| 72．渉ー１ 渉は現在30歳、結婚し子供も生まれ何の不満もない日々だった。 （仕事も大学時代からの希望通り・・・・僕は恵まれている。妻は優しく思いやりがあり、長男も去年生まれた・・・・まぁ、しいて不満があると言えば、妻を子供に取られたってこと。フッ、我が子に焼餅を焼いても仕方がないか！） 本当に全てが順調な渉だったが、過去にどうしても忘れられない女性が居た。 その女性の名は高樹 摩耶・・・・。 それは15年も前に遡る。 渉、15歳、中学３年、摩耶は19歳、音大の学生だった。 渉には仲の良い友人が２人居た。 猛と静男と言い、全くタイプの違う３人だった。 「なぁ、渉、俺たち、もうすぐ高校生だよな」 「何なんだ？そんな当たり前のことを」 「３人とも童貞だってことさ！」 「バカ！何をくだらないことを」 「静男は幼児趣味だから無理だろうが、渉、高校生になる前に、経験したいと思わないか？」 「う〜ん、まぁ、チャンスがあればな・・・・」 「誰か居ないのか？そういう相手」 猛に言われ、渉は憧れを抱いていた摩耶のことを想った。 （毎回、隣の優香ちゃんにピアノを教えにきている摩耶さん・・・・あの女性なら初めての相手として申し分ないけど、チャンスが・・・・） 猛はもう決意しているように言葉を続けた。 「俺は隣のクラスの渡部 美佳子、あの娘しか居ない！」 「エッ！オマエ、あのオテンバの美佳子がいいのか？」 「あぁ、俺みたいな運動しか能がない男にはピッタリさ！」 「僕は・・・・同じ町内の美雪ちゃんかな？」 「はぁ〜？静男、オマエ、その美雪ちゃんて誰なんだ？」 「同じ町内に住む娘で、本当に可愛いんだ！まるでリカちゃん人形みたいにキレイで可愛いんだ」 「それって、いくつなんだよ？」 「確か、小学校４年生だから、10歳かな？」 「またか！静男は毛が生えていないパイパン好きだからなぁ」 「いいよ、恥毛が生えていないのは・・・・」 「それで、その美雪ちゃんとセックスできるのか？」 「うん、多分・・・・この間、してもいいって言ってたから」 「おぉ〜！そりゃスゲェや！渉は？」 「僕は望みが薄いかも・・・・ピアノの先生の摩耶さんて言うんだ。隣の女の子の先生で、いつ見ても素敵で」 「ふぅ〜渉は憧れで終わりそうだな」 「じゃあ、猛はどうなんだ？オテンバの美佳子は」 「おぅ！近いうちに無理でも姦るさ！」 高校受験を前にした中学３年の夏休みの会話だった。 結局、渉だけが童貞のまま高校に進学したのだった。 あれから15年、渉の初恋とも言える摩耶の近況は知らない。 （４歳年上だったから、今は34歳か・・・・結婚したのかな？戻れるものなら15年前に戻って、摩耶さんと初体験したいなぁ〜） 渉の初体験は高校２年の時で、同じクラブの後輩とだった。 後輩も初めてで、ぎこちなくアッと言う間に終わった。 （痛がるばかりだったし、僕も入れたらすぐだった。もっと印象に残る初体験だったら願わないけど・・・・摩耶さん・・・・） 渉は摩耶となら、素晴らしい初体験になっていただろうと思った。 そんな渉の前に異次元ＰＯＳＴが現れた。 （エッ！？何だ、コレは・・・・？） 渉は急に現れたＰＯＳＴのようなものに驚きながら、書いてあった文章に目を走らせた。 （異次元ＰＯＳＴ、あなたの願いを叶えて差し上げます。紙に願いを書き投函するだけです。過去でも現在でも、あなたの願うような結果が得られます・・・・。信じられないが・・・・急に現れた事実からして・・・・） 渉は紙片に想いを書いて投函した。 『15年前に戻り、ピアノの先生だった摩耶さんと初体験したい。できれば、摩耶さんと激しいセックスがしたい。お互いに一生忘れられないような淫らで激しいセックスが・・・・。それと・・・・出来れば、今の摩耶さんとも再会して、昔を思い出して、一度限りのセックスもしてみたい』 何とも贅沢な願いだったが、ダメ元だと思って投函した。 渉が異次元ＰＯＳＴに願いを投函した翌日は休日だった。 渉は11時頃に起きた。 （今日は実家に居るんだった） 昨日から渉の妻子は実家に泊りがけで遊びに行っていた。 渉は顔を洗い身支度を整え、散歩に出かけようと外に出た。 その時だった・・・・ （エッ！） 外に出た渉の目に映ったのは、隣の家を出る摩耶の姿だった。 （も、戻ったんだ！） 信じられない気持ちだったが、確かに摩耶はそこに居た。 同時に渉は自分の姿を確認した。 確かに中学３年の夏の日の姿だった。 摩耶は隣の家に挨拶をし、歩いてきていた。 ポニーテールに小さな卵型の顔、目は二重で大きく、小鼻は小さく、口も小さな顔立ちだった。 身長は160cm前後でスリーサイズは見た目には分からなかったが、ジーンズにブラウス姿から判断して、プロポーションは悪くはないように思えた。 いつも自分の前を通り過ぎて帰っていく摩耶の後姿を見送り、声ひとつ掛けられない自分を情けなく思っていた。 （真面目そうで知的な美人・・・・こんな女性とできるのか？） 渉は想いを込めて声を掛けることにした・・・・。 渉ー２ 目の前を通り過ぎようとする摩耶に、渉は思い切って声を掛けた。 「あ、こんにちは〜今、レッスン終わったんですか？」 「えぇ、そうよ！あなたは高校生？」 摩耶はキラリとした瞳で渉を見て、知的な笑顔で答えた。 「いえ、中３です」 「じゃあ、大変ね！来年は高校受験なのね？」 「はい！あなたは音大の学生？」 「そう、Ｔ音大１年、ピアノのレッスンはアルバイトよ」 「凄いなぁ〜あっ、そうだ！この後の予定は？」 「別に無いけど・・・・？」 「じゃあ、僕の家でもっと話しを聞かせてくれませんか？今日は僕以外に誰も居ないし、軽い食事なら僕が・・・・」 「フッ、いいわよ！いつも顔を合わせても挨拶だけだものね！」 渉の誘いを摩耶は簡単に承諾した。 （こんな誘い方じゃ、本当は上手くいかないと思うけど、きっとあのＰＯＳＴに投函した願いのせいで・・・・） 渉は30歳の意識のまま15歳の自分の初体験を楽しもうと、今からドキドキしていた。 リビングに通された摩耶はソファに座っていた。 「何か飲みませんか？」 「そうね・・・・何か冷たいものでもあれば」 「じゃあ、オレンジジュースでいいですか？」 「えぇ」 渉は氷を砕いてグラスに入れ、濃縮のオレンジジュースを注いだ。 「はい、どうぞ」 「へぇ〜わざわざ氷を砕いたの？」 「あ、はい。その方が美味しく飲めると思って」 「あなたって15歳の少年じゃないみたい・・・・」 「そうですか？あっ、あなたの名前は？」 「高樹 摩耶、19歳よ」 「僕は井上 渉、15歳、摩耶さんと４歳しか違わない」 「そうね。大学生と中学生って言うと、大人と子供って感じだけど、４歳違いって言うと、あまり変わらないのね」 「えぇ、23歳の僕と27歳の摩耶さんが結婚しても不思議じゃないかも」 「エッ！それはどうかな？確かに渉君はわたしより背も高いし逞しいけど、こうして向かい合ってると、やっぱり差を感じるわね」 「そうですか・・・・じゃあ、その差を無くすにはどうすれば？」 「そうね・・・・」 摩耶はジュースを飲みながら思案していた。 渉は真面目に考えてる摩耶の顔に見とれていた。 （本当に僕の好みの顔・・・・他人には面白くもない顔かも知れないけど、僕には理想的だ） 摩耶は自分の顔を見つめている渉に気づいた。 「わたしの顔に何か付いてるの？」 「エッ！」 「そんな風に見つめられてると恥かしいわ」 「あっ、すみません！つい・・・・あまりにも摩耶さんが素敵で」 「エッ、それって真面目に言ってるの？」 「はい、本当にそう思います」 渉は毅然とした顔で摩耶を正視した。 「フフッ、渉君って不思議ね！そういう目で見られると、何か変な感じ・・・・４歳の差を埋める方法だったわよね？」 「えぇ、そうです！僕と摩耶さんの年の差です」 「お互いにお互いの年齢を忘れて、ひとりの男と女になることかな？」 「オトコとオンナ・・・・理屈ではなく、具体的に言うと、どうなるんですか？」 摩耶は少し困った顔をしたが、渉に向かって答えた。 「渉君、ひとつ聞いてもいいかな？」 「エッ！はい、何でも」 「渉君、わたしのことをどう感じる？」 「さっき言ったとおり・・・・素敵な女性だと思います」 「それだけ？」 「それだけって・・・・？」 「わたしはオンナ、そして渉君はオトコ・・・・ひとりのオトコとして、ひとりのオンナのわたしをどう思う？」 渉は麻耶の言った言葉を繋げて考えていた。 渉は摩耶の謎掛けを解いて答えた。 「ひとりの男と女になることは、年齢差を埋めること・・・・そして男としての僕は、女の摩耶さんを求めてる」 「求めてる・・・・？わたしって、性的に魅力があるってこと？」 「えぇ、僕にとっては充分過ぎるほど」 「そう・・・・誘いにくいって言われるけどなぁ、わたし・・・・生真面目そうな顔が近づきにくいって」 「僕が感じる摩耶さんの魅力のひとつは、その表情であり雰囲気です。他の人の見方はどうあれ、僕にはとても素敵に見えるし、こうして年下の僕を対等な目線で話ししてくれる優しさは、女性として最高の魅力だと思います」 「へぇ〜渉君て凄く大人っぽい見方をするのね・・・・」 渉は少しドキッとした。 （どう見ても15歳、30歳だと気づかれるわけがない！） 摩耶の瞳に妖しい女の光りが見えた。 「渉君・・・・女の人と経験あるの？」 「エッ！いえいえ、全く・・・・もし出来るのなら、その経験は摩耶さんのような女性としたいです」 「わたしでいいの？」 「いえ、摩耶さんとじゃないと経験しません！」 「フッ、それじゃ、わたしがＯＫしなければ大変ね。渉君は一生、童貞のままになっちゃうのね！」 「そうです！何とかしてくれます？」 「フッ、負けたわ！わたしで良ければ・・・・でも期待しないでね！わたしだって、そんなに経験があるわけじゃ」 「いえ、摩耶さんとなら、僕は充分に満足です」 渉は摩耶を自分の部屋に連れて行き、カーテンを引いてエアコンをＯＮにした・・・・。 |
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| 2008.5.10掲載 |
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