１． 捕捉

　今のところは、ｋnownからは、連絡はない。でも、ブログを抹消したことで何か言ってくるはずだ。ひなたは不安なまま、徹のアパートに向っていた。立石のところで時間をくったので徹のアパートに着くのは、８時を過ぎそうだが、徹は、１０時を過ぎるといっていたので、ひなたは食事をすませようと駅前の通りを歩いた。

　携帯がなった。メール・・・・ｋｎｏｗｎからだ。
“随分、挑戦的ですね”
（なんのことだろう・・・・）
　ひなたは、knownが何を挑戦的ととったのか知りたかった。少し、ためらったが、返信した。
“何のこと？”
“今、ノーパンじゃないよね”
（今？・・・ここでわたしを見てるの）
　ひなたは、周りを見回したが、携帯を持っている人は見当たらなかった。
“ストッキングもパンティーも脱ぎましょ・・・その先にコンビニがある”
　ひなたは、その場に立ち尽くした。
（なんで・・・ここにいるの・・・どうして・・・立石さんのところから直行したのに・・・）
“ここに画像を送りましょうか？”
　アドレスがいくつか送られてきた。会社のＨＰ、所長の携帯・徹の携帯、営業の管理職には仕事用の携帯が渡されている。そのアドレスだった。
（なんで、こんなことまで知ってるの？・・・うちの社員？）
　ひなたは、ふと野々村美沙の顔が浮かんだ。別に美沙と仲が悪いわけではないが、前々から、美沙も徹に気があるんじゃないかとひなたは疑っていた。相手は一人ではない。美沙もグルということは考えられる。徹から部屋の鍵を受け取ったときに確かに近くに美沙はいた。
（まさか、美沙？）
　また、メールが来た。
“どうなっても知りませんよ”
　躊躇している場合ではなかった。ひなたは、慌ててコンビニに入り、トイレに向った。

　コンビニから出てくると、すぐに携帯が鳴った。今度は、電話が入った。
　ひなたが電話を取って、立ち止まると、声は後ろからした。
「振り返らないで下さい」
（後ろにいる・・・・・）
　くぐもった声だった。口に何かをあてて話してるんだろう。誰の声かはわからなかった。
「ふりかえらないで・・・そのまままっすぐ歩いてください」
　男は、ひなたの斜め後ろを歩いた。
「スカートを持ち上げて」
（そんなぁ・・・こんなところで・・・・）
「後ろにはわたしがいます。だれにもわかりませんよ」
　ひなたは、歩きながら、スカートをさっとまくった。
　真っ白なお尻がちらっと一瞬、覗いた。
「ちゃんと脱いだようですね」
　男の声は横から聞こえる。ついて来る足音はひとつではなかった。
（何人かいるんだわ・・・・ああ、また・・・・）
　ひなたは、昨日のことを思い浮かべた。これから恋人のところに行くというのに・・・・目の前は公園だ。
「そこを左へ・・・」
　左へ行くと公園の中だ。通りに並行する狭い公園で、夜はほとんどだれも入らない。通りからも中は見える。左に曲がると、複数の足音がついて来た。
（ああ、やっぱり・・・・３人かな？）
　ひなたは最悪の事態を想定しながら歩いた。

　バス停のある位置に公園の中に屋根のあるベンチがあった。バス待ちの客がときどきここに座る。今も、男性がひとり座っている。
「あそこの男の前に立って、おま○こをいじってくださいってお願いしてください」
「そんなぁ・・・できません」
　ひなたは、立ち止まった。
「できませんか？」
　男は、ひなたが振り返らないように、ひなたの後ろにぴったり寄り添って肩に手を置いた。
「実は、昨日、わたしもあなたの部屋にいたんですよ」
（やっぱり・・・いたんだ）
「昨日みたいにここでしますか？・・・お気づきでしょうけど一人じゃないですよ」
　別の手が左から伸びてひなたの頭を固定すると、肩に置かれていたｋｎｏｗｎの手が下にさがり、ひなたの両腕を押さえた。ひなたは、身動きできなくなった。右から伸びる手は、ひなたのスカートを大きく捲り上げた。ひなたの下半身が大きく晒された。狭い公園には外灯はなかったが、通りの街頭の明かりでそこそこ明るかった。通りを歩いている人から見えているに違いないが、そちらを見られないひなたは、身体を回して逃れようとしたが、びくとも動かなかった。
「どうです・・・裸にしちゃいましょうか？ここで・・・」
「やめてください。・・・行きます。しますから・・・」
　ひなたは、力なく小声で答えた。
「ここで見てます。振り返らないように・・・それから、逃げたら、もっと、ひどいことになりますよ」
　ひなたは、ベンチに向って歩き出した。
　足音は追ってこなかった。

２．今度会ったとき

　携帯は通話状態だ。ベンチに向って背中を押される前に、無理やり、イヤフォンを押し込まれた。
“まっすぐ・・・そう、男の前まで行って下さい”
（ああ、なんで・・・こんなことに・・・・・）
　ひなたは、今日も待ち伏せされたことのショックから、ほとんど思考が出来ない状態になっていた。
　男まで５〜６ｍに近づいた。
　男は、うつむいて何度か大きなため息をついていた。酔っているようだ。
“スカートを脱いでください”
　ひなたは、耳を疑った。
（脱ぐ？・・・・ここで？ノーパンなのに？そんなぁ、通りからだって見えるのよ・・・・・）
　ひなたは、立ち止まったまま、立ち尽くした。どうしたらいいいのか考えられない。心臓が激しく鼓動し始めた。
“聞こえなかったんですね。もう一度言います。スカートを脱いでください”
　ひなたは、周りを見回した。もう、男達の姿は見えない。どこかで隠れて覗いているんだろう。通りは、人通りは少ない。
（だいじょうぶよ。お尻を出してジョギングしたこともあるし・・・おしっこしてるところを酔っ払いにのぞかれたこともある）
　自分の経験を思い浮かべた瞬間、ひなたは、ぞくっとするものを感じた。酔っ払いに覗かれたわけではない。酔っ払いに見えるように、わざわざ植え込みに入っておしっこをしたのだ。
（そうか・・・・なんだ、そういうことか・・・・）
　ひなたは、今の状況が、日ごろ夜中に露出をしていたときと何ら変らないことに気がついた。
（ようし・・・・）
　ひなたはのスカートのウエストに手をやって、ホックを外した。どうということはない。ひなたは、すばやくスカートを下ろし、足を抜いて、それを手に持った。お尻に直接あたる風の冷たさが、お尻がむき出しであることをひなたに伝える。
“よし、じゃぁ、彼の前に行ってください”
　言われるまでもなく、ひなたは、もうそのつもりだったが、意志とはうらはらに足が思うように運べない。　一歩目で、すぐにバランスを崩し、靴がずずっと大きな音を立てた。その音に男が気づいて、日向を見た。
（気づかれた・・・・）
　ひなたは、動けなくなってじっと男を見た。通りからも覗き込めば見えないわけではない、ここで、襲われることはないだろうと思ってはいたが、不安なことに変りはない。しかし、男は、驚いたふうでもなく、ひなたの下半身に目をやりながら、何も言わない。ひなたは少し落ち着いた。
“さぁ、近づいて、おま○こを弄ってくださいって言ってください”
　男達も、ベンチの男の反応をうかがっていたのかもしれない。
　ひなたは、恐る恐る男に近づいた。
「お姉ちゃん、誰かと遊んでるの？彼氏？近くにいるの？」
　男が、ごく普通の口調で、ひなたに話しかけてきた。ひなたは、びっくりして曖昧な返事をした。
「ええ・・・はい・・・まぁ・・・」
　どうやら、危害を加えそうな人ではないようなのでひなたは、ほっとして、通りから見えないように木の陰に隠れるようにベンチの男に近づいた。
“おま○こを見てくださいってお願いして”
「あのぉ・・・お願いがあるんですけど・・・」
　ひなたは、かすれた声で男に話しかけた。
「何？」
　自分の声が、聞こえにくいだろうと思ってひなたは、男に顔を近づけてたのんだ。
「お・・ま○こ・・・を見てくださいませんか？」
「えっ？」
　男は、ひなたの耳にイヤフォンが入っているのを見て、納得したようだった。
「そういうことか。どこかから指示されてるのね」
「えっ・・・いえっ・・・はっ・・はい」
　ひなたは、認めた。そのほうがいいだろうと思った。
「わかったよ」
　男は、ベンチに横向きに寝ると、ひなたに注文した。
「足を広げて」
「はい」
　ひなたは、男の顔の前で、足を広げ、男によく見えるように腰を落とした。
「あのね、後ろを向いてくれないか。おじさん、お尻のほうが好きなんだ」
「はい」
　ひなたは、男に背を向けて同じように足を開いて腰を落とし、男の顔の前にお尻を突き出した。男に見せているのだが、通りに向かってむき出しのお尻を突き出している格好だった。
“指を入れてってお願いして”
（ああ・・・言うの？・・・・・でも・・・・・）
　外で見ず知らずの男にお尻を突き出して、指を入れてとお願いする。こんな女は普通はいない。しかし、腰をかがめているので、膝に置いた自分の手で弄りたい衝動はひなたにはあった。指示がなければ、自分で弄るところをこの男に見てもらいたかったくらいだ。
「おじさん・・・・指を入れてください」
「そう、言われたの？」
「ええ・・・・でも・・・入れて欲しいんです」
「そう・・・・」
　男は、座りなおして、通りからひなたのお尻が見えないようにすると、指をひなたの股間に這わした。
　ぐちゅっ
　男は、わざと大きな音をたてた。
「お姉ちゃん。ぐちょぐちょだよ。見られるのが好きなんだねぇ・・・よくこんなことしてるの？」
「え・・・ええ・・・ときどき・・・」
「ふーん、公園をお尻出して散歩するぐらいだから、他にもいろいろしてるんだろう」
「ええ・・・まぁ」
「いつもノーパンだとか？」
　話しかけながらも、男の指は、ひなたのクリを挟み、ときどき深々と中に侵入してくる。
「はい」
「ノーパン通勤？」
「はい」
「痴漢にあうだろう。触られたいとか・・・」
「あ･･会います・・・・でも、触られるのは・・・・あああ」
　男の指が激しく動き出した。
「公園とか、外でエッチするんだろ」
「いえ･･･は・・・いい・・ああああ・・・・」
　ひなたはもう返事が出来なかった。
　ひなたが、がくっと地面に膝をつくと、男は、ひなたの脇に手をいれ、ひなたを起こし、ベンチに座らせようとした。ひなたは、手に持っていたスカートをベンチに敷いてそこに座った。
「ありがとう」
　ひなたは、起してくれたことか、いかせてくれたことか、どっちの礼だかわからない礼を言った。息が整うと、ひなたは男に
「おじさん・・・・してあげようか？」
　と手を男の股間に置いた。ついさっき、同じようなことを立石としたばかりだった。
「ありがたいけど・・・酔ってるからね・・・いいよ。また、今度会った時にお願いするよ」
「今度って・・・・」
「いいんだよ」
「そう・・・じゃぁ・・・」
　ひなたは、ベンチを立って、とりあえず、１０ｍくらい先にある緊急避難場所の看板の陰へと急ぎ足で駆け込んだ。
　携帯がなった。徹からのメールだった。
“もうすぐ帰るよ”
（どうしよう・・・・急がないと・・・・）