないで・・・奥さんは用事を・・・」
「そうですか！じゃあ、お掃除や洗濯を・・・」
　真帆は脱衣場に向かっていった。
　それからは、洗濯機の音や掃除機の音が少し耳についたが、そのうち、気にならなくなっていた。

　予定より早く終えた徹は、部屋を出て真帆を探した。
　脱衣場の洗濯機は止まり、真帆の姿は無かった。
（何処に行ったのかな？）
　リビングの向こうのベランダに真帆の姿が見えた。
（あっ、洗濯した物を干しているのか）
　徹は窓ガラスまで歩み寄った。
（おっ！ミニスカートの中の白いパンティが・・・チラチラだが、形のいいお尻のような・・・）
「あっ、岩下さん！すみません！お構いもしないで・・・」
　小さな台から降りた真帆は、徹の姿を見つけ声をかけてきた。
「あ、いえ、終わりましたよ！」
　徹は少しドキッとしたが、平静を装って話しを続けた。
「一応、確認してください」
「はい！今、すぐに」
　真帆は部屋に入ると、徹の後をついていった。
　徹はＨＰを開き、使い方を説明した。
「じゃあ、グループの皆に、コレを連絡すればいいんですね！」
「えぇ、ＵＲＬとＩＤをメールしてあげれば・・・」
「ありがとうございました。丁度、お昼になりますから、一緒にいかがですか？」
「そうですね！じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
　真帆はメールを打つと、徹と一緒にリビングに向かった。

「簡単な物しかありませんが・・・宜しいですか？」
「えぇ、奥さんの作ってくれるものなら何でも」
「岩下さん、お世辞もお上手なんですね〜」
　真帆は少し微笑んで、キッチンに立った。
（やっぱり、いいプロポーションだ・・・）
　徹は真帆の身体を後ろからじっくりと観察していた。
「しかし、奥さんのご主人が羨ましいなぁ〜」
　徹は料理をしている真帆に話しかけた。
「えっ!?どうしてですか？」
「新婚さんでしょ？奥さん、22〜3歳？」
「え、えぇ〜結婚して３ヶ月です。年齢は・・・ズバリ！23歳です」
「やっぱり！それじゃ、毎日、ご主人は早く帰ってくるでしょ？」
「えっ！えぇ、まぁ・・・」
　真帆の声のトーンが少し下がった。
　真帆は作った料理をテーブルに運んで並べ始めた。
「奥さんのように素敵な女性じゃ、ご主人も夢中でしょ？」
「・・・・・・えぇ・・・」
　食器を運びながら、真帆は次第に暗くなっていた。
（どうしたのかな？）
　徹は様子が変わった真帆に気がつき、首をかしげた。
「毎晩、楽しくていいですね！」
　徹はわざと明るく言ったが、真帆は完全に落ち込んでいた。
「あのぉ〜僕、何か失礼なことを言いましたか？」
「いえ、別に・・・」
「ご主人と喧嘩でもしたんですか？」
「・・・・・・・・・」
　真帆の整った顔が、泣き出しそうになっていた。

　徹は椅子から立ち上がり、真帆を座らせた。
「僕で良ければ、何でも言ってください。相談にのれることなら・・・話したほうが気分が楽になりますよ」
　真帆はしばらく俯いたまま、黙っていた。
（結構、深刻そうだな・・・余計なことを言ったかな・・・）
　しばらくすると、真帆が静かに話し始めた。
「すみません・・・お世話をお掛けしてるのにこんな憂鬱な態度で・・・岩下さんは素敵な男性で年齢も上だし、女性経験も豊富そうだから・・・ご相談してもいいですか？」
「構いませんよ！僕で分かることなら・・・」
「でも、やっぱり・・・恥かしいし・・・」
　真帆はかなり緊張して躊躇っていた。
「秘密は守りますよ！思い切って話しをした方が・・・ずっとこのままでいいんですか？」
「・・・・・・ふぅ〜ん、そうですよね・・・このままじゃ・・・本当に秘密にしてくださいね！お願いします！」
「えぇ、約束は必ず守りますよ！信用して・・・」
　徹の言葉を信じ、真帆は思い切って話すことにした。

（こんなこと、初めて会った男性に話すことじゃないけど・・・加奈子さんから聞いた岩下さんの評判は最高だったし・・・第三者に聞いてもらえるなら、その方が・・・）
「実は・・・わたしたち夫婦、結婚してから一度もセックスしてなくて・・・」
「えっ！？？？」
　徹は本当にビックリした。
「驚きますよね・・・でも本当なんです！初夜の時・・・主人がわたしのアソコを見て・・・わたし・・・アソコの毛が・・・無いんです」
「えっ？」
「やっぱり驚きますよね！はぁぁ、恥かしいわ！もう、いいです！やっぱり止めます」
「いえ、すみません！別に驚いた訳じゃ・・・そういう女性、奥さんだけじゃないから・・・」
「そうなんですか？大勢、いるんですか？」
「えぇ、まぁ・・・大勢とは言いませんが・・・聞いたことはありますよ」
「そうですか・・・それで、主人・・・『大人になって無毛なんて、気持ちが悪い！』そう言って、それ以来、何も無くて・・・どうしたらいいのか、どうにもならなくて・・・」
「別に、気持ち悪いなどとは・・・僕は思いませんが・・・」
「本当ですか？本当に断言できますか？」
　真帆は少し強い口調で徹に言った。
「見たことはありませんが・・・セックスには、そんなに影響があるとは思えない・・・」
「見たことが無いから、そう言うんじゃないんですか？もし目の前にしても、気持ち悪くないと言い切れますか？」
「・・・そうですね・・・えぇ！断言できますよ！」
（弥生ちゃんは子供だけど、まだ恥毛は生えてなかったし・・・そうだ！明日は、その弥生ちゃんと・・・）
「本当ですね！？」
「えぇ、今、見せてもらっても、僕なら、ちゃんと愛してあげられると断言できますよ！」
（えっ！・・・・・・今、ここで・・・！？もぅ、随分、セックスしていない・・・独身の時も・・・付き合った彼氏も、あまり・・・また、気持ちが悪いと罵られると・・・あんな思いはもぅ・・・）
　真帆は迷っていた。

　徹は真帆の気持ちを推察すると、何も言えなかった。
（可哀想に・・・ひとりで苦しんでいたんだ・・・なんとか楽にしてあげたいけど・・・本人次第だし・・・）
　真帆も徹と接し、その優しさを強く感じていた。
（このままじゃ、何も変わらないわ・・・もぅイヤッ！）
「岩下さん！早く昼食にしましょう！今日は本当にありがとうございました」
（ん？そうか、諦めたのか・・・仕方がないな・・・）
「いえ、また、何か分からないことがあれば」
「えぇ、ご相談しますので、宜しくお願いします」
　真帆は100％の明るさは無かったが、努めて明るくしていた。
　ふたりは趣味のことなどを話しながら食事を摂った。
「それじゃぁ、食後のコーヒーを飲んでいてください」
「えっ？奥さんは・・・どこかに？」
「わたし・・・身体が汗臭いから、お風呂に入ってますので・・・」
　そう言うと、真帆は徹に少し微笑んで浴室に向かった。
（ん？どう言うことだ・・・？後から浴室に来いと言うこと？諦めたんじゃなく、ふんぎったってことなのか・・・？）
　徹はコーヒーを口に運びながら考えていた。

　浴室に入った真帆は、バスタブに湯を溜めながらシャワーを浴びていた。
（このままじゃ、近いうちに離婚になるに決まってる・・・また独身になっても、同じことの繰り返しだわ！だったら今踏み出さないと、この先、どうにもならないわ！）
　真帆は自分のふっくらとした無毛の恥部を洗いながら、徹の反応を確かめたいと思っていた。
（岩下さんまで敬遠するようなら・・・わたしのオンナとしての人生は、もぅ、終わりだわ・・・）