１．お屋敷

　家の庭木としては、大きすぎるような栗の木を奇麗に手入れされた庭。
　日の光も遮られ、冷たく静かな佇まいの旧家。
　暑い西日が刺す午後。
　大きく立派な門をくぐり、香織は勝手口へ急いだ。
「ただいまぁ〜」
　戸口を開けると芋の皮を剥く喜代が台所に立っている。
「お帰りなさいまし」
　振り向くこともなく忙しく手を動かせている。
　ローヒールの靴を脱いでいる香織に喜代が言う。
「小嬢ちゃま、茶の間でお母さまと繁さんがまた何やら言い争ってられますから、ご挨拶は顔を出さないようになさいませ」
　香織はコクンと歪んだ笑みでうなずき、黒光りする床をストッキングの素足で、茶の間とは別の扉を開けて奥へ行く。
・
「日のあるうちから、こんなこと、いけません」
　沙耶香は拒んでいる。
　繁造は、抗う沙耶香の堅く結ばれた着物の帯に手をやる。
・
　茶の間を避けて、暗い畳の部屋をいくつも渡り、茶の間に奥から近づく香織。
　茶の間からは、サワサワとした衣擦れの音と、乱れた息づかいが密かに聞こえてくる。「ただ今、帰りました」
　襖越しに香織が声を掛けると、茶の間は急に静かになる。
　しばらくすると、
「香織、帰えったの」
　息の詰まるような、やや上気した母、沙耶香の声。
　香織は、踵をかえしスタスタと茶の間を離れた。
　息をひそめ、香織の足音を追う茶の間。
　香織の足音が遠ざかり静かになると、
「さあ、もお行って頂戴」
　胸元を整えながら命令口調の沙耶香。
　繁造はしぶしぶ体を離す。
「何時までも逆らってると為にならないぞ」
「何を逆らっているというの、好きにしてるじゃないですか」
　沙耶香は乱れた裾と黒髪を、白い手で整える。
「俺は、女が欲しい訳じゃない・・・」
　凛として居住まいを正した沙耶香に、繁造の言葉はなかった。

２．血族

　栗屋敷と呼ばれる旧家、そこは沙耶香の父、隆治の手により栄えた。
　繁造は隆治の下で働き、栗屋敷から見渡す梨山の頭領として使えていた。
　隆治の女癖の悪さは、この地でも有名で女遊びは数知れずあったが、美人で名を馳せた芸者、お静を身ごもらせてしまった。
　さすがの隆治も、これには手を妬き、嫁に迎える事で解決した。
　お静の男癖も大したもので、隆治の嫁に来てからはおとなしかったが、芸者当時は身体の関係の無い客が、いないほどである。
　大きな屋敷であったが、淫蕩な血族にはあまりにもあけすけな環境だった。
　隆治とお静の睦み合いは、沙耶香をより早熟にし、その血を目覚めさせていた。
　沙耶香が１６の時、母、お静は不治の病で他界した。
・
　お静が居なくなった栗屋敷。
　沙耶香は母に似て、稀に見る美人に育っていた、血筋である。
　沙耶香が受け継いだのは、姿かたちだけではなかった。

　疼く身体を持て余し、隆治の寝室に足を運ぶ沙耶香。
　すやすやと寝床につく隆治の掛け布団をめくり上げると、寝巻きの裾を手繰り萎えた一物に顔を近づける。
　女遊びに明け暮れた隆治の一物が目を覚ます。
　隆治に跨り、怒張となった一物を身体に納める沙耶香。
「うっ」
　いまだ、はっきりと目の覚めやらぬ隆治がうめく。
　沙耶香の腰が、萎えさせぬとばかりに、くなくなと激しくうねる。
「あっ、あっ、あっ」
　沙耶香は肉芽の先を、隆治の繁みに擦りつけるようにスライドする。
　さすがに目覚め、意識を取り戻し意思のある眼差しの隆治。
「おっ、上手いぞ」
　沙耶香の瞳を見詰め、あっさり実の娘との性交を肯定してしまう隆治。
「おとうさま、うっ」
　沙耶香もしっかり見詰め返しながら大きく果てた。
　これでも、生身の男を相手にしたのは初めての沙耶香。
　初めての相手に、父を選ぶのは淫乱な血の成せる業であったのか。
　陰湿で背徳な関係は、この時からはじまった。


３．淫畳

　栗屋敷の夜は淫れていた。
　女遊びでならした隆治、沙耶香に性の喜びを覚えさせるのに、そう日は掛らない。
　栗屋敷に日が落ちると、隆治は沙耶香の寝床に忍び込む。
「今日は、いやっ」
　抗いを見せる沙耶香、隆治の手は止まらない。
「あっ」
　スルスルと腰紐を解き、白い素肌を露わにする。
　鼻筋の通った卵型の小ぶりな顔立ち、細い首に重いほどのたわわな胸の膨らみ、ほのかに香る雌臭、どれをとっても隆治の昂ぶりを強く誘っている。
　隆治は、沙耶香の頬に手をあて、厚く温かみのある唇に顔を近づける。
　唇の柔らかさを確め会うと、舌先で沙耶香の唇を割った。
　熱を持った舌と舌が絡み合う。
「うぐっ」
　舌の裏側を隆治のざらついた舌が擦れ合う時、遠退く意識を感じる沙耶香。
　舌を絡め合ったまま、隆治の手は首筋を撫ぜ、胸の膨らみに辿り着く。
「あっ」
　抗う意識は陶酔のなかに薄れ、身体を反応させる。
　沙耶香の声に、昂ぶり積極さを増す隆治。
　胸を這う手は、するすると下へ行く。
　白い小さな布切れ越しに、女の壺を愛撫する。
「はあっ」
　縦筋をなぞる厳つい指に反応する沙耶香。
　飽きることなく何度も縦筋を往復する指。
　すでに唇は開放され、隆治は自由にされている。
　胸の頂きにあるしこりを持ったピンクの乳首を吸い上げる。
「あっ、もっと強く」
　抗う事も忘れ、身体の淫らな反応に溺れていく沙耶香。
　要求に応えて、盛り上がるようにしこった乳首を甘噛みする隆治。
「うふぅ〜ん」
　甘えた声を漏らし、腿をヒクッと反応させ陶酔を深める沙耶香。
　厳つい指は、白い布切れを除け、ぬめった粘膜の壺に押し進む。
「あっ」
　パタンと音がするほど強く腿が閉じられ、じわじわと開かれる。
　沙耶香の反応の良さに、気を好くする隆治。
　ぬめった肉壺の入口を、浅く休みなく往復する指。
「あっ」パタン
　でたらめな周期で、閉じられる白い腿。
　腿に挟まれた指の動きが止まると、じわじわと開かれ動きを待ちわびる。
　何度も何度も沙耶香の腿は閉じられ、開かれる。
　隆治の指が止まり、唇が二つの乳首と窪んだ臍を行き交うと、沙耶香の腰が指を求めるようにクネリだす。
　クネリと共に閉じられる腿、じわじわと開かれクネリだす。
「あぁ〜、いっ、いい」
　突き上げられる腰。
「何が良いんだ、沙耶香」
「あっ、気持ちいい〜〜、お願い、指を・・」
「指がどうした」
　くなくなとクネル腰。
「いやぁ〜ん、あっ、もっと、もっと動かしてぇ〜ん」
　隆治の指に、深く陶酔し翻弄される沙耶香、すでに血の関係など意識になく動物としての雌としての昂ぶりに溺れていく。
　隆治の指は痙攣したように固く突き出され、潤んだ肉壺に深く突きたてられた。
「あっ」
　腿を強張らせ、指に反応する沙耶香。
　指の往復が開始され、手の平は肉芽のしこりを感じ取っている。
　腿は閉じられることがなくなり、雄を迎えるように大きく開いて待機する。
　伸びきった指の往復は続き、膝と背中を支点に沙耶香の腰は上下する。
「あっ、・・・あっ・・・」
　意識なく指に反射して揺り動く腰、腰に合わせて甘い喘ぎを洩らす沙耶香。
　肉壺は、別の生き物のように蠢き指を締め上げる。
　指の往復が、淫汁にふやけるほど続く。
　隆治の指先に届くほどまで下りてきた子宮。
　その、しこりが隆治の指に当たるようになったころ。
「あっ、あっ、あっ・・・・」
　沙耶香の喘ぎは忙しく、止めどなく吐き出される。
「あっ、だめぇ〜っ、あっ、いくぅ〜〜、あっ、あっ、あっ、いやぁ〜〜〜・」
　高く突き上げられた腰を、引き攣るように堅くこう着させ、奈落の底に落ちていく。
　全身に玉のような汗を吹き出す沙耶香。
　隆治は白い布切れを剥ぎ取り、腿を開かせ割り込んでいく。
　再びしこった乳首を含み、舌先で弾きだす。
「あぁ〜〜」
　絶頂の余韻にまどろみながら隆治の愛撫に身を任せる沙耶香。
　乳輪をなぞるように舐め上げ、吸い上げる。
　噴出した汗を吸い取るように、脇腹から手入れされた脇へと舐め上げる。
「あっ」
　沙耶香の秘肉は喘ぎとともにヒクついている。
　隆治の舌は、ひつように沙耶香の全身を這い回る。
　薄く恥らう繊毛の上に円を書き、含んだ繊毛を吸い上げる。
　膝頭をクルクルと舐めては、吸い上げる。
　足指を含み、小股をこそばすようにチロチロと愛撫する。
　沙耶香の余韻が醒めたころ、隆治の目線は花園に向けられる。
　腿を開いた花園は、花弁を開かせ秘溝をも口を開き、紅色に充血した秘肉を覗かせている。
　肉壺の端から滴る淫汁は、会陰から菊壺を濡らし黄色いの光に照り輝いている。
　隆治は輝く淫汁を、菊壺の下から舐め上げる。
「あっ」
　驚くような喘ぎで、隆治の頭を白い腿が鋏つける。
　痛いほどの締め付けを、こめかみに感じた隆治の動きが止まる。
　腿の締め付けがゆるむと、花園のぽってりした両脇を大きく、ぐるりぐるりと舐め舞わす。
「はあぁ〜」
　気を吐くような喘ぎで、ヒクヒクと腿を痙攣させる沙耶香。
「あっ」
　隆治の舌先が、肉芽の上を通過するたびに甘い喘ぎで、秘肉が喰い締めるようにヒクついている。
　隆治の舌は、秘口の淵を小さく、くるくる回転させてくる。
「あぁ〜〜〜」
　間延びした喘ぎで、舌先を追うように腰が動きだす。
くなくなと器用に蠢く腰の動きに戸惑う隆治は、首を伸ばして肉芽を掬い上げていく。「あっあぁ〜」
　切ない喘ぎで腿を閉じ合わせ、隆治の頭を締め付ける。
　隆治の舌先は、皮から突き出た小さな肉芽の尖った先をひとしきり舐めまわす。
　沙耶香は腰は高く浮かせて舌先に押し付けると、それでも足りないのか両手を伸ばし隆治の頭を抱えてしまう。
「あっ、あっ、あっ、もっとぉ〜〜」
　肉芽が舌先に弾かれるたびに、昂ぶる喘ぎを上げる沙耶香。
　淫婦のごとく、頭を抱えて揺さぶり動く腰を止められない。
「あっ、いい、あっ、もうだめぇ、あっ、またいくっ、うっ、いくぅ〜〜〜〜」
　視点の定まらない瞳を見開き、深い奈落に落ちていく沙耶香。
　朦朧とした意識には、薔薇色の悦楽だけが支配する。
　心地よい、淫らな余韻にまどろむ沙耶香。
　弛緩した沙耶香の身体を自由にする隆治。
　舐め上げたはずの秘口は、再び溢れた淫汁で濡れ光り菊壺を超えて滴っている。
　隆治は、猛り狂った強張りを、花園の輝く淫らな蜜壷に含ませる。
「あっ」
　雁首を埋めると、蜜壷は迎えるように口を開き、喘ぎと共に喰い締める。
　抗うような喰い締めに、心地よい感触を覚える隆治。
　熱くヌメついた肉壺の抗う感触に、割り裂くように押し進む強張り。
「おおっ」
　思わず歓喜の声を洩らしてしまう隆治。
　遊び慣れた隆治も、これほど都合よく締め上げる肉壺は初めて、たとえようの無い快感に歓喜し身悶える隆治。
　沙耶香の胸に覆い被さっていく。
　一突きごとに上昇する快感。
「あっ、あっ、あっ」
　沙耶香の喘ぎは釣鐘のように、漏らすことなく突きに合わせて返ってくる。
　フー、フーと呼吸を整え始める隆治。
（このままでは、ぬかれてしまう）
　気を取り直し、てんぽ良く腰を振り、沙耶香の面持ちを伺う隆治。
「あっ、あっ、あっ」
　強張りにくる、きつい締め付けの周期が短くなってくると、激しく細かい往復に切替えた。
「あっ、それ、それいい〜〜っ」
　止めどなく襲ってくる昂ぶりに身悶える沙耶香。
　腕を伸ばして、隆治の背中に手を回し、頂上への準備とばかりに身体を安定させる。
　隆治はここぞとばかりに、ズコ・・ズコ・・と大腰を使う。
「あっ、・・あっ、・・あっ、・す・ごい、あっ・・あっ」
　隆治の突きに合わせて、身体を揺する沙耶香。
「いくぞっ」
　隆治が宣言すると、苦しげに、うなずく沙耶香。
　激しい大腰を続ける隆治。
「いくぞっ」
　小さく囁きかけると、隆治は強張りをドクドクと脈打たせ性を放つ。
　待っていたかのように沙耶香は、隆治の背中にしがみつき宙に浮かせた腰を振りつけ後を追う。
「おおぅ」
　放った強張りに、沙耶香の蜜壷は強烈な締め付けを開始し、隆治はうめいた。
「うぐぅっ」
　これが最後と沙耶香は、抑制を解き放ち、きつく永い締め付けと共に、獣のようなうめきでイき果てた。
・
　沙耶香には処女の痛みも無く、隆治を迎え入れる肉棒の快さは強まるいっぽうだった。
　沙耶香の身体は、薄皮を一枚一枚剥がすように、隆治と身体を重ねるたびに新しい快感を覚えていった。