| 18．祐樹ー６ 佳織の甘い匂い・・・・身体中の肌の感触・・・・優しい口唇・・・・そして肉棒に残る佳織自身・・・・、全てが鮮明に思い出され、無性に哀しさが込み上げてきた。 （もう戻れない・・・・だけど、今の佳織さんに再会できたら・・・・） 当初の想い、過去の佳織と現在の佳織に逢いたい・・・・という、その想いが益々強くなっていた。 異次元POSTには、今の佳織さんにも逢いたい・・・・と書いて投函した。 その願いは、過去から戻ると、すぐに実現した。 目を閉じて佳織との濃密な時間を想い出していると、気がつけば、祐樹は電車に乗っていた。 （ハッ！電車の中・・・・と言うことは、次は佳織さんの住む街？） まもなく電車はホームに入った。 祐樹は駅名を確認してから電車を降りた。 「祐也〜マメに電話するのよ！」 「分かってるよ、母さん！だから大きな声で言わないで！」 「何、恥かしがってるのよ！子供のくせに〜」 「ハイハイ、じゃあ、また」 祐樹は声に聞き覚えがあった。 祐樹は青年に母さんと呼ばれていた女性に近寄っていった。 「佳織さん・・・・」 「エッ！？」 祐樹の呼びかけに佳織は振り向いた。 「・・・・・・・・まさか・・・・本当に、そうなの？」 「はい、祐樹です」 「ウソ・・・・20年よ・・・・あれから・・・・」 「えぇ、僕も34歳になりました」 「ゴメンなさい！あの後、主人が転勤になって・・・・結局、連絡するタイミングを失っちゃって・・・・それにしても、こんな偶然があるなんて・・・・」 「佳織さん、昔と変わらず、僕の理想の女性、そのままだ」 「エッ、もぅ、すっかりオバサンよ！恥かしいわ」 「そんなこと、本当にキレイで・・・・」 「ここじゃぁ・・・・家、すぐ近くなの、行きましょう！時間、ある？」 「えぇ」 佳織は祐樹を連れ駅を出て、自宅マンションに向かった。 佳織の住むマンションは３ＬＤＫで、駅から5分ぐらいだった。 「とにかくそこに座って！」 佳織は祐樹をリビングのソファに座らせ、飲み物の準備を始めた。 「祐樹君、すっかり大人になって・・・・素敵よ」 佳織は祐樹にコーヒーを出しながら微笑みかけた。 「それはそうと、駅で見送っていた祐也という青年は？」 「エッ！えぇ・・・・ひとり息子の祐也」 「祐也・・・・何か、僕の名前に近いですね」 「そう？ふぅ〜そうなの、祐樹君の祐をもらって付けたの」 「そうだったんだ・・・・あ、でも、どうして？」 佳織の表情が少し曇った。 「あなたのように素敵な男性になるように・・・・」 「今、大学生？」 「えぇ、大学２年・・・・」 「と言うことは・・・・19歳か20歳・・・・エッ！ま、まさか？」 「ふぅぅぅ・・・・そぅ、その、まさかよ」 「ご主人は？」 「勿論、自分の子供だと信じていたわ」 「エッ、そう・・・・うん？今、信じていたって、過去形？」 「えぇ、実は去年、交通事故で亡くなったの・・・・」 「そうだったんですか・・・・じゃあ、知らないまま・・・・」 「そう・・・・」 「僕に、20歳ぐらいの子供が・・・・34歳の僕に・・・・」 祐樹は複雑な思いだった。 しばらく無言の時間が流れた。 「それで、ご主人が亡くなって、今はどうしてるんですか？」 「えぇ、賠償金や保険金が下りて、生活はそんなに・・・・それに、わたしも仕事を始めたの！」 「そうなんですか」 「インテリアコーディ−ネーター、結構、評判いいのよ！祐樹君は何をしてるの？結婚は？」 「佳織さんにピッタリなお仕事ですね！僕はありふれたＩＴ関係の企画が仕事、結婚は５年前で、子供はなし・・・・」 「へぇ、最先端いってるのね！」 祐樹は佳織と会話をしながら、思案をめぐらせていた。 （異次元POSTで運命を変えてしまった・・・・僕に子供が・・・・さらにこうしている・・・・どうすれば？） 祐樹は佳織に告げるべき言葉を探していた。 「何を考えてるの？せっかく20年振りに再会できたのに・・・・しかも大人のオトコとオンナとして・・・・フッ・・・・まぁ、わたしの場合、オンナと言っても中年だけど」 佳織は自嘲気味に口唇の端を歪め、キッチンに立った。 「コーヒー淹れかえるわね！」 カップを手に佳織は祐樹に背を向けた。 祐樹の心中は、激しく思いが交錯していた。 （祐也君に父親と名乗るのは止めよう・・・・傷つけるだけだ。大学を卒業して社会に出れば、佳織さんから独立するだろう。ふぅ〜〜やっぱり運命かな・・・・あと２〜３年のうちに・・・・） 祐樹はゆっくりとソファから立ち上がり、コーヒーを淹れなおしている佳織の背後に回り、優しく愛情を込め、その細い両肩を抱き寄せた。 「アッ！どうしたの？祐樹君・・・・」 「何も言わないで・・・・何も・・・・こうするのが自然なんだ」 祐樹は両腕を佳織の前に回し、さらに包むように抱き締めた。 「祐也君がひとり立ちしたら・・・・一緒に暮らそう」 「エッ、ゆ、祐樹・・・・う、うん！」 佳織の瞳から熱い涙が溢れ、頬を濡らした・・・・。 |
| あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。 |
| 2007.10.27掲載 |
秋水さんの作品群→ |