日も落ちた頃、賢の痛みがひいたので、僕達はどこかぎこちない雰囲気のまま帰宅した。 （気まずいな……） 練習試合が終わった後、賢は自分の部屋に戻らずに直接僕の部屋にやってきたんだが、さっきから会話がない。二人して腰をおろしテレビを見続けているだけ。 （何か、言ったほうがいいのかな……） そう思って口を開きかけた時だ。 「ねえ、優一」 賢が先に口を開いた。 「なに？」 「御礼がしたい」 「御礼？」 僕は首を傾げた。 「どういうこと？」 「今日の事。それと…いままでのことの」 「いいよ、御礼なんて」 僕は見返りが欲しくてしてきたわけじゃない。 「でも、私がしたいの。どうしても……」 そう言って、僕に必死に詰め寄って訴える賢。でも、その頬がなぜか赤い。 「でも…御礼なんて…」 いきなり言われても僕には何もしてほしいことなんてない。 「じゃあ…」 賢は少しだけ恥ずかしそうにしながら「優一の…好みの服を着てあげる…」 「え…？」 （僕の好み？） 僕はそこまでファッションに精通しているわけではないから、これといって好みの服装などなかった。あえて好みの服があるというなら、今の賢の制服姿で十分だ。 「待ってて。今、着替えてくるから」 「あ、賢―」 賢はクローゼットから何かを引っ張り出してそのまま風呂場の脱衣所へと入って行った。 「僕の好みの服装ってなんだ？」 自分ですら好みの服装がわからないのに、賢にわかるのだろうか。そんな疑問を頭に浮かべて僕は首を傾げた。 Another View 川崎 賢 「はぁ…はぁ…」 脱衣所のドアに背を預けて、私は必死に荒くなった息を整えようとする。 「言っちゃった…言っちゃたよ……」 ずっと前から、どんな風に切り出せばいいかわからなかったけど、今日、私にチャンスがめぐってきた。 「よし」 私は大きく深呼吸して着替えを始める。 まずはカッターシャツを脱ぎ捨て、次にブラジャーを外す。 「ん〜前と変わってないな〜」 胸の大きさは大して変ってない。 （晴香ぐらいに大きければよかったのに……） 「はぁ、言ってても始まらないか」 私はスカートに手をかけて引き下ろしていく。 「あ……」 そして、そこから現れたのは秘部の辺りが赤く染まっている真白なショーツだ。 「今日は…女の子の日だもんね……」 そんな日に、私はしようとしている。でも、もう我慢が出来ない。 私はショーツを脱ぎ捨てると、タオルで肉裂と股に滴る血を拭きとり、新しい紐ショーツを採り出した。 「これが、勝負ショーツか…」 この前、晴香と一緒に買いにいった紐ショーツ。色は少し赤に近いピンク。 「これなら、ばれにくいよね」 今日が女の子の日であることが。 紐ショーツを身につけると、次は白いTシャツをブラなしで着る。 「うぁ〜」 薄いシャツだから、私の乳首が透けて見える。 「でも…エッチなほうがいいよね……」 だって、優一は男の子だもん。 そして、シャツを鳩尾まで見えるまで捲りあげて脇で結ぶ。思いっきりシャツを引っ張ったせいで胸にぴったりと張り付いて、私の胸の輪郭から乳首まではっきりと見えちゃう。 「これは…恥ずかしいかも……」 鏡で自分の姿を見ると顔が真赤になる。 「で…極めつけが…これかな…？」 私はジャージを取り出した。 それを普通に着る。 「よし、出来た！」 題して、《エッチなスポーツ少女》。 「これは優一に言わないでおこう」 ネーミングのセンスを疑われかねない。 「さてと、準備万端。さぁ…」 （今日で…女になるんだ……） 私はもう一度、深呼吸して、ドアノブに手をかけた。 Another View end 賢が脱衣所に入ってから待つこと数分。 「お待たせ…」 脱衣所から賢が出てきた。 「ぶぅ！！」 その姿を見て、僕は鼻血を噴出させてしまった。 賢の姿を一見すればただのジャージ姿。しかし、ジャージの上は長袖でチャックが掛っていない。そして、その間に見えるのは薄手の白いシャツ一枚で覆われた賢の上半身だ。しかも、シャツは鳩尾の上辺りまで捲りあげられて脇で結ばれており、賢の腹部が全て露出していた。しかも、シャツのしたにブラを着用していない。シャツが脇できつく結ばれているせいで、賢の胸の輪郭はおろか、乳首の突起まではっきりと確認できる。そして下はジャージの長ズボンだ。しかも、かなり腰パンだ。ズボンは、賢の丹田が丸見えになるまで下げられている。 （こ…これは…） 僕はここで先ほどの賢の言っていた意味を理解した。 御礼、つまりエッチな服装をして僕に見せるということ。 （でも…これは…） 丹田から鳩尾まで、賢の白い腹部を覆う物は一切ない。せいぜい羽織ったジャージが脇腹を少し隠す程度だろう。しかも、ノーブラのため、薄らとピンク色の賢の乳首も見えている。それを考えれば賢は上半身の殆どを露出していることになる。 ジャージを着ていても、隠すべき個所を殆ど隠していない。 「ゆ、優一！」 僕が鼻血を出したのを見て、賢が慌てて僕の傍に駆け寄ってきた。そして、ティッシュで僕の鼻血を拭きとっていく。 （ち、近い…） 僕の目の前に、賢の乳首がある。少し視線を下げれば、引き締まってくびれた賢の腹部、さらにその下には―。 「もう…」 賢の戸惑い気味の声に僕はドキリとする。 「この前、私の胸も、お腹も、ここも見てるくせに」 そう言って賢は自分の下腹部を触った。 「い、いや…。でも…」 頭で理解出来ても僕の本能が理解できない。 「でも、確かに…僕の好み…」 エッチさで言えば完璧であることは間違いない。 「そ…そう…」 賢は嬉しそうにほほ笑むと、僕の鼻血を拭きとっていった。 「よし、終わった…」 賢が僕の鼻血を拭きとると、僕らの時間が始まる。 「賢…」 「あ…」 僕は賢の腰に手を回すと、そのまま自分の膝の上に賢を抱いた。 「優一…」 僕の腕の中の人になった賢は潤んだ目で僕を見てきた。 「可愛い」 少し不安げで、小刻みに震えている賢に僕はそっと唇を重ねる。 「ん…」 すると、賢はそっと目を瞑って体を僕に押し付けて、僕の口内に舌を突きいれてきた。僕も直ぐに賢の舌に僕の舌を絡める。 「ん、優一」 賢の口から甘い声が漏れる。 「はぁ、ん、ぷは、ちゅぱ、ん、くちゅ、くちゅ」 僕は賢にキスしたまま、そっと片手で賢の胸を鷲掴んだ。 「きゃぅ…」 賢の舌が僕の口内で、ピク！と震えて、賢は口ごもりながら子犬のような声を上げる。 （賢…まだ慣れてないんだな…） それもそのはずだ。つい最近まで、賢はこんなことはおろか、女の子としてさえ生きてこなかったのだから。 僕はそのまま賢の胸をもみ続けた。柔らかくて、大きな賢の胸を。 「ちゅぷ、ちゅ、はぁ、ゆ！ゆう、あ…くぅ…ん…」 胸を触られる感覚に反応して声を上げようとする賢。でも、僕が賢の唇に自分の唇を重ねてその声を遮る。 「ん…優一…」 今度は、つん、と固くなって突起している賢の乳首を摘まんだ。 「ひゃぁ…」 また、賢が変な声を上げる。 （賢、まだ不慣れなんだな） 激しいキスの連続で、賢の口の両端からは涎が垂れ始めている。 （本当に可愛い） 目を瞑って、まだ慣れない快感に戸惑う賢は本当に可愛かった。 胸をもみ、乳首を摘まむ。それを繰り返していく内に、賢の乳首はかちかちに固くなっていった。 「ぷはぁ…」 そして僕は唇を離すと、今度は固くなった乳首をシャツの上からそっとしゃぶった。 「ちゅ、ちゅ、ちゅぅぅ」 「やぁ…」 すると、賢の体が岩のように硬直した。 それでも、僕は賢の乳首を吸いながら舌でくりくりと乳首を刺激する。 「う…恥ずかしい…」 でも、僕は無視して続ける。 「ちゅぅ、ちゅ、ちゅ、ちゅぅ」 「きゃぁぅ……やぁ…はぁはぁ…もう優一…赤ちゃんみたい…」 賢は、乳首を吸う僕の頭を両腕に抱え込む。 「むう…」 抱いてくれるのはありがたいが、賢の胸に顔が蹲って息がしにくい。 （大きいのも善し悪しだな） 「はぁ！！う…」 息苦しい僕をよそに、賢は乳首を口で吸われ、舌で舐められる感覚に敏感に反応し続けた。体をくねったり、秘部の疼きを感じ始めて内またをこすり合わせたり。 「く…苦しい…」 僕は直ぐに限界になって賢の胸から唇を離した。 「はぁ…」 それと共に賢からも吐息が漏れる。 そして、賢は僕に愛撫されて、つん、と固くなった乳首に目を移す。 「もう…恥ずかしい…」 僕の唾液のせいで、乳首とその周りだけが綺麗に透けて見えていた。 「でも、可愛い」 僕はそう言って再び賢と唇を重ねる。 「んん…」 そして僕は舌を賢の口内に入れる。すると、賢の舌はそれに応えるように絡んできた。 賢の唾液が僕の中に流れてきて、僕の唾液が賢の中に流れていく。 「くちゅ、くちゅ、ぴちゅ、ちゅ」 今日の賢は積極的に僕の舌に絡んでくる。賢の小さな舌が僕の舌に必死に絡もうとするのがたまらなくかわいい。まるで、日々の賢みたいだ。 「はぁ…」 賢の甘い吐息と共に二つの唇が離れると、唾液の白い糸が僕と賢の口を繋いでいた。 「なんか…エッチだ…」 そう言いながら、賢は嬉しそうにほほ笑んだ。 僕達は再度唇を重ねて、舌を絡めあった。 「うぅ！！」 キスの途中で、賢が苦しそうな声を上げた。 （まさか…また…） 「賢、ひょっとして…」 「違う…。内臓の痛みじゃなくて…今の、は…その…」 賢は恥ずかしそうに僕から目線を反らして「あそこが…疼いて…」 「え…」 僕は目線を下におろすと、賢は内またをくっつけて震えていた。 「そう…なんだ…」 僕は小さく頷くと、そっと手を賢のあそこへと伸ばしていく。でも、賢は股を開こうとしない。 「賢、股…開いて…」 でも、賢は開こうとしなかった。 「ごめん…。開きたいんだけど…でも…力が入っちゃって…どうにもできない…」 確かに、賢の体は硬直していた。キスや、胸を揉まれる内に、賢の体は興奮と快感のせいで自由に動けなくなったようだ。 「そうか…」 僕はしょうがないね、と言って、ふと、賢のお腹に目をやった。 興奮しているせいか、賢のお腹は、早いテンポで、大きく上下していた。 僕はそっと、賢の臍の上に手を置いた。 「優一…」 少しくすぐったそうに賢は身をよじった。 「……」 僕の手は、賢のお腹が上下するのを感じていた。 （不思議だな…） その時の感覚に、僕は不思議なものを覚えた。 （命…） お腹の上下は、呼吸の証拠だ。 「ねえ、優一？」 賢も、違う意味で不思議そうな顔をして僕の顔を覗き込んできた。 「どうして、お腹の上に手を置いてるの？」 「それは…少し、不思議な感じがしたから」 「不思議…？」 賢は、首を傾げる。 「その…賢のお腹の上に手を置いてると、賢の呼吸を感じるんだ。賢は、生きてるんだなって」 僕はもう一方の手で、賢の鳩尾の上に手を置いた。 （強張ってる…） 臍の辺りとは違って、賢の鳩尾辺りは酷く強張っていた。 「ねぇ、優一」 「なに、賢？」 「お腹ってね、女の子の急所なんだよ」 「え？」 賢は、自身の鳩尾の上に置いてある僕の手の上に、自分の手を重ねた。 「ここは、鳩尾。男の子と違って、女の子は筋肉が少ないから、ここを殴られたら簡単に気絶しちゃうよ。時代劇とかでよくあるやつね。外国のお医者さん達は、ここの事をデットポイントって呼んでて、強打されると一番危険なところなんだって」 そして今度は、臍の上に置いてある僕の手の上に、自分の手を重ねた。 「ここは…お臍かな？ここも、女の子にとって大事…かな？」 賢は首を傾げる。 「やっぱり、ここにもたくさんの臓器が詰まってるから、筋肉のない女の子にとっては、急所だ」 「ここの裏には、肝臓とかもあるからね」 「ああ、ボクシングのレバーブローとか？」 「うん、それそれ」 「じゃあ、やっぱり女の子にとっては急所だ」 そう言って賢は一人で納得する。 そして、僕の手をそっと自分の丹田の上に滑らせた。 「そして…ここは…女の子にとって…私にとって…一番大事なところ」 そこで、賢は真剣な眼差しで僕を見てきた。 「ここは…赤ちゃんをみごもるところ。子宮…」 その時の、賢のあまりの真剣な眼差しに、僕は言葉に詰まった。 「ここだけは…命の次に大事だよ…」 「どうして？」 「私は…優一の赤ちゃんを産みたいから…」 僕は自分の顔が真赤になるのを感じた。 「賢…」 「私…本気だよ…。優一の赤ちゃん…産みたい…」 「どうしたんだ…急に…？」 僕にそう言われると、賢は一瞬だけ戸惑いの色を見せたが直ぐに、元の調子に戻った。 「い、いや…別に…。ちょっと…エッチなことしてるから、変な気分になっただけ…」 「そうなのか？」 僕が訊くと、賢はしばらく俯いたまま口を閉じた。 「賢？」 「違う……」 「え…？」 「不安…なんだ……」 「不安？」 「うん。優一のおかげで、私は憎しみを捨てられた。でも」 賢は自分の鳩尾に手を置いた。 「私の心の傷をいやしてはくれなかった…」 賢は、父親に目の前で弟と母親を殺され、そして、賢自身もあと少しで刺殺されるところだった。たが、偶然そこに居合わせた僕が、持っていたバットで父親の頭を殴って気絶させたのだが、その時に、父親の頭から流れた血が、賢のお腹の上に滴って、まるで刺されたように赤く染めていた。 その時の、あまりのショッキングな出来事のせいで、賢は精神的を患ってしまった。 ひとつは、自らを男と思いこもうとして、そのように行動するようになったこと。そしてもう一つは、自信の鳩尾を刃物で貫かれるような痛みを感じる事だ。 あの、真赤に染まった自らの腹部と、あと少しで本当に刺されていたという事実が混同して、本当に刺されたように勘違いしてしまった。そして、それが勘違いであるとわかっても心の傷が癒えない限り、その症状も治まることはない。 「優一…」 賢の頬に、一筋の涙が伝った。 「賢……」 （辛いんだね…まだ…） 僕は無言で、賢の唇に自分の唇を押し付けた。 「ん…ゆ…いち……」 それからしばらく、無言のキスは続いた。 「優一、もう、大丈夫」 賢が、僕から唇を離す。 そして、賢は、はにかむような笑顔を見せて 「い、いや〜。今の状態は、犬みたいだ」 必死に、話題を変えようとした。 「犬？」 「うん、犬ってね、忠誠の証として、ご主人様にお腹をさらけだすんだって。犬にとっても急所だからさ。で、今の私の状況。今…優一が私の急所の上に手を置いてる。私…優一に全部さらけだしてるな〜って、思っただけ…」 「そんなんじゃないよ。僕は…別に…」 すると、賢は人差指を僕の唇に押し付けて先を遮った。 「そんなんだよ…。私は…優一にみんな捧げたいの…。急所を見せるってね、命を預けるってこと…。でも、私はその急所に直に触れてもらってる。心も…体も…命も…」 でも、その時の賢の目はどこか悲しげだった。 「賢…」 なぜか、賢が投げやりになってるようで、とても怖い。 「ごめんね…。私…自分に自信なくて…。私なんかの体を優一にあげても…優一は喜んでくれないかもしれないって…少し…不安なんだ…」 「大丈夫だよ。賢…すごく美人だから、とても嬉しい」 「本当？」 賢は笑みを浮かべた。 「でも、賢の命も、心も、体も、全て賢のものだよ」 「そう…」 賢の顔から笑顔が消える。 （賢…） とても暗い賢の顔。まるで、自分の命や、心や、体に何の価値も見出せなくて、僕に全てを捧げることでどうにか価値を見出そうとしているように見えた。 （わかったよ…賢…） 自分に価値が見いだせないなら、見出させるだけだ。 僕は、両手で賢のお腹を揉み始めた。 「きゃぅ…」 小さく上がる賢の声。 僕はずっとクーラーの効いた部屋で露出し続けていたせいで冷え切った賢のお腹を、僕の手のぬくもりで温めていく。そして、少しでもお腹から力が抜けるように静かに揉んでいく。 「あったかい…」 すると、次第に賢の目がとろんとしてきて、お腹からも力が抜けていった。そして、先ほどまで固く閉じられていた賢の股がゆっくりと開かれた。 |
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| 2011.3.30掲載 |
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