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９、
ほぼ月に一度、僕は雪子と会い続けた。彼女が羽田に来るときは長くて二時間半だったが、僕が札幌に行けばたっぷりと二日に分けて会うことができた。
十二時のチェックアウトを延長して帰りのフライトギリギリまで過ごすこともあったし、今日はこれで出ようといって彼女が車で空港まで送ってくれる途中、未練がましくもう一度ラブホに入ったこともあった。
彼女はたいてい空港に迎えに来た。僕は必ず空港のパーキングでフェラをさせ、まずは口の中に射精した。彼女はその様子もビデオに撮りたがった。
センターコンソールに置かれたカメラが画面いっぱいに僕自身とそれにしゃぶりつく美貌の人妻をとらえている。彼女のあえぎ声がはっきりと、マイクの感度いっぱいに記録される。
彼女はモスグリーンのジャガーに乗っている。内装はベージュのレザーだ。空港で一度僕の欲望を受け止めた彼女は車内でもいたずらを要求する。彼女が運転するとき、僕は彼女の割れ目を指で弄ぶ。もちろん下着はつけていない。
隣にバスやトラックが来ると覗かれる危険を承知で、あえて乳房を弄んだりもした。
「ダメです、感じすぎると運転できなくなります」
そういいながらも愛撫を要求し続ける彼女をみるにつけ、これは僕が調教しているのではなく、僕が彼女の欲望に奉仕しているのだと思うようになっていた。たしかにそうだ。
僕はうぶな人妻を弄び、調教しているような錯覚に陥っていたが、リードしているのは彼女の方だった。
どうやら僕はサディストではないし、世に言う調教はできない人間なのだろう。むしろ彼女は、僕との出会いを通して、と勝手に思うことにしたのだが、自分の中のもう一つの扉を開け放ってしまったようだ。
ビデオ撮影も、手錠での拘束も、背後から突くときお尻を叩くことも、要求したのは彼女の方だった。もちろんそれが僕の欲望を受け入れるものであるかのような、巧みな誘い方をするすべを彼女は心得ていた。
僕が運転するとき、彼女はたいていフェラチオをした。併走する車からは見えていたに違いない。一度果てているし運転しながら射精はできないものだ。ホテルまでそうしているときもあれば、途中、コンビニなどに車を寄せ、そこで二度目を飲ませることもあった。
こうしてホテルに着くと、僕たちはすぐにシャワーを浴び、そこでもさまざまな遊びをした。
彼女といる間中、可能な限りのセックスを楽しもうと、僕は勃起を促す薬を飲んだ。はじめ彼女は、なぜそんなことなさるのですか、わたしは先生に何の不満もないのにといい続けたが、四度目でも硬度を維持している僕に犯される喜びを、ある日彼女は告白した。
彼女の親戚、といっても遠縁の人らしいが、数年ぶりに銀座で個展をするので見に行くという。今までも何度か案内があったらしいが誘いに応じたのは初めてだという。もちろん、東京にいく用事であればなんでもいいはずだった。
銀座のホテルに二泊。連休なので二人の子供も一緒に来ている。いろいろやりくりをしてみたというが、僕と会う時間を作ることはできなかった。
「がっかりです、こんなにお近くにいるのに。本当にごめんなさい」
「画廊を訪ねてもいいですが、それは危険すぎますね」
「はい、それにご挨拶だけなんて、かえって悲しくなります」
そんなメールのやりとりをしたのは、彼女たちが東京に着いた夜のことだ。
「いま食事を終えて部屋に戻りました。子どもたち、疲れているのですぐに寝ました」
九時過ぎだろうか。
「やっぱりお会いできないのは辛いです。ごめんなさい、来たことを後悔しています、先生に会えると思ったのにバカでした」
というメールが来る。
「僕も雪子を思う存分抱けると思ってた。せめていやらしい声を聞かせて」
「ほんとにごめんなさい。でも、子どもたちが同じ部屋ですから、電話は無理です、ほんとにごめんなさい」
たしかにそうだ。彼女からは詫びる言葉ばかりが送られてくるのがかわいそうになる。
「もちろん分かりますよ、ゆっくり休んでください、その代わり今夜これから僕の名前を呼びながらオナニーすると約束して」
「はい、今も胸を触っています、でも声が出てしまいそう」
十一時近くになって、彼女からメールが来た。
「先生を想って自分でしました、何度もお名前を呼びながら、先生に犯され続ける自分を想像して、幾度も果てました」
という言葉に添えて、二枚の画像が添えられていた。一枚はひねった乳房とピンと立った乳首、もう一枚は二本の指で大きく開かれた割れ目で、あふれ出る愛液が鮮明に写っている。明るい照明、彼女は全裸だ。
「声を出さずにできましたか？」
「はい、でも少しは声が出てしまいます」
「そこはどこ？部屋の明かりをつけてるの？」
「バスルームです」
「分かりました。今夜はあなたの画像でオナニーするのやめにします」
「え？なぜ？」
「明日の夜、そこに行ってあなたを犯します」
僕はやはり我慢できなかった。突然の思いつきだが、そんなことができるのだろうか。
「分かりました。今くらいの時間ならだいじょぶです、明日は本物の先生をくださるんですね、うれしくて胸が痛いです」
「待ってて、雪子の好物あげるから」
「うれしい。ごめんなさい、がまんできなくなりました、今夜もう一度する許可をお願いします」
「まだイキ足りないの？ 淫乱で我慢もできないスケベな奥さん。いいよ、オナニーしなさい」
「ありがとうございます」
一人でするときは必ず許可をとる、という僕の作ったルールに彼女は従っていた。
二日目は親戚とともにディズニーシーで遊び、夕方、銀座の画廊に行き、みんなで食事をするのだという。子どもたちは疲れて熟睡するだろう。
僕は仕事を終えてからゆっくり食事をし、彼女が泊まっているホテルのカフェで本を読みながら待っていた。
「今部屋に戻りました」
というメールは九時半くらいだっただろうか。
「子どもたちをお風呂に入れます」
それからしばらくたって、
「興奮してるのか、なかなか寝ません」
という報告が来る。
「だいじょぶです、僕のことは気にしないで、落ち着いたら教えてください」
携帯を胸ポケットにしまい、あたりを見回してみる。僕はこれから子連れの人妻の部屋に潜り込もうとしている男に見えるだろうか。
コーヒーを飲みながら小説の続きを読んだ。
「あと少しです」
急に緊張する。十時半を少し過ぎている。
「どうぞ」
というメールに部屋番号が添えられている。
そこはクラブフロアなのでルームキーがないとエレベーターが止まらない。夫が来るから、と彼女がフロントに電話をすることにしていた。打ち合わせどおり僕はフロントに行き、名前と「妻」の部屋番号を告げる。
フロントが彼女の部屋に電話をし、確認をとってからベルボーイが案内に立った。
その階でエレベーターを降りるとさらにガラスのドアがあり、中のスタッフがていねいに迎え入れ部屋まで案内しようとする。
「けっこうですよ」
とにこやかに制止し、僕は彼女に到着を知らせるメールを送った。
「かしこまりました、奥様のお部屋はあちらでございます」
と示された方にゆっくり歩いていく。犯罪者になったような緊張感だ。
目指すドアが少しだけ開かれた。ドアを開ける前にチラッと後ろを振り返ると、さっきのスタッフは書類に目を落としていた。
「どうぞ」
とささやくようにいって、バスローブ姿の彼女が僕を招き入れ、そっとドアを閉めた。
廊下の右側はクローゼット、左のドアを開けるとバスルーム、突き当りのドアがベッドルームだ。
彼女はそっと奥のドアを開け、二人の子供の寝姿を僕に見せた。暗いのではっきり見えなかったが、写真のイメージよりも大きい気がした。
「たまに夜泣きをして目を覚ますんです。わたしを探しに来る前に泣き声に気付かないといけないので」
そういって彼女はベッドルームのドアを少し開けたままにした。
彼女は僕の手をとってバスルームに入り、やはりドアを少しだけ開けたままにした。
シャワーブースつきのバスルームは十分なスペースがあり、手前に豪華なパウダールームがついている。
「ごめんなさい、先生にこんなことさせて、でも来てくださってほんとにうれしい」
そういいながら僕に体をあずけて、キスをせがむ。押し殺した声と真剣なまなざしがいつもの彼女と違う色気を演出する。
僕はかばんを床に落とし激しく唇を吸った。あまりに秘密めいたこの状況に、幸い僕はいつにも増して性的興奮を覚えていた。
舌を絡ませながら彼女は僕の上着を脱がせにかかる。
僕がバスローブを剥ぎ取る前に、彼女はひざまずいてベルトを外し、ズボンを脱がせると、すでに勃起した僕自身にブリーフの上から頬ずりをした。
「あ〜、センセイ・・・」
かすれるような声でそうささやくと、彼女は静かに僕の下半身を裸にし、フェラチオを始めた。
薬は飲んでいないが、今夜は痛いほどに勃起し反り返っている。いつもと違う僕の反応は彼女にも伝わっている。
口に入りきれないペニスをむさぼるように愛撫する彼女も、いつになく乱れている。
僕は彼女を立たせ、全裸にすると化粧台に手をつかせ、足を開かせた。
今度は僕がひざまずき、後ろからクンニをする。すぐに愛液が滴り落ち、それを舌ですくい上げながら、口と指を総動員して僕はいつもより乱暴に陰部を弄んだ。
「アアッ・・・ アアッ・・・」
彼女は必死に押し殺しながら、それでもあえぎ声は漏れてくる。
彼女は目の前の鏡に映し出された自分の姿に時おり目をやっている。
「いやらしい・・・ すごくいやらしいです・・・ センセイ・・・」
ささやくようにそういう彼女は両膝を震わせながら今にもいきそうだった。
僕は立ち上がると、鏡に向かっている彼女の片足をイスに乗せて開脚させ、後ろから抱き着いて乳房、乳首、クリトリスへの悪戯をさらに続けた。
彼女は両手を上げて後ろに回し、僕の髪をつかむようにしてからだをあずけている。
鏡に映し出された美しい肉体と、快感にゆがむ表情、押し殺された喘ぎ声に僕の性欲はさらに加速する。
耳と首筋に舌を這わせると彼女はもう限界だった。
「鏡を見てごらん、誰がいる？」
「アアッ・・・ もうダメです、いっちゃう・・・」
「何が見えるかいってごらん」
「雪子が、・・・センセイに、弄ばれています・・・ アアッ・・・」
少し腰を落とすと彼女の股間から僕のペニスが突き出し、ヌルヌルの先端が陰毛をかき分けている。
「雪子、淫乱雪子、どうしてほしい？大好物のザーメン、飲みたいんだろ？」
僕も必死に声を押し殺して耳元でささやきながら、ペニスでクリトリスをこすり上げ乳首をひねりながら敏感な耳を愛撫する。
「あ〜、ダ、ダメ、どうしていいか分かりません、もうダメです！！ うっ！！ うっ！！ うっ！！」
叫び声をこらえた彼女は鏡越しに僕の目を見つめ、果ててしまった。崩れ落ちそうな彼女を僕が背後から抱きしめる。
全身を震わせ、彼女は立ったまま恍惚の表情を鏡に映し、自分でそれを見つめていた。
へたり込み、僕の足にすがりつく彼女を見下ろしながら、僕はようやくシャツを脱いだ。
彼女は僕を見上げ、ペニスに口づけをし、時おりドアの向こうの様子をうかがいながら、いつもとは様子が違う硬さを手で確かめながら、カリを舐めまわした。
立ち上がった彼女が耳元でささやく。
「先生、今日は最初に中でして」
「飲まなくていいの？」
「お願い、中にください、今日は何も着けないで」
今まで数十回、彼女に挿入してきたが裸身で入れたことはない。
もちろんメールや電話では中出しさせろと何度もいった。
危険日に中だしさせろと迫る。
嫌です、妊娠してしまいますと彼女が拒む。
そんなことは知らない、性欲処理がお前のつとめだ、やりたいときにやらせろと迫る。
ダメです、今日だけは着けてください、お口で何度でもします、どんな命令も聞きますから中出しはだけは許して、と泣く彼女を僕が無理やり犯してしまう、という言葉の遊びだ。
「だいじょぶなの？」
「はい、今日は安全日です」
初耳だった。一度だけ、デート中に生理が始まったことがあったが、僕はかまわずした。
どうせゴムを着けているのだから安全日かどうかを知る必要はない。
「ねえ、だからセンセイ、お願い、今日は雪子の中に出して・・・」
僕の首筋に舌を這わせながらささやく彼女の声は潤んでいた。
僕は彼女の両足を持ち上げるようにして抱きかかえた。彼女も両手を僕の首に回し、両足で僕を挟むようにしてしがみつく。
僕は狙いを定めてからズブッと突き刺した。
「キャッ！」
という叫び声は予想外に大きかった。彼女は僕にしがみついたままじっとしている。
二人は静かになり聞き耳を立てる。何も聞こえない。
二人は目を見合わせ、それから安心して腰を動かした。
陰毛がこすりあわされる音がするくらいにすると、彼女は中とクリトリスと両方の刺激で登りつめていく。
入ってみると中の様子がよくわかる。知ってはいたが彼女は名器だ。吸い付くような感覚、やわらかさ、ひだの様子など、僕には初めての体験だった。
立位のまま、彼女はリズムに合わせて腰を突き出し奥歯をかみ締めて喘ぐのをこらえている。
けれども彼女の全体重を両手で支える時間には限界がある。僕は再び化粧台に彼女を向け、あらためて背後からしつこくクンニをし、もったいぶるように挿入した。
いつものように言葉で弄ぶことはできない。彼女もただあえぎ声をこらえるだけだ。
互いに無言で、立ったまま、背後から、初めて肌と肌の触れ合うセックスをした。
鏡に映っている。子連れの人妻のホテルのバスルームに忍び込み、禁断のセックスをする自分。髪を振り乱す彼女を背後から突く自分の姿。
そして快楽に溺れながら、どこか同情をそそるようなかわいそうな表情で鏡越しに僕を見つめる彼女。クチャクチャ、ピタピタという淫靡な音だけがしている。
さまざまなリズムで突き、乳首をひねり、クリトリスを指で刺激する。
さっきから彼女の両膝がガクガクと震えている。
「ダメ、センセイ・・・」
搾り出すようにそう呻いて彼女は崩れ落ちるように膝をつく。息も絶え絶えの様子だ。
僕は浴室の方に彼女を導き、バスタブの端に掴まらせた。膝が痛くないようにとバスタオルを敷いて四つんばいにさせる。
尻から腿の内側まで愛液と汗まみれの彼女。濡れそぼった陰毛をかき分けるようにめくれあがった陰唇が口を開き、ピンクの内壁が見えている。
「ダメです、そんなに見ないで・・・」
放心状態の彼女がささやく。バスルームの明かりは彼女の恥部の全てをはっきりと照らしている。
僕は壁にかけられた上着から携帯を取り出し、四つんばいの彼女の写真を撮った。バスルームにシャッター音が響く。
「嫌です！！」
ささやく声で、けれども強い調子で拒否しながら、彼女は屈辱的な体勢を変えようとはしない。
「やめてください、こんなこと、もう嫌です・・・」
目を閉じて弱々しい声でささやく彼女がいじらしくなる。
僕はシャッターを切りながら、
「いい子だ、すぐに入れてあげるよ。雪子、これが欲しい？中に欲しいの？」
僕はペニスをしごきながら、膣口にあてる。
「ハイ・・・」
何度も首を縦に振りながら彼女は挿入を待っている。
「おま○この中に射精して欲しい？ナマで犯して欲しいの？」
僕は耳元でささやきながら、四つんばいの彼女の乳首をつまんだ。
「アアッ！！ ・・・ハイ、お願いセンセイ・・・、早く入れて・・・、ナマでして・・・、おもいきり犯して・・・」
とささやく声で哀願する。
僕は相変わらずいきり立っているものをゆっくりと挿入した。ゴム着きのときとは比べ物にならない感覚だ。
さっきとは違って中の様子をゆっくり確かめることができる。締め付けるというより全体で吸い付いてくるような感覚だ。
彼女もいつもより敏感に反応する。けれどもあえぎ声を出せない彼女はじっと息を止め、しばらくすると一二度深呼吸をしてはまた息を止める。そのたびにヴァギナはいつもとは違う収縮をして僕自身に吸い付いてくる。
僕にはこれ以上余裕はなかった。彼女をいかせることなどどうでもいい。ひたすら自分の快感だけを求め、腰の動きを速めていく。
激しい締め付けと同時に、彼女の全身の筋肉が硬直する。うめき声、喉の奥から搾り出されるような悲鳴、その瞬間、僕は初めて彼女の中に射精した。
彼女の背中は汗だらけだ。気がつくと僕も汗にまみれている。
しばらくこの状態で絶頂感を味わいたいが、さっきから無理な体勢を続けている彼女のことを考え、まだだいぶ固さを保っている僕自身を引き抜いた。
「ああっ」
と彼女は声を上げる。崩れ落ちるようにバスルームの床に全身をあずけ、肩で息をする彼女の陰部から僕の精液がゆっくりと流れ出た。
少し間を置き、彼女は思い出したようにタオルを股間にあて、ひざまずいた状態のまま放心している僕のペニスにしゃぶりついた。
手でしごくとまだ白濁した液体が溢れ出る。彼女はそれをていねいに吸い取り、きれいにすると、名残惜しむように舌を絡ませた。
「シャワー浴びますか？」
そういう彼女に、
「もう帰すつもり？」
と意地悪く聞く。
「違います、だって汗が・・・」
そういうと彼女は一人でシャワーブースに入った。ガラスが内側から曇っているが、僕に背を向け股間にシャワーをあてているのは分かる。
出てきた彼女は自分の体を拭く前に、僕の汗をぬぐった。
「ごめんなさい、こんなところで、暑いでしょ」
うつむきながらささやく彼女がいとおしくなる。
「興奮したよ、秘密のセックス。それに初めて雪子の中に出した、最高だった、とても感動したよ」
そうささやいて僕は彼女を抱きしめた。
「うれしい、わたしもです。射精されたの感じました、熱いものが中を流れるのも感じました」
実際にか、それとも感覚的なものなのだろうか。
その後僕は再び立たせたままの彼女の全身を愛撫し、バスタブの隅に座り、今度は座位で挿入したがそこでは果てず、結局最後は彼女の口の中に射精した。
口でしてもらわないと気がすまないのは、彼女のフェラが上手だからでもあるが、そうすることが精神的に彼女を服従させている感覚を味わえるからだ。彼女もそれを分かっていて僕の精液をすすんで口で受けた。
汗だくのまま服を着て部屋を出たのは２時近かった。
子どもたちはぐっすりと寝入っていた。
クラブフロアのスタッフは席をはずしていたが、一階では最敬礼のベルボーイたちに見送られ、逃げ出すように僕は外に出た。
車はホテルに置いていこう。しばらく歩いてからタクシーを拾った。
「おやすみ、愛しているよ、雪子」
「わたしもです、愛しています」
初めて会ったときのように、僕はなぜかドキドキしたままだった。
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