| 18 放課後、僕たち三人は先輩の部屋にいた。生々しい記憶がまだ残っているから僕の部屋は勘弁して欲しいと先輩に頼んだからだ。それに、先輩にイニシアチブを握って欲しいという気持ちもあった。 先に僕は先輩の家に行って事情を説明した。先輩は何か考え込む様子でひとこともしゃべらなかった。気まずい沈黙を破ったのはチャイムの音だった。 部屋に入るなり林亜理咲は泣き出した。 「瞳ぃ・・・ごめんね・・・あたしから言い出したのに・・・約束破っちゃった・・・ごめん・・・」 「聞いたわ・・・気にしないで。いいの。つらいことがあったんだから、しょうがないと思う」 「う・・・うん・・・ありがと・・・」 林亜理咲の目からは大粒の涙がこぼれている。なんとかしてあげたいと思ってもアイデアが浮かばない。 「いまのままだと私たちは話を聞くくらいしかできないわ。つらかったらお母さんとかに相談できないの？」 僕の気持ちを代弁するような先輩の言葉だった。 「だって・・・そんなこと言えない・・・恥ずかしいし、お兄ちゃんもかわいそう・・・」 「林さんはお兄さんとの関係を断ち切りたいのよね」 「う・・・うん・・・」 「避難するにも口実が必要よ」 「ど・・・どういうこと？」 「私の家には、前にお父さんが使っていた部屋が空いてるの。DVからの一時的避難に使わせてもらえるようお母さんに頼んでみる。それには林さんがご両親に話をすることが必要なの」 「ほんと・・・？」 「これ以上、お兄さんとの関係を続けたくないんでしょ？」 「ほんとうに・・・ここへ来てもいいの？」 「もちろんよ。私の家じゃいや？」 「うれしい・・・そうしたい・・・あたし、これからお母さんに話してくる」 そう言うと林亜理咲は立ち上がった。希望で顔が輝いて見えた。やっぱり、すごくつらかったんだと思った。 「すごい。尊敬します。僕なんかの出る幕はなかったですね」 林亜理咲を見送った玄関で僕は先輩に言った。本気で先輩はすごいって思った。聡明で的確な判断力は行動も伴っている。二年生のときに生徒会長に推す声が強かったという話を聞いたことがあるけど、なるほど、それもうなずける。 「林さんに勇気をあげたのは今井君よ」 「いや、僕はなんにもできなかった・・・」 「ううん・・・そんなことない。林さんがSOSを出せたのは今井君だったからよ。それに、昨日のことがなかったら林さんにここへ来てもらおうなんて思いつかなかったと思う・・・」 心なしか先輩の頬が赤い。 「もしかして・・・」 「なに？」 「先輩・・・もうひとつの秘密の箱が・・・」 僕は先輩が林亜理咲の腕を握ってを引き寄せたときの表情を思い出していた。 先輩の心の中にある秘密の箱には林亜理咲が深く関わっている。そして、昨日、新たな秘密の箱が開いたのではないだろうか？ 「ひゅっ」と息を飲む声が聞こえた。 「あ・・・ふ・・・」 先輩の目は焦点を結んでいない。 「やっぱりそうだったんですね」 「ち・・・ちがうの・・・」 「えっ？」 「今井君は・・・私の・・・私の大切な秘密の鍵・・・だから・・・」 僕が強く望んでいたことが先輩の口から・・・ 「私の鍵でいて・・・これからもずっと・・・おねがい・・・」 「せ・・・せんぱい！」 僕はその場で先輩を抱きしめていた。 「私の鍵・・・あなたは・・・私の鍵・・・」 「そうです。僕は先輩の鍵なんです」 うれしくて涙が出そうだった。 クールな思考の底に熱い思いを秘めた先輩は最高に魅力的だ。僕だけが、その熱い思いを引き出すことをできる鍵なんだと思うと力がみなぎってくるのを感じた。 それに先輩が僕のことを「あなた」と呼んだのは初めてじゃないだろうか？ その意味の深さにも感動していた。 「せんぱい・・・」 僕は先輩の目を見てひとこと言うと唇を重ねた。 「く・・・ふ・・・」 先輩の身体がブルブルと震え出す。 こんなかたちで告白されたのは林亜理咲のおかげだ。友だちへの思いやり、そしてジェラシー、もしかしたら同性愛的な思いもない交ぜになって、先輩は僕を求めてきた。最高の告白と一緒に・・・ 左手で先輩の腰あたりに置いて身体を引き寄せながら、右手でサラサラの髪を撫でると、先輩の両手が僕の背中にまわり、しがみつくように抱きついてきた。はっきりと求められていることがわかった。 舌を絡めながら腰にある左手の位置を下ろしていく。 ビクンッ！ 指先がヒップの双丘が作る谷間をなぞったとき、先輩の身体が大きく震えた。 生地を握りしめるようにしてプリーツスカートをまくり上げていく。その指の動きにすら反応して先輩は震え続ける。 「くっ・・・くぅっ・・・」 喘ぎは声にならない。 でも、なぜか僕には先輩がなにを感じているのかわかった。いや、正確に言うと先輩の心が僕の中に侵入してきた感じだった。宙に浮き満たされていくイメージが伝わってきたんだ。僕は鍵になって先輩の秘密の箱を開けた。そして次の段階に進もうとしている。これから僕と先輩はひとつに、いや、ひとりになるんだ。 腕の力を緩め、唇を離すと、自然に見つめ合う格好になった。 僕は先輩の肩を抱いて部屋の方へ連れて行った。 ベッドの前に着くと先輩は自分で服を脱いだ。僕も服を脱ぐ。そうしようと考えてしたわけじゃない。まるでプログラムされたような行動だった。 僕は先輩をうしろから抱きしめた。 両手を前へまわしてバストへ、そして髪をかき分けて耳たぶを軽く噛む。そう、昨日、先輩が林亜理咲にしていたことを無意識に真似していた。イメージが強く残っていたからかもしれない。 効果は絶大だった。 先輩はいままでに聞いたことがない声をあげて震えはじめる。 「昨日、先輩はアリサにこうしてました・・・今日は先輩の番です・・・」 「く・・・ふぅ・・・あぁんっ！」 僕の声に反応して先輩は高く喘ぐ。 左手でバストを揉みながら右手を下ろして茂みの中へ持っていくと指先が熱く濡れた肉に触れた。 「はうっ！ んんんんっ・・・」 僕の動きから逃れるように突き出したヒップの谷間に屹立したものが挟まる。 それはそれで気持ちのいいものだったけど、それだけじゃ満足できない。 ちょっと腰を落とすと僕のものはふとももの間に入り込んだ。 「ひゃっ！ あ・・・あふぅい・・・」 あそこへ屹立が触れたとき先輩はそう言って腰をくねらせる。 ふとももの間に差し込んでいる右手で屹立を下から支えるようにしてあそこへ押しつけながら腰を前後に動かすと、先輩は息を荒くして悶えた。 右手を添えながら腰を引き蜜壺の位置を探し当てる。 「ひゃううんっ！」 先端がスルリと抵抗なく入り込んだとき先輩はひときわ高い声をあげた。 つながったまま右手でクリトリスをいじり、左手でバストを揉む。もちろん耳も甘噛みしながらだ。 「ひゃあ！ ひゃあぁんっ！」 腰の位置をずらせて深く挿し込むと先輩は叫びながら僕の腕の中で痙攣した。 初体験から三日くらいしか経っていないのに先輩の身体はかなり敏感になってきているような気がする。 それに、今日は先輩の方から求めてきたようなところもある。僕への告白もともなってだ。なんだか、すごくエロい。制服と一緒に理性のヴェールも脱ぎ去ってしまった感じだ。男として、こんなにうれしいことはない。だから、僕は自分のことより先輩が感じるようにしたいと思いはじめていた。 「ああっ！ くぅっ！」 人差し指と中指でクリトリスを挟むようにして細かく動かすと震えの振幅が大きくなった。ビチビチと跳ねる大きな魚を抱いているみたいだ。その魚を逃がさないように左手に力を入れて抱き寄せる。 「あうぅぅぅっ！」 僕の胸に密着している先輩の背中からイッてしまった叫びが伝わってきた。 それでも僕は腰や右手の動きを続ける。 嬌声とともに先輩は跳ねるような痙攣を繰り返す。 そんな激しい動きの中なのに蜜壺の中の熱く湿った肉が僕のものをくわえこむように蠢いているのを感じた。 心底、中で出してしまいたいと思った。 たぶん先輩だってそれを望んでいる。 そう・・・いまの先輩は望んでいる・・・ でも・・・それは先輩のためにどうなんだろう・・・ なぜか自分の中にいるもうひとりの自分がささやいたような気がした。 僕は動くのをやめて、ゆっくりと屹立を引き抜いた。 「はぅん・・・」 先端が抜けたとき、先輩はため息のような声を漏らして弛緩してしまった。 崩れ落ちそうな先輩の身体を支えながらベッドへ横たえる。 先輩が目を開けて僕を見た。 その視線は、林亜理咲の髪を撫でているときと同じ神々しさを感じるものだった。 「いまい・・・くんの・・・きもちが・・・うれしい・・・」 先輩は一語一語を区切るように言う。 「え？」 「やっぱり・・・あなたは・・・わたしのかぎ・・・おもいやってくれて・・・いるのが・・・わかったの・・・あ・・・ありがとう・・・」 先輩も僕のような感覚なんだろうか・・・思えばなにかに操られるように先輩を抱いていたし、その間、ずっと先輩の気持ちが伝わってくるような気がしていた。 「からだが・・・とけて・・・どこまでもおちて・・・いくみたいだった・・・いまいくんが・・・ささえてくれて・・・」 そこまで聞くと僕は無性に先輩のことが愛おしくなった。 気がつくと先輩のことを抱きしめていた。 先輩は僕の腕の中でヒクリと震えた。 |
| あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。 |
| 2011.6.19掲載 |
南田朗さんの作品集→ |