時は移って昼休み。 「ちょっと、こっちに来て！」 僕は賢に引っ張られて教室を出ると、そのまま階段を上がって屋上に出た。 「え…」 僕は突然の事で呆然と空を見上げた。空は雲ひとつない快晴。でも、少し暑い。 「お弁当は持ってきた？」 そう言われてみれば、僕は片手に弁当箱を持っていた。 「じゃあ、ご飯たべよう」 そう言って賢は嬉しそうにほほ笑んだ。 いまいち、理解できない状況から始まった僕らの昼食。 「……」 会話は弾まない。 僕は隣に座る賢をそっと見た。賢は女の子らしく、女の子座りをしていた。 （本当に、可愛いな…） 今の賢を見ればだれもが女の子と思うだろう。いや、この賢が昨日まで男装をしていたなんて夢にも思わないだろう。ミニスカから露わになる肉付きのいい太ももが太陽の光を反射して官能的な光沢を放っていた。 「昨日ね…」 と賢が急に話をきり出してきた。 「その…晴香に頼んで制服屋に行ってきたの。その…女子の制服を買うために」 （ああ、それで） と僕は昨日のことを納得した。 「その後ね、商店街でヘアピン買ったり、髪を束ねるための紐を買ったりしたの。夜は、晴香が部屋に来てね、スカートを短くするのを手伝ってくれたの」 「ミニスカに？」 「うん…。でも…」 賢はスカートを摘まみながら「ちょっと短すぎる気がする…。少しめくればパンツ見えちゃうよ…」 （確かに） そこで僕はそこでも思わず 「ああ、今日は青と白の―」 「わぁ！！言わないで！！」 賢は慌てて僕の口を両手でふさいだ。 （ははは、そりゃ恥ずかしいよな…） 賢はやっぱり女の子だった。 「でね」 と賢は僕の口から手を離して続けた。その時の賢はパンツの一件で頬を真赤にしていた。 「その…」 またしてもスカートを摘まみながら 「すごくスースーして変な感じ…」 「そうか。でも、可愛いよ」 僕は心からそう思っていた。 「嬉しい…」 賢は嬉しそうにほほ笑むと、再び弁当に箸をつけた。 「ふう、お腹いっぱい」 僕は床に寝転がった。 「僕も」 そう言って賢も僕に並んで寝転がり、僕の腕を枕にした。 「ちょっと細くて固い枕だけど勘弁してあげよう」 へへへ、と笑いながら賢が言った。 （軽いな、賢の頭） 女の子の頭はやっぱり軽いんだ、と思いながら、僕は賢を抱き寄せる。 「あ…」 いきなりのことに賢は少し驚いたようだが、それでも抵抗することなく僕の腕の中の人になった。 （細いな） この間、賢を愛撫した時は興奮していたせいで気付かなかったが、賢は見た目よりも細かった。僕みたいな優男でも、本気で抱き締めれば壊れてしまいそうな程に。 そして僕は、抱きしめながらそっと賢の髪を撫でてみる。艶があって、一本一本が絹のようだ。それにどことなくシャンプーの香りがする。 「ねえ、優一」 と賢。 「なに？」 「キスしよう」 いきなりでも、僕は驚かない。 「うん」 だって、僕らはもう恋人なのだから。 そっと賢は顔を上げた。その顔は少し赤かったが、それはもう恥ずかしさではない。それは愛する者にだけ見せる賢の女の子としての姿だった。 僕はそっと賢の唇に自分の唇を重ねた。 ちゅっ、とお決まりの音を立てると、唇を離す。 「はぁ…」 それと共に、漏れる賢の吐息。唾液の白い橋が僕らを繋いでいた。 僕はまた、賢にキスする。今度は賢の口の中に舌を尽き入れる。 「うぅ…」 舌を奥に入れすぎたようで、賢の苦しそうに唸る。 「えぅ…」 すると賢が、反撃だ、と言わんばかりに彼女の舌を僕の中に押し込んできた。僕は賢の舌に自分の舌を絡めていく。 「ちゅ…ぴちゃ……ふぅ……ひゃぁ……ちゅぅ…」 互いの口内の涎がまじりあい、水音が屋上に木霊する。 「ぴちゃ……ん……はぅ……ちゅ…ちゅぱ……」 激しくお互いの口をついばみ合い、賢は唇の両端からだらしなく唾液を零し始める。 「んふ……ゆぅ…いち……」 賢の瞳が僕を捉えて離さない。 僕は舌を賢の中にさらに突きいれる。 「んふぅ……！！ん…」 賢が苦しそうに目を瞑り、口内から僕の舌を追い出そうと僕のに絡んでくるが、男の舌に、賢の小さな舌が適うはずがない。 案の定、賢の小さな舌は僕の舌に絡みとられて二つの舌は賢の口内で激しく絡み合う。 「ん…こほぉ……ん…んふぅ……こほぉ…！」 僕の激しい舌の責めに賢は咳き込みながらも必死に応えてくる。 その反動で、さっきよりも多くの涎が賢の唇の両端から溢れだし、小さな顎を伝って肉付きのいい太ももへと零れていく。 「けほぉ……こ、こほぉ……ん……」 呼吸がしにくいのか、賢の顔が少し赤くなり始める。 （そろそろ限界かな） 僕は賢の舌を解放すると賢の口内から舌を撤退させた。 「ぷはぁ…」 僕が唇を離すと、賢は直ぐに口を開いて酸素を取り込もうとする。 「はぁ…はぁ…はぁ…」 賢の大きな双乳が激しく上下して、くりんとした大きな瞳がぼんやりと空を眺める。 でも、僕の口内には賢の唾液が沁み渡り賢の味をこれでもかと堪能させられた。そのせいで、理性が薄れてくる。 僕は次第にここが学校であることを忘れ、賢の胸を鷲掴みにした。 「きゃぅ…」 賢はびっくりしたように声を上げる。賢にはまだ、ここが学校であることを認識しているらしい。 それでも賢は、自身の胸を鷲掴みにしている僕の手に、自分の手を重ねた。 「優一……」 弱々しい声と、震える瞳。僕は可愛らしい女の子となって賢を思わず押し倒した。 「きゃぁ……」 少し驚きの声を上げるがそれも束の間。賢の口をふさぐべく僕はまたしても唇を重ねて舌を突きいれる。 「んふぅ……！」 賢に覆いかぶさり激しくキスを交わす。服の擦れる音が耳触りで僕は空いている手を賢のカッターシャツにかける。でも、賢は気付かない。激しいキスに意識をもっていかれているのだ。 僕は両手で賢のカターシャツを掴むと、キスに合わせて捲りあげる。賢の可愛く窪んだ臍と、くびれた白い腹部が次第に露わになる。そして、綺麗な三角形型をした肋骨が見え始め、後少しでブラが見えそうになった時だ。 「あの〜ちょっといいかな」 「！！」 僕らは驚いて屋上の入り口を見た。 すると、入り口には顔を赤くした晴香が立っていた。 「は、晴香！」 と賢は思わず叫んでいた。 「いや〜そのね…、二人きりの食事はどうなってるかな〜って思ってさ。その…セッティングしたのは私だから、ちょっとした責任感があってさ…はははは」 そう言えば、と僕は思い出した。晴香は学級委員長で、屋上にある委員会の倉庫に物を取りに行くために常時、屋上の鍵を持っているのだ。そうでなければ、関係者以外立ち入り禁止の屋上に僕らが入れるわけがない。 「あの…確かに私達公認のカップルになれば屋上でキスも出来るっていったけど…その…あまりにも激しいのは……」 そう言えば晴香がそんなことを言っていたなと思いだす。 （激しい、か……） 今回ばかりは否定できそうにない。 （でも、今はそんなことどうでもいい…） 僕らは恥ずかしい所を目撃されてしまったのだ。 賢はシャツの裾を下して白い腹部を隠し、僕は体を起こして賢の上からどいた。 「その…ごめんね、盛り上がってるときに。でも…もうすぐ授業だし…」 晴香に言われてみれば、授業開始の五分前だ。 「あ、うん、ありがとう、晴香」 「こ、こちらこそ。満足していただければ幸いですよ。あ、あはははは」 晴香は気まずそうに笑った後、じゃあね、と言って駆けながら階段を下りて行った。 「優一…」 振り返ると、ぼうっとした目で見つめてくる賢がいた。まだ横になった状態で、口の両端からにはまだ涎が滴り、またシャツが完全に下されおらずに臍が丸見えだった。 「大丈夫だよ。晴香は…たぶん、見なかったことにしてくれる」 僕はそう言って、ハンカチで賢の涎を拭きとり、シャツの裾を摘まむと引き下ろして臍を隠した。 （でもな〜） 朝の様子からすれば結果は火を見るより明らかだった。 「さ、もうすぐ授業だから教室に戻ろう」 「う、うん…」 賢は名残惜しそうに体を起こす。 その後、僕らは急いで片づけをして教室に戻った。 教室に帰ると、クラッカーを持ったクラスメイト達が待ち受けているのは言うまでもない。 「もう、晴香の馬鹿〜！！」 学校からの帰り道、賢は悔しそうに唸った。 「ま、晴香だしね」 おしゃべりなのは昔からだ、と僕自身もわかっていた。でも、怒りは感じない。晴香はおしゃべりと言っても、本当に言っていいことと悪いことの分け前はついている。ただ、少し悪ふざけが好きというだけだ。 「でも、賢。本当にいいのか？」 「何が？」 そう言って賢は首を傾げた。 「部活。今日はサボるって言ってたけど、本当によかったの？」 「いいよ。別に僕がいないと部活が回らないわけじゃないからね」 「でも、あんなに剣道がんばってたじゃないか。なのに…」 「もう、いいったらいいの！」 そう言って押し切る賢だが、少し前までは考えられないことだった。 （どうしたんだろう、賢…） 部活の人間関係に問題でも出来たのか。それとも剣道そのものに何か問題が生じたのか。と僕はあれこれ考えてしまう。 そんな僕を横目に、賢はのんきに口笛を吹いていた。挙句に 「ねえ、優一。時間があれば、でいいんだけど、駅ビルの地下に、可愛い御店が出来たんだって。見に行かない？」 何をいまさら、と僕はため息をつく。 （普段の居残り練習に付き合えたんだ。部活をサボって時間が有り余った今、それぐらい余裕だよ） こうして僕らは、恋人らしく手を繋いで初めてのデートをしたのだ。 |
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| 2011.2.23掲載 |
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