同じマンションの人妻を媚薬で……中年男の情欲
「佐伯ヤドロクの官能小説ブログ」佐伯ヤドロク 作


　やや蒸し暑い初夏の夕方。午後六時も過ぎたと言うのに、なお陽は高く、蒸し暑い。西原五郎（にしはらごろう）は左手に持ったノートをうちわ代わりにして扇ぎながら、しかし視線は目の前を歩く女性たちに釘付けであった。
　今日はひどく暑かった。そのためか、町を行く女性たちもみな薄着で、五郎の目をおおいに楽しませた。──たった今、五郎の前を通った女子高生もそうだ。顔つきはまだ幼いくせに、大きく発達した乳房が、上向きにその存在を主張している。
　白のセーラー服は清純そのもので、しかしその背中は汗で濡れ、赤いブラジャーの線がくっきりと見えている。五郎は去りゆく女子高生を見送りながら、しっかりとその光景を脳内に録画していた。
　──さて、どうしたものか。
　五郎は朝から悩んでいる。
　と言っても、仕事や家庭の悩みではない。三十六歳、ヒラのサラリーマンでは大した仕事も回ってこないし、出世はとうの昔に諦めている。家族にしたって、両親は既に他界し、結婚もしていない。天涯孤独の身分である。
　五郎の悩みはポケットの中にあるカプセルをいかに使うか、ということであった。
（媚薬か）
　カプセルの中身は即効性の媚薬であった。女性が飲めば五分と経たずに発情し、本能が男を、精子を求めるというものだ。五郎は学生時代の友人で、現在は研究職に就いている男からこれを貰った。
　――試作品のひとつをくれてやるよ。こいつはカプセルタイプだが、おれは他にもいろんなタイプを開発している。いずれこれで大金持ちになり、世界中の美女をハメまくってやるぜ。
　などと、その男は言っていた。
（世界中の美女を、ねえ）
　媚薬とやらが本当に効くのか、五郎は当然疑ったが、開発者の友人──頭ははげていて体はヤセッポチで、とうてい女性と縁がなさそうなその男が、何人もの美女や美少女をハメ撮りにしている写真を見て、さすがに信じる気になったのである。
　それにしても羨ましい写真だった。ＯＬや女子大生と思われる二十代の麗しき美女から、ブレザーやセーラー服姿がまぶしい高校生の女の子まで。幾多の女性が、あのはげ男に嬉しそうに抱かれているあの姿。五郎は嫉妬せざるを得ない。
　特に友人が自慢していたのは、駅のトイレらしき場所でハメられていた女子高生だ。あどけないロリ顔に不釣り合いな巨乳をした、むしゃぶりつきたくなるような美少女だった。「まだ処女だった」とはげ友人は自慢してたが、自分も一度でいいからあんな女とヤリたいものだ。
（おれも大概ブサイクだがな）
　と、五郎は苦笑し、太った腹をさすった。
　それにしても、どう媚薬を使ったものか。
　まず女性に飲ませるのが大変だ。それも、たった一つしかない媚薬だ。出来る限り美女がいい。それを考え、五郎はずっと、町を歩く女性たちを視姦している。
（さっきの女子高生も良かったが）
　思い出すだけでムスコが勃起してくる美少女を思い出しながら、しかし五郎は、仮に先ほどの少女と会っても、どうやって媚薬を飲ませるかが問題だと、腕組みをして悩んでいた。
「あの、西原さん？」
「わっ」
　突然、声をかけられて驚いたが、冷静になるとそれは見知った顔だった。
　北川可奈子、五郎と同じマンションに住む専業主婦である。
「やっぱり西原さんでしたか。どうされたんですか、こんな場所で」
　誰にでも愛想が良く、笑顔がさわやかな可奈子はマンションでも評判が良い。二十八歳の女盛りで、細身の体だが、そんな体の上に無理やり載せたような巨乳が眩しい。
　白のブラウスに黒髪のロングが実に似合っている。そのブラウスは汗で透け、下に着けているブラがピンクであることに五郎は一瞬で気が付いた。
「いやあ、ちょっと仕事で疲れて夕涼みを。北川さんはお買い物ですか」
「ええ。今夜は旦那が遅くなるもので、手抜きしてスーパーのお弁当なんです」
　眉を八の字に曲げた可奈子を見て、五郎はひそかに決意した。――媚薬はこの女に使おう。

　数分後、五郎は自室に戻っていた。
　――タイミングが大切だ。
　既にパンパンに膨れ上がった、おのれの逸物を自制させつつ、五郎は中学生のようにときめく胸を抑えられない。あの可奈子をこれから犯すかもしれないと思うと、いてもたってもいられなくなる。
（ことは冷静に、だ）
　怪しまれてはいけない、と思いつつ、五郎はポットにコーヒーを入れた。可奈子がコーヒーを好きだといううわさを、以前耳にしたことがあったからだ。
　五郎と可奈子の部屋は同じマンションの三階にある。歩いて一分もかからない。五郎は深呼吸して可奈子の部屋のチャイムを押した。
「はい」
　可奈子の声だ。
「どうも、西原です」
「あら」
　その声を聞くと、可奈子は警戒もせずにドアを開けた。
「いやあ、どうも奥さん。コーヒーをちょっと淹れすぎましてね。余っちゃったんですよ。確かコーヒーがお好きだと聞いていたので、持ってきてしまいました」
「どうもすみません、ご丁寧に」
「いえいえ」
　そんなやり取りを交わすと、五郎は厚かましくも、無断で部屋の中に入っていった。可奈子は少し迷った様子だったが、今後の近所付き合いのことを考えてか、なにも言わなかった。
　台所の机の上には、いま食べ終わったのか、スーパーのお弁当のカラがある。もちろん五郎はそのあたりまで考えてやってきた。食後の一杯が欲しくなるころを見計らったのだ。
　可奈子はコーヒーカップをふたつ置いた。五郎はカップにコーヒーを注いだ。手抜きではない、本当に豆を挽いて淹れたコーヒーである。味は本物だ。
「すみません、すぐに片付けますから」
　可奈子はそう言って、机上のゴミを片付けはじめた。そのスキを見て、五郎は可奈子のカップに媚薬を入れた。
　素早くかきまぜて、コーヒーの中に溶かす。
（やった！）
　ここまで行けば目的は達成されたも同然だ。五郎は心の中で鬨の声を上げた。
　可奈子はまだゴミを片付けている。その後ろ姿がたまらない。ブラウスから透けて見えるブラの線、魅惑的なヒップライン、真っ白でシミひとつないむっちりとしたナマ太もも。
　五郎は一刻も早く、その体にむしゃぶりつきたい。既にムスコは臨戦態勢である。
「北川さん、ゴミの片付けなんてあとでいいですから。コーヒーが冷めてしまいますよ」
　可奈子は振り返ってニッコリ笑うと、うなずいて、やっと椅子に座ってくれた。
　五郎と可奈子、テーブルを挟んでちょうど向かい合った形である。
「それじゃ、いただきます」
　可奈子は左手でコーヒーカップを持ち上げた。その薬指には、人妻の証たる結婚指輪がはめられている。
　一口、二口──
　可奈子の白いノドが動く。
　なにも飲まなくては怪しまれるので、五郎もコーヒーを少し飲んだ。だが、味などわからない。すでに五郎の意識は可奈子の肉体にある。
「美味しい」
　可奈子の笑顔はいつもより少しあどけなく見えた。
　あとは五分待つばかり。五郎はとりとめのない雑談をした。可奈子もヒマだったのか、それに乗ってくる。
　雑談は続いた。
「──ですから近頃、いつも旦那は遅いんです。仕事だから仕方ないんですけどね」
　可奈子はさみしそうに笑った。
（ということは、欲求不満か？）
　アダルトビデオのように出来過ぎた展開だが、しかしいくら欲求不満とは言え、まともな人妻ならば他の男に体は許すまい。
　媚薬の力でもあれば話は別だが──
　──
　やがて変化は訪れた。
　何気ない雑談が続くが、可奈子の返事がやけに遅い。何か、そわそわしているように見える。目が次第にうつろになり、顔は明らかに紅潮していた。
（これは……かかったのか？）
　五郎はあくまで慎重だった。へたに襲いかかってレイプ犯になるのはゴメンだ。
「奥さん、どうしました」
「あ、いえ……」
　可奈子は愛想笑いを浮かべ、なんでもありません、と答える。しかし口ではそう言っていても、目が明らかに普通ではない。
「なんでもないってこと、ないでしょう」
　五郎はゆっくりと可奈子に近づいた。可奈子は視線を彷徨わせ、両脚に力を入れているように見える。
「どうやらお疲れのようですね、奥さん。肩でも揉んであげましょうか」
　そう言った五郎は、可奈子の返事も聞かずに、彼女の肩を揉み始めた。
「あ……」
　ため息と共に漏れたその声は、ひどく官能的だ。五郎は可奈子に気付かれないように腰をかがめ、彼女の黒髪に鼻を近づける。
　良い匂いがした。高級なシャンプーやリンスを使っているのだろう。そして、その髪の間から見える白いうなじ。五郎は思わず口元をゆがめた。
「う……ン……ふっ……」
　可奈子の声は、明らかに愛撫されているそれへと変貌していた。それもそのはず、五郎は彼女の肩を揉みながら、しかし少しずつ少しずつ、手を前に出し、指を乳房にかけていたのである。
　もはや媚薬の効果はまぎれもない。五郎はついに最後の砦──彼女の乳首に、両の人差し指をかけた。
「あっ！」
　可奈子の声が一瞬、裏返る。快感が走ったのか、それとも我に返ったのか。おそらく両方だろうが、もう後には引けない。
「奥さん、旦那さんがいなくてよっぽど淋しかったんですね」
「あ……やめて、やめてっ。そんな、違います……！」
「なにが違うんですか、こんなに乳首を立たせておいて。こんなに喘いでおいて」
　五郎は言葉で攻めつつも、指での愛撫をやめなかった。乳首を指でつまみ、こね回し、さらに背後から可奈子の耳にしゃぶりつく。
「や、やめて！　やめてください！　私には主人がいるんです、だからやめて……」
　と、口では言いながら、可奈子はさほど抵抗していない。両手も下げたままである。
「我慢することないじゃないですか、奥さん。なに、一時間もかかりませんから。お互い大人なんです。割り切って楽しみましょうよ」
　そう言うと五郎は、可奈子のブラウスのボタンに手をかけた。
　ひとつひとつ、ゆっくりとボタンを外していく。可奈子は黙ったままで、なにも言わない。
　ブラウスのボタンをすべて外すと、ピンクのブラジャーが登場した。そのブラジャーも五郎の手にかかり、グイッと上に押し上げられる。
「いや……」
　可奈子の小さな声が、五郎の欲情をいっそう駆り立てる。
　ブラの下からは、大きめで形の良い乳房が現れた。可奈子とマンションの廊下ですれ違う度に、その巨乳を想像しては、オカズにしてオナニーに励んでいた五郎だが、実物のオッパイは五郎の想像以上の逸品だった。
　夢にまで見た可奈子の乳房を目にして、五郎はもう我慢が出来なくなった。この美しくも淫らな胸を、思う存分なめ回したい！
「奥さん、こっちに行きましょう」
　五郎は、椅子に座ったままの可奈子を無理やり立たせ、リビングの隅にあるソファの上に寝かせた。
　可奈子はもはや抵抗もせず、とろんとした目つきで五郎を見ている。意識があるのかないのか、よく解らない。
　上半身が裸の可奈子を寝かせると、五郎はたまらずに、その巨乳にむしゃぶりついた。乳房全体を揉み、乳首を舐め回し、巨乳の間に顔をうずめる。
「あん！　ああっ……ら、乱暴は……いやぁぁっ……んんっ……」
　卑猥な声が、部屋中に響き渡る。リビングの机の上には、ウエディングドレス姿の可奈子と、その旦那が写っている写真があった。結婚式の際に撮影したものだろう。
　五郎は巨乳をさんざん愛撫すると、そのまま可奈子に声もかけず、スカートに手をかけた。
「あっ……だめ……」
「なにがだめだよ、こんなに喘いでおいて」
　可奈子の意思はもはや関係ない。五郎はそのまま、やや力まかせに、彼女のスカートを剥ぎ取った。
　可奈子はパンツ一枚の姿だ。──顔は紅く染まり、目にはわずかに涙が浮かんでいる。しかしさんざん愛撫を受けた乳首は、もっと舐めてとばかりに頭をもたげていた。
「奥さん、どうでした。オッパイ、気持ち良かったでしょ」
「……」
「でも、もっと気持ちよくなりたいと思いませんか？」
「……」
　こうして会話をしている最中も、可奈子の乳房は露わのままだ。隠す気力もないのか、それとも、もっと愛撫してほしいという意思の表れか。
「ねえ、奥さん。オマ○コも舐めてあげましょうか。すごく気持ち良くなれますよ、奥さん」
「……ん……」
　可奈子は目をそらしたまま、しかし嫌とも言わず、生脚を晒したままだ。
　ノーと言わない可奈子を見て、五郎は笑みを抑えられない。本音ではもう我慢ができないのだろう。セックスがしたくて仕方無いのに違いない。それでも露骨にしたいと言わないのは、それだけ彼女の性根が貞淑である何よりの証拠だ。
　生真面目な人妻が乱れていく姿に、五郎は興奮を隠しきれず、いっそう鼻息を荒くする。
（真面目な奥さんだ。だがそれだけに犯しがいがあるってもんだよ。ああ、それにしても本当に夢みたいだ……）
　感動とも興奮ともつかぬため息を吐き出しながら、五郎は可奈子のパンティに手をかけ、一気に脱がせた。
「あっ……！」
　突然のことに驚く可奈子が、小さく叫んだ。だが五郎は構わず彼女の秘部に顔をうずめる。
　人妻にしては綺麗な肉ビラを、丁寧に舐めまわす。汗と、愛液の臭いがした。
「う……うんっ……あ、ああああ……あん、あん、ああん、あんんっ……！」
　我慢できなくなってきたのか、可奈子の喘ぎ声が明らかに先ほどまでとは変わってきていた。
　五郎のテクニックと言うより、媚薬の効果であろう。可奈子の秘部からはヌルヌルとした蜜液がとめどなく溢れてくる。
「奥さん、いつもこんなに出てくるんですか。すごい量ですよ」
「言わないで……」
「いえいえ、良いんですよ。恥ずかしいことじゃないんですから。いやあ、それにしても嬉しいな。私の愛撫でこんなに感じてくれるなんて」
「そ、それは……あンッ！」
　五郎の人差し指が、可奈子の中にゆっくりと侵入していく。
　十二分に愛撫されたからであろう。もはや彼女は少しの抵抗もせず、五郎の指を受け入れた。
「あ、あふっ、あふン、あン、ああンッ！」
　五郎は右手で可奈子を楽しみながら、左手で器用にズボンのベルトを外し、そのままズボンも下げた。
「あ……」
　可奈子が、五郎の動作に気付いた。小さく、首を横に振る。だが五郎は気付かぬ素振りで、ついにパンツまでずり下げた。
　堂々と天井を向いた肉棒が姿を見せる。
「ねえ、奥さん。最後までしてしまいましょうよ」
「……」
「このままじゃお互いにイケませんよ。指とか口だけじゃ、嫌でしょ？」
「……」
「奥さん」
「あンッ！」
　五郎は言葉で責めながら、同時に指を少しだけ動かす。焦らすように、少しだけ、少しだけ。
　それがますます可奈子の欲求を高めていく。息を荒くし、目に涙を浮かべ、しかし可奈子の肉体はもはや完全に男を求めている。
　惚れ惚れするほど美しい、熟れた人妻の肉体。──旦那一人に生涯身も心も捧げると決めた女性が、他の男の前で乳首を立たせ、秘所をべちゃべちゃに濡らしている。
「ねえ、奥さん。俺も、もう我慢できないんだよ。入れていいよね？」
「……」
　可奈子はほんの一瞬、目をつぶって──そして、もはや限界だったのだろう。ついに首を、縦に振ってしまったのである。
「……して」
「ん？」
「して、下さい」
　五郎は待ちに待ったその言葉を聞いて、それだけで射精しそうになった。だが、ここで果ててしまうわけにはいかない。
「じゃあ、入れるよ」
　可奈子の両脚を持ち上げて、両肩の上に乗せる。そして五郎は分身を手でつかみ、腰を進めていった。
　──ぬるっ。
　膣口に、肉棒の先端が当たる。
　充分に潤んだ可奈子の秘部が、それを受け入れた。
「あ……あああああっ！」
「おう……おおお……！」
　抵抗はまったく無かった。愛液に満ちた彼女の中は、しかし人妻とは思えぬほど窮屈で、締め付けが強い。
「お、奥さんっ、ああ……き、気持ちいいですよ……」
「わ、私も……いいっ！　私も、き、気持ちいいいいっ！」
　日頃の清純そうな可奈子とは思えぬ乱れようである。
　ほんの二時間前、外で可奈子と会ったときのことを思い出すと、興奮度がますます高くなる。
　汗で透けたブラウス。
　その下に見えたピンクのブラジャー。
　いつもの五郎なら、透けて見えたブラジャーの映像だけでオナニーしていただろう。
　だが今は違う。そのブラジャーの中身が、白く盛り上がった乳房が、五郎の目の前にあるのだ。
「あンッ！　あンッ！　あああ、ああン！」
　五郎が腰を振るたびに、可奈子は大きく喘ぐ。そしてその度に汗ばんだオッパイが上下に揺れるのだ。
「奥さん、いい！　すごく、すごくいい！」
　腰をたくみに動かしながら、五郎は両手で荒っぽく、可奈子の胸をわしづかみにする。
「ああ、ああああン！　そうして！　もっとして！　もっと荒っぽく、してええ！　もっとオッパイ、してええええ！」
「胸が好きなのか？」
「好きっ！　いっぱい揉んで！　いっぱい触って！　もっと乱暴にしてええええ……」
　挿入前とはあまりに違う彼女の痴態に、五郎はますます興奮した。媚薬の効果もあるのだろうが、それ以上に、彼女の日頃の欲求不満が噴出したのだろう。
「旦那はこうしてくれないのか？」
「してくれないのおおお……。乱暴に、乱暴にしてくれないの！　いつも！」
「じゃあお望み通り、乱暴にしてやるよ！」
「して！　してええええ！」
　ギシッ、ギシッ、ギシッ──。
　ソファがきしむ音が部屋中に響く。
　もしかしたらこの声、隣や上の部屋に響いてるかもしれないな、と五郎はふと思った。だが、若夫婦の部屋である。特に疑問をもつ者はいまい。誰もが苦笑するだけで終わらせるだろう。
「おうっ、おう、おうううッ！」
「あン！　あン！　ああああンッ……！」
　可奈子の肉壁が、五郎自身を、吸い付くように締め付けてくる。
　五郎の我慢も、もはや限界に近づいてきた。めったに、どころか今後は二度とないであろう、可奈子との交わりである。できればもっと楽しみたかった。しかし、その余裕はなさそうだ。それに、いつ旦那が帰ってくるか解らない。
（旦那、か）
　五郎は内心、可奈子の旦那に同情した。女房を、いま正に貫いている間男が同情するというのも妙な話だが、とにかく同情した。
「奥さん、ほら。あそこ。リビングの机の上。見てよ」
「……？」
　可奈子のとろんとした目が、机の上に向かう。
　その上には、可奈子が結婚式に撮影した旦那との写真があった。
「ウエディングドレスの奥さん、綺麗だね。すごい美人だ。旦那さんとあの写真を撮ったとき、すごく幸せだっただろうな！」
「あ、ああああ……！　だめえええ！　それを、それを言わないでえええ！」
　悲壮な声を出すものの、しかし可奈子は抵抗しない。
「旦那の稼ぎで住んでるこの部屋で、他の男に抱かれる快感はどうよ？　気持ちいいだろ、なあ。気持ちいいんだろ？」
「あ、ああああ……」
「さっきみたいに叫んでよ、ほら！」
「あああああ！　き、気持ちいい！　ごめんなさい、あなた。でも、でも、あああ！　気持ちいいのおおおおおっ！」
　可奈子の叫び声が、五郎の脳天まで貫いた。人妻を抱いている興奮を、五郎はいま、最高に噛み締めていた。
　五郎の腰がさらに動く。
　可奈子の巨乳が、ブルンブルンとさらに揺れる。
「お、奥さん、もうだめだ。たまんねえ。俺、イく……！」
「あ、ああン、私も、私も……！」
　もはや二人にはわずかの理性も残されていなかった。
「中に出すよ、奥さん。いいよね？」
「あ、ダメ、中はダメ、中は……！」
「中に出したいよ、可奈子！」
「あ、ダメ、だめええええ！　赤ちゃんが、赤ちゃんが出来ちゃうからあああ！」
「可奈子ーっ！」
「あああああああーっ！　い、イクううううううっ！」
　凄まじい快感と共に、五郎の肉棒がひときわ大きく膨れ上がり、可奈子の中に五郎の分身が放出された。
「お、おうっ！　おおお……！」
　五郎はさらに腰を振り、最後の一絞りまで可奈子の中にぶち撒けた。
「あ……ああ……あ……ン！」
　自身も絶頂を迎えた可奈子は、うつろな目で、五郎の胸のあたりを見つめている。
　五郎は邪悪な笑みを浮かべ、可奈子を見つめた。
　今はまだ、可奈子は絶頂の余韻にある。女性の快感は男よりも長引くと言うから、彼女はまだ夢の世界にいるはずだ。
　しかしやがて正気になると、なぜこのような事態になったのか、もがき苦しむことになるだろう。だがしかし、誰を恨むわけにもいかない。自分自身の性欲が暴走した結果なのだから。
　もちろん五郎は、コーヒーに媚薬を入れたことを彼女に悟られるつもりはない。そんなヘマはしない。
（それにしても素晴らしい媚薬だった。あのはげ野郎め、また試作品をくれないかな）
　射精したばかりだというのに、早くも五郎はそんなことを考えていた。
　そして可奈子が夢の世界にいる間に、服を着て──最後に名残惜しそうに、可奈子の乳房を一度だけ揉むと、その場を後にするのだった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（了）
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
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2015年7月4日掲載
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