第５章　

１．コンプレックス

　仁美は、ひどく消耗していた。
「疲れた・・・わ」
　一人の部屋でぽつりと呟いた。ふと、携帯にメールが届いていることに気がついた。
　　（部屋、使ってるから。このまましばらく使っていい？）
　　（いいわ。自由に使って・・・何かあったの？）
　　（そのうち、会って話すわ。たぶん別れる）
　　（そう・・・また、今度、ゆっくりね）

　おっとりした姉だった。姉妹の仲は、仁美自身は悪かったと思っている。弥生はどうか知らないが、仁美は弥生が嫌いだった。
　どちらかというと優柔不断で、とにかく白黒はっきりしないと気持ちの悪い仁美はよくいらいらさせられ、仁美は、そんな弥生に腹を立て、即断即決の性格は、よりいっそう強くなった。優柔不断ゆえに親に反抗することもなく、熟慮、慎重な姉に対し、仁美は短慮、軽薄、反抗的に見られ、ことあるごとに姉と比較されたことも、仁美が弥生を嫌う理由の一つだった。
　仁美は、弥生も自分のことを嫌っていると思い込んでいた。自分がそうで、ことあるごとにきつくあたってきたから、嫌われていて当然だと思っていた。

（別れるんだ・・・そのほうがいいけど、どうしたんだろう、急に・・・）
　仁美は、弥生と弥生の夫稔のことを思い浮かべた。
（稔さん・・・いやな感じ。弥生は本当に見る目がないわ。なんかべとべとしたいやな親父）
　そのべとべとしたいやな男が弥生を抱いているシーンを連想した。
（うわぁ、いや・・本当、いやらしいことが大好きって感じ。やりたいだけ・・・・）
「やりたいだけ・・・・か？」
　仁美は、昔のことを思い出した。

　弥生は、丸顔のせいでぽっちゃりしているように見られるが、太ってはいない。おっとりして、多少天然で、胸は豊かでウエストからお尻のラインは、腹が立つほどうらやましかった。当然のように弥生の周りには、男が集まった。
中川辰夫もその一人だった。優柔不断な弥生が珍しく、はっきり“この人”と決めた男で、弥生が学生の頃から付き合い始め、３年くらい経った頃だったろうか。その春から社会人になった弥生が引っ越して、その新居に仁美がやってきたとき、部屋にいたのは弥生ではなく辰夫だった。

　春から社会人になった弥生は、大学の１年先輩で、学生の頃から着かず離れず、自分の近くにいた中川辰夫と付き合うようになっていた。優柔不断な弥生に対し、強引にＹＥＳ・ＮＯを求めようとしない辰夫は、長い時間をかけて弥生をその気にさせたようだった。

　その日、仁美は、社会人になった弥生が引っ越したマンションに行った。ドア横のチャイムを押すと、ドアが開いたが、ドアを開けたのは弥生ではなく辰夫だった。
「あら、中川さん」
　仁美は、以前に辰夫とは会ったことがある。
「仁美さん、どうしたの」
「どうしたのって・・・ちょっと、お姉ちゃんに会いに来たんだけど・・・いないの？」
　中に入りながら、仁美は辰夫にきいた。
「うん。研修が終わって配属先で歓迎会があるって、急に・・・」
「で、中川さんは？」
「えっ・・・」
「まさか、一緒に暮らしてるの？」
「まさか！・・・今日、俺の誕生日なんでお祝いしてくれるって呼ばれたんだけど」
「・・・ふーん、で、どうやって入ったの？鍵を持ってるってこと？」
「まぁ」
　あいまいな返事をする辰夫を尻目に、部屋の中に入ると、辰夫が持ち込んだのだろうワインが２本テーブルの上に置かれていた。
「誕生日なのか・・・弥生がいないんじゃかわいそうだね。」
　仁美は、来る途中に買ってきたハンバーガーとチキンをテーブルにひろげた。
「こんなものしかないけど・・・せっかくだから、お祝いしようか」

　仁美は、弥生が辰夫と付き合っていることをこのとき、初めて知った。姉の弥生が、自分に相談する事無く男と付き合い始めたのは、仁美にはちょっとしたショックだった。弥生に対してある意味コンプレックスを感じていた仁美の唯一の救いは、姉、弥生の優柔不断さだった。その弥生が自分で決めるなんて・・・仁美は、次第にそれが許せなくなっていった。
「弥生の何処がいいの？」
　仁美は、酔っていた。もともと、酒は好きだが決して強くは無い。
「何処って？」
　ストレートな仁美の問いに辰夫は、困惑した。その顔を見ていると、仁美はこの誠実そうな男をいじめてみたくなった。
「ねぇ、弥生のおっぱい大きいでしょ」
「えっ」
「えっ、て・・・見たことないの？」
「それが・・・まだ・・・」
「うそ・・・ずいぶん前から、弥生といるじゃない」
「そりゃ、そうだけど、付き合い始めたのは、最近だから・・・」
「そうなの・・・ふーん。あれでねおっぱい大きいんだよ。それできれいな形なんだな、これが・・・」
「だと思う」
「おっぱい、大きいほうがいい？」
　仁美は、わざとテーブルに身を乗り出し、辰夫に顔を近づけた。大きく開いた胸元から乳房の谷間が見えているはずだった。辰夫の目が、仁美の視線より下に下がった。その視線が、再び仁美の視線の先に戻ってくるのを待って、仁美は言った。
「わたしだって、そこそこ大きいんだよ。」
　仁美は、辰夫の手をとって、自分の胸に当てた。
「おい・・・」
　と、驚きの声を出した辰夫だが、仁美の胸に当てられた手を動かし、ぎゅっと仁美の乳房をつかんだ。仁美は、もっと身を乗り出し、下から辰夫の顔を見上げた。その唇に辰夫の唇が重なった。
（弥生、あんたの男取っちゃうよ）
　仁美が、少し唇を開き、辰夫の舌を誘うと、ためらう事無く辰夫の舌が侵入してきた。辰夫の手は服の上からだったが、乳房を大きくまさぐり、乳首を探し当てていた。しばらく、口を自由にさせていた仁美だったが、唇をはずすと
「こら、浮気もの。だめでしょ・・・・、弥生に叱られるぞ」
　そう言って、立ち上がって、リビングの床に置かれている大きなクッションにもたれて座り込んだ。辰夫が追ってきて、仁美の横に座り、上に重なった。
「ここで、するの？」
　この仁美の言葉で、辰夫の心は決まった。
「ああ・・・だめかい？」
「弥生・・・帰って来ない？」
「・・・・１１時過ぎるって・・・」
　まだ、８時を回ったところだった。そう言いながら、すでに辰夫の手は、仁美のセーターをまくりあげ、ブラのフロントホックに手がかかっていた。まじめそうな感じとはうらはらに、そこまでの動作はかなり手馴れたものだった。
（なに・・・この人・・・）
　主客が逆転していた。セーターは、持ち上げられ、仁美は万歳をする格好になったが、完全に脱がされず、肘の手前まで持ちあげられて、そこで止められ、すでにフロントのホックを外されたブラも持ち上げられて仁美の顔の位置で、再び止められた。両手を上に上げ、その腕と顔をブラで固定した格好、外せないほどではなかったが、けっこうもがかないと外れないだろうと思われた。両手を上に上げて乳房を晒した格好は、仁美を相当不安にさせた。
「なに・・・ねぇ・・・どけて・・・」
　仁美は抗議したが、辰夫はそれを無視し、仁美をうつ伏せに転がすと、ジーンズをショーツごといっきに膝まで引き下ろした。仁美のつんとつきだした丸いお尻が露わになった。ジーンズから片足を抜くと、辰夫は仁美の足を大きく広げ、座り込んだ自分の左右の太ももの上に仁美の左右の足を置いた。辰夫の肉棒が直接、仁美の股間にあたった。
（なんで、こんな格好なの？・・・どうして・・・これじゃ、レイプじゃない）
　レイプという言葉を思い浮かべた途端、その言葉が頭の中を占拠した。
（レイプ・・・レイプされてる・・・わたし・・・やだ・・・・）
　とは、思いながらも、仁美は、なぜか、恐くもなければ助けを呼ぶ気もなかった。

２．レイプ

　辰夫の肉棒は、すぐに仁美の中に侵入してきた。すでに、仁美の肉壺はあふれんばかりに濡れていた。自分が誘ったとはいえ、思いもかけない辰夫の行為に、仁美自身が驚くほどの興奮を覚えていた。腕を固定されたブラは、その気になって揺すれば外れるだろうことは仁美にもわかっていたが、仁美は無理にそれを外そうとはしなかった。
（すごい・・・すごいわ・・・・いい・・・いい・・・あ・うあぁ・・・）
　辰夫は仁美の太ももの上に乗り、それを両足で挟むように固定した。この体勢だとあまり深くは入らない。仁美は辰夫に突かれるたびに、少しずつお尻を持ち上げた。腕を拘束されて、床につけない仁美は、顔を直接床につけたまま、背中を反らしお尻を突き上げようとした。それを感じた辰夫は、仁美の太ももを挟んでいた力を少し緩め、お尻をぐっと持ち上げ、腰を両側からしっかりとつかみ固定した。これで、奥まで入る。辰夫は、ぐっと仁美の奥まで挿入した。
「ああ・・・・・ぁぁぁあああ・・・・」
　思わず、仁美は声をあげた。
「きれいだよ。お尻・・・」
　言葉とはうらはらに、辰夫はぎゅっと仁美の左右の肉丘をつかんだ。
「ああ・・・いっ・・・」

　ドアが開く音がしたが、仁美には見えない。
「辰夫・・・・なに？誰？」
　弥生だった。辰夫を待たせているので、途中で歓迎会を抜けて早く帰ってきたのだが、自分の部屋で辰夫が、裸の上半身に、頭にセーターを被せられ、そこにベージュのたぶんブラジャーをつけられた女性を後ろから犯していた。スカートがまくられ、真っ白なお尻が露わになっていた。
「弥生・・・・」
　辰夫は、予想外のことに声が出なかった。
「何してるの。・・・仁美？・・・仁美なの」
「弥生・・・」
　仁美もそれ以上声にならなかった。
「辰夫、やめて。離れて」
　弥生が駆け寄ってきたが、それでも辰夫は仁美から離れなかった。
「弥生。・・・そこで見てな」
　辰夫は何か覚悟を決めたように、ハッキリした口調で弥生に言った。
「何言ってるの？ばかなことやめて」
「動くな。そこで見てろ・・・・でないと仁美の中に出すぞ」
「いやーっ。だめ、中はダメ」
　仁美が声をあげた。
「中に・・・何・・・ばか、やめて」
「黙れ。そこで見てろ」
　そう言いながら、辰夫の動きが速くなった。
「ああ・・あああ・・・だめ・・だめ・・・中に出さないで」
　仁美がさらに大きな声をあげた。
「お願い。やめて・・・辰夫」
　弥生は、横に座って、辰夫の目線に合わせてお願いした。激しく動きながら辰夫は
「脱げ。弥生」
「えっ」
「脱ぐんだよ。裸になるんだ。早く、出すぞ・・・出すぞ」
「いやーっ」
　仁美が泣き声で絶叫した。
「わかったわ。だから、離れて」
「早く！」
　辰夫の声も大きくなった。弥生は慌ててブラウスとスカートを脱ぎ、そこで躊躇した。
「全部脱ぐんだよ」
　辰夫がたたみかけた。せかされ、ブラをはずすと、ショーツも脱いで、弥生は全裸になった。
「脱いだわ。もういいでしょ」
「ここに来て、仁美をまたいで俺の前に立て・・・・早く！」
　弥生は、辰夫の激しい口調に押され、言われた通り、仁美のお尻をまたぎ、辰夫の前に豊かな丸い双丘を晒した。
「四つん這いになれ・・・・もっと尻を突き出せ・・・・出すぞ」
「だめぇー・・・お願い。中はダメ、外に・・・外に出して」
　仁美の涙声に急かされるように、弥生は辰夫の命令に従って、仁美の上で四つんばいになって、辰夫の顔の前にお尻を突き出した。不意に辰夫の舌が弥生の股間を這った。思わず、腰を引くと辰夫の手に押さえられた。辰夫の舌は、襞を這い花蕾を捕えた。それまで辰夫に腰を押さえられていた仁美は、その手が弥生に移動して、解放されたにもかかわらず、辰夫の肉棒から逃れようとはしなかった。
「弥生、お前に入れようか？」
　その辰夫の言葉には
「だめ、お姉ちゃんにはだめ」
　仁美が、答えた。
「仁美・・・・いいのよ。・・・いいわ。わたしにして、仁美から離れて」
「うう・・・もういきそうだ」
「だめ、早くどいて、仁美からどいて」
「弥生、こっちへ来い。仁美のお尻の上に顔を載せろ」
　弥生は、言われた通り、仁美のお尻の横に座り、そのお尻を腰のほうから抱え、お尻の上で顔を横にした。辰夫の動きは、さらに激しくなった。
「う・・・出すぞ・・・出すぞ」
「だめ・・・中は・・・中は・・・だめ・・・だめ・・・だめぇー」
　仁美の絶叫にあわせて、辰夫は直前で仁美を離れ、仁美のお尻の上の弥生の顔を両手で押さえると、弥生の口の中に無理やりちんぽを押し込み、弥生の口の中に放出した。
「こぼすなよ。弥生・・・いい子だ」
　辰夫は、ゆっくりと弥生の口の中に根元まで差し込んで、それから抜いた。
「飲み込むんだ・・・弥生・・・飲め」
　弥生の目から、大粒の涙がこぼれた。