7 　チャイムを鳴らすと同時に制服姿の先輩がドアを開けた。 　きっと待っていたんだ。 「あがって・・・」 「はい・・・あの・・・」 「なに？」 「ご家族は・・・？」 「お母さんは夜遅くにならなきゃ帰ってこないわ・・・父は・・・いないの・・・」 「あ・・・ごめんなさい・・・聞いちゃいけなかったですね・・・」 「いいの。あがって」 　僕は言われるとおりにした。 　通されたのは先輩の部屋だった。あの甘い、いい香りがした。でも、あんまり女の子の部屋という感じがしない。かわいらしい装飾やヌイグルミのたぐいは見あたらない。目立つのは本棚にぎっしりと並べられた本、そして淡いピンクのカバーがかけられたベッドだ。 「あんまりジロジロ見ないで」 「あ・・・すみません・・・でも、なんか感激です・・・」 「どうして？」 「先輩の部屋にいるってだけでうれしいし・・・先輩の鍵になれたし・・・」 　鍵と言ったときに先輩がピクリと震えた。 「また見せてくれる？」 　あの眼だった。 「はい、なんでもします」 　僕はそう答えた。本気で先輩のためならなんでもしようという気持ちだった。 「じゃあ脱いで」 「はい・・・」 　僕はズボンを脱ごうとベルトを外す。 「全部よ」 「えっ？」 「全部脱いで」 「あ・・・はい・・・」 　ガチで恥ずかしかったけど言うとおりにした。脱いだ服をたたんで床に置いて、僕は全裸で先輩の前に立った。これから起こることを想像して僕のものは上を向いてそそり立っていた。 「大きくなってる・・・どうして？」 「昨日のことを思い出して・・・」 「男子っていつもそうやってエッチなこと考えてるの？」 「そんなことありません」 「でも、男子はいつもわたしのことエッチな目で見てるような気がする。スカートの奥とか、ブラウスの間とか・・・今井君もそう？」 「あ・・・う・・・」 　痛いところを突かれた感じだった。 「正直に言って」 「は・・・はい・・・先輩の脚とか・・・見てました・・・ごめんなさい」 「見ると興奮するの？」 「どうしても目がいっちゃうんです・・・見ると、もっと見たくなっちゃうし、もっともっと奥というか、隠れたところも・・・想像しちゃうんです」 「その後は？」 「えっ？」 「とぼけないで。昨日みたいに自分でするんでしょ？」 「そ・・・そうです・・・」 「想像しながら？」 「はい・・・」 「どんな想像してるの？」 「僕のこと嫌いになりませんか・・・？」 「君は鍵なんでしょ」 「はい・・・先輩のスカートの中に顔を埋めて・・・匂いを嗅いだり・・・舐めたり・・・」 　恥ずかしさを堪えながらそう言って先輩の顔を見ると、また表情が変わっていた。頬がピンクに染まっている。きっと先輩もエッチなことを想像してるんだと思った。だいたい、男を裸にさせて、それを見ながらエッチな話をするなんて先輩はそうとう変態だ。でも、そうされて興奮してる僕はもっと変態なのかもしれない。でも、それでもいい。だって僕は先輩の鍵なんだから。 「ここに顔を埋めたいなんて・・・そんなに見たいの？」 　椅子に座っていた先輩はスカートをパンティが見えるギリギリまで持ち上げた。 「せ・・・先輩・・・もう・・・」 「自分でして・・・出して」 「はい・・・」 　僕は自分のものをしごきはじめた。 「ここに出せる？」 　先輩はキャスター付きの椅子を滑らせるようにして僕に近づき、両手で水をすくうような格好をした。 「たぶん・・・飛び出しちゃうから・・・無理かも・・・」 「どうすればいい？」 「昨日みたいに・・・口で・・・受け止めてもらえば・・・」 「いいわよ」 　先輩は躊躇なく僕のものを口にふくんだ。 　見下ろす光景はたまらないほど刺激的だ。 「ああっ！　で、出ます！」 　先輩のあたたかな口の中を感じた途端に思いきり発射してしまう。 　喉を直撃してしまったのか先輩はむせながら、右手で口を押さえて僕の精液を手のひらに吐き出した。そして、転がすようにして溜まった精液を見つめている。 　下半身がスッキリしたおかげで頭が冴えた僕は先輩が書いた小説の一節を思い出していた。 「先輩・・・小説の中にある『拡散することを夢見ながら眠っている微粒子たち』って、それのことですよね」 　先輩の動きが止まった。 「僕はまだ不完全かもしれないけど一生懸命先輩の鍵になります。どうして昨日、黙って帰っちゃったんですか？　すごく悲しかった。今日は先輩の家ですから帰るところはありません。だから僕にも見せてください」 「どうして・・・わかったの・・・」 　先輩の声は震えていた。 「だって小説には続きがありましたから、それくらいはわかります。さっき先輩は男子がいつもエッチな想像してるって言ってましたけど、先輩だって・・・すごくエッチですよ。あんな小説書くんだもん。あれって先輩の心の中じゃないですか。昨日、あんなに急いで帰ってなにしてたんですか？」 　小説の主人公は闇の中で箱を持ち上げようともがいていた。そして、箱の感触を確かめながら鍵穴を探していると、その箱自体が輝きだしてあたりを白い世界に変えていった。 　そうか・・・きっとそうだ。 「先輩も自分でしていたんですよね？」 「・・・」 　先輩はうつむいて黙ったままだった。 「安心してください。僕は先輩のことを誰にも言いませんし、先輩のためなら何でもします。よろこんで鍵にでもなんにでもなります」 　さっき、先輩は「父はいない」って言ってたことを思い出していた。事情はわからないけど、先輩の中に開けなければならない箱がまだいくつもあることは理解できた。 　さえない僕の屈託と、学園のアイドルである先輩が隠している心の闇がどこかでつながっている。だから、僕には先輩の書く小説の意味が直感的にわかったんだ。そして、その闇に光を当てることができるのは僕しかいない。きっと、そうだ。 「先輩、手を出してください。僕が拭いてあげます。もし新しいものが欲しければ、いつでもいくらでも先輩が望むだけあげますから」 　先輩は黙って僕の方へ手を差し出した。 　机の上にあったティッシュで僕は先輩の手をていねいに拭いた。 「先輩・・・立ってください・・・」 　先輩がゆっくりと立ち上がる。 「僕が誰だかわかりますよね？」 　そう言いながら僕はうなずいている先輩の両肩をつかんだ。 「ひゃん！」 　先輩は不思議な叫び声を上げてピクンと身体を震わせた。 「ひゃ・・・ひまい・・・ふぅん・・・」 　両手を滑らせるようにして二の腕へ移動させると、息を荒げながら先輩は僕の名前を呼んだ・・・たぶん・・・ 「先輩、僕を見て」 　一年生だけど背は僕の方が高い。僕を見上げる先輩の眼が潤んでいた。 「キスしますよ。いいですね」 　そう言いながら、僕は先輩の眼を見つめる。 　しばらく待ってからまた言う。 「いいですね？　先輩が嫌なことはしませんから」 　僕はゆっくりと先輩の唇に自分の唇を近づけていった。 　たぶん先輩の口の中には僕の出したものが残っているだろう。でも、そんなことを気にしていたら前には進めない。先輩のために、僕のこれからのひとことひとことが、そして行動のひとつひとつが大切だということがわかっていた。 　唇が軽く触れた。 　一瞬、先輩の身体が硬くなり、僕を押し戻そうとするような動きをする。 　僕はあせらず軽く触れたままの状態を保って無理には進まない。 　すぐに先輩の力が緩むのがわかった。 　僕は二の腕をつかんでいた手を背中にまわし、徐々に力を入れて先輩を抱きしめる。 　やがて先輩の手が僕の背中に・・・ここまで待ってから僕は舌を差し入れた。 　昨日、発作的に抱きしめてしまった後、そして、さっきまでのサディスティックとも思える先輩の態度は本性じゃなくて、きっと心のどこかを閉ざしてしまった反動なんだろう。きっと箱の中に隠されているのはガラス細工のように壊れやすい心なんだ。だから、ゆっくりと先輩の反応を待つことが大切なんだと僕は思った。 　舌先で先輩の歯茎をなぞる。昨日は夢中でむさぼるような動きだったけど、今日は違う。先輩の舌が応えるように僕の舌に絡んできた。僕は指先に力を入れて、さらに先輩の身体を引き寄せる。先輩の息づかいが荒くなっていくのが密着した胸から伝わってきた。 　制服から学校の匂い。その下から甘い香りが強く漂ってくる。 　これが先輩の体臭なんだろうか？　そう思うと、愛おしくて愛おしくてたまらなくなってしまった。 　僕は耳元で先輩にささやいた。 「先輩・・・先輩をじかに感じたいんです」 　昨日の経験から耳が特別に感じやすいことはわかっていた。 　高校一年生にだってそれくらいの知識はある。 　案の定、先輩は身体を震わせて喘いだ。 　きっと先輩は感じすぎる体質なんだろう。スイッチが入ってしまうとコントロールできなくなって、へんなしゃべり方になっちゃうし、そんな自分を見せるのが嫌なんだと思う。 「どんな先輩になっても、僕は先輩の鍵なんです。それを忘れないでくださいね」 　そう言うと、ますます先輩の身体が震えた。 　僕は身体を離してブレザーに手をかける。 「ひ・・・ひ・・・ひふんで・・・」 「じゃあ、僕は見ていますよ」 　そう言って僕は椅子に座る。 　それはすごい眺めだった。 　憧れの先輩が僕の目の前で制服を脱いでるんだ。 　ブラウスのボタンが外されると白い肌が興奮でピンクに染まっているのがわかった。 　わりとおとなしめの白いブラジャーが先輩にはよく似合っていた。 　たたんだブラウスをベッドの端に置くと、スカートのホックに手をかけたまま、先輩はなにかを訴えるようにこちらを見た。 　たぶん恥ずかしさの限界なんだろう。 「無理しないでください。僕に任せてくれますね」 「ひ、ひまいふんの・・・のふぉみを・・・ふぁなえて・・・」 「僕の・・・望み・・・？」 「・・・」 「あの・・・スカートの奥に顔を埋めるってやつですか？」 　先輩がうなずく。 　まだプライドみたいなものが残っているみたいだ。 「先輩の気持ちはうれしいです。でも、いま僕がやらなければならないのは鍵になって先輩の箱を開けることです。順番が大切なんです」 　なんで自分がこんなに冷静なのか自分でもびっくりしていた。 「先輩、聞いてください。僕はいままで自分のことをモヤシみたいなさえない男子だと思ってました。でも、そんな僕にも役割っていうか、できることがあるって気がついたんです。僕は先輩の心を開ける鍵になりたい。箱を開けても壊れない支えになりたいんです。そのためだったら、どうなってもいい。だから、僕のエッチな妄想なんて気にしないでください」 　どれだけ僕の想いが伝わったのかはわからないけど、先輩の眼から僕にオナニーを強要してたときの光は消えたように思えた。 　僕は先輩の前にひざまずいてスカートのホックを外す。そしてジッパーを下ろすと、パサリと音を立ててスカートが落ちた。ブラジャーとよく似た生地のレースをあしらった白いショーツ、その大事な部分はすんなりした下腹部より僅かに膨らんでいて低い丘のように見えた。 　見惚れるのは後でもいい。いま大切なことはじかに肌を合わせることだ。 　ショーツの脇に手をかけ、一気に、でもやさしく下ろす。ついでに濃紺のハイソックスも脱がしてしまった。 　どうしても、ふとももの合わせ目にある翳りに目がいってしまう。母親とお風呂に入ったときに見た遠い日の記憶にあるだけの印象とはまったく違う生の迫力に目眩すら覚えた。一瞬、そこに顔を埋めたいという欲望に襲われたからだ。 　それでも使命感が勝った。 　僕は立ち上がって背中に手をまわしブラジャーのホックを外した。 　ついに先輩は生まれたままの姿になった。 　きれいだった。いや・・・世の中にこんなに美しいものがあるのかと思った。 　僕は先輩の身体を引き寄せて抱きしめた。 　先輩の体温、先輩の鼓動、先輩の息づかい、そして先輩のおっぱいの柔らかさと弾力を感じながら、僕は不思議なくらい落ち着いていた。 「先輩・・・こうしてると、すごく自然な感じで安心できませんか」 「はぁん・・・ひ、ひまいふん・・・」 　熱い吐息のような声で僕を呼ぶ先輩・・・ 「すごくエッチな気分ですけど、その反対にすごく神聖な感じもします。僕が誰なのかを気づかせてくれた先輩に感謝してます。だから先輩も箱の奥にある自分を解放してください。わかりますよね」 　息を吹きかけるように耳元でささやくと先輩はヒクヒクと身体を痙攣させる。 　僕は背中にまわした手を静かに這わせて滑らかで柔らかい肌の感触を楽しんだ。言い訳に聞こえるかもしれないけど、最終段階を迎えるためにはそれが必要だった。実際、僕の指先がツボと思われる場所に触れると、そのたびに先輩は大きく喘いだ。 　また、耳やその周辺を舐めながら身体を蠢かせると、ときおりビクンと身体を硬くして、先輩がどんどん官能の渦に巻き込まれていくのがわかった。 　最初のうちは「ひゃあん！」とか「ふぅん！」といった鼻にかかった喘ぎ声が次第に「あんっ！」とか「ああっ！」と明瞭になってきた。 　そろそろだろうと思った。 「先輩は僕が射精するところを見たいって言いましたよね。それは、男の生理に興味があったからですよね？」 　耳元でそう言うと先輩はガクガクとうなずいた。 「僕が出した精液を見て先輩もエッチな気分になったんでしょ？　僕はわかったんです。先輩が急いで帰ったのは、自分でするためだっていうことを」 「ろ・・・ろうして・・・ああんっ・・・」 「こんどは先輩の番です。昨日、ここでどうしていたのか僕に見せてください」 「ひゃ・・・ひゃあん・・・」 「僕は先輩の裏返しの姿だったんですね。先輩は僕に見られたかった・・・そうでしょ？」 「ひ・・・ひまい・・・くぅん・・・」 「僕はここにいます。そして先輩を見ています。だから・・・わかりますよね？　どこでしたんですか？」 「ベ・・・ベッドの・・・上で・・・」 「だったら・・・そこで・・・」 　僕は先輩を抱き上げるとベッドの上に寝かした。 「さあ、見ていますから・・・見られたいんですよね？」 　僕がそう言うと先輩は息を飲んだ。必死で壁を越えようとしているんだ。 「先輩・・・僕は鍵なんですよ・・・」 　鍵という言葉に先輩が反応した。腕が静かに動きはじめる。 　左手で持ち上げるようにバストを揉みながら、右手を茂みの奥に・・・ 「はぁんっ！　ひゃぁぁぁっ・・・」 　左手の親指は円を描くように乳首をなぞっている。 　ぴったりと合わさったふとももの付け根にある茂みに差し込まれた右手が微妙に動いていた。 　ときおり腰を浮かせて喘ぐ先輩の姿はエッチだとか淫らという言葉を通り越して高貴なものに見えた。 「僕・・・すごく興奮してます・・・先輩も僕のを見て興奮してたんですね」 「ひゃめ・・・ひわないで・・・ああっ！　ああんっ！」 　腰を浮かせ背中を弓なりにのけぞらせながら先輩はビクンビクンと痙攣した。 　誰が見たって、硬直して震えている身体はオーガズムを迎えてしまったがわかる。でも、見ているのは僕ひとりだし、僕が鍵だから先輩は見せてくれたんだ。 　いよいよ最後の儀式のときがきた。 　まだヒクヒクと痙攣している先輩の身体を僕はじっくり鑑賞した。シーツに拡がった乱れた髪、ピンク色に染まった頬、潤んだ眼、興奮のせいか半ば開いた唇、細い首、その下には形のいいおっぱいと可憐な乳首、くびれた腰、遠慮がちに生えてはいるけど白い肌とのコントラストで存在を主張しているヘアー、スラリと伸びた脚は太くもなく細すぎず肉感的だ、そして細い足首、完璧だった。先輩に足らないものは心の中にあるジグソーパズルのワンピース。これから僕がそのワンピースになる。 　僕はベッドに上がり先輩の足元にひざまずいて足の甲にキスをした。いや、キスというよりかは唇と舌で先輩の肌の感触をたしかめるといった感じだ。 「ひっ！」 　それだけで先輩は感じてしまったらしく声をあげる。 　左右の甲を交互にキスしながらだんだんと位置を上に移動させていく。カモシカを連想してしまうまっすぐな下肢から膝へ。そして、ふとももに舌先が触れたときには、かわいい喘ぎ声を連続してあげるようになっていた。 　僕は膝の裏側に手を添えて、ゆっくりと脚を拡げさせた。 　初めて見る女性器の印象は「肉」だった。愛すべき肉・・・ 　両脇の膨らみを親指で拡げてみると花びらのような小陰唇がポッカリと開いてテラテラと濡れて光るピンクの肉が顔を出す。 「ひゃ・・・ひゃん・・・ひまひ・・・ひゃぁんっ・・・」 　視線を感じたんだろう。先輩はなにか言おうとしてる。でも言葉にはなってない。意味はわかるけどね。 「昨日、先輩が口でしてくれたとき、僕がどんなにうれしかったかわかりますか？　だから、こんどは先輩によろこんでもらう番です」 　僕は舌先を尖らせて蜜壺の入り口であろうピンクの肉の重なるあたりから、小陰唇の合わせ目にあるはずのクリトリスまでを舐め上げた。 「ひゃうぅぅんっ！」 　いままでに聞いたことがない高い声をあげて、先輩の身体が硬直した。 「ひゃ・・・ひゃめぇっ！　おはひふ・・・おはひふはっちゃふぅ！」 　何度も舐めていると、先輩はビクンビクンと痙攣を繰り返しながら、ひとりでしていたときとは明らかに違うトーンの声で喘いだ。まだ完全に自分を解放していなかったのか、それとも舌でする方が感じるのかわからなかったが、これほど感じてもらえるのはうれしい。 　舌先を弾くような硬い突起がクリトリスだろう。その周辺から中心を丹念に転がすように舐めると反応が一段と激しくなった。 「ひゃっ！　ひゃうっ！　ひっひゃうぅぅぅっ！！！」 　硬くなった身体がブルブルと震えている。あっという間に絶頂を迎えてしまったみたいだ。先輩の身体は本当に感じやすい。 　先輩の両手は僕の頭をつかんでいた。それは抵抗するためのものではなく、むしろ舐めている僕を引き寄せているようだった。見上げると茂みの向こうには両腕で挟まれて盛り上がったおっぱいが見えた。次の目標は先端にあるかわいらしい乳首だ。でも、その前にちょっとだけ確かめたいことがある。 　僕は舌をなるべく尖らせて蜜壺に侵入させた。 「はうぅぅっ！！」 　また高い喘ぎ声をあげる先輩。もしかしたら達してしまったのかもしれない。最初にここへ入るのは僕のものだって決めていた。本当は指で感触を楽しみたかったけど、きっと先輩は処女だから途中で痛がらせたりしたらいけないという心遣いだった。それにパズルのピースがぴったりはまれば、これからいくらでも先輩の身体を楽しむことができるし、僕がそのピースだという確信があったから急ぐことは禁物だ。柔らかい舌なら大丈夫だろうと思ってしたことだけど、こんなに激しく反応するなんて・・・ 　あのピンク色をした肉が蠢いて僕の舌を押し戻そうとしているみたいだった。 　ここに僕のものを挿れたらどうなっちゃうんだろう？　そう考えたらドキドキして喉がカラカラになった。この時点で、やっと痛いほど勃起している自分自身に気がついた。 　僕は身体を上にずらせて肘をついて両手でおっぱいをつかんだ。 　さっき先輩が自分でしていたときのみたいに親指と人差し指の間で持ち上げるようにして揉んでみた。 　柔らかいくせに弾力があって、それは男を本能的に狂わせてしまう感触だと思った。事実、僕の欲望は限界寸前まで燃え上がっていた。 　可憐としか表現のしようのない乳首を口にふくんで舌先で転がすように舐めると、先輩は息を飲み込んでイヤイヤをするように首を振った。腰を持ち上げて茂みの部分を僕のお腹に押しつけている。 　先輩が僕を求めている。そう思った。いよいよ儀式のクライマックスが来た。 「先輩・・・」 　僕が呼ぶと先輩と目が合った。 　先輩がかすかにうなずいたように見えた。 　僕はさらに身体をずらして自分のものに手を添えて先端を先輩のあそこへあてがう。 　そして・・・ 　腰を沈めるようにして、ゆっくりと挿入を開始した。 　柔らかくてあたたかい肉に包まれる感触。天国だと思った。 「あうぅぅっ！」 　まだ先端が少ししか入っていないのに先輩は悲鳴にも似た喘ぎ声をあげる。 「いっ・・・いたぁぁぁい・・・」 　すごい抵抗感に抗って亀頭が埋没したとき先輩が叫んだ。 「大丈夫ですか？」 「い、今井君・・・」 　痛みのせいだろう。鼻にかかった発音が直っている。 「あっ！　あふぅっ！」 　さらに深く挿入すると先輩は目を見開いて僕を見つめた。 　痛みを堪えている表情がいじらしい。 　先輩の中はあたたかいだけじゃなくて、僕のものを包み込みながら締めつけてくるような感触があった。僕は我慢ができず、恥骨と恥骨がぶつかるまで奥へと進んだ。 「あうぅぅっ・・・い・・・いまい・・・くん・・・おねがい・・・」 　息を荒くしながら先輩が言う。 「おねがい・・・つよく・・・つよく抱きしめて・・・はなさないで・・・おねがい・・・」 「けっして離しません・・・僕はここにいます・・・」 　僕は先輩を強く抱きしめながら言った。 「ああっ！　あ、熱いの・・・これが・・・ああっ・・・」 　密着した肌から体温とともに先輩の声が伝わってくる。 「痛いなら少し休みましょうか？」 「い、いいの・・・このまま・・・いて・・・おねがい・・・」 「僕は先輩の鍵になれた・・・運命の神様に感謝します・・・」 　先輩の閉ざされた箱を開けるための鍵・・・ジグソーパズルの残されたワンピース、それは同時に僕自身のメタファーだった。 「ああっ・・・や・・・やん・・・へんな・・・へんになっちゃうぅ・・・」 　先輩の声に甘さが戻ってきた。 「先輩の中・・・すごく気持ちいいです・・・ちょっとだけ動かしますよ」 「あぐっ・・・ふぃぃんっ・・・」 「痛いですか？」 「ふぇ・・・ふえぇぇん・・・」 　先輩は首を振って答える。 　大丈夫そうだ。 　ちょっと体勢に無理があったが、僕は背中を曲げて位置を合わせると先輩にキスをした。 「ふぐぅ・・・うぅぅ・・・」 　同時に腰を動かしたものだから先輩は喘ぎにならない声を漏らしながら悶える。それでも必死で舌を絡めて僕の行為に応えてくれるのがうれしい。 　ニチャニチャと肉が絡み合う音が響いている。 　もう限界だった。 　僕は腰の動きを加速させた。 「ふっ！　ふうぅぅんっ！」 　先輩の官能を全身で感じながら僕は奥の奥で精を放った。 　それは、いままで経験したことがない長く激しい放出だった。 　まるで僕の魂があそこから抜け出して先輩の身体の中へ入っていくような気がした。 　全身の力が抜けてしまった。僕は体重を先輩の身体に預けるようにして倒れ込んだ。 「ああっ・・・あつい・・・熱いのがいっぱい・・・」 　放出を先輩は「熱い」と感じたらしい。うわごとのようにその言葉を繰り返して漏らしている。その眼には涙が光っていた。 8 　どれくらい時間が過ぎたんだろう？ 　僕は萎えたものを抜かないで余韻を楽しんでいた。 　それは先輩も同じだったと思う。 　もう、このまま離れたくなかった。できれば時間が止まって欲しい。 　でも、どうしてもひとつだけ伝えておきたいことがあった。 「先輩・・・」 「なぁに？」 「僕・・・中で出しちゃいました・・・でも、どういう結果になっても後悔はしません。それを・・・僕の気持ちをわかって欲しくて・・・」 「うん・・・ありがとう・・・たぶん大丈夫だと思う・・・あれっ」 「どうしたんですか？」 「いま何時？」 「わ・・・わかりません・・・」 「きゃっ・・・たいへん・・・お母さんが帰って来ちゃう・・・」 　ベッドサイドにある時計を見ながら先輩が言った。 「僕帰ります。このままずっといたいけど・・・ひとつだけ言わせてください」 　僕は急いで服を着ながら言った。 「なぁに？」 「先輩にお礼が言いたいんです。僕はやっと自分が誰であるのかわかったんです。ありがとう・・・」 「うん・・・今井君・・・わたしも・・・」 「また明日、学校で会いましょう。じゃ・・・」 　素早くキスをして、僕は先輩の家の玄関を飛び出した。 9 　自分の部屋へ帰るとじわじわと幸福感に満たされてきた。 　僕は男になった。 　ただ単に童貞とおさらばしたから男になったわけじゃない。 　自分の居場所と役割がわかったんだ。 　これまで人と付き合うのが苦手で、なんのために生きているのかわからなかったさえない男子が男に生まれ変わった。僕は先輩のワンピースになった。でも、それだけじゃいけない。先輩にふさわしい男にならなきゃならないんだ。 　どこからともなく力がみなぎってくるのがわかった。 　僕は生まれ変わった。

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2011.4.27掲載

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