その後の帰り道は気まずい雰囲気に包まれていた。 「あのさ、賢…」 「うん…」 「さっきは…その…」 「うん…」 「ごめん…」 「うん…」 さっきか、うん、と言って頷くしか反応しない、賢。彼女の頬は赤く染まっていた。 （きまずいな…） 僕はそう思ったが、それは賢も同じだろう。 「あの…優一…」 と賢。 「なにかな…」 「その…更衣室でのこと、僕、気にしてないから…。だから、もう…謝らなくてもいいよ…」 「そうか、わかった…」 それしか、会話は続かない。 （なにか…喋らないと…） 気まずい雰囲気を打開しようと、必死に話題を絞りだそうとする僕。そして、ようやくネタを見つけて喋ろうとした時だ。 「う…」 隣を歩いていた賢が止まり、そして、痛そうに腹部を押さえていた。 （賢、また…） そう思っている間にも、賢の顔色はみるみる悪くなり、額からは冷や汗が溢れてきていた。そして、腹部を抑え始めて間もなく賢は前のめりに倒れていった。 「おっと」 それを僕は、手慣れた手つきで抱きとめると賢を抱き上げて近場の公園へと運び、ベンチに横たえた。普通は逆なのかもしれないが、一応、僕の膝を枕にした。いつも、こうしている。 賢は、ある事を切掛けに、内臓に激痛を覚えることがある。それは、とても意識を保てない程の物である。 賢を横たえて一時間、午後八時を回った頃、賢は目を覚ました。 「ん…優一…」 「おはよう、賢」 もう、賢は僕に御礼なんて言わない。僕も、それを求める気など毛頭ない。幼いころから、ずっとこうしてきたのだから。 「僕、どれぐらい眠ってた？」 「一時間ぐらいかな」 「そう…」 賢は起き上がろうと、体を起こそうとする。しかし 「うっ…」 痛みが残留して、それを妨げた。 「まだ、痛むんだね」 そう言って僕はそっと、賢の額に手を乗せる。少し、熱っぽい。いつものことではあるが、毎回心配になる。 「でも、大丈夫だよ」 と賢。僕の心は、賢に見透かされているようだ。 「そうか、なら、いいけど」 それからそっと僕は賢の頭を撫でた。これもいつものこと。こうすると、なぜか賢は喜んだ。 すると、賢は、嬉しそうに頬を赤らめながら 「や〜ははぁ〜」 と言う。それから 「僕は少し、ここで休んでいくから、先に帰ってて」 だが、僕は首を振った。 「いいよ。いつものことだし」 「でも、もう八時だよ。勉強とか、宿題とか、やらなきゃいけないんじゃないの？」 「でも、賢を置いてはいけないよ」 「でも、それじゃあ…」 賢は不安げな顔をする。毎朝早く起こしに来たり、我が儘をきかせたりするのに、この時だけは申し訳なさそうにする。正直、賢の不安げな顔は好きじゃなかった。だから僕は、賢に意地悪な笑みを浮かべて 「じゃあ、こうしよう」 賢を抱き上げた。 「え!?ちょ…ちょっと…優一…？」 びっくりして顔を真赤にする賢。 「このまま帰ろうか？」 僕がそう言うと、今度は耳たぶや首まで赤くした。でも、拒もうとはしなかった。だから僕は、賢を抱き上げたまま帰宅の途につく。 人通りの少ない道を通って帰ったのと、天が僕らに味方したので、僕らは二、三人の通行人に見られるだけでマンションに到着することが出来た。 「見られた〜」 賢の部屋の前で、賢は未だに僕に抱きあげられた状態で恥ずかしそうに呟いた。 「そんなことより、鍵開けて」 「わかってるよ〜」 賢はポケットから鍵を出すと、両手がふさがっている僕の代わりに鍵を開けた。そして、僕は彼女を抱えたまま部屋に入ったのだ。 僕は賢をベッドに横たえると、部屋の明かりを点けた。すると、綺麗に整頓された部屋が露わになる。ピンク色の絨毯に、木のベッド。ベッドには白のマットレスに、白淵でピンク色の掛け布団。後は教科書しか入っていない木目の本棚と、同じ木目の勉強机。可愛らしい人形やファッション雑誌がないぐらいで、後は一般的な女の子の部屋だ。 「ねぇ、優一」 と賢。 「ん、どうしたの？」 振り返ると、賢は僕のすぐ後ろに立っていた。俯いていて、右手で拳を作って胸に当てていた。 「起きて、大丈夫なのか？」 「うん、帰ってる途中には、痛みは引いたから…」 「そうか、よかった」 「うん…」 「賢…？」 （少し様子が変だな） まだ顔が赤いし、瞳もなんだか震えている。 「大丈夫か？」 本当は、まだ痛みが残ってるのか、と僕は賢の顔を覗き込む。 「賢…」 その顔を見て、僕は言葉に詰まった。 潤んだ瞳、ほんのりの赤みが差した頬、緊張した顔立ち。いつもの、男のような雰囲気とは似ても似つかない、そう （女の子の…顔…） そのものだった。 「あの…優一…」 そして、女の子の目で、僕を見つめてきた。 「つか…さ…」 正直、可愛かった。とても、魅力的で、僕の心拍数が跳ね上がるのを感じた。でも、同時に懐かしさも感じた。昔は、よくこんな顔をしていたのだ。そして僕は、そんな賢に恋をしていた。幼いながらも本気で。 （でも…） 忌まわしい事件が、賢を変えてしまった。事件のショックで、彼女は性同一性障害になってしまったのだ。そして、僕は彼女への想いを諦めた。そして、彼女の心の傷を癒すために傍に居続けてきたのだ。 「優一…」 賢が、そっと目を瞑り、口を少しだけ開けた。 「賢…」 僕は覚悟を決めて、賢の唇に自分の唇を重ねた。 「ん…」 賢から、どこか幸せそうな声が漏れる。 それから僕は、被りつくように、賢に激しく口づけをかわし続けた。お互いの唇をついばみ合うように。そうしている間に、僕は賢を少しずつ、抱きかかえていく。 「ん…ふ…」 だんだんと息が荒くなっていく。 僕は舌を賢の中に押しいれて歯の表面を撫でてから歯茎をなぞった。 すると、歯の間から賢の舌がやってきて、互いの舌の先が触れる。 柔らかい感触に理性が飛んでいく。 僕がさらに舌を奥へと押し入れると、賢の舌がそれに絡みついていく。 ぴちゃ、くちゅ 水音が部屋に響く。 僕と賢の唾液が交わる。 「ぴちゅ…くちゅ…くちゅ…、ちゅっ」 賢が小さな声を出す。 「ちゅ、くちゅ、ぴちゃ……んふっ」 そしてその小さな舌で僕の舌に必死に絡んでくる。 もう、キスというより互いの舌を絡ませて唾液を交換しているだけに等しい。 「ん…はぁ…優一…」 少しだけ唇を離して、賢が言った。 「その…ね…。盛り上がる前に言っとくけど…僕…その…今日は、女の子の日の…さ、最終日なのだ〜。や〜はあはぁ…」 恥ずかしそうに告げる賢。そして僕を見つめながら 「だから、エッチはさせてあげられない…」 そう言った賢の顔はさっきよりももっと恥ずかしそうで、タコのように顔が赤く、僕は思わず噴き出してしまった。 「ぷっ！！」 「あ〜、笑ったな…。でも、大事なことなんだぞ…」 「わかってるよ。ただ、ぷっ！賢があんまりにも恥ずかしそうにするもんだからさ」 笑いを堪えるのが一苦労だ。そんな僕に釣られて、賢も笑い出した。 「ははは、まあね」 二人の緊張の糸がそれで解れたのだ。 「ねえ、賢」 再び、僕は真剣な眼差しで賢を見つめた。 「なに？」 「胸、触っていいか？」 賢は答えない。その代わりに、シャツのボタンを三つ程外すと、僕の手を掴んでその中に挿しいれた。 「ん！！」 僕がブラの中に手をいれて、乳首に触れたせいで賢は体を少しだけのけ反らせた。 だから今度は、やさしく賢の大きな胸をもみ始める。 「きゃぁう…」 子犬のような高い声。頬を真赤に染めながら、初めて胸に触られる感覚に敏感に反応している。 「賢、可愛い」 すると、恥ずかしそうに瞑っていた目が開かれて僕を見つめた。 「本当？」 「うん、可愛い」 そう言ってまた、賢の胸をもみだす。すると 「きゃぁう…。くすぐったい…」 と賢は言って、僕の腕の中で体をのけぞらせる。 だから、今度は刺激的な感覚を味あわせようと、賢の乳首をつまんでやった。 「ひゃ！」 賢の体が一瞬膠着した。 その間に、僕はシャツのボタンを全て外すと、少し強引とは思いつつもブラを引きちぎった。 賢の小ぶりのメロンのような乳房がプルンと零れる。 「あ…」 賢は少し戸惑いの声を上げると、恥ずかしそうに顔をそむける。 「強引…」 弱々しい賢の声が僕を余計に興奮させた。 「すごく、綺麗だよ」 すると賢は目を瞑って首をふった。 「へ、へんな言い方…やめてよ……」 「綺麗なのに綺麗っていっちゃだめなのか？」 賢はうっすらと目を開けて僕を睨むと 「もう、いじわる……」 弱々しく訴えてきた。 プルンと零れたメロンのような双乳にはすでに汗がにじんでいた。 （しゃぶりたい） 僕はそんな衝動に駆られて思わず 「女の子はここに触れられると感じるんだよね？」 そう言って、ピンク色で固くなった賢の乳首にしゃぶりついた。 「うう…！」 ピクン！と賢は体をまたしても硬直させ、顔を余計に赤くする。 「はっぱり、感じてる」 僕がクスリと笑うと賢が 「ばか…変態……」 でも、その声にはまったく力を感じなかった。 僕はさらに賢を愛撫するために、空いている方の乳首を指でつまんだ。これで、片方の乳首は口で、もう一方は指で愛撫する。 「あ…う……やぁ…ああっ……あっ！」 賢の眉が歪んで声をあげる。 「ひゃぁ…ああ…や、やだよ！ゆ…優一…」 「どうして？」 僕は賢の乳首から唇を離して訊いた。 「そんなの…知らない…」 「じゃあ、とことんすれば原因が掴めるよ」 そう言って僕は賢の乳首に吸いついた。 「ひゃぁあ！！だ、だめだって……！」 そういうわりには賢は乳首にしゃぶりついている僕の頭を両腕で抱きしめた。 僕の口や指が賢の乳首を愛撫するたびに体をぴくんと震わせる。 僕は興奮してさらに激しく乳首を愛撫した。 「はっ……うぅ…あぁぁ！！」 その初めての感覚に、賢は喉の奥から官能的な声を上げる。 「ひゃぁ…だ…だめ…ち…乳首が……ピリピリする……ひゃぁ！！だ、だめぇ！！」 そう言って首を振る賢。しかし、僕はさらに激しく両方の乳首を愛撫する。すると、賢はぴたりと合わせた膝をもじもじと擦り合わせる。 どうやら、あそこが疼いているようだ。 「うう！！ああ…や…やぁ…！うぅ…はぅ！！」 あまりの快感を、初めての賢はうまく表現することができずに、うやむやな甘い声を上げ続けた。 「ん…はぁ…！やぁ…ひゃぁ…！！」 賢はそれから感じるたびに何度も体を弓のようにのけ反らせた。 「う…はぁ…はぁ…」 みるみる賢の目は溶けるようにとろんとし、快感の波状攻撃によって賢は疲れ果てて声も上げられなくなっていた。 「やっぱり、可愛い」 僕はそんな賢の唇に自分の唇を重ねる。すると直ぐに賢の舌が絡んでくる。 「ん…ちゅ…ぴちゃ……んふぅ……」 胸をもみながら、激しく口づけを交わす僕。そのまま、僕は空いている手を賢のズボンのベルトへと伸ばした。 「んん…！」 賢が僕と口づけをしながら僕を変な目で見てくる。 それでも僕は無言で作業を続け、ベルトを外し、ズボンを下ろした。すると、先ほどの更衣室で見たローライズパンティーが露わになる。すでに、秘部の辺りが湿っていた。 「んん…！んん！」 またしても、口づけをしながら賢が唸った。 （わかってる。わかってるよ） 僕はそう目で賢に言うと、賢は再び目を瞑った。 （賢、少し恥ずかしいかもしれないが、触るね） 心でそう呟くと、僕は手をそっとパンティーの中に挿しこんだ。 「ん！！」 賢は突然のことで、体を硬直させる。 僕はそんな賢を可愛いと思いつつ、指をそっと彼女のあそこの上で滑らせた。 「ひゃう！！」 賢は僕から唇を離して、耐えきれないとばかりに高い声をあげた。 さらに、僕は振動を加えながら指を滑らせ続けた。少しずつ早くしていく。 「あ…やぁ…優…一…」 始めて秘部を愛撫される快感をどうすることも出来ず、処女の賢は必死に僕のことを呼ぶことでなんとかしようとした。 「優一！優一！優一！」 それに合わせて僕も指の動きを早くする。 賢は込み上げてくる快感のせいで心臓が爆発しそうな程に鼓動が大きくなり、呼吸がしにくくなる。息遣いが荒くなり、必死に呼吸しようと口をパクパクと動かす。 それに連れて僕の興奮も最高潮に達してきた。 「ああ！！も…もう…だ…だめ…！」 断続的に賢が痙攣する。賢がいく瞬間が徐々に近づいているのだ。 「も、もう…だめ！優一！だめ…！！」 でも、賢は抵抗しようとしない。全てを僕に委ねていた。 「だめ！！あぁ…！ああぁ…！！ひゃぁあ！！」 僕はさらに高速で指を動かして賢の肉裂を愛撫する。 「やぁあ…！優一！優一！！ああ！！」 「いきたいなら、いっていいんだよ」 「そ、そんな…やぁ…！い…いく！いっちゃう…！！」 そして、その瞬間が目前に迫った時、僕は指を、賢のあそこに挿入した。 「はんんんぅ！！！」 今までに一度も経験のない少女は、その究極とも言える快感に脳を沸騰させた。 胎内に指を挿入されて、処女の未成熟な肉体がブリッジのように跳ね上がった。そして 「ひゃぁぁぁ！！！」 ばしゃぁぁぁ！！！ あそこから、たくさんの賢の愛液が溢れ出た。 「はぁ…はぁ…」 僕の腕の中でぐったりとする賢。だらしなく開いた口の両端からは唾液が綺麗な糸を作り、ブリッジのように跳ね上がった豊満な肢体はびくびくと痙攣していた。まるで、押し寄せる快感の並に耐えるように。そんな彼女のあそこから指を引き抜いた。 「あう…」 ずちゅり、と少し生々しい音と共に、指が引き抜かれると賢は力尽きたように僕の腕の中に落ちてきた。 「はぁ…はぁ…優一…」 ぐったりと力が抜けて、賢は胸を大きく上下させた。 疲れ切った弱弱しい声で賢が僕の名前を呼ぶ。 「どうしたの？」 「優一…駄目だって…いったのに……」 「でも、賢、嬉しそうだった？」 「う…それは…」 すると賢は少し恥ずかしそうに 「そのね…気持ちよかった…よ…」 と自白した。 「よかった」 僕は本心からそう思って、賢とまたキスした。 そして、僕は明日からの僕らの関係をはっきりさせるべく、思い切って 「賢、僕と付き合って」 と告白したのだ。 でも、賢は首を振った。 「僕…こんなんだよ…。考えてもみなよ…。僕は…女なのに、男みたいだし…それに…障害が…」 「病気のこと？」 賢は頷いた。 「そんなの、関係ないよ！」 僕は思わず叫んでしまった。 「優一…」 「僕は、小さいころから賢が好きだった！好きなんだ…賢のことが…。あ…」 その時、賢の目から涙がこぼれているのを見て僕は言葉に詰まった。 「賢…」 「僕も…好きだった…。優一のこと…ずっと…」 その時、初めて賢から僕にキスしてきた。そして僕は、力いっぱい賢を抱きしめた。 こうして、僕らの恋人としての生活が始まったのである。 |
| あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。 |
| 2011.2.12掲載 |
平凡な男さんの作品集→ |