５．亜沙美

　次の朝８時頃、日曜日だというのに、真垣は仕事だと言って、仁美を残してホテルを出ていった。真垣が起きて服を着ているのは知っていたが、仁美は激しい頭痛がして、すぐには起きられなかった。ホテルを出て家に帰っても、何もする気にならず、ただ、ぼーっと一日を過ごした。昨日のことは、すべてはっきりと記憶している。自分が何をし、何をされ、何を感じたかも・・・。ただ、それが現実のことだと思えないだけだった。
　何度か携帯がなったが、真垣からのものではない。仁美は真垣に自分の携帯の番号を、まだ知らせてはいなかった。
（わたし、真垣さんの携帯番号も知らないんだ）
　そんなことを思いながら、仁美は何度目かの眠りに落ちていった。

「おはようございます」
　次の日の朝、仁美は、すでに出社し、コーヒーを飲んでいる真垣にいつものようにあいさつした。
「ああ、おはよう。だいじょうぶだった？」
「はい。すいません。朝、起きられなくて・・・」
「いいんだよ。仁美には大変な一日だったろうから・・・」
　そう言うと、真垣は、仁美を抱いた。真垣に抱かれることで、仁美は漠然とした不安から少し解放されるような気がして、嬉しかった。仁美が自分から、真垣の背中に手を回し、キスをねだると、真垣は応じてくれた。

「着替えます」
　そう言って、真垣から離れ、ロッカーの前に行くと、仁美は少し深い息をして、それから、服を脱ぎ始めた。今日は、下着はつけていない。真垣の前で、仁美はシャツを脱ぎ、背中を晒し、スカートを脱ぎ、お尻を晒した。全裸になって、真直ぐ立ち、今度は真垣の方に向いた。
　真垣は、じっと仁美を見ていた。目が合った。
（真垣さん・・・・仁美は、真垣さんのものです）
　仁美は、真垣の方を向いて椅子にかけ、ストッキングに足を通した。仁美の股間から、あるべきヘァーが消えていた。真垣に買ってもらった下着は、どれもみな幅が狭く、ヘァーごどうしてもはみだすので思い切って全部剃ったのだ。ストッキングをガーターベルトに止めると、薄いピンクのハーフカップのブラを付け、それから、ブラと同色でシースルーのTバックのショーツを身につけた。仁美が制服を着終えるまで、じっと仁美を見ていた真垣が、仁美に近づいてきた。真垣の左右の腕が仁美の肩に置かれた瞬間、仁美は真垣の前にしゃがみ、膝立ちすると、ジッパーを下ろし、真垣のものを取り出し、その先端をゆっくりなめ、それから、咥ええ、ぐっと頬張った。仁美の頭を持ち、２、３度ぐっと根元まで突き入れた真垣は、仁美の口からそれを抜き、仁美の頭を撫でた。
「いい子だ。でも、続きは後だ。もうすぐ会議なんでね。」
「はい。」
　真垣が会議を終え、オフィスに帰ってきたのは、終業時刻の午後５時ちょっと前だった。

「あら、仁美さん。あなたがここになったの？」
　真垣が帰ってきて、しばらくすると、結婚して退職した仁美の前任者の大塚亜沙美がやって来た。
「亜沙美さん・・・どうしたんですか？」
「うん、ちょっと、いろいろ手続きがあって、ついであいさつに寄ったの。真垣さん、いらっしゃる？」
「はい、いらっしゃいます。ちょっと、待ってて」
　真垣に、亜沙美が挨拶に来たことを伝えるために立って、真垣の部屋に入る仁美の後姿を、亜沙美は観察するかのようにじっと見ていた。

「亜沙美さん、どうぞ」
　亜沙美にそう伝え、部屋に入っていく亜沙美の姿を仁美も見ていた。
（素足だわ、亜沙美さん。下着のラインもない・・・それに、真垣さんって呼んだわ）
　不意に真垣がやって来た。
「仁美、コーヒー入れてくれる？みっつ」
「はい、・・・みっつ・・・ですか？」
「仁美もおいで」

６．仁美に出して

　コーヒーを持っていった仁美は、真垣と向かい合って座っている亜沙美の姿を見て、息を呑んで、その場に立ち尽くした。亜沙美はソファに両足を上げ、足を立てて股間を大きく真垣に晒していた。
「仁美、ここへおいで」
　真垣が横によって、仁美を自分の横、亜沙美の正面に座るように場所をあけた。仁美は、コーヒーをお盆に載せたまま、テーブルに置き、真垣の横に座った。正面に座った仁美に向かって、亜沙美は意図的にもっと足を開いて見せた。
「亜沙美は、ピアスを空けたんだって」
「ピアス？」
（何？どういうこと？）
　戸惑う仁美に亜沙美は、
「仁美さん、見える？」
　そう言って、自分の指で、肉襞をかきわけ、クリトリスを露出させた。ピアスは、そこにあった。そこだけではない、かきわけた肉襞にも左右に２箇所ずつ埋め込まれていた。
（あんなところに・・・・・）
　仁美は、激しいショックにことばを失った。

「真垣さん、もう仁美さんに手をつけたの？私のときは、３ヶ月くらい、何もしてくれなかったのに・・・。」
（亜沙美さんも真垣さんと・・・）
　亜沙美のことばに、我に返った仁美は、抱いていた不安のひとつが、そのまま現実になって目の前にあることを悟った。
「亜沙美は、ちょっと違うと思ったんでね。そしたら、やっぱり違ってた。」
（なんのこと？真垣さん、何が違うの。仁美は違わないの？）
「火を点けたのは真垣さん。おかげで、もう戻れない」
「旦那は、大事にしてくれるかい？」
「ええ、今度ここの穴をひとつにつなげて大きくしてなにかぶらさげるって・・・」
　そう言って、亜沙美は肉襞のピアスをいじって見せた。
「ふーん、そう。やっぱり、俺にはできないね。そういうことは・・・・」
　真垣は、仁美がテーブルの上に置きっぱなしにしたお盆からコーヒーを取ると、ひとくち口に運んだ。そして、ようやく仁美に説明し始めた。
「亜沙美はね、最初は俺の言うことを聞いてたんだけど、それじゃ満足できなくなってしまったみたいで・・・。俺は、縛ったり、鞭で打ったり、ピアスあけたりっていうのは趣味じゃないから、知り合いのそう言う趣味の人に亜沙美を紹介したんだ。それが、彼女の旦那さん。」
（縛られる・・・鞭・・・ピアス・・・私はどうなんだろう？されたことはない・・・）
　仁美は、自分が亜沙美のような性癖でないことを祈った。
（真垣さんと好みが違ったら、他の人に渡されちゃう・・・・それはいや）

　よく見ると、亜沙美の体には、あざのようなものがいくつか見られた。手首のは、縛られた痕、同じような痣が太ももの付け根にもあった。
「仁美さんは、もう真垣さんのもの？」
　亜沙美は、それを仁美にきいた。
「えっ・・・は、あのう・・・は、はい」
　仁美は、どんな返事をしていいのかわからず、真垣を見た。
「仁美、立って、ここに来て」
　真垣のことばに、仁美はほっとして、それに従った。
　真垣は自分の前に、仁美を亜沙美の方を向いて立たせると、ゆっくりと仁美のスカートを持ち上げていった。
（見せるの？亜沙美さんに・・・・）
　仁美は、考えるのを辞めた。
（真垣さんのしたいように・・・わたしは従うだけ）
「仁美、持って」
　真垣は、持ち上げたスカートを自分で持つように仁美に命じた。
「仁美､亜沙美に見てもらおう。見てってお願いしようか」
「亜沙美さん、仁美を見て」
　真垣は、シースルーのショーツをするすると仁美の足元まで下した。仁美は、自分で足を上げてそれを抜いた。亜沙美は、テーブルの上のコーヒーを片付け、少女のようになった仁美の股間に手を伸ばしてきた。
「剃っちゃったの？真垣さんの指示？」
「いや、仁美が自分で・・・」
　真垣が応えると
「ふーん、この方が、よく見てもらえるものね」
　と、亜沙美は仁美に話し掛けた
「は・・・はい」
　仁美は、激しく脈打つ、心臓の鼓動と戦いながら、なんとか応えた。
　確か２歳年上で、それほどした親しくもなく、今まで挨拶くらいしかしたことのなかった亜沙美に秘部を晒して、秘芯を弄られている。しかも、まくったスカートの裾を自分で持ちながら・・・・
（真垣さん・・・何か言ってください。なにかさせてください。これ以上、じっとしてられないです）
　真垣が、仁美の後ろで立ち上がって、仁美を振り返らせ、唇を吸い、舌を入れてきた。仁美はほっとした。亜沙美が仁美と真垣の間に手を入れ、真垣のものを取り出し、しゃがんで二人の間に割って入り、真垣の肉棒の先端を口に含むのが目にはいった。
（あっ、だめ。亜沙美さん・・・それはだめ・・・）
　仁美は、目で真垣に抗議した。
　真垣は、仁美から離れ、亜沙美を制すると、仁美を抱き上げ、テーブルの上に仰向けに寝かせた。一昨日と同じ格好だったが、仰向けに寝た人身の上に乗ってきたのは、亜沙美だった。仁美の秘襞を亜沙美の指がかき広げ、亜沙美の舌が、仁美のクリトリスと肉壺を往復し始めた。逆に、亜沙美の秘部は、仁美の目の前だった。仁美も亜沙美と同様、そこに舌を這わせた。
　真垣は、後ろに回り、先ほど中断した行為を再開した。亜沙美の口に挿入したのだ。
「うぐっ・・・」
　亜沙美が真垣を喉の奥深く飲み込む音が聞こえた。
（真垣さん・・・・だめ、・・・それは仁美に入れて・・・・お願い、仁美に・・・）
　思いが通じたのか、真垣は、今度は仁美の中に入ってきた。
（入れて・・・深く・・・もっと､深く・・・突いて・・・・突いて）
　真垣は、亜沙美の口、仁美の肉壺を何度か渡り歩き、しばらくすると、仁美の顔のほうに移動した。仁美の目の前で、真垣の肉棒が、亜沙美に挿入され、亜沙美の声がこぼれた。真垣の動きが激しくなるにつれ、亜沙美の声が大きくなった。場所を考えると、仁美の不安がいっきに増大した。
（誰かに聞かれたら・・・ドア、かぎかかってないのよ・・・亜沙美さん・・・・）
　真垣の動きはさらに激しくなり、亜沙美の体重が仁美にどっとのしかかると同時に、真垣は、亜沙美から離れた。仁美は、目の前の真垣の肉棒を顔を上げ、口を大きく開けて咥えようとした。
（仁美は、真垣さんのもの。だから、絶対に、仁美に出して・・・仁美のどこにでもいいから・・・仁美に出して）
　真垣は、仁美の口にそれを差し入れ、仁美の口に放出した。
　真垣が、自分に出してくれたことが、仁美は嬉しかった。次から次へと湧き出すように流れ出る真垣のザーメンを仁美は全て口で受け取り、飲み干した。

７．別れ

「仁美、着替えるか？俺たちも帰ろう。」
　亜沙美が帰って、真垣も帰る支度を始めた。
「真垣さん。あのう・・・・」
「何？」
　仁美は、悩んだ末、真垣に言った。
「あのう・・・わたしはは真垣さんのものです。・・・けど・・・わたしのほかにも、そういう人、何人かいるんですか？」
「亜沙美は、俺のものじゃないよ。人妻でしょ。」
「ええ、それはわかってます。亜沙美さんじゃなくて・・・他の、わたしが知らない人・・・」
「いないって言ったら信じるか？」
「・・・いいえ・・・・」
「いるっていったら、わたしを嫌いになるか？」
「・・・いいえ・・・」
「じゃぁ、なぜ聞く」
「ごめんなさい。いいんです。ただ・・・」
「ただ・・・なんだい？」
「・・・・・・」
　仁美は、後悔していた。
（やっぱり、きかなきゃよかった。どうしよう、“いいです”って言うのも・・・）
「言ってごらん・・・仁美」
　真垣は、優しかった。
「あのう、わたし真垣さんが好きで、だから、真垣さんが他の人としてるのを見るのって・・・つらいんです。・・・でも、平気です。だいじょうぶです」
「仁美。」
「はい」
「わたしも仁美が好きだ。他には誰もいないよ。ただ、仁美がいる所で他の人を抱くことがあるかもしれない。今日みたいに。でも、仁美が好きなことに変わりはないよ。安心して」
（わたしを好きって・・・・真垣さんがわたしを好きだって・・・）
「ありがとうございます。変なこと言ってごめんなさい。」
「いいよ。また、着替えるところを見せてくれるかな」
「はい」
　仁美は、ロッカーの前に行き、今度は、真垣の方を向いたまま、制服を脱ぎ始めた。
（見ててくださいね。真垣さん）
　制服のシャツを脱ぎ、ハーフカップブラを外した。決して大きくはないが、形のいい乳房にツンと乳首が尖っていた。スカートを下ろし、しばらくそのまま立って、真垣を見つめていたが、ガーターベルトを外すと、椅子に座った。片脚を椅子に上げ立膝でストッキングを脱いだ。すべて脱いで全裸になると、椅子から立ち、今度は後ろを向いて、ブラウスを着、お尻を突き出してスカートをはいた。
「真直ぐ帰るのか？」
「はい。」
「家まで送ろう」
「いえ、だいじょうぶです」
「その格好で電車に乗せるわけにはいかないな」
　真垣の優しさが嬉しかった。

　仁美は、車の中で真垣の転勤の話を聞かされた。
「今度、子会社が札幌にできるんだが、そこの代表の話を引き受けた。」
「札幌ですか？」
「ああ。仁美、もし、よかったら、一緒に行ってくれるか？」
「いつ、行かれるんですか？」
「来週の水曜日」
　８日しかない。
「返事は、今すぐですか？」
「いや、明後日でいい」
　突然のことに、仁美は混乱し、どう応えていいかわからなかった。
「仁美」
「はい？」
「仁美が望むなら、ずっと仁美はわたしのものだ。それは約束する。ただ、わたしはもう結婚はしない。それでもよかったら、一緒に来てくれ。いいね。」
　結婚はしない、そのことばが仁美の胸にずしっと、重くのしかかった。
（結婚はしない・・・・それでよかったら？・・・・・いっしょに来てくれないか？・・・・）
　不安定な自分の位置付けが、また、仁美を不安にさせた。
（来いって言ってくれればいいのに・・・・来いって命令して・・・・・真垣さん）

　仁美は、札幌には行かなかった。もともと、彼女には学生の頃から付き合っていた男性がいた。伊藤孝雄といい、年は、仁美より一つ上。付き合い始めて５年になる。すでに、結婚に向かって話は進んでおり、それを振り捨てて「結婚はしない」と言い切る真垣についていくことはできなかった。
　真垣の札幌赴任は、日程が早まり、その週末には、すでに札幌の飛んでいた。仁美は、次の週には、元の部署に戻り、半年後に孝雄と結婚した。