１．ひなたぼっこ

　深夜２時までやっている喫茶店に入りました。ここは、３度目。
　コーヒーを注文して、すぐにトイレに行って、パンティを脱ぎました。
　それだけでもう、わたしの心臓は高鳴り始めます。
　スカートは膝丈程度のフレアーです。真冬に素足だということを除けば、ごく普通の格好です。
　席に戻って、スカートを広げ、お尻に敷きこまないように注意しながら、ソファに深く腰を掛けました。
　ここのソファはとても柔らかく、お尻が深く沈みます。
　ヒヤッとした感覚が、直接お尻に伝わります。

　わたしは、運ばれてきたコーヒーをひとくちすすると、少し前屈みになってカップをテーブルに置きます。ここのテーブルは低く、座った膝頭がぶつかるほどで、イスとテーブルの距離も少し離れているので、わざわざ置くという感じです。
　お尻を前にずらし、ゆっくり背もたれにもたれました。太ももの付け根くらいまで露出しているのが、自分でも見えます。前から見れば、きっともっと露出しているはずです。
　テーブルをひとつはさんだ席に若い大学生ふうの男の子がいました。彼は、わたしとは反対の側に座っていましたから、見えているはずです。
　心臓の鼓動がどんどん早くなります。わたしは、バッグから、文庫本を取り出して読むふりをします。
　ときどき、彼の方角にあるお店の時計を見るふりをして、彼の様子をうかがいます。見ています、わたしを・・・いえ、わたしの足というか、その奥を・・・・。

　わたしは、思い出したように、背を起し、コーヒーを飲むと、また、背もたれにもたれます。さっきより、もっとお尻を前に出し、足を少し広げて・・・・。
　刺さるような視線が感じられます。見えてるに違いありません。
（ああ、いじりたい）そう、思いました。むずむずしてたまりませんでした。
　でも、今日は、ここまでです。
　隣に、若いカップルが座ったのです。わたしは、そそくさと立って、お店を出ました。
　あしたは、どこへ行こうかな？

　杉村日向（ひなた）は、半年くらい前から、ブログを始めた。
　メールの付き合いをしている友人に、「ブログ始めたの、見てね」と頼まれて、覗いてみると、けっこういろんな記事を書いている人がいるのに驚かされた。
　中にひとつ、露出をテーマにしたエッセイというか、小説の記事が目に留まった。
（これなら、わたしも書ける）
　そう思ったのがきっかけ。軽い気持ちで始めたのだが、意外にもどんどんアクセス数が伸び、今ではランキングの上位に名を連ねるまでになってしまっている。
　タイトルは、「ひなたぼっこ」。
　実際に体験したこと、あるいは、今、まさに体験していることを記事にしていた。

　記事を書き終えたひなは、つい２時間くらい前の喫茶店での出来事を思い返していた。
（絶対、見えてたはず、彼、じっと見てたもの・・・）
　ひなは、斜め前に座っていた大学生風の男の顔を思い浮かべた。記事を書いている最中にも、その顔が何度も浮かんだ。驚いたような表情、恥かしそうな表情。ひなが、帰ろうと立ち上がると、彼は、すっと目を伏せ、慌てて、テーブルのコーヒーに手を伸ばし、前屈みの姿勢を作った。
（大きくなっちゃってたのかな・・・・ふふ・・・）

　ひなは、記事を書いているときから、下半身に何もつけていなかった。
　というより、家にいるときは、ほとんどいつも裸に近かった。
　ひなは、自分のクリトリスに指を当てた。人差し指と中指ではさみ、強くこする。溢れだしたもので、すぐに指全体が、べとべとになった。
「うう･･うう・・・あああ・・ああ・・・・」
　指を２本中に入れた。
「ああ･･･ああ･･･ああ・・・・・ああ・・あ・あ・・・」
　思い出しながら、何度も何度も深く指を入れ続けた。

　携帯にメールが来た。
　恋人の徹からだ。
“もう、寝る。おやすみ。何か送って・・・”
　徹とは、同じ会社に勤めている。ひなよりも２歳上だが、ひなには、子供のように甘えてくる。
　徹は、ひなの裸を見たがった。ひなは、そんな徹に見せるのも好きだ。ひなのアパートに徹が来るときは、ひなは、徹が来る前から裸で待っているほどだった。
　しかし、ひなは、ブログを持っていることは徹には知らせていない。というより、今日のように、外で露出していることも知らせてはいない。どうしても知られたくないというわけではなかったが、わざわざ自分から言うことでもない。徹は、ひなの裸を見たがるわりには、外で露出させようとは思わないようで、ひなは自分の露出願望を知らせるチャンスもなく、今となっては、なかなか言い出せないでいた。

（しょうがないわね）
　ひなは、人差し指と中指で襞を広げ、そこをアップで写して、徹に送った。
“おやすみなさい”
　ひなも、ベッドに入ったが、すぐには眠れそうにないことは分かっていた。
「ふーっ」
　小さく溜息をつくと、もう一度、指を股間に這わせた。