４．転属希望

「来た・・・」
　扉が閉まって、電車が動き出すと、すぐに男の手が伸びてきた。ひなたは、指定どおりの電車に乗っていた。朝早く、携帯に画像が送られてきた。それは、アイマスクをして口から白濁した液体をよだれのようにたらしているひなたの顔のアップだった。ブログの記事は、昨夜全て削除して、登録も抹消したが、名前も住所も勤務先も携帯の番号も知られている。なんとかしなければ、とは思ったが、とりあえずは従うしかなかった。
　大胆にも、男は、ひなたの背後に密着すると、スカートを持ち上げた。
（えっ？・・・・そんなぁ・・・）
　今日も、股間の大きくあいたストッキングだ。ひなたは、お尻に直接男の手を感じ、思わず、左右を見回した。
（気づかれたら・・・・？）
　しかし、その心配は要らなかった。左右に立っている大きな男が少しひなたのほうに身体を向けた。ひなたは、囲まれていることに気づいた。左の男が早々と手を伸ばして、ジャケットの前をはだけ、乳房をわしづかみにする。
　ひなたは、男の顔を見た。知らない顔だ。いったい、何人いるのか？見知らぬ男達に触られている不快さよりも、重くのしかかってくる不安のほうが耐えがたかった。

「何？話って？」
　お昼の休憩に、ひなたは、徹をお茶に誘った。
「ごめん、あのね、急で悪いんだけど、今日、徹のとこに行っていい？」
「今日？・・・どうしたの？急に」
「うん・・・なんか、ストーカーみたいなのにつけられてて・・・」
　ひなたは、真実を言うべきかどうか迷ったが、ことの発端は、自分の露出癖だし、大勢にレイプされたとも言いにくかった。
「ストーカー？なんかされたの？」
「ううん・・・でも、わたしのアパートも会社も携帯の番号も知ってて・・・」
「ふーん、で、電話がかかってくるの？覗いてるとか？」
「かかってくる。覗かれてたかもしれない」
「相手を見たの？」
「ううん」
「・・・・こないだのピザ屋かも・・・。携帯で注文しただろ」
（確かに・・・ピザ屋だったわ・・・でも、他にもいるのよ仲間が・・・）
「そうかも・・・・で、今日、いい？」
「ああ、いいよ。でも、俺は、今日は、所長に誘われてるから帰るのは遅くなるよ。帰りに鍵渡すから、一人で先に行ってて・・・いい？」
「ありがとう・・・それと・・・」
「何？」
「あのさぁ、今度、新しく営業所ができるって言ってたでしょ」
「ああ」
「わたし、そこに移りたいんだけど・・・所長に話してもらえないかな？」
「いいけど・・・・遠いよ」
「わかってる。決まったら営業所の近くに引っ越すわ。引っ越したいの、すぐに・・・」
「相当、参ってるんだねぇ。携帯も変える？」
「えっ・・・うん、それもそのうち・・・それよりもアパートを出たいの」
「そうか？・・・・じゃぁ俺もそっちに移ろうかな」
「徹も？」
「ああ、実は、行ってくれないかって言われてるんだ」
「初耳だわ、それ・・・」
「ごめん、遠くなるから、断ろうと思ってたんだけど、ひなたがそっちに引っ越すんなら、いっしょに住めばいいわけだし・・・それもいいかなって・・・」
「それ・・・いいかも・・・」
（ｋｎｏｗｎから逃れられるかもしれない。徹といっしょに暮らし始めれば・・・・だいじょうだわ、きっと・・・）
　ひなたは、目の前が急に明るくなったような気がした。
「今日、所長と、きっとその話しになるから、ひなたのことも言っとくよ。それでいい？」
「うん。ありがとう」

　問題は、いっきに解決するかもしれない。午後いっぱい、ひなたは、ひさびさにいい気分だった。
「杉村君」
　所長に呼ばれた。
「なんでしょう？」
「このあいだの立石さん、また、物件探してるらしいんで、行ってくれないかな。ご指名だ」
（立石って？・・・ああ、最悪！）
「はぁ、でも、わたし、場所知りません」
「ああ、それはいい。私が送っていくから・・・」
　所長も一緒なら・・・。ひなたは少し安心して、所長の指示通りの資料を用意していると、徹が寄ってきた。
「これ、鍵」
　ひなたは、鍵をすばやく受け取った。
「準備できた？」
「ええ」
「じゃぁ、行こう。車は前に回してあるから」
「えっ？・・・徹も行くの？」
「ああ」
「所長と徹が行くのに、私も要るの？」
「何言ってんの？俺と所長は、ひなたを送って、それから本社に行くんだよ」
「えっ、じゃぁ、わたしだけなの？」
「そうだよ。急いで・・・所長が待ってる」
（そんなぁ・・・・）
　騙されたわけではないが・・・・ひなたは、せっかくの気分が完全に壊れていくのを感じていた。

５．ラブホ仕様

「失礼します」
　雑居ビルの２F、ひなたは、“Ｃａｔ　Ｈｏｕｓｅ”と扉に描かれた事務所の扉を開けた。狭く細長い事務所に立石が一人でいた。
「ああ、いらっしゃい。こっちに来て、見せて」
（見せてって・・・・）
　ひなたは、入り口で突っ立ったまま、固まっていた。
「マンションの資料・・・持ってきたんだろ？」
（資料？・・・・そう、そうだった、ばか、何考えてんの私）
「は・・・はい。こちらに・・・」
　ひなたは、慌てて資料を立石のところにもって行った。
「まぁ、座って・・・・」
　立石は、冷蔵庫から缶コーヒーを出してひなたの前に置いた。
　ひなたは、ソファに座った立石の前に座った。会社でサスペンダータイプのストッキングの上からショーツは穿いていた。今日は普通の格好なのだが、スカートが短いのはどうしようもない。ソファは柔らかく低かった。腰を落とすと、思った以上にお尻が沈み、ひなたは、バランスがとれず後ろに倒れた。不意のことに、テーブルに身を乗り出して資料を見ている立石の視線の先でひなたは大きく足を広げてしまった。
（いけない。わざと見せたと思われる）
　ひなたは、あわてて姿勢を戻し、膝を閉じ、後ろに倒れないようにソファの前の方にちょこっと座りなおしたが、遅かった。
「今日は、ノーパンじゃないんだね」
　ごく普通の口調で立石はひなたに言った。
「ええ、まぁ・・・」
　ひなたは、どう答えていいのかわからず、曖昧な返事をした。
　立石は、真剣に資料を見ている。
「あのぉ、訊いていいですか？」
　ひなたは、おそるおそる立石に話しかけた。
「何？」
「ワンルームマンションをたくさん購入されてるようですが・・・・貸してらっしゃるんですか？」
「うちが買ってるわけじゃない・・・何も聞いてないの？所長に・・・」
「はぁ、すいません」
「いや、謝ることはない。内緒にしてくれるように頼んだのはこっちだからね」
「秘密ですか？」
「そういうわけでもないが・・・。うちには、マンションを借りたいっていう客と賃貸用のマンションを持ちたいっていう両方の客がいるんだよ。ただ、ちょっと特殊な部屋じゃないと具合が悪くてね。そういう改装をしていいマンションを探してくれるようにおたくに頼んでるんだ。だから、買うのはうちじゃない。別の人だ。うちは、そのオーナーから借りて、別の客に貸す。それが仕事だ」
「特殊な改装？」
「そうだ。見たいか？」
「見せていただけるんですか？」
　ひなたは、別に見たいわけではなかったが、自分から訊いた手前、話の流れで、見たくないとは言えなくなってしまった。ふと、ひなたは、いつのまにか立石の視線が、自分の太股あたりに注がれているのに気づいた。
「立って」
　立石がひなたに言った。
「立つんですか？」
　立てば、立石のちょうど目の前に太股を晒すことになる。ひなたは、ためらった。
「ああ、近くに改装が終わったばかりの部屋があるから見に行こう。ついでに駅まで送るよ」
　立石が先に立ち上がった。
（ああ、そういうこと・・・・また、わたしったら・・・・）
　ひなたは、立石の後ろについて事務所を出た。

「ここだよ」
　そこは、立石の事務所から車で１０分くらいのところ、駅が見えた。
　４階建てのマンション、エレベーターはない。３階の階段脇の部屋に案内されたひなたは、驚いた。
「これって・・・・・」
　そう言ったきり、玄関で立ち尽くした。
「驚いた？」
「え・・・・ええ」
　玄関脇にバス・トイレ、ワンルームマンションにはよくあることだが・・・・広い。ユニットバスではない。しかも扉一面、透明なガラスで、どう見てもラブホだ。トイレはバスルームの中で透明なガラスかアクリル板で仕切られていた。当然、外から見える。
「中に入って」
「は・・・はい」
　立石に背中を押されるようにひなたは中に入った。
　バスルーム脇の廊下に洗面台、これもラブホ仕様。そこを抜けると、カウンター式の簡単な流し台、ソファが置いてあって、部屋の中央に大きなベッド。完全にラブホテルだった。
「ラブホみたいだろ」
「みたいって言うか・・・・そのものです」
「このあたりだと、だいたいこのくらいの広さのマンションが月８万くらいで借りられる。でも、ここは１８万だ」
「１８万・・・そんなに？借りる人いるんですか？」
「ああ、いなけりゃ商売にならないだろ」
　ひなたは、ときどき使うラブホの料金を思い浮かべていた。
（１回１万だとしても月に１８回もラブホを使う人はそうはいないわ。借りるよりラブホに行ったほうが安いと思うけど・・・）
　ひなたが、そんなことを考えていると、立石の手が、ひなたをの肩にのびてきた。
「いやっ」
　反射的に肩をふるひなたをくるっと自分の方に向かせ、立石はひなたを抱きしめた。

６．何とかしてくれ

「やめてください」
　と言って、やめるような相手ではないことはわかっている。
　が、立石は両手を離した。これには、ひなたのほうが驚いた。
「このあいだは、君に挑発されて、あんなことになっちゃったけどね。無理やりするのは趣味じゃないんだ」
　突然、立石が語りだした。ひなたは、立石のほうに向いて少し距離をとった。
（挑発だなんて・・・・でも、挑発したと思われてもしょうがないか・・・）
　ひなたは、立石に誤解されていると思ったが、説明するわけにも行かない。
「お尻を見せてくれないか・・・・気に入っちゃってね。夢にまで出てきたよ」
　立石は、そう言いながら、ソファに深々と腰を掛けた。
（どうしよう・・・見せたいわけじゃないんだけど・・・きっと、露出趣味だと思われてる・・・・）
「見るだけ・・・・ですよ」
　ひなたは、念を押した。
「ああ・・・そのつもりだ」
（しょうがない・・・この前は、ノーパンだったんだもの。今さら、いやだとは言えないわ）
　ひなたは、立石に背を向けると、スカートの裾を持ち上げてお尻を晒した。
「やっぱりそういう趣味なんだねぇ」
　先日と違って、ノーパンではないが、Ｔバックにほんの少しフリルがついているだけのショーツだ。露出趣味だと思われてもしょうがない。というより、実際、露出趣味だ。
「お尻を突き出してくれ」
　どうやら、本当に見るだけのように思えて、ひなたは、言われたとおりお尻を突き出して見せた。
「いいねぇ・・・パンティーとって」
「えっ・・・脱ぐんですか？」
「うん。それもいいんだけど、やっぱり生のお尻が見たいね」
（勝手なことを・・・・）
　ひなたは、少し、腹が立ったが、大事なお得意様だし、この前のことを所長にでも言われたら、会社も徹も失ってしまう、がまんして、立石に背中を向けたまま、パンティーとストッキングをいっしょに脱いだ。
「きれいなお尻だね・・・・見せたくなるのもわかるよ。・・・お尻を突き出して」
（ああ・・・なんでこんなことしてるんだろ・・・・）
　ひなたは、無理やり、犯される恐怖の中でしばらく、忘れていた、見られたい、恥かしい思いをしたいという日ごろの願望が頭をもたげてきた。
「足を開いて」
　そんなひなたの気持ちを察したのか、立石は、つぎつぎと羞恥をあおるように命令してきた。
「お尻の穴を、指でふさいで」
　ひなたは、言われたとおり、足のあいだから手を伸ばし、お尻の穴を指でふさいだ。
「その指をおま○こに入れて」
　ひなたは、２本の指を少し中に入れた。
「見ててあげるから・・・・オナニーしていいよ」
（ああ、ばれてる・・・・弄りたいのが、ばれてる・・・・）
　ひなたは、おもいっきり弄りたかった。見ず知らずの人に見られながらオナニーをするという妄想をいつも持っていた。それが、今、できる。ひなたは、指を深く入れ、内壁を掻くようにその指を上下させる。
（もっと・・・・・もっと・・・したい・・・）
　ひなたは、ベッドに顎を乗せ、右手の指を中に入れ、左手でクリを弄り始めた。
「ああ・・・ああ・・ああああ・・・」
　声も出した。ひなたは、見ず知らずの人に見られながら、オナニーをして声を上げる自分の姿を想像してさらに、たかまっていくのを感じた。
「うう・・・・・」
　ひなたは、立っていられず、膝をついてしまった。

　立石が、近寄って来て、ベッドに腰を掛けた。
「俺のほうも何とかしてくれないか」
　ひなたが、顔を上げるとベッドに腰を下ろした立石の股間が大きく膨らんでいる。
　立石は、ひなたの手を取って自分の股間に導いた。
　ひなたは、立ち上がり、立石の足のあいだにひざまずくと、ファスナーを下ろし、立石のものを出した。
（手で・・・するの？・・・本当に見てるだけだった・・・彼らの仲間じゃないんだ）
　ひなたは、あらためて、立石の顔を見た。怖そうな顔だが・・・どこか優しさを感じる顔でもある。
　ひなたは、ファスナーを大きく広げ、立石のものを根元の袋まで外に出して、顔の前で上下にしごいた。手でいかせたことはない。どうしたらいいのかわからなかったが、とにかく上下に動かしたが、立石の表情は芳しくない。
（だめだ・・・ぜんぜんよくないみたい・・・・）
　ひなたは、もっと立石に近づいて、立石の肉棒の先に口をかぶせた。
　上目遣いに立石を見ると、立石がにこっと笑った。
（よかった・・・・）
　ひなたは、肉棒の内側に舌を這わせ、根元からずっと上に舐め上げた。手でしごき、舌を這わせ、口に含んだ。何度か繰り返すうちに、立石が、少し前屈みになって来た。それにつれて上を向いていた肉棒がだんだん横向きに変わってきた。
　ひなたは、まっすぐ自分のほうを向いている立石の肉棒をぐっと喉の奥まで飲み込んだ。
「うっ」
　立石は、小さくうめくとひなたの喉の奥に放出した。
　ひなたは、口をゆっくり引き、最期に先だけを含んで舌で舐めまわした。
　立石が、腰を引いて、ひなたの口から肉棒を抜くと、ひなたは、ごくっと音を立ててそれを飲んだ。
「フェラは上手だ。手は・・・・だめだけど・・・・」
「手なんて、やったことないですから・・・・」
「まぁ、普通はそうだわな」
　立石が笑うのにつられてひなたも笑った。
「これからも来てもらっていいかな」
「はぁ？」
「もちろん、仕事でだ」
「はい、それなら・・・・仕事ですから・・・」
「面白い子だ。駅まで送るよ」
「ありがとうございます。お願いします」
　けっこう、いいおじさんなのかもしれないとひなたは思った。