小春日和の午後、僕はいつものように客先に出掛け、会社に戻る途中だった。
　信号待ちで停車していると、交差点の左から右に横断歩道を高校生らしき制服の少女が過ぎようとしていた。
　少し肌寒い風に柔らかそうな髪をなびかせながら自転車を走らせていた。
　その愛くるしい横顔何気なく目で追い、どういう訳か釘付けになってしまった。
（なんなんだ？・・・親子ほどに年の離れた娘に色気を出して・・・）
　僕は自分が信じられないほど心臓が早鳴りしているのを感じていた。
　まもなく信号が変わり、直進して帰る予定を変更して、彼女の後を追った。
　追い越さないように途中途中で一時停止を繰り返しながら慎重に車を走らせた。
（それにしても・・・まだ１時過ぎ・・・・・・学校は半日じゃないよな〜？）

　やがて住宅街の一角に建っている二階建ての家に入っていった。
（立花・・・か・・・）
　表札を眺めながら中の様子を何気なく見遣り、少し離れた空き地に車を停めた。
（彼女の他に誰か居るのかな？）
　周囲の家は新興住宅地らしく、ローン返済の為の共稼ぎをしているのか、人影は見当たらず閑散とした雰囲気だった。
　僕は気配を消すようにしながらも周囲に不自然さを感じさせないように彼女の入った家の周囲を歩きながら観察した。
　彼女の部屋は二階のようだった。
　先ほど見たときは閉まっていたカーテンが開けられていた。
（ふふ〜ん・・・あの部屋か・・・）
　そうこうしている時、ふとポストに目が止まった。
　名前がふたりしか書かれていない・・・。
（立花 真弓・由香）
（ん？・・・親父さんは居ないのかぁ・・・）
　僕は思い切って玄関のチャイムを鳴らした。
「は〜ぃ、少々お待ちください」
　彼女の声だった。
　まもなくドアが開き、あの愛くるしい顔が目の前に現れた。
「巽先生ですね？お待ちしていました。どうぞ、お上がりください」
「・・・・・・・」
　一瞬、誰のことかとまごついたが、他には誰もいないので自分のことだと思った。
　由香は、少々落ち込んだような表情と声で僕を迎え入れた。
（誰かと間違えているようだ・・・どうしよう・・・まぁ、いいか）
　僕は後のことは後で何とかなるだろうと中に入った。

「すみません、わざわざ来ていただいて・・・どこがいいでしょうか？」
　何を言っているのか皆目検討もつかなかったが、疑われてもマズイので
「そうですねぇ・・・邪魔をされないところなら、どこでも・・・」
「それでは・・・一階だと誰が来るか分からないので、二階のわたしの部屋に・・・」
　由香は先を歩いて階段を上がった。
　由香の白く長く伸びた両脚を見上げながら僕も後に続いた。
（きれいな脚だなぁ〜・・・付け根まで見えそうだ・・・）
　僕は期待と不安でドキドキしていたが、一段一段ゆっくり昇った。
（どうしよう・・・襲おうなんて思ってなかったのに・・・）
　部屋に入ると、由香はカーテンを閉め、床に座った。
　彼女の部屋には、勉強机とベッド、タンスと小さなガラステーブルが整然と配置されていた。
「保健の先生から巽先生を紹介され、今日、来ていただいたのですが・・・何から話せばいいのか・・・」
　僕は努めて平静を装い、医者であろう巽先生になりきることにした。
「先生が優秀なカウンセラーで、高校生世代の悩みや相談に熱心だとお聞きして・・・」
「・・・・・・・」
　僕は形だけ装うために胸のポケットから手帳を取り出し、真剣な眼差しで彼女に正対した。
「わたし、義理の父が亡くなってから、精神が不安定で・・・先生はわたしが何を話しても秘密は守っていただけるんですよね？」
　由香の瞳は不安な色でいっぱいになっていた。
　僕はテーブルを挟んで彼女の斜め横に座り、彼女に優しい笑みで頷いてみせた。
「大丈夫だよ、今日のことは君と僕とふたりだけの秘密だから、安心して・・・」
　由香は僕の言葉に少しの安堵感を覚えたようで、言葉を続け始めた。
　階下でチャイムが鳴ったようだが、由香は邪魔されるのが嫌なのか無視をした。
（多分・・・本物の巽先生だろうな、諦めて帰るだろう）
「部屋を暗くしたほうが話しやすくないかな？」
「えっ？あぁ〜はい！」
　由香はカーテンを閉めると真っ暗になった部屋の電気の小玉だけを灯けた。
　部屋の中が暖かいオレンジ色で包まれた。
「さぁ・・・これで落ち着くだろう？・・・ゆったりとして、順を追って話して・・・」
「実は・・・亡くなった父は母の再婚相手で、わたしとは血がつながってなく、去年、亡くなるまで・・・母が居ないとき・・・」
　由香はそこまで言うと言葉に詰まり小刻みに身体を震わせた。
「大丈夫だよ・・・ここには君と僕しかいないのだから・・・深呼吸をして・・・」
　由香は緊張した目を閉じ、大きく息を吸い込み、ゆっくり吐いた・・・。
「高校生になった頃から・・・去年亡くなるまで・・・義父に・・・犯され続け・・・母にも言えずに・・・・」
　愛くるしい顔からは想像できない事実を聞かされ、正直戸惑いを感じた。
（えっ？こんなに可愛い雰囲気なのに・・・犯されていたなんて・・・）
「義父が亡くなって、もう、あんな思いはしなくて済むとホッとしていたんですが・・・」
　また、言葉が途切れた。
「ん？どうしたのかな？・・・何があったの？」
「・・・・・・・・変なんです、わたし・・・」
「何が・・・変なのかな？」
　由香自身、どう伝えればいいのか、困った様子で紅潮していた。
「義父が亡くなって１ヶ月ほど経った頃から・・・夜、寝ようとしても寝付けず・・・アソコがおかしくて・・・・・・、・・・気が変になりそうで・・・」
「えっ？・・・」
「・・・・・・あんなに嫌だと思っていたのに・・・義父と関係が無くなってから、アソコが疼いて眠れず・・・最近は、昼間でもおかしくなるんです、フゥ〜〜」
　やっと告白したという安堵感からか、大きな溜息をついて僕の目を見た。
　端整な美形な顔にうっすら汗が滲んでいた。
　大きな瞳と小さな唇・・・そんなきれいな顔から、しかも１８歳の娘から出る言葉とは・・・。
　僕は少しばかり焦りを覚えた。
「自分で慰めても・・・欲求が増すばかりで・・・かといって、誰かを求めるのも怖くて・・・」
「・・・・」
「変ですよね？先生・・・」
「そうだったんだ・・・解放感から虚無感・・・自分の中での矛盾・・・苦しいでしょうね？」
「えぇ、もう、どうしていいか分からず・・・」
　部屋を閉め切った為か暖房が強く感じられ、少し、暑く感じてきた。
　由香も上に羽織っていたカーディガンを脱ぎ、胸の開いたシャツとミニスカートの格好で哀願するような困った瞳を潤ませて、高校生とは思えない色香さえ感じさせていた。
　僕は自制心の塊のような気持ちで、何とかしてやろうという思いになっていた。
「今の自分を認めて納得する必要があるようだね・・・」
「・・・・・・・・」
「つまり、自分では、そんな自分は自分じゃない！という気持ちがある反面、もしかしたら・・・義父との行為をいつの間にか受け容れていたのでは・・・という怖れも感じ、自分では、何が何だか分からない状態のようだね？」
「そう・・・そうなのかも知れません・・・母にも申し訳ないような・・・・・・」
（どうしようか・・・このままでは、この娘は・・・・・・）
　しばらく思案してから、
「君は・・・自分がどうなればいいと、思っているのかな？」
「このままでは、きっと狂ってしまいそうで・・・とにかく義父の存在がわたしの中から消えれば・・・・・・落ち着くと思うのですが・・・」
　由香の瞳は涙で溢れそうになっていた。
　僕は見ていられなくなった由香を引き寄せ力強く抱きしめた。
「落ち着くまで・・・こうしているといい・・・」
　由香はしばらくの間、僕の腕の中で呼吸を荒くしていたが、やがて顔をあげて、
「もう大丈夫です・・・、少し、落ち着いた感じです」
「そう、それは良かった・・・でも、完全に平静を取り戻すには、少し、荒治療が必要かも・・・」
　いつの間にか僕はすっかり精神科医を気取っていた。
　適切かどうかなど分かっていなかったが、思いつくままに話をつなげた。
「何でも・・・、治るんなら何でもします」
「誰かに義父にされたのと同じ事をしてもらい、もう義父はいないんだ・・・と、 自分自身で確かめる必要があるけど・・・」
「えっ！・・・でも・・・怖いし・・・誰に頼めばいいんですか？頼めませんよ、こんなこと・・・」
「そうだね・・・」
　僕はすぐにでも彼女を抱きたい衝動に駆られたが、彼女の気持ちを待った。
「先生・・・」
「ん？・・・どうした？」
「先生が為さるのでしたら・・・治療ですよね？」
　正直・・・シメタ！と思った。
「その代わり、僕の言うことには無条件で従ってもらうよ、いい？」
　真面目に僕の手で何とかしてあげたいという気持ちもあり、複雑な心境で彼女を見つめた。
「・・・先生なら・・・先生なら・・・治療だから・・・・・・でも・・・」
　由香は思い切って先生に委ねようと思う半面、不安感が胸いっぱいに広がっていた。
「ちょっと辛いかもしれないけど、義父さんがしたことを話してくれるかな？ そうじゃないと僕が君をどうしたらいいか判断がつかないから・・・」
　由香は暫く思い悩むような表情をして、ポツポツと話し始めた。
「・・・・・・最初は・・・母が会社の旅行で一晩留守にしたとき・・・・・・・・・」
　由香は、最初、義父に力づくで犯されたこと・・・
　母親に話せば母親が傷つき由香を許さないと脅かされ言いなりになってしまったこと・・・それからは毎日のように母親がいない時間を見計らっては、ベッドの上だけでなくキッチンやトイレ、お風呂など、あらゆる場所で犯され続けた事を克明に話し始めた・・・。
　最初は快感など無かったのに、日が経つにつれ身体は反応し次第に快感を感じてしまった事・・・義父に言われるがままに、フェラチオを練習させられたり、アナルセックスまで強要され次第に自分でも求めるような気持ちになっていったことなど・・・・・・、正直に全てを告白した。
（これは現実なのか・・・？）
　あまりにも強烈な話に、驚愕してしまった。
　同時に、由香の話内容の展開に合わせ、目の前の由香の裸身や男のモノを咥えている姿を想像して、自分の股間に変化が現れているのを感じていた。