外気に晒された肉竿は勢いよく跳ね上がり恭平の下腹をバチンッと叩いた。若い肉竿は水揚げされたばかりの魚のようにピクピクと小刻みに震えている。
　普段被っている皮も完全にまくれ、むき出しとなった亀頭は透明な粘液で濡れ輝いている。
　それだけじゃない。女性、しかも憧れの季子に見られているということが、一層の興奮を醸し出しているのだろう、肉竿はお腹に張り付きそうなほど反り返り、亀のような頭ははち切れそうなほど膨らんでいる。

　外から蝉の鳴き声がかすかにする中、季子のゴクリと唾液を飲み込む音が聞こえた。
「なか、なか、立派ね……」
　季子が囁いた。そのうっとりとした声に恭平はどう言葉を返したらよいのか困った。経験豊富な大人の男ならば『君が魅力的だからだよ』などと女心を擽るような台詞を言えるのだろう。しかし、若い恭平は女性を喜ばす言葉を知らない。ただ、鼻息を荒くさせるだけで精一杯だ。
　大きく一歩踏みだせば、紅色に染められたいやらしい唇に届くところに、肉竿はある。プーンっと生臭い匂いが立ち上った。このするめ臭い匂いはきっと季子へも届いているだろう。
　ビクッン！
　恭平の意識の外で肉竿が勢いよく跳ねあがった。と同時に先端の切り込みに浮かんだ玉のようなしずくが宙に飛ぶ。
「きゃっ、すごおぃ！」
　季子が驚きの声をあげた。
　その声に呼応するかのように肉竿が大きく上下に揺れる。
　意識して震わせているのではない。恭平の肉竿が勝手に反応しているのだ。
　季子が言葉をつづけた。
「すごいね……恭平くんのおち○ちん……すごく元気……」
「そっ、そうかなぁ……」
　恭平の喉は震えている。
　その裏返ったような声に季子がクスッと笑いながら、恭平にオナニーをするように促した。
「あっ、うっ、うん」
　季子に言われるがまま、恭平は硬直している肉の竿に右の手の平をあて五本の指を折り曲げて、ゆっくりと前後にスライドしはじめた。
　前に動かすと亀頭が隠れ、後ろに動かすと亀頭が現れる。次から次へと滲み出る透明な汁が手を濡らし、摩擦を滑らかにする。竿と手の隙間からクチュクチュと淫らな音が響きだす。
　憧れの季子が濡れた唇を開き、大きな瞳を輝かせ男の自慰を見つめている。
（あぁ、せんせいが、あんないやらしい顔で俺のちん○を……ああっ、たまんないよぉ。唇……ああっ、あのエッチな唇でなめてもらいたいよぉ）
　 恭平は飢えた野犬のように息を荒げ、扱く手を早めた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はっ……」
　吐く息の間隔が短くなり、クチュ、クチュと湿った音も小刻みに鳴る。
　口の中には油断するとこぼれそうなくらいの唾液がたまってきた。それをゴクリと飲み込み意識を肉竿に集中させた。
　頭がくらくらする。ＡＶ女優のように瞳を濡らし肉竿を見つめる季子がかすんできた。
　もぉ、何も考えることができない。
　至福の瞬間を迎えるため更に手を早めたとき、季子と視線が交差し心臓が力強く脈打ち、手をとめた。
　やはり、こうして目があうと恥ずかしい。快楽に集中できない。
　
「やめちゃ、だめだよぉ……」
　手が動かないことに季子が不服を漏らした。
　恭平はもう一度手を動かした。
　だが、やはり、急に芽生えた羞恥心という壁が、快感へ向かう道の邪魔をする。
　下半身と顔を交互に動く季子の目線が恥ずかしく、再び、手を止めた。
「どうしてやめるの？　見せてくれるって約束でしょ」
「もぉ、したよ」
「だぁーめ、ちゃんと最後までするのよ」
「……そう言われてもさぁ、やっぱりこれって一人ですることじゃない？　なんか、じっと見つめられていると恥ずかしくて……集中できないよ」
　と、真面目な会話？　をしていたら、怒り狂ったように勃起していた肉竿が硬くもなく軟らかくもなく状態、つまり、半立ち状態まで小さくなった。
「ふーん、集中できないかぁ」
　恭平はコクリとうなづいた。
「あぁーぁ、こんなに小さくなっちゃってぇ」
　季子がそう言いながら、萎れた肉竿に指を絡めてきた。
「あっ……」
　女の冷たい手に、思わず声を漏らした。
「小さいのより、大きいのが好きっ」
　手の平は肉竿の下、指は上側に絡んでいる。その逆手の手がゆっくりと前後に動きはじめると、瞬く間に季子の手の中で萎んだものがむくむくと膨らんだ。
「大きくなったね」
　季子が悩ましく言い、その硬度を確かめるかのようにぎゅっと握った。
（あぁっ……せっ、せんせい、きっ、季子さんの手がおち○ちんに）　
　硬い肉竿が細指を押し返すかのごとく、ピクピクと揺れ動く。
「元気なのが好き」
　季子が逆手のまま肉竿を扱き出した。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
　自分でするのとは全く違う。他人の手、女の手で扱かれるのがこんなに気持ちいいものだとは思いもしなかった。
　手でされているだけでもこんなに感じるのならば、口で愛撫されたらどうなっちまうのだろう？　もっと、気持ちいいに違いない。そして、お○んこの中はどれほどの快楽があるのだろう？　もしかすると気絶するかもしれない。
　
「わぁ、すごい。どんどん、濡れてくる……イヤラシイ」
　透明な粘液が次から次へと溢れ、先生の指の隙間に見えている竿までぬるぬるに濡れている。肉竿の下に隠れた季子の手の平もきっとこの汁でぐちょぐちょに濡れていることだろう。
「うっ、うううっ」
　まだ、扱かれてから、ものの三分も経っていないのに、今にも粘っこい精液が噴出しそうだ。
　このままイクと、間違いなく目の前で肉竿を扱く先生めがけて精子が飛び散るだろう。角度からすると、顔に直撃だ。それも凄い量の精子が出るだろう。軟らかい糊のような若い精子が先生の顔、を汚すかもしれない。いや、もっと勢いよく飛んで、髪の毛まで汚すかもしれない。
　顔にかける、顔面シャワー。何度もアダルトビデオで見た。きれいなお姉さん、季子の顔が白濁にまみれる。そんなことを想像し何度も一人で果てたこともある。
　だが、それはあくまでも妄想の世界。妄想の中では喜ぶ先生も実際に今、そうされるときっといやだろう。
　もしかすると、怒られるかもしれない。いや、それだけならばまだいい。変態だと思われるかもしれない。そうなったら、完璧おしまいだ。ここは何としても我慢しなければならない。
　ぎゅっと尻の穴に力を込めて高まる射精感を押さえ込む。
　が、そんな恭平の苦悩を知ることなく、季子の手はより滑らかさを増しながらスピーディに扱いていく。
　クチュ、クチュといやらしい音を響かせながら。
（だっ、だめだぁ……）
　何度か踏ん張ったが、脳ミソが蕩けそうな快感に耐えつづけるには若すぎる。我慢が限界を超え、忽ち射精感が立ち昇った。
「あっ、あっ、うっ、でっ、でっ、ぐうぅっ」
「だめっ！」
　季子は恭平をきっと睨みあげ、射精させまいと肉竿を握る手に力をこめた。だが、遅い。季子の手の中で肉竿は血管を浮きあがらせ力強く脈動し、色素沈着していない桃色の亀頭を膨らます。縦に割れた小さな割れ目がぐわっと開き、ポンプ式の水鉄砲のように凄まじい勢いで熱い樹液がはじけ飛ぶ。
「きゃっ！」
　咄嗟に季子が身をそらす。
　一発目の精液が恭平の予想を遥かに上回る勢いで、一直線に宙を舞う。二発目は季子の頬を掠めた。三発目が季子のスカートにかかった。つづけて季子の膝、腕を汚していく。更に何度か脈打ち、最後の精子がドロリと季子の手に垂れた。
　季子は魂が抜けたかのように唇を開き汚れた手を見つめている。
（ああっ、でちゃたよぉ……まずいかな？　怒っていないかな）
　欲望の塊を吐き出したあと、急に恭平の中に不安が広がった。オナニーを覚えたばかりの時、その行為を終えたあと妙な罪悪感にさいなまれるように。

　季子が力を失いつつある肉竿からそっと指を放し、手にこびりついた精子を眺めた。粘っこいものが、ドロっと流れ雨だれのように床に向けて雫をつくる。雫が膨らみ糸が伸びるが、粘り気のある糸は易々ときれない。床と腕の真ん中まで垂れたとき、ようやく雫が玉となって床にピチャリと落ちた。

　恭平は慌ててテーブル傍のテッシュ箱からペーパーを一枚、二枚と抜き取って唖然とすしている季子へ差し出した。
　季子が汚れていない手でそれを受け取り生暖かい精液を拭いだす。
「あっ、せんせい、スカートも」
　恭平は、再びテッシュをぬき、その手でスカートの汚れを拭きだした。
「あっ、いいのよ……自分でやるから……」
「いや、いいって、俺が悪いんだから……」
　恭平の手を止めようとする季子を逆に制し白い小さな水溜りを拭きとっていく。
「ちょっとごめんね」
　季子が精子まみれのテッシュをテーブルにおき傍にあるかばんの中からポーチを出した。
「これっ、濡らさないと染みになっちゃうから……」
　季子が立ち上がってドアに向かった。
「きゃっ」
　季子が小さく叫び、その場に止まった。
「どうしたの？」
　恭平は尋ねた。
「うっ、なんか、ぬるっとしたものが……」
　季子が膝を曲げ足の裏を天にむけた。
　ぬるっとしたものの正体は想像するまでもなく恭平の最初に飛ばした精液だ。発射したところから二メートルほどのところにそれはある。そんなにも飛んだ。いや、違う、もっと飛んでいる。なんと、部屋のドアにも、白いものがドロリと筋をつくり垂れている。
「すごい……こんなところまで……」
　恭平は足の裏を拭き終えたテッシュを季子から受け取った。
「じゃぁ、ちょっと洗ってくるね」
　季子が部屋出ていった。

　洗面所で季子はたっぶりと濡らしたハンカチで精液が付着したところを拭きながらさっきの光景を思い浮かべた。
　恭平が呻き、肉竿が脈うったとき、咄嗟に身をよじったが、尖ったものの切れ込みから精液が放たれる瞬間を見逃さなかった。
　缶ジュースを思わず振ってしまい、その振動で膨張した炭酸ガスの力で中の液体が一気に噴出すように精子は力強く飛んだ。
　その瞬間、季子の全身に悪寒のような震えが走った。

（あっ！　やだぁ……こんなに濡れちゃった）
　あまりもの凄まじい衝撃に襲われ、ショーツの中心がビッショリと濡れていることに今気づいた。膣がむず痒い。男のものを求めている。
（次は私が気持ちよくなる番よ）
　季子は濡れたハンカチをきつく握りしめた。

つづく