| 66．舞ー４ 舞が正真正銘の初体験をしたのは、高校１年の初夏だった。 運動部は陸上部に入り、文化部には写真部に入った。 その写真部の３年生に水尾 啓という部員がいて、舞はその啓に初恋をした。 ある日の夕方、部室の暗室から出てきた啓と会った。 「先輩、何を現像してたんですか？」 「あぁ、これさ！街に流れる川の表情・・・・」 「へぇ〜この街にも、こんな川の顔があったんですね！」 「うん、そうなんだ！」 「素敵です」 「エッ！」 「この写真も先輩も・・・・」 「舞ちゃん・・・・」 啓は舞の肩を抱き、ふたりは自然と口唇を合わせた。 「ゴ、ゴメン！」 「うぅん、啓先輩なら、わたし・・・・」 「舞・・・・」 啓は再び舞の身体を引き寄せ、激しく口づけを交わした。 舞の身長は160cmを超え、豊かな肉付きをしていた身体は、陸上の練習で適度に絞られ、無駄な肉が無くなっていた。 顔も大人の女性にも負けないほどの色艶を感じさせ、とても高校生には思えない肢体と容姿は男子生徒の間で評判だった。 啓と部室で口づけを交わした舞は、次の日曜日、啓の家を訪ねていた。 啓から写真集を見せたいと誘われたのだが、それが口実であることは、舞も承知していた。 「やぁ、２階に上がって」 この日、啓の家は夕方まで啓しかいないということだった。 ２階の啓の部屋はキレイに片付けられていた。 啓はアルバムを広げて舞に写真の数々を見せ、説明をした。 「先輩の写真には、１枚１枚テーマが明確に表れていますね」 「嬉しいなぁ〜舞ちゃんにそう言ってもらえると・・・・今度は舞ちゃんをモデルに撮りたいなぁ」 「エッ！わたし？わたしはダメですよ！」 「どうして？」 「だって、わたし、いつも表情が暗いし・・・・」 「大人っぽいっていう感じに見えるけどなぁ〜プロポーションは言うことないし・・・・」 「エッ、先輩・・・・」 啓は舞の身体を抱き、口づけをした。 無言の了解で、ふたりはベッドの上で裸になり抱き合った。 啓は舞の肢体の素晴らしさに圧倒されながらも、丁寧に口唇から耳、首、乳房へと愛撫を進めた。 「本当に素晴らしい身体をしてるんだね」 「イヤ、先輩、恥かしいから言わないで・・・・」 舞にとっては身体への愛撫は生まれて初めての経験だった。 好きな男に身体中を擦られ舐められ、舞は悦びに震えていた。 「入れるけど、いいかい？」 「・・・・・・・・・・・・」 舞は無言で頷き目を閉じた。 啓は若く勢いのある肉棒を舞の淫壷に挿入していった。 「あぁああああっ・・・・」 舞は啓の背中に手を回して引き寄せ、込み上げる快感に集中した。 啓は舞の淫壷の感触と、思ってもみなかった舞の反応に驚き、ひたすら腰を激しく前後に動かした。 僅か２〜３分後には、啓は堪えきれずに舞の淫壷に射精した。 それでも舞は悦びに震え、啓の身体の重みを心地良く感じていた。 だが次の瞬間、舞は天国から地獄に叩き落された。 啓は身体を起こして静かに言った。 「舞ちゃん・・・・こんなことをした後に言うべきじゃないと思うけど・・・・」 「エッ！何？」 「舞ちゃんの身体は素晴らしいし、アソコも凄くいいけど・・・・僕は今ガッカリしている」 「・・・・・・・・？」 「普通は喜ぶべきことだと思うし、僕が拘り過ぎなのかもしれないけど、高校になって間もない女の子が、ここまで感じて成熟してると・・・・」 舞は啓の言わんとしていることが、やっと飲み込めた。 翌日、舞は写真部をやめ、陸上一本に専念した。 （啓先輩はわたしのことを思ってくれて言ってくれた・・・・それは本当にありがたいと感じてるけど、やっぱりショックで・・・・） 舞にとっては啓とのセックスが初体験のつもりだったし、短い時間だったが、今までの経験の中で最高の悦びを感じていた。 心身ともに初めて充実した悦びを感じた舞だったが、啓の気持ちも理解できないことも無く、それ以来、高校生活では誰とも付き合うことは無かった。 大学になって恋愛もしたが、何となくセックスも経験し、舞は自分の身体や快感のコントロールも少しは出来るようになった。 セックスを適度に楽しむことも覚え、やっと普通の女になれた気がした。 だが高校の時の啓とのことが尾を引き、なかなか真剣な恋愛にのめり込むことが出来なくなっていた。 大学卒業後は化粧品メーカーの研究所に勤務した。 「肌のキレイな舞にはピッタリの仕事じゃない？」 同期入社の友達にはそう言われたが、舞はそこまで使命感を持ってはいなかった。 （偶然、就職できたからやってるだけ・・・・わたしの人生って、これからどうなるのか？） 思えば、花火の夜から舞の人生は荒波にさらされたのだ。 （普通に結婚したいけど・・・・受け入れてくれるひとがいるのかな？） 舞は毎日が惰性のように感じらていた・・・・。 舞ー５ 舞、22歳の夏、出先での仕事が早く終わり、昼食を済ませた舞は、一旦、住んでいるマンションに戻った。 昼間のマンションは人が住んでいる気配が感じられず、舞はエレベーターに乗ろうとした。 エレベーターのドアが開き舞が乗り込むと、見知らぬ男が慌てて乗り込んできた。 「何階ですか？」 「エッ、あ、すみません。８階をお願いします」 ８階は最上階で、舞も８階に住んでいた。 （誰かを訪ねてきたのかな？でも、この時間は、８階には誰も居ないと思うけど・・・・） そう思いながら８階のボタンを押した。 暫くして、エレベーターが突然ガタッと揺れ止まった。 「キャッ！」 舞の住むワンルームマンションのエレベーターが、６階あたりで急に止まったのだ。 「マイッタなぁ、故障か？」 一緒に乗っていたサラリーマン風の見知らぬ男は、すぐに非常ボタンを押して呼び掛けた。 「ウソだろ！何の反応も無いよ」 「ホント？」 舞も慌てて呼び掛けるが応答が無かった。 「閉じ込められたんだ・・・・」 舞は見知らぬ男とふたり、密室になったエレベーターに閉じ込められたのだ。 （まだお昼過ぎ・・・・ここの住民は皆、独身で働いてるから夕方までは・・・・エッ！と言うことは・・・・この人とふたりだけで・・・・） 舞は身体がブルッと震えた。 冷房も切れたエレベーターの中は蒸し暑く、すぐに汗が滴り落ちた。 男はサマースーツの上着を脱ぎ、ネクタイを外した。 「暑くないんですか？」 「エッ！えぇ、暑いです」 「フッ、変わったひとだな〜そう言いながら上着を着てる」 「アッ・・・・」 舞は仕事用のスーツの上着を脱いだ。 （このまま夕方までふたりきりだと・・・・） 舞は自信過剰では無かったが、この状況では見知らぬ男に襲われると思っていた。 （あの時も・・・・あの時も・・・・） 舞の脳裏に過去の痴漢に遭った状況が次々に浮かんでいた。 舞は何気なく男を観察した。 （20代半ば過ぎ？わたしより２〜３歳上かな・・・・真面目そうな感じだけど、見かけだけじゃ分からないわ！） 舞は流れる汗を拭うことも忘れていた。 「大丈夫かい？凄い汗だけど・・・・」 ブラウスが汗で肌に付き、乳房の膨らみを象っていた。 （マ、マズイわ！こんなのを見られて、どうしよう！？） 男は舞の傍に寄ってきた。 舞は衝動的に男を突き放した。 「ヤメテ！」 「はぁ〜？」 男は何が何だか分からない表情をしていた。 「わたしを自由にできるなんて思わないで！」 「フッ、アハハハハハ〜〜何かと思えば・・・・ハハハッ、自信過剰なひとだな！」 「エッ！？」 「僕があなたを襲うとでも思ったのかい？」 「だって・・・・」 「そんなことが過去にあったのかどうか知らないけど、男が皆、あなたを襲うと思ったら大間違いだよ！確かに、こうして見ると、結構いい女だけど、今はそれどころじゃないだろ？どうやってここから出るかを考えていたんだ」 「あっ、そぅ・・・・すみません。わたしったら・・・・」 舞は恥かしくて一層、汗を流した。 「今、どの辺りだと思う？」 「多分、６階辺りだと・・・・」 「そう・・・・６階の外のドア、手で開閉できるかな？」 「エッ！それは・・・・？」 「分かんないよね・・・・普段、そんなこと考えてテストしないよね！」 男は笑顔で舞に言った。 （こんな時に、いい顔してる！） 舞はこの時、胸がキュンとなるのを感じた。 男はエレベーターの天井を暫く見ていた。 「このまま待っていても、どうなるか分からないよね」 「えぇ、多分、夕方までは誰も気づかないと思うわ」 「ジッとしてて助けを待つのもひとつだが、その間、このエレベーターが安全だという保証はない・・・・あなたを先にあそこから上にあげるから、いい？」 「えぇ、分かったわ！」 舞は男の考えていることを理解し、何となくハイな気分になった。 「先ず僕の膝に乗って、あの蓋を押し上げて・・・・その後、僕の肩に足を載せて上に出るんだ」 舞は男の言ったとおりに実行し、何とか上にあがれた。 男は舞の靴や上着を放り投げ、ジャンプしてエレベーターの上部の開いた縁に掴まり、そのまま懸垂をするように身体を持ち上げ、外に出た。 （凄い・・・・何をしてる人なのかしら？） 舞は今の状況より男に興味を持っていた。 「さぁてと・・・・ドアは？」 男はオイルライターを点し、その灯りで周囲を確認した・・・・。 舞ー６ 運良く外への開閉扉が壁の上にあった。 だが人力で開くかどうかは分からなかった。 男は思い切り深呼吸をし、扉の中央の隙間に手を入れ両側に開こうと力を加えた。 「ウゥオォォォ〜〜〜！」 少し開いて止まり、その後、一気に開いた。 「わっ！ひ、開いたわ！」 舞は心底、感動していた。 男は先に舞を持ち上げて外に出し、自分は後から外に這い出た。 「ウフッ！」 「ん？アハッ、ハハハハハ」 「真っ白よ！」 「君だって！」 「エッ？あっ、ホント！フフッ、ありがとう」 「イヤ、とりあえず良かった」 「えぇ、すぐに管理会社に電話を入れるわ！わたしは８階に住んでいるんですが、あなたは？」 「僕は８階の杉山君を訪ねて・・・・」 「杉山さんなら、朝、出掛けて行ったのを見たけど」 「そうだよね！夕方まで帰ってくるわけないよね。ハハハ」 埃だらけの頭を掻いてはにかむ男の顔は汚れていたが、舞にはとても魅力的に見えた。 「じゃあ、とにかく、わたしの部屋でシャワーでも？」 「エッ！いいんですか？」 「いいも何も、このままじゃ、どうしようもないでしょ？」 「そりゃそうだ！でも危険かもしれませんよ！」 「そうね！狼を部屋に迎え入れるのは怖いけど・・・・」 「フッ、面白いひとだ！そう言えば、さっき、あなたを上にあげる時、素敵な乳房の他に素敵なお尻も見させてもらいましたよ！」 「あっ、そう！わたしは今、誇りまみれで白髪の老人を見させてもらってます！」 「フッ！ハハハハ〜〜じゃあ、早く元に戻ろう！」 男は舞を促して、舞の部屋に向かった。 舞は男に先にシャワーを使わせ、着ていたスーツの埃を落とし、濡れたタオルで軽く拭いた。 男は浴室から出てバスローブを着けた。 「お先に〜」 「あっ、そこにスーツを」 「すみません」 「いえ、じゃあ、わたしも・・・・そこに冷たいものがありますので、飲んで休んでいてください」 舞は着替えを持って洗面所に入っていった。 （普通なら警戒して、こんなこと出来ないけど・・・・あのひとなら大丈夫だわ！でも・・・・フッ、不思議ね。あのひととならって・・・・そう思ってしまうのはどうしてかしら？） 舞は身体を洗い流しながら、あれこれ男のことを考えていた。 まもなく浴室を出て着替えた舞は、改めて男に礼を言った。 「そう言えば、名前も・・・・わたしは川島 舞、あなたは？」 「僕は高野 耕治、杉山とは大学の同期で」 しばらく雑談し、耕治は舞の部屋を出て行った。 舞も少し休んだ後、研究所に戻った。 その後、何も変わることのない日々が続き、３年経過した。 だが舞の中では、今までとは違う感情が膨らんでいた。 （耕治さん・・・・もう一度、会いたいわ・・・・杉山さんに聞けば連絡先は分かると思うけど、わたしの方から連絡するのは・・・・） 舞は何にも出来ないもどかしさを感じながら悶々としていた。 そんなある日、エレベータの横に不思議なものを見た。 （エッ！異次元ＰＯＳＴ？何、コレ？） 舞は説明書きを読んで首を傾げたが、想いを投函することにした。 『偶然の出会いを・・・・』 投函することで少しは舞の気持ちも楽になった気がしていた。 その翌日、不思議なことが舞に起こった。 舞の乗ったエレベーターが突然ガタッと揺れ止まった。 「キャッ！」 舞はエレベーターに閉じ込められたのだ。 （このシチュエーションは・・・・異次元ＰＯＳＴにお願いした通りになったんだわ！） 舞は慌てて同乗した男の顔を確認した。 「あ、あなたは・・・・」 「エッ！あっ、あなたはあの時の・・・・」 舞は25歳、３年前と同じシチュエーションに遭遇したのだ。 「こんなことって・・・・」 「でも、今回は、状況が違うみたいだよ！」 『だいじょうぶですか？今、再起動させますので・・・・』 管理会社から非常対応の声が聞こえた。 「ウフッ、ホント！良かったわ」 「コレって、不思議な巡り合わせだよね？」 「エッ！えぇ、ホントに、不思議」 「僕らって、何か縁があるのかな？」 「そうね・・・・あなたはどう思う？」 「僕は・・・・この縁を大事にしたい。君さえよければ」 「わたしも・・・・」 舞は心の中で異次元ＰＯＳＴに手を合わせ感謝した。 その日から半年後、ふたりは結婚した。 舞は耕治に異次元ＰＯＳＴの話しをするが、耕治は笑って真面目に聞かなかった。 （いいの！あれが夢でも誰も信じてくれなくて・・・・） 舞はやっと呪縛から解かれ、幸せを手にした・・・・。 |
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| 2008.4.16掲載 |
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