第３話「解放されて」


　一日落ち着かない気持ちでした。彼からのメールで７時には帰れるということなので、晩御飯の準備をしている間中も、ずっと気持ちがふわふわして落ち着かない。なんとなく、餃子スープとピリ辛野菜炒め、鶏肉の塩焼きとご飯。ちょっとずつだけど全部にんにく入り。金曜だし、良いよね。味見をするといつもより少し美味しくできた気がする。なんだか嬉しい。

　ぱたぱたと食事の準備をして気を紛らわせる。そして７時ちょっと前には、ちゃんと彼が帰ってきた。「ただいま。」いつも通りの彼。彼の部屋の前を通って出迎えてスーツを預かる。彼はすぐにシャワーを浴びる人。彼のクローゼットにスーツを戻す時、部屋のパソコンに一瞬目が行く。瞬間、どぎまぎしてしまう。

　彼はもう、シャワーを浴びているけど、なんだかスーツに染み込んだ彼の香りが心地良くて深く吸い込む。なんだか恥ずかしくなって、急ぐこともないのに、慌てて部屋からでて、食卓の準備をすませた頃には、ダイニングでＴシャツ・短パンのラフな格好の彼は缶ビールに口をつけていた。

「ご、ごはんにしよっか。」なんだか、ドギマギしてしまう。恥ずかしい。昨夜のあの映像が今の普通の彼と重なる。知らないうちにわたしのこともあの目で見ているのかしら・・・。そんなはずない。でも、彼が凄くいやらしく感じる。

　向かい合って、食事を始める。「今日のご飯、すごく美味しいね。にんにくが利いててすごく好みかも。」いつも通りの優しい彼に料理を褒めてもらって嬉しい。

「う、うん。ありがと。よかった。」テレビをつけて恥ずかしさをごまかす。なんで、こんなことでこんなに恥ずかしいのかわからない。彼もなんだか変なの？って顔で私をみてる。

　野菜炒めをしゃくしゃくたべながら、チラリと彼を見る。鶏肉を食べながら少しやかましいテレビをみて、笑ってる。目が細くなって、そうだ、この優しい目が好きなんだよなぁなんて思い出す。それなのに、一瞬、昨夜のいやらしい目のことを思い出してしまって、かぁっと火照ってしまった。

　うつむいて食事を済ませてからすぐ、ソファで缶チュウハイを啜る。なんだか恥ずかしくてゆっくりしてられない気分だった。彼もすぐについて来て「どうした？」なんて笑いながら、横に座る。「別に。」目を合わせないでしばらく二人でテレビを見ていた。

　急に彼に肩を抱かれた。驚いて彼を見ると、開いた左手が胸に伸びてきた。「ね、今日、いいだろ？」まだ、９時前。駄目なんて言わないけど、答えそびれていたら、そのままソファに押し倒されてしまった。彼の指先が胸の先端を擦り上げて、ピンとなんども私の乳首を弾く。そのたびにぞくぞくと感じてしまって声が出てしまう。

「あぁ、は、あ・・。」私の声に欲情したのか彼のあそこも大きくなっていく。そして、薄い短パンの生地越しに私の太ももに彼のペニスがぶつかる。

　唇を吸われながら瞳を閉じると、昨夜のあの目、濡れたペニスを撫でる指先がまた脳裏を掠める。彼の指がせわしなく私の体に触れて、服を脱がされていく。お腹の側から入り込んだ手が胸をじかに揉みこんで来て、いつもはそんなに感じないのに、今日は胸が張って、ただもまれるだけで圧迫感が堪らなく心地いい。声が漏れる。塞がれた唇から声を漏らすと彼は、私の唇を解放してくれた。

「今日、すごく色っぽいね。どうしたの？かわいいな。」いつもの彼の優しい声にドキリとする。じっと見つめて答えを待ちながら、彼の指先がすこしづつ下へ降りてきた。

　ドキドキする。彼の指が腰を超えて私のあそこに触れそうになる。じれったい程ゆっくりと下半身をなでられて、やっと下着の上から割れ目を指先がなぞってくれた。「きゃっ。」びっくりするほどの快感に声をだしてしまった。あぁ、嘘。クリトリスが剥けちゃってる。指と服と擦れて・・・。

　私の声に気を良くしたのか、彼は嬉しそうだった。「期待してたんだ。」そのまま彼の指先でぴんぴんとクリを弾かれて、堪らなくて、声が止まらない。「あ、やっ、待って。」待ってくれない。

　リビングでちょっと触られてるだけで、こんなに感じて、イキそうになるのは初めてかもしれない。「気持ち良いんだね。良いよ。イクところ見せて。可愛いな。」剥けて敏感なクリトリスを何度も服の上から弾かれて、我慢できない。

「あぁ、だ・・め。まって、もう、それ、すぐ・・・。」彼の指に弾かれて私にできるのは跳ねるだけでした。

　痺れるような摩擦が熱くて、一瞬でクリトリスは快感で焼き焦げました。止まらない白い快感の波にソファの上で震えていると、いつの間にか、訳もわからぬまま服をぬがされて、その時には彼の瞳が、視線がクリを擦っているような感覚に追い立てられて体が反応してしまいます。そして彼もその場で服を脱ぎ捨てて私の上にのしかかってきました。

　いつもはもっとゆっくり・・・。なのに今日は、チュっと小さく唇にキスをくれたあと、すぐに下の方におりていって、まだ敏感なクリトリスに吸い付きました。「あぁぁぁ、待って、まだ、あぁ、イックゥー。」震えがとまらないほど、気持ちいい。

　苦しい。まだ、イッテるのに吸われて、そして、舌先で弾かれたクリが、一瞬、昨夜からずっと溜め込み続けていた快楽を弾けさせる。

　また、吸われて、そして舌先で弾かれる。「あぁ、な、なに？また、また・・・。」腰が勝手に弾ける。苦しいのに、津波のような快感で抵抗できない。声が止まらない。「あぁぁぁ、イクっ、あぁ、またっ。またぁ・・・。イヤ。ダメェ。もうっ、だ・・・っ。イック・・・・・。」

　何度も、何度も、なんで・・・、激しい。クリトリスが嘘のように張って、彼の舌に弾かれて絶頂が何度も来て。苦しい。助けて。でも、体が動かない。快感がびりびりと電気みたいに体を縛って、止められない。逆らえない。

　声も出なくなって「だ・・・・・、ダメ・・。イク。」視界がぜんぶ真っ白に染まって、体中が溶け出すみたいに、私は絶頂した。そうして最後には、全身を熱くて心地良い電気がゆっくり貫いていくような感覚に酔って、私は気を失ってしまいました。

　暖かい水に沈んで行くような心地良い浮遊感。全身に残る絶頂の余韻。「だいじょぶ？」彼の声が聞こえて、小さく答える。「だいじょぶ・・・。たぶん。」起きているのか眠っているのかわからない非現実感。気だるい疲れとまだとまらない快感の余波がすごく素敵だった・・・。

　彼が私の上に乗って覗きこんでいる。やさしい瞳で覗き込んでいる。唇を吸われて舌で舐められる。「はぁ・・。」甘い息が漏れる。彼の胸板につぶされて乳房が歪むと圧迫感がじわっと全身に広がるようで心地よい。

　ゆったりと快楽に浸かっていた私を熱い快感が貫いていく。それもゆっくりと。我慢もできずに鳴いてしまった。声が止まらない。彼のペニスが私の中に入ってくる。

　ただ、それだけで、何十分も結合しているみたいな我慢の利かない熱が腹から脳に突き抜けて、私は彼が奥に到達した途端、イッテしまった。震える。止まらない程、体が震えて声も出なくて、耐えられないほど気持ちがいい。

「あ、ああ・・・ぁ・・。ダメ、今、・・・・ダメ。」彼の腰が動き初めた瞬間、ネット上の画像の女性を思い出した。壁に食われて動けない彼女はあの壁の中で、私みたいに絶頂してるのかもしれない。助けを求めて片手を伸ばすけど、声も届かず、でも、ここから逃げられない。でも、もっともっと追い詰めて欲しい。そうしたら、わたしどうなるの・・・。

　どぷりと蜜が溢れる。彼の腰が一往復する度に激しい快楽が脳を貫く。強すぎる快感の熱にたえられない程苦しくてつらいのに、動かない体と彼のいやらしい瞳が私をもっといやらしくする。私を逆らえなくしていく。あぁ、この眼だ。彼が私をあの眼で見ている。瞼に張り付いて離れない映像「壁に食われた女性」の顔が私の顔に変わる。

　瞬間、私は始めての、なにかに知らない津波のような快楽に押し流されて、また、眠るような、感覚のない心地良い空間に落ちていく。口元をいやらしく歪ませて彼が私を貫きながら覗いているのに気付いた。「あぁ、これ、すごい・・・。」言葉にしたかどうかもわからない。でも、そう思った。