| 19．美優ー１ 美貴と美優は双子として生まれた。 それが幸運だったのか不幸だったのか・・・・。 二卵性双生児だった美貴と美優は、あらゆる点で相反していた。 双生児がこれほどまで相違点が多いのは、稀なことだった。 幼い頃から姉の美貴は周囲に持て囃され、妹の美優は居るか居ないか分からないような感じだった。 美貴が結婚したのは、大学を卒業と同時だった。 大学の先輩で同じサークルだった香川 耕司がその相手だった。 だが耕司に興味を抱いたのは美優の方が先だった。 顔立ちも派手でファッションセンスのいい美貴は会話も上手く、美貴の周りにはいつも男たちが群がっていた。 サークルでも美貴はすぐに人気者となった。 ヘアースタイルも気にしない美優はいつも暗く、服装も地味で目立つことは無かった。 だが耕司は美優のコツコツと取り組む姿勢が好きで、誰も振り向かなかった美優に話しかけた。 「美優ちゃん、今度一緒に食事しないか？」 「エッ！わたし・・・・？」 「他に誰か居るのかい？今、僕の目の前に」 ハンサムでスポーツマンの耕司は、女子学生の人気の的だった。 そんな耕司に誘われ、美優は半信半疑だった。 「からかってるんですか？姉の美貴じゃないんですよ」 「見間違えるわけがないだろう、美優ちゃんと言ってるんだ」 美優は耕司の真摯な態度に、次第に惹かれていった。 しかし耕司がベッドを共にしたのは、美貴だった。 耕司が美優を誘っているのを知った美貴は、強引とも思えるアプローチで耕司を美優から奪ったのだ。 ・・・・・・・・耕司とふたりだけになったサークル室で、美貴は自慢の乳房を露わにし、耕司に迫っていった。 『ねぇ、わたし、前から先輩のことが・・・・お願い、抱いて！』 耕司が断れば大騒ぎをするつもりだった・・・・・・・・ そうなのだ・・・・いつもそうだった。 美優のモノはいつも美貴が横取りしてきたのだ。 幼い頃から、玩具も服もボーイフレンドも・・・・、美優は最初は抵抗していたが、次第に逆らえなくなっていた。 （結局、わたしは、姉さんの影・・・・そうなんだわ） 諦めなければ生きていけなかったのだ。 美優は大学を卒業後、広告会社に就職しイラストを描いていた。 コツコツと仕事をこなす美優の表現力は高く評価され、本人の認識とは相反し、関係者に注目されていた。 （最近、やっと呼吸が楽になったわ！） 美貴が耕司と結婚し、常に一緒で息苦しい状況から解放されたのだ。 （良かったんだわ・・・・これで、わたしの人生が歩ける！） 少しずつ自分に自信のようなものも芽生え、外観的にも評価が変わってきていた。 美優が25歳になった時、美優の作品が賞を取り、マスコミにも取り上げられるようになった。 名声、お金、オトコ・・・・全てに恵まれ始めた美優だったが、どうしても吹っ切れないことがあった。 （耕司さん・・・・優しかった耕司さん、なのに姉さんが・・・・） 身体を張って迫った美貴をどうしても許せなかった。 （いつもいつも、わたしのモノを横取りしてきた・・・・わたしがどんな気持ちだったか！姉さんにも味合わせたい！） 美貴は何とかして耕司と関係したかった。 そんなある日、会社の休憩室に見慣れないモノを見つけた。 （何？コレ・・・・エッ！異次元POST？ 『あなたの願いを叶えます。現在でも過去でも、あなたの望みを書いて投函してください。』 冗談にしては・・・・試してみる価値はあるかも） 耕司との接触機会を模索していた美優には救いの神だった。 美優が願いを紙に書いて投函した瞬間、美優は耕司と美貴の住むマンションの前に居た。 「ここは・・・・」 突然の現象に驚いた美優は、戸惑っていた。 「美優、美優ちゃん？」 信じられない気持ちで鼓動を早めていた美優をさらに驚かせた。 耕司が美優の背後から声を掛けてきたのだ。 「アッ！耕司さん！」 「どうしたの？珍しいなぁ〜こんなところで会うなんて・・・・最近、マスコミでも評判じゃないか！凄いなぁ〜やっぱり大学の頃からコツコツ頑張っていたから」 「そんなことないですよ！それより耕司さんこそ、今時分・・・・」 「あぁ、今日は会社を休んで、美貴を送ってきたんだ」 「お姉さんを・・・・？」 「そう、美貴、近所の奥さんたちと一緒に旅行に出かけたんだ。ここで立ち話も何だから、上に行こう」 そう言うと、耕司は美優をマンションの中に連れて入った。 マンションには、ふたりが結婚した当初に訪ねて以来だった。 「何か飲むかい？」 「いいえ、お構いなく」 美優はリクライニングの椅子に座った。 涼しげな感じのワンピースを着た美優は、長い脚を組んで座った。 「美優ちゃん、変わったね！」 「エッ、そう？」 「うん、変わったよ。凄くキレイになった」 「エェ〜ッ！ウソォ〜耕司さんもお世辞を言うのね！」 「お世辞じゃないよ！本当に・・・・」 「ダメよ！そんなことを言っても・・・・耕司さんがお姉さんの方を選んだんだから・・・・」 「・・・・・・・・、あの時は、どうかしていたんだ・・・・」 「今さら遅いわ・・・・」 「美優・・・・」 身体を寝かせ気味に椅子に座り脚を組んでいた美優の前に膝を付き、耕司は美優の素肌の膝に手をのせて言った。 （これもPOSTの力・・・・願いを叶えるってのは本当だった・・・・） 美優はスムーズな展開に得心していた・・・・。 |
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| 2007.11.5掲載 |
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