昨日、ホテルを出てから、理恵子は世界が変わったかのような晴ればれしい気分がつづいていた。
　硬い蕾みを大輪の花に開花させ、究極の喜びを知る身体になっていた。
　夫の就職先も確実となり、今までの生活も変化なく維持できる。
　理恵子の思い描いた理想も現実になっている。
　変わったことといえば、ただ一つ、理恵子の身体は理由もなく疼き発情を止められないでいた。
　隆造との激しい交わりが、原因しているのだろう。
　和也とは感じたこともないような強烈なエクスタシーに、理恵子の身体が今までにない反応を示している、そんなふうに受け止めていた。
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　３日を過ぎた夜、和也がとびきりの明るい顔で帰宅した。
「理恵子、凄い事になったぞ。丸菱から俺を引き抜きたいと言ってきた」
　大はしゃぎの和也の口は軽い。
「義理もあるし、無理のないダイミングで、移籍できれば良いんだが」
　中和への義理立てを意識しながらも、心は移籍に向いている和也。
「がんばっただけのことは、あったじゃないですか」
　白々しく返事を返す理恵子。
「まあ、そうだなぁ」
　高科家にも、和也を中心に明るい日々が帰って来たのである。
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　隆造の求めは週一の頻度を保たれていた。
　理恵子は、逢うたびに隆造への思いが増している。
　女は、イかせてくれる男を好きになる、少なくとも意識する。
　理恵子の場合それだけではなかった、考える事は股間を埋めることばかり、肉欲への意識が頭から消えない日々が続くようになっていた。
　四六時中、股間を潤ませているのである。。

　先週、隆造は「理恵子に手伝ってもらいたい事がある」と特別な接待に協力するよう依頼した。
「お役所の定期監査が入るんだ、一晩時間を取ってくれ」
　あたりまえのことのように、日時を伝える隆造。
「泊まりなんて困ります、理由が立たない…」
　暗い表情の理恵子。
「理由なんか、なんとでもなるだろう。旦那のことをよく考えるんだな」
　冷たい返事を返すと隆造は先に部屋を出ていってしまった。
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　食後のコーヒーを運ぶ理恵子。
「あなた、急なんですけど、明日、高校の友達が東京に出てくるの、二日ほど相手してあげたいんだけど」
　なにげない様子で話す理恵子。
「ああ」
　女子校出身を知った和也は、何の疑いもなく軽く許可をだす。
「遅くなったら、私も一緒に泊まってきてもいいかしら」
　やっとの思いで、外泊を口にだす。
「そう、俺のことは心配ない、何処かで適当に飲んで帰るさ」
　上機嫌の和也。
「そんなことより、早く片付けて、風呂、済ませろよ」
　思わせぶりに声をかけてくる。
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　翌日、理恵子は隆造の依頼どおり、高級な小料理屋の門をくぐった。
　濃い目の化粧に、コンパニオンスタイルとまではいかないが、派手目の衣装で着飾った。
　細かな仕草も訓練された店の女将に案内されて、迷路のような通路の先の小部屋に案内された理恵子。
「よく来てくれた」
　宴会も始まり、アルコールがまわっているのか、赤ら顔の隆造が上機嫌で声を掛け、女将に替わり案内する。
「よろしく、お願いします」
　正座した理恵子は、いらっしゃいませ、とも言えず中途半端な挨拶をする。
「挨拶なんかいい、上座の中央だ、たんのだぞ」
　声を落として、理恵子に耳打ちする隆造。
「どうすれば…」
　戸惑いながら、問い返す理恵子。
「この場は、酒のしゃくをして、適当に相手してればいい、アルバイトしてただろう」
　納得した理恵子は、上座に進んだ。
　かっぷくのいい男が、宴会なれした風で、周りに気づかう事もなく飲んでいる。
　理恵子はそつなくこなした。
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　小料理屋の接待は無事に済み、お偉いさん方は姿を消していた。
　隆造は部下に、なにやら細々と次の指示を与えて、理恵子に向き直る。
「これからが、理恵子の出番だぞ」
　誰もいなくなった宴会場で、隆造はこれからの行き先と時間を指示した。
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　隆造の指示した内容は、ホテルの部屋番号と時間、これだけで何を意味するかを悟った理恵子は、ぼんやりと、その場に立ち尽くしてしまっていた。

「どうして…」
　理恵子が問い掛けた時には、すでに隆造の姿はなかった。
　重い足で小料理屋を出ると、隆造の手配したタクシーが待っていた。
　行き先を告げることもなく運転手は車を走らせた。
「どこへ？」
　逆に問い掛ける理恵子。
「○○ホテルですね、料金は頂いてます」
　早口の運転手が言う。
「そう」
　気持ちの治まりが着かない理恵子は、気のない返事を返す。
　タクシーにも細かく指示が出ているのだろう、遠回りして時間を調整した。
（夫のためにも隆造には逆らえない）
　重い心をやっとなだめた頃、タクシーは止まった。
　二次会の場所から、そう遠くないホテルが選ばれいるのだろう、どこにでもあるようなビジネスホテルの言われた部屋番号の前に立つ理恵子。
　呼出しボタンもなく、どうしたものかと戸惑うが、永くこの状態でいるのも、はばかられ、コンコンとノックして、手早くドアノブを捻った。
「はい」
　聞き覚えのある宴会の男の声と、バスタブにお湯を溜める音がしている。
「理恵子です」
　自分の声を聞き、娼婦になった思いが込み寄せる。
「時間どおりだねぇ、風呂するから、ちょっと待っててくれ」
　酒に酔った男が、服を脱いで、ぶよついた体を揺すって行く。

　水音が止み、男が姿を見せる。
　理恵子は、部屋にある小さな椅子に座っていた。
「シャワーするかね？」
　バサバサと体を拭いながら男がベットに近づいていく。
「使わせて頂きます」
　背中のチャックに手を廻す理恵子。
「いいねえ、脱いでるとこも見せてもらおう」
　ストリップを要求する男。
　ワンピースのドレスとスリップを足元に落とし、高いヒールの靴を脱ぐ。
　ストッキングを手早く脱いで片足を抜く。
「もっと、ゆっくり脱いでくれないか」
　男の声を無視して、もう一方の足を抜き逃げるように浴室へ駆け込む理恵子。

　隆造の手配なのか、どこも隠せないような透けたローブを手にしたが、使う事ができない、バスタオルを身体に巻いて浴室をでた。
　何も着けない裸でタバコをふかす男を見て、理恵子は戸惑った。
（自然にしていよう、その方が娼婦としていられる）
「まず、元気にしてもらおうか」
　主語もなく、あたりまえのようにいう男に、タオルを気にしながら近づく。
　男の座る椅子の前でひざまずくとき、娼婦に落ちた思いが込み上げる。
「俺のは、どこか変わってるか」
　動かずにいる理恵子をみて、男は不思議そうにいう。
「いいえ、立派です」
　手を添えて上を向かせると、ゆっくりと手を動かした。
　半立ちの肉が徐々に熱を持ってくる、冷たい手に感じる熱さを心地よく感じてしまう理恵子。
　そっと頬をよせ、鼻につく男の匂いすら頼もしく、いとおしむように唇をカリの付根の結び目にそえていく。
　興奮した理恵子の口腔に多量の唾液が滲みだす。
　頬張りつくことは、かな首が凛々しく頭を持ち上げてくるまで控えた。
　ズルズルと、舌使いで奉仕する。
　穂先が鏡のように照り輝く程に腫れ上ると、根元付近をグッと締め上げた手を添えて、スクリューさせた舌先と共に頬張りついていく。
「おおっ」
　息を吐いて、堪える男が声を出す。
　理恵子の頭が、餌をついばむ小鳥のように動きだす。
「ベッドに行こう」
　耐え切れなくなったのか、男は急に立ち上がる。
　口腔の奥に、かな首が突き刺さり慌てて吐き出しす理恵子。
　呼吸の合わない、たわむれに今の境遇が再び理恵子の心に突き刺さる。
（どうしてこんなことまで…）
　理恵子の気持ちも知らずベッドの男は、白い身体を厳つい手でまさぐりだす。
　見知らぬ男の手にも、ピンクのさざ波が押し寄せてくる。
「はあぁ」
　甘い吐息で熟れた身体は答えている。
　淫列をなぞる指が、粘い潤みを感じ取り蜜壷の口を押し開く。
　男は満足したのか体勢を変え、膝を押さえてくつろげる。
「入れるぞ」
　男の声に、うなづく理恵子。
　理恵子の了解を得た男の強張りは、蜜壷の奥深くに押し寄せる。
　アルコールの効果なのか男の持続力は抜群だった。
　理恵子は思いのままに何度も気をやったが、小ぶりな波は大きく育たない。
「あぁっ」
　男の肉棒に悶えながらも冷静な意識がなくならず隆造の鉄槌が頭をかすめ、絶頂への欲求は増すばかり。
「淫乱だなぁ〜えっ」
　激しく腰をくねらせる、積極的な理恵子の動きに歓喜する男。
「いやっ」
　顔をそむける理恵子の腰は止まらない。
　激しく繋がり合う股間。
　男が獣のようなうめきで放出する。
「ふぅ〜、良かったぞ」
　柔らかい赤ん坊のような理恵子の頬を擦る男。
　理恵子は何度も迎えた波に身悶えていたが、弾けきらない身体には大きな欲求がくすぶり続けていた。
　男が裸のまま寝そべるベットの横で理恵子は身づくろいを始めた。
　娼婦に落ちた嫌悪感にも増して、法悦への欲求が渦巻いている。
　慌ただしく逃げるように部屋を出た。
　帰る手立てをとぼんやりとホテルを出ると来るときと同じタクシーが待ち構えていた。