第４話「執着心」


　死ぬかもしれない・・・。でも、いい。もっと貫いて。彼がいやらしい瞳でわたしを見つめながら、私の上でゆれている。彼が上下するたびに、子宮から全身に広がっていくさざなみのような快楽が、私を削っていく。私を満たすペニスが、私の子宮に口付けをするたびに、狂おしいほど甘美で残酷な衝撃が突き上がってくる。耐えられないほどに現実感がない。あぁ、もう・・・。

　私は吼えていた。そして、彼は喜んでいる。彼の楽しげな瞳だけが脳裏に焼きついていく。彼のいやらしい視線が私の全身をいやらしく縛っていく。皮膚の裏までくまなく支配されて、ただ、彼を見つめることしかできない。

　快楽の暴風に意識を飛ばされました。

　泥が纏わりついてくるような重く粘ついた妙な空気。薄暗い空気の薄い寝室で私は夢を見ていました。彼は私の乳房に優しく触れながら、じっと私の横顔を眺めています。まだ快感のさざなみが残る体にかれの指先の優しさがむず痒くて、身もだえしてしまう。

　夢見心地に目を覚ました私は、まだ私の四肢を縛る快感の中で彼の唇にたまらず唇を寄せました。そこで二人静かに抱き合って、体が私のものではないみたいに心地よくて堪らないわたしに、彼はまた欲情して私に覆いかぶさりました。

　嬉しい。堪らなく嬉しくなって彼を受け入れて、何度も果てて、やっと彼に注ぎ込んでもらいました。苦痛としかとれないような傍若無人な愛に焼き焦がされました。そうして、彼の熱を子宮に感じながら、私か、それとも彼なのか、もうどちらかわからないけれど、お互いが擦れあう度にびくんと跳ねる彼の肉なのか私の肉なのかは、焼け付くほどにお互いを溶かして繋がり続けました。

　じわじわと私達を追い詰める快感の繋がりの中で、彼の唇が私の唇を求めてゆっくりと重なります。お互い舌を絡ませると彼の柔らかい舌からすこしずつ暖かい唾液が伝わって、まるで私の口内を陵辱していくみたい。

　もっと、欲しくなって堪らなくなって吸い付いて、彼の舌にがむしゃらに舌を伸ばして、彼を求めました。陶酔するような甘いくちづけでした。

　私達の夢中の咬合のさなか、彼の肉棒が私の中でまた、むくむくと大きくなっていきます。圧迫感が私を追い詰めて、まだ、敏感な子宮口付近がうずうずと疼いて彼の口の中で鳴いてしまいました。「んぁあ・・。」その直後彼が一度大きく腰を突き進めて、私は一息に追い詰められていきます。

　彼は私の震える肢体を力強く抱きしめてゆっくりと焦らすように、私から彼が抜け切る直前まで腰を引き、また、ゆっくりと焦らすように私の一番奥まで腰を進めていきます。私を貫いていきます。ほんの数往復。もう、ほんの一瞬で限界まで追い詰められました。

　彼に何かを求めようとして、絶頂なのか休息なのか、それとも両方欲しくてどうして良いかわからなくなって、彼が私の唇を吸いながら、私の痴態をじっとあの瞳で見つめていることに気付きました。

　その濁った欲望で私を見つめる瞳が、私を崩していく。もう、ほんの一瞬でも気を緩めたら、吹き飛んでしまいそうなほど、絶頂の瞬前。もっと、もっと、彼の瞳に犯されたい。

　私が快楽に全身を震わせてやるせなく彼にしがみ付くしかなくなって、彼の口の中に小さく苦悶を吐き出した瞬間、私と彼の繋がりが飛沫をあげました。彼の肉棒が私の奥を貫くと全身が真っ白に塗り替えられて、愛液の涙を溢れさせて、私はイキました。私は絶頂しました。私は絶叫しました。

　そのまま、壊された私の中を彼が何度も何度も貫き擦りあげて、削って、削いで、それが延々と何時間、何日、何年、時間の感覚がなくなって、苦しくて愛しくて、ぼやけた意識に時折移る彼の瞳が私の心を侵食する。

　もっと昂ぶらせて、やっと、やっと、それとも、もう？そんな瞬間。そんな永遠。子宮が、子宮が焼けるような熱が彼から吐き出されて、彼の欲望が私の子宮を熱く焦がしていく。

「んぅ、う、あぁぁぁー！」彼にくみしだかれたまま吼えて、彼の瞳を恋しく見つめて、彼の瞳が私の瞳を犯し、やっと、やっと、それとも、もう？私達は力尽きました。でも、敏感すぎる結合部が私達を縛って、身動きならないまま、ただ、抱きしめあって、激しすぎる快楽の余韻に追い詰められて、やっと搾り出せた言葉が「あぁ・・・、好き。」

　ねぇ、大好き。貴方が大好き。私をいやらしく見つめるその瞳が大好き。
「あぁ、俺も・・愛してる。うぁ。」一瞬、動いてしまって、肉のまぐわいが混ざってしまう。そして、二人の全身を鋭い快楽の有刺鉄線が縛る。彼の言葉が嬉しかった。彼の瞳がいつもの優しい彼で、それも少し残念で凄く嬉しかった。