１．子宝詣でを決意はしたが・・・

　夏の日がとっくに西に傾いた頃、壮一と瑤子は、４０代の熟年夫婦にかなりはきつい山道を朝から歩き続けたために、全身汗でびっしょりになり、膝はがくがくに疲れはてながヒグラシの声が迎える草深い山かげの、こけむした小さな山門にたどりついた。

　地図にもないけもの道を、丸一日かけて歩いてくるしかない場所に、子宝に恵まれない夫婦をセックス開眼に導く桃源郷があるというのだから、世の中は見捨てたものではない。

　壮一・瑤子の夫婦は、妻が夫の挿入に反応できない一種の病的な生殖不適合で、残された手段は他の女に夫の精子ではらませるしかないといわれていた。妻にとっては夫を愛しているのに、からだが夫を拒絶するとうつらい結婚生活だった。

　そんなとき、瑤子は、いつか美容院で読んだエロ雑誌に載っていた話を、その時はばかばかしいと思っていたのに、ひょっとして、と思い直したのだった。
　その記事では、山奥に子宝を必ずさずけてくれる霊力絶大の大修行師がいる「歓喜院」という修行道場があり、そこで修行を励めば、生まず女も必ず自分で子をなすことができるというのだ。瑤子が思い出したのは、大修行師の下で修行したおかげで、妊娠できない女性が男性を受け入れられるようになり、子宝に恵まれたという体験談だった。
　もちろん瑤子の夫は、そんなのはいんちきなエロ法師の話だと、その時は妻の切ない希望に耳をかそうとはしなかった。
　ところが、妻のその話をきかされてからというもの、壮一は妻が白い股を広げて破戒僧に犯される夢を見るようになり、壮一の挿入では冷めてしまう妻が、エロ坊主の巨大な道具に歓喜する様にしばしばうなされるようになった。それからの壮一は白日夢から逃れられず、妻が子宝に恵まれることを口実に、他の男性とのセックスを望んでいるにちがいないという妄想が果てしなくふくらんでいった。是非目の前で妻が修行者たちに犯される姿を見たいという思いが募るばかりだった。こうして壮一は妻を大修行師のもとへ連れていくことを決意したのだった。

２．門前払いしない代わりに・・・
　
　汗みどろでやっとたどりついた「歓喜院」の苔むした門をくぐろうとしたとき、ぬっと夫婦の前に大男が立ちふさがった。汚れきった作務衣の裾は割れて、下に煮染めたような茶色のフンドシが垂れ下がってむっと異臭がただよった。
　セミの鳴き声が一層大きくなり、目の前の山かげに滝の音が響いている。そいう自然環境のなかで男はいかにも異様だった。

　着物の前を合わせながら、作り笑いの笑顔を見せて男は言った。
「何か用かな」
　子宝修行の入門を壮一が頼むと、急にこわもてになった男が、
「きょうの修行者の受付はもう終わった。明日朝来なさい。」
　壮一は今晩泊まるところがないのでなんとかと、必死で頼み込んだ。しかし、頼みながら、男の態度が何かおかしいことに気が付いた。壮一は、財布から紙幣をさぐり男に手渡したが、受けとろうとしない。しかし、急に態度が柔らかくなった男は、夫婦を手招きして、門の中へ入れてくれた。歩きながら男は壮一の耳にささやいた。
「金はいらない。かわりに奥さんをちょっと・・・」
　壮一はぴんときた。これが門番の役得なのに違いない。妊娠できない女が相手だからちょっとくらいいいだろう、という理屈だ。
　男は壮一の目を無言でにらんで、いいだろうと念を押すと、妻に向かって大きな声で言った。
「これから大修行師の面接があるので、汗を流してもらいます。その木の後ろにある滝を浴びて汗を流してください。」
　見ると木立のむこうにさっきから聞こえていた小さな滝が落ちて、あたりに飛沫が舞い、その脇に小屋がって更衣室になっている。
　壮一に待つようにいうと、男は妻の肩を抱いて小屋へ向かった。入り口の簾をふたりがくぐってから、しばらく何の気配もなく、滝ツボにも妻の姿がない。胸騒ぎがした壮一は小屋へ走った。入り口の簾の隙間から中を見て一瞬目を疑った。あれは妻か、瑤子か。滝壺への出口の側のくらがりにふたりがうごめいていた。
　男は瑤子を立ったまま抱きかかえ胸を合わせてじっと何かをはかっている。そのうち少しづつ瑤子の豊かな乳を男の胸板でもむように少し動かしはじめた。それも、そーっとこわれもののをいたわるように、静かに胸を押したり引いたり、大きくゆったりまわしたり、かとおもうと、じっと息をつめたように優しく抱きしめて動かない。
　それから１０分は経っただろうか。と、瑤子の方がこんどは胸を離し、汗でぬれたＴシャツを脱ぎ捨てブラジャーをはずして、直接お乳を男の毛むくじゃらの厚い胸板にそーっと合わせたり、乳房を柔らかく胸に押しつけたりしはじめた。
　男は、それに逆らおうとせず、自分の勃起した男の乳首で、瑤子の勃起した乳首を愛撫したりする・・・瑤子は、すっかり自分を失って、男の胸板にすがりつき、乳房を押し当て、こすりつけ、もみ続ける。おとこは、そこでやおら、瑤子に顔を寄せ、頬を合わせて、じっとしている。時をわすれたように動こうとしない。と、瑤子は胸をしっかり押し当てるためにつま先立ちになり、それでも届かないので、男に飛びついて抱きつき、男は強く瑤子を抱き抱えるポーズになった。ジーパンの足を開いて男の腰を挟んだ瑤子は、男の足に足をからまして、電柱にとまったセミの姿・・・。
　頭が真っ白になった壮一は、男の姿にこれが「歓喜院」の修行だと直感した。壮一は、膝がふるえ、口が渇き、立っていられないほどの衝撃を受け、よろよろ簾をくぐって小屋の土間にへたりこんでいた。その壮一の目に、男の汚れたフンドシの硬く突起した部分に、大股開きで抱きついた瑤子のジーパンの股間の盛り上りが当てられ、しずかにこすりあわされているのを目撃した。迎え合った硬い大きなマウンドと柔らかな小さなマウンドは、静かに押しつけられ、こすり合わされ、上下に、左右に、根気よく静かに、気持ちの良いポジションを求めて動き続けている。やがて、お互いの位置がフィットしたのか、ぐっと押しつけられたまま、動かなくなった。瑤子は、濡れた白目を見開いて、快感に耐えている風だった。
　壮一は、経験したことのない猥褻な行為に見えて、心臓がばくばくして、はげしく勃起した。
　思えば、壮一は、自分の勃起を挿入して激しくスラストし、気をやることしか考えたことがなかった。瑤子が豊かな乳房を揺さぶり顎をのけぞらせて、両足を硬直させると、彼女がどう感じているかなど考えもせず、満足だった。第一、見たことのあるＨビデオは、必ず激しい送抽と腰の動きが強調させるという一本調子だった。
　じっと抱き合って感極まっている男と瑤子。ショックだった。ただただ衝撃だった。しかも、それは瑤子の単純な浮気心からの性的行為、出来心こらの快楽的行為ではない。性に向かう人間の真実の喜びの姿だった。挿入していないのに、まるで挿入してオルガスムを味わっているような腰の動きだった。その瑤子の「真実」、セックスの「真実」に、壮一はうちのめされた。というよりも、あの汚い男と瑤子が一つになったこと。男女のセックスの合一の「真実」に圧倒されたのだった。と同時に、この男が瑤子を奪うかもしれないというかすかな不安が頭をかすめた。
　男は、３０分は瑤子を抱きかかえていただろうか。やっと我にかえって、ふたりはまた向かい合って立っていた。男は、はじめて瑤子んの頭をかかえ、耳やうなじを口づけしてから、頬を両手ではさんで、上からのぞき込むように口づけをした。唇を軽く合わせてから、乾いた唇で鼻や頬をなでまわし、そっと顔を離すと、瑤子の肩を押さえつけてひざまづかせ、作務衣の前をはだけ、汚れたフンドシの間から節くれ立ったまだやわらかい、が十分長く太い逸物を突き出した。
　瑤子は、まるで夢遊病のようにそれを吸い込み、なめまわし、いとおしむように歯をあてて軽く噛んだ。と、むくむくと桜色の先端がふくらみはじめ、赤ん坊の拳ほどになって中空をにらんだ。
　男は、瑤子を後ろ向きにし、荷物の箱の上に両手をつかせ、腰をひきつけて、ジーパンを下げた。ショーツはそのままで、ショーツの隙間に指を入れて広げて陰裂を露出させると、十分潤った瑤子の密壺へズー、ズー、ズー、と優に２０センチはある逸物の半分ほど入れ、瑤子がうなり声を出してきつがったので、途中で入れるのをやめると、またズルッ、ツルッと引き出し、あらためて、今度は一気にズーーー、ヌルヌルヌルッと挿入。息を止めると、じっとして動かず、瑤子の下腹部の動きにあわせて、呼吸を鎮めながら、瑤子の下腹部に男の下腹部を軽く押しつけて、気持ちよさそうに呼吸を合わせている・・・・。そのまま、何十分たったろうか、一向に男がスラストや射精を急ぐ気配がない。そればかりか、男は、射精を意識的に抑制するかのように、ときおり、たまらなくなると、何かコントロールに努めているようだ。
　彼の長さから考えれば、十分に子宮頸部やその周辺の膣壁に先端が達しているはずだ。このあたりは、女性の究極の性感帯であり、その刺激は瑤子には全くはじめての経験だったはずだ。しかし、もちろん、そのとき、壮一にも瑤子にも、その意味が分かっていたわけではない。ただ、瑤子は、はじめての快感が体の芯から波動のように起こり、その波が大きく全身を揺さぶるにつれて、じっと動かない逸物を一刻も早く動かしてほしいいと思い続け、クリトリスを男の下腹部にリズミカルに押しつけてみたりしていた。しかし、男は微動だにせず、一滴も漏らさず、一声も発しなかった。
　瑤子は快感の波動はががまんでないほど強烈になり、男のモノが自分の子宮の中心に深く突き刺さるように感じ、いとおしさにきつく握りしめ、そうすることで強い一体感を感じていた。もう歯の根の合わないほど惑乱し、叫び声を出さないように必死で口を閉じていた。このとき、瑤子ははじめてセックスのエクスタシーを経験した。
「あなたは、合格です。あしたから修行に参加できますよ」
　男はそういうと、さっさと抜き去り、身仕舞いし、瑤子を滝壺の洗い場に案内した。
　男に呼ばれて、壮一も我に返ると、瑤子の体を洗ってやりながら、まだ呆然として、激しく勃起した息子を滝に打たれている瑤子の後ろに回って足を開かせ、わが一物を白い尻の下にくぐらせた。こんなに大きくなったことはない雄々しさに驚きながら、壮一は、まだ快感の余韻を引いている妻の股間に深々と押し込んでいった。妻は、岩に両手をついて、夫に応え、強く欲情し、はじめて夫の激しい出し入れに感じて、新たな快感に耐え、大声を上げてイッタ。「アナター！いいーイイー！アーーーー！」

（つづく）