第10話　解放

　クチュクチュと、湿った音が静かな部屋に恐ろしく大きく響いている気がしました。
「あう、ああ〜」
　もはや絶えることなく、妻の甘い啼き声が湿った音とハーモニーを奏でています。
　私の怒張しか知らない妻の美肉には、遠藤氏の凶暴なモノがあてがわれています。
　あろうことか、妻自身の細い手に導かれて、入り口をかき回しているのです。
　まだ入り口だけです。
　しかし、結婚した時に処女だった妻が、知っているオトコは私だけのはずでした。
　今、私以外の初めてのオトコを自ら動かしているのです。
　猛烈な嫉妬と怒り、そして寂しさを感じています。
　遠藤氏の腰は、いささかも動いていませんでした。
　慎重に、両手で身体を支えながら、ただ、興味深そうに、両目を閉じたままの妻の顔を見下ろしています。
　想像していたのとは全く違っていました。
　私の状態のことです。
　遠藤氏の凶悪な姿の怒張を自らにこすりつけ、悶える妻をすぐ目の前で見ていると、私のモノは惨めなほど縮こまってしまったのです。
『もうやめろ、早くやめてくれ』
　妻が早く許しを請えばいい。これ以上はイヤだと言って、遠藤氏と絡んだ身体を解こうとする瞬間だけを待っていました。
　かといって、そうなるはずもないことは、分かりすぎるほどに分かっていたと言っても良いです。
　今すぐ部屋を出て妻を止めなければいけない。
　そうするべきです。
　このままでは妻が、オトコを受け入れてしまう。
　私以外の怒張に、あのヌメヌメと温かい美肉が満たされてしまう。
　春雷のように、止めろ！という声が響いていました。
　それなのに、腰が抜けたのようになって、全身に力が入りません。
　心の中で、紀美、と呼びながら、ぺったりと床にったまま見守るしかなかったのです。
『紀美…』
　何度目に呼んだ時だったでしょう。
　ふと、妻の啼き声が、ねばるような甘さが混じっていることに気がついたのです。　
　腰が、微妙に上下に動いています。
『まさか』
　遠藤氏のモノを握る妻の手が、いつの間にか微妙に動きを変えていました。
　円を描くような動きから、その手は確実にタテに変わっていたのです。
「あれじゃあ」
「そうね、あれだと、もうこの辺りまでは、奥さんの中よ」
　縮こまったままの私のモノが、優子さんの優しい唇に包まれます。その唇は、惨めに小さいままの、それでも、存在する段差の辺りまで、包み込んできます。
「そんな」
「一度、ああなったら、オンナが我慢できるわけ」
　チュポンと音を立てて吸ってから、ペロリと先端を舐めてきます。
「ないわよねえ。ほら、見て」
　妻の手つきは、まるで、自分の中へ中へと誘い込むかのような動きとなり、腰がそれに合わせて微妙に上下していました。
　妻が、秘所にあてがわれた感触だけに集中していることが、目を閉じたままのその表情に、ありありと浮かんでいました。
「奥さん、良いんですか」
　妻の動きがギクッと一瞬止まりますが、それでも、手だけは、動きを再開してしまいます。美肉に招き入れる動きでした。
「奥さん、ほら、奥さんが動くから、もう、半分も入ってしまいましたよ」
「ああ、いや！いや、いやあぁ」
　イヤと言いながら､大きく首を振って、両手で顔を覆ってしまいました。
　それは、入り込んだ怒張を抜こうとする仕草でなかったことだけは確かでした。
　手を伸ばせば届くほどの距離の鏡の向こうで、妻の薄い秘毛の翳りの黒と、遠藤氏の凶暴なモノの黒とが融け合っていました。

　手を離してもはじき出されないほど深く、黒い凶器のような怒張が、妻の中に入り込んでいたのです。
　もはや、あてがっているのではなく、セックスしていると言って良い状態でした。
「奥さん、ほら、入ってますよ」
「あぁ、お願い、許して」
「じゃあ、抜きますか」
　わずかに遠藤氏が腰を引く動きを見せた瞬間でした。
「あう！だめぇ！取らないで。お願い。あう、ああ！」
　取らないでと妻が叫んだ瞬間、遠藤氏が、また、わずかに反転したようでした。
　あるか無きかの動きですが、遠藤氏が再びさっきの深さまで達したのでしょう。つまり､その凶暴なモノを半ばまで妻の美肉に埋め込んだということです。
「ああ、だめ、だって、あう、そんな、だけど、あうぅ」
「奥さん、良いでしょ」
　遠藤氏が慎重に腰を遣い始めます。まるで、これ以上断じて深く入れてやらないという決意を示しているようでした。
「ほら、この辺まで、奥さんが自分で入れたんですよ」
「あう、はうう」
　妻の声は苦役に耐えるような、そんな切なさが籠もっていました。
「ほら、この深さまでなら、ね、ほら、こうして。おお、奥さん、ヌルヌルですよ、ああ、ほら、これ、こんなふうに。こうして良いですよね、このまま続けますか」
「あう、ああ」
　甘い声を噴きこぼしながら、妻は、確かに頷いたのです。
　私以外の男のセックスを、妻が受け入れた瞬間でした。
　満足げな表情のまま、遠藤氏は、正確に単調な動きを繰り返し始めました。
　締まりの良い妻の秘唇は、浅く抜き差しされるせいで、空気が入り込み、時折、ブ、ブブっという破裂音をさせています。
　秘めやかで湿った音が静かなＢＧＭとなり、あえぎにも似た淫声が響いています。
　しかし、その淫声も、だんだんと、どこか物足りないような、物欲しげな声が混ざり始めていました。
　柔らかな床に爪を立てるようにして、広げた両手がうごめいています。
　これでも妻は耐えていたのです。
　夫以外のオトコをこれ以上入れてはいけないと。
　しかし、オンナの本能は、一度入れたペ○スを、できる限り奥深く迎えたがるはずでした。慎み深い妻であっても、それは例外であるはずがないのです。
　中途半端な深さに抜き差しされる怒張に、快感を感じつつも、どうしようもないほどの飢餓感を覚えるのは当たり前のことでした。
　クリンと丸みを帯びた腰が床にひしゃげながら、ヒクヒクと上下に震えています。
　遠藤氏は慎重な腰遣いで、淡々と浅い動きを繰り返すだけでした。
「あぁ、もう、う、あうう」
　耐えきれなくなったのは、もちろん妻でした。焦れたような声を出すと、腰をしゃくり上げています。
「奥さん、そんな風に動くと、奥まで入っちゃいますよ。良いんですか、旦那さんがきっと見てますよ。旦那さんの前でセックスしても、いいのかなあ」
　はっとなった妻が、慌てて見回します。もちろん、妻の目に映るのは、煌々と照らされた、がらんとした部屋と鏡の中に浮かぶ淫らな自分の姿だけでした。
「いやあ、お願い言わないで、見てないもの」
「ほら、奥さん、鏡を見て。ほら、見てるよ。あっちから」
　ドキリとします。
　私が見ていることをばらすなんて。
　妻の目が、こちらを向いた瞬間、思わず逃げだそうとしていました。
　腰を上げようとした瞬間、確かに、妻と視線がぶつかった気がしました。
「ああ、いやあ、誰もいないもの、いないのぉ」
　甘えたような声を出しながら、妻の手が遠藤氏の方に向かって泳ぎます。まるで、掻き抱く相手を求めているような仕草でした。
「ちゃんと見てるからね。鏡を見て。ほら、見てるでしょ」
「あう、いやぁ、おっしゃらないで」
　妻のしなやかな手は、遠藤氏の胸にあてられ、愛しげに撫でまわしていました。
　どうやら、自分を恥ずかしがらせるために、いもしない夫の視線を想像させようとしている、と妻は思ったようでした。
　こういうことは、さんざん私にやられて来たことでしたから、妻には受け入れやすかったのかもしれません。
　もっとも、私がしたのは、身も知らないオトコ達に痴態を見つめられているよと想像させることでしたが。
　夫が見ているよ、と囁かれながら、妻はとうとう遠藤氏の全てを受け入れようと覚悟したのに違いありません。
　膝を立てるようにして広がっている妻の両脚が、遠藤氏を受け入れるために、さらに広がってきたのです。
　まさに、オトコをねだる仕草でした。
「奥さん、行きますよ。一番奥まで、良いんですか」
「いやあ、おっしゃらないで」
「ダメです、私を見て。そう。これ、奥まで、いいですね」
「あぁ、ダメなのにぃ」
　妻の潤んでいた目が、ホンの一瞬だけはっきりと見開かれ、澄み切った青空のような光に輝いた気がします。　
「あぁ、もうダメ！き、来て。来てください。あぁ、お願いします。ああ、欲しい…　あう！あうぅ！ああ！イクっ！」
　妻の言葉が終わる前に、遠藤氏の腰がゆっくりと沈められました。
　驚くべきことに、たった、それだけで妻は逝ってしまったようでした。
　遠藤氏の細い両腕を握りしめ、呼吸もできずに妻が仰け反っています。
　ほんの数秒だったかもしれません。
　しかし、見つめる私にとっては永遠の煉獄に置かれるような時間が流れていました。
　贅肉一つ無い、真っ直ぐな背中が強くアーチを描いていました。
　仰け反らせた白い頤が、快感の強さを物語るようにヒクヒクと小刻みに揺れています。
　おぼれた者が掴まるように、遠藤氏の腕を、ギュッと握りしめていました。
　そう、まさに、妻は今、夫以外の男性から与えられた至福の快楽におぼれていたのかもしれません。
「ああ！ああ！あう！いい！」
　今しがた逝ったばかりの妻は、切迫した声で快感を訴えます。
「奥さん、いいだろ、他人のチ○チ○は」
「あ、あ、いい、いいの、あう、感じ、る、あん！」
「どうだ。奥まで。感じるね」
「ああ、いいの、奥に、あうう、当たって、あう、いるのぉ、ああう。感じるぅ」
　恥ずかしがる余裕もないのかもしれません。あるいは、もはや、感じている姿を隠すことができないと悟ったせいなのでしょうか。
　快楽の嗚咽の合間に、遠藤氏に問われるがままに快感を訴えます。
　細い指先が懸命に遠藤氏の胸をおもねるように撫でつける姿は、さらなる快感をねだっているようでした。
　ふと、嗅いだことのあるコロンが風になって鼻腔に届きます。
「奥さん、すごいでしょ。良いのよ、先生も、好きなようになさって」
　そっと腕が導かれた先には、緑川さんの柔らかな膨らみがありました。
　優子さんは、へたり込んでいる私の股間にうずくまって、なまめかしく舌を遣ってきます。
　思わずギュッと胸を握ってしまいました。
　柔らかな感触が私をホッとさせます。
　後ろでまとめていた髪をいつのまに解いたのか、サラサラと肩に流れる黒髪を近寄せて、ペロリと私の乳首をなめ回してきます。
「うっ」
　自分が、怒張と乳首を同時に舐められることなど、考えたこともありませんでした。
　思わずうめくと、それに励まされたかのように、いっそう二人の舌技に熱が入ったようでした。
　気がつくと、私は寝そべっていました。
　妻と鏡を隔てて一メートルも離れていません。
　私の横では、何度目のオーガズムなのか、妻がまた背中を仰け反らしています。
　とうとう妻は、遠藤氏の背中をかき抱くように手を回し、しがみついてしまいました。
　もちろん、遠藤氏は妻に求められるままにのしかかり、正常位の体勢です。
「あ、あ、もう、ああん、オカシクなっちゃう」
「奥さん、出すよ。良いか。出すぞ」
「あう！だ、ダメ、それは、お願い、お願い許して、それだけは、中はダメなの」
「大丈夫、アフターピルもある。ちゃんと友人の医者が処方したヤツだよ。」
「違うの、そうじゃないの、ダメなの、ああ、お願い、止めてえ！」
　必死の形相で、ダメを繰り返しながら、そのくせ、妻の手は、遠藤氏の背中に回されたまま、快感を訴えるかのようにしきりにうごめいていました。
　まるで、身体が遠藤氏の精子を、強いオスの精子を受け止めたがっているようでした。
　メスの本能が、オスの身体を離すまいとしているのです。
「あぁ、お願い、出さないでぇ」
「だめだよ、奥さん、奥に受け止めないと最高に気持ちの良い瞬間は味わえないからね。もっと気持ち良くなるんだよ」
「ああ、これ以上されたらオカシクなっちゃう」
「オカシクなりなさい。もっと、良くなるよ。これ、どうだ、こうやって」
　遠藤氏の腰が、激しく、そして妖しくうごめく度に、妻の口からは、おぉと言うようなどよめきのような声が漏れてきます。
「さあ、受け止めて。くださいって言うんだ。奥さん。一番奥に、たっぷりと注ぎ込んだら、もっと気持ち良くなる。欲しいって、言え、言うんだ」
　ガクガクと、遠藤氏の腰が激しさをまします。
　妻は、白い喉を見せたまま喘ぐのが精一杯かと思いました。
「メチャメチャにしてやるぞ、奥さんの中をメチャメチャにして、これ以上ない快感を味あわせてやる。出すぞ、奥さん、そら、おねだりしないと、抜くぞ」
　一瞬、抜けてしまうのかと思うほど、腰の動きが大きくなります。
　妻のカラダがグッと下から突き上げるようにされた瞬間、まるで、怒張に下から押し出されたように、突然叫んだのです。
「あぁ、恥ずかしい、うあう！おぉ！あうぅ、く、ください！お願い、メチャメチャにしてぇ！出してください、いっぱい！ああ、く、来る、あ、あ、あ、と、ど、い、た」
　遠藤氏の腰がグッと沈み込んだまま、ヒクヒクとケイレンしたように見えました。
『出した…』
　今、この瞬間、妻の胎内に、遠藤氏の白い分身が溢れかえっているのです。
　妻の目が信じられないものを見たかのようにめいっぱい広げられ、次の瞬間、白い腕は遠藤氏の首にしがみついていました。
「っくぅ〜、あ！ああ〜　いくぅ！」
　遠藤氏を乗せたままの腰が、爆ぜるようにガクガクと振られ、次の瞬間、両膝がグッと痩せた身体を締め付けていました。
　つかの間の静寂。
　反り返った背中が、ふう〜っと落ちてきた瞬間、がっくりと力が抜けてこちらに顔が向きました。

　まつげがフルフルと震え、ピンクに染まった頬には、安堵と満足が浮かんでいた気がします。
「奥さん、満足したようだね。でも、まだまだだよ」
　微かに、妻が身じろぎをした気がしましたが、じっとしています。
「あっ」
　微かに唇から声が漏れたのは、遠藤氏のモノが抜け出たからでしょう。
　隆としたモノが湯気を立てているかのように、誇らしげに突き出ていました。
「え？出してなかったのか…」
「ふふ、驚かれたかしら。宅は、あの年でも、まだ、三回も続けられるの。私だけに遣われちゃうと、さすがにちょっと困ったちゃんだけど」
　私の袋を舐め上げてから、優子さんがねっとりと説明してくれたのですが、ふと、その声の中に、ネズミを弄ぶ猫の姿を見た気がしてしまいました。
　抜き出された黒い怒張の表面を膜が覆ったように白い粘液が覆っています。
　私のモノがこれほどまでに、妻の秘液、それも白く粘る本気汁に、びっしりと覆われたことなど記憶にありませんでした。
「続けられるって、じゃあ、やっぱり」
「そうよ。さっき、ちゃんとたっぷりと出したの。奥さんの中に」
　クスリと笑った口元が妖しげに動いて、回復しかけた私のモノを覆います。
　淫靡な舌が、あたたかな口の中でねっとりと動き、絡みついてきます。
「ね、先生も、良いのよ。こんなおばあちゃんで嫌なら、田所さんでも、好きな方に出して」
　そう言われても、私の意識は、包み込まれているモノよりも、遠藤氏が次に何をするのかと言うことの方が気になります。
　あの、一度出したとは思えない隆とした姿の怒張が、そのままで終わるとは思えなかったからです。
　しかし、遠藤氏は、そのまま妻にのしかかるのではなく、静かに股間に右手を差し入れていました。
「あっ、あっ」
　短く反応したのは、妻が感じているせいではないと思いました。あるいは、そう思いたかっただけなのかもしれません。
「あ、あぁ」
　妻の中に右手を差し込んだまま、遠藤氏が妻の上半身を抱え起こします。
「さあ、奥さん、どれだけになったか、見て貰おうね」
「あぁ、許して」
　許してと顔を背けながらも、遠藤氏に逆らおうとはしません。
　抱き起こされながら、妻は鏡に身体を向けたのです。
「ほら、ちゃんと目を開けて」
　さすがに、目を開ければ、そこにどんな光景が広がっているか分かっているのでしょう。妻は、いやいやと力なく頭を振りながら、目を開けようとしません。
　差し込まれた右手もそのままで、あたかも開脚の柔軟体操をしているかのように妻の両脚がこちらに向けて、これ以上ないほど広がっています。
　完全にこちらを向いた妻の女陰には、遠藤氏の枯れた中指と、薬指が深々と差し込まれてうごめいていました。
　驚くべきことに、その状態のまま、器用にも人差し指が包皮を押さえ、むき出しになったクリトリスを親指がクルクルと弄り回しています。
　逝ったばかりの妻にとって、こんなことをされれば、落ち着くどころのことではないはずです。
　ハアハアと、息も絶え絶えになりながら、敏感になった身体への愛撫に声を漏らし続けていました。
「ほら、奥さん、目を開けて」
　不意に、遠藤氏の声がした時、その枯れた手が糸を引いて抜き抜かれていました。
「ほら、早く」
　いきなり引き抜かれたせいなのでしょうか、それとも遠藤氏の声が叱りつけるようなトーンになったせいでしょうか、思わず、ハッと目を開きます。
　その瞬間、妻の潤んだ瞳が、パッチリと見開いたのです。　
「あう、いやあ」
　指を抜かれたせいなのか、あるいは突然声を掛けられて羞恥を思い出したのか、それとも、目を開いた瞬間に映った、あまりにもいやらしい自分の姿に驚いたのか。
　再び目を伏せようとした瞬間、ダメだ、こっちを向けと叱られ、ピタリと動きが止まります。
　伏し目がちになりながらも、しずしずと上げた顔の目の前に突き出されたのは、ドロドロになった遠藤氏の指先でした。
　親指を時折くっつけては離すと、ねばーっとした糸を引いています。
　そのそろえた指に少しだけ色の違う液体が乗っていました。
『あれは』
　それは、妻の秘蜜ではありません。
「奥さん、さあ、これ」
　突きつけられた指先に、妻は全く逆らうことなく口を開けていました。
　いえ、自ら舌を伸ばして、それを迎え入れたのです。
「むぐっ、むっ」
　懸命に、自らのモノで汚れた指を舐めていました。
　その指先には、確かに、妻の胎内に出された遠藤氏の精液がたっぷりとすくい上げられていたはずです。
　それなのに、妻は喉をならしながら、懸命に飲み込んでいました。
　妻の口の中を弄ぶように、時には深く突き立てるようにして、ゆっくりと指先が出し入れされていました。
　苦しそうに眉を歪ませながらも、何かに陶酔した表情に見えます。
　遠藤氏の右脚が、妻の足をそっと内側から押すと、膝をやや持ち上げるようにして、さらに両脚が広げてしまいます。
　セックス直後の妻の秘所をこんな風にまじまじと見たことなどありません。
　私がどんなに頼んだとしても、これほどまで大胆に広げるはずもないのです。
　それが、足先にそっと押されるだけで、こんなにも淫らに脚を広げてしまうのです。
　ぽっかりと穴の空いた中心から、突然、白く濁った液体がわずかにこぼれました。
　その感触に刺激されたのか、秘唇がヒクヒクとケイレンしたように立て続けに収縮します。
　すると、トクリと音が聞こえるようなこぼれ方で、さらに太い一筋となって、ゆっくりと流れ出てきたのです。
　こぼれ落ちるモノに反応してを、妻は腰をしゃくり上げる動作をします。まるで、つなぎ止めたいとでも言うかのように。
『負けた…　え？何、うわっ、これは』　
　オトコとして屈辱を受けた気がした、ちょうどその瞬間、不意に、まだ柔らかいままの私は爆ぜてしまいまったのです。
「う、んぐ」
　優子さんが、余裕の表情のまま飲み込んでくれます。
　ひどく惨めな射精でした。
　そのくせ、ズルズルと腰の奥から何かを引きずり出されて、下半身が溶け出していくような、今まで考えたこともないような甘美な悦楽だったのです。
「う、あぁ」
　情けない声を出しながら、緑川さんと優子さんの香りに包まれて、惨めで、そのくせひどく甘美な射精が終わるのもあっという間でした。
　ごく平凡な私のものは、一度出してしまえば、完全にぐんにゃりとなってしまいます。
　優子さんを妻の代わりに貫くことなど無理な話でした。
「いいのよ、大丈夫。初めての旦那さんはみんなこうなるんだから」
　耳元でささやく緑川さんの声がくすぐったく感じられます。
「おいしかったわ。でも、先に敦子さんに搾り取られ過ぎちゃったみたいね。もう、敦子さんたら」
「あら、ルールでは最初の人は好きなだけしていいはずよ」
「まだこれは入会の儀式じゃないのよ。でも、まあ、敦子さんのおかげだもの、仕方ないわね」
「儀式って」
「あら、敦子さん、まだ説明してなかったの」
「ごめんなさい。忘れてました。先生、大丈夫、次はちゃんとできるわ、ね、ほら」
　にこりと私の目をのぞき込みながら、返事だけは丁寧に返しています。
「ちょっと、敦子さん。もう、ずるいわ、今日は私に譲ってくれるんでしょ」
「だから、さっきも」
「まだまだよ、だって、敦子さんが先に絞りすぎなんだもの」
「先生、とってもお上手だったのよ。素敵だったんだから、ね、センセ」
「あぁ、もう、ずるいんだから、ほら、こんなところにいないで、先生が回復するようにして」
「でも、先生結構ショックみたいだし」
「そりゃ、最初は誰でもよ。さ、ほら、また始まったわ、敦子さんも手伝って」
「は〜い、じゃ、センセ、楽しんでらしてね」
　始まったという言葉に目を上げると、妻がノロノロと体勢を入れ替えて尻を差し出す姿になっているところでした。
　尻をポーンと一つ叩かれて、膝を突いた尻をさらに高く掲げています。
　背中を反らしていることをのぞけば、まさに、雌猫が後尾をねだるような姿です。
「もう少し見てらしてね」
　私の腕に、そっと頭を乗せる優子さんの髪を無意識のうちに撫でていました。
　年上の女性なのに、そのちょこんと乗る頭がひどくかわいらしく感じたのです。
「あの、みど、た、田野倉さんは？」
「あらあら、私がここにいるのに」
「いや、そんなつもりじゃ」
「大丈夫、見てらして」
　温かな手が私のヘソの周りをゆっくりと撫で回しています。
　さっき、遠藤氏のものを受け止めたまま、ぬぐいもしない妻の秘所は、まだドロドロのはずでした。
　膝立ちの遠藤氏は、ゆっくりと妻の尻の方から怒張をあてがいます。
「うっ」
　ほんの少しの動きで、遠藤氏が再び納まってしまいます。ゆっくりと動き始めていました。
「あぁ、また、あう」
「大丈夫、奥さん相手なら、何度でもと言いたいところだが、ま、あと三回が限度かな」
「そんな、オカシクなっちゃう、こんなの」
　後ろから突かれながら、妻が甘えたように言うのです。
「あれ、いやですか」
　黙って首を振ります。
「ほら、さっきみたいに、素直にならないと」
「あぁ、許して」
「たっぷりと出しますからね、また、奥さんのこの中に」
　そう言いながら腰の動きを速くすると、たまらずに妻が鋭い快感を告げる声を立て続けに放ちます。
「ほら、ほら、奥さん、気持ちいいでしょ」
「あぁ、いい、いいのぉ」
　やはり、一度、つながってしまったオトコとオンナは、どこかしら息が合ってしまうものかもしれません。
　いえ、たっぷりと精を注がれたオンナはオスの支配にあわせるようにできているに違いありません。
　唖然としてみている私の前で、快感を隠しもせず、いえ、隠すこともできずにたちまち追い上げられてしまいます。
　時に速く、時にじらしながら、その責めは長く続きます。
　もう何度目のオーガズムなのかわからないほど妻の身体を搾り取ってからでした。
「ほら、奥さん、出すぞ、いいのか」
　もはや、息も絶え絶えの妻は、快感にうめく合間に、コクリと頷くのがやっとです。
「さあ、おねだりしなさい」
　半ば抜き取られると、息も絶え絶えだったはずの妻が、遠藤氏の怒張をおうように尻を動かしながら首を上げます。
　白い顔でした。
「ああ、ください、お願い、いっぱい出して」
「どこに出すんだ、ここか？」
　こぼれてきた秘液をまぶした指で、いきなり後孔をいじり始めたのです。
「あぁ、違うの、そこ、ダメ、ああ、お許しを」
　私にすら許したことのない後孔を人差し指でこじるように弄られながら、妻は逃げるでもなく、ひたすら許しを請うだけです。
　その許しを請う声に、たちまち甘い声が混じるのには唖然とするしかありません。
「あら、先生、奥様の後ろは」
　黙って首を振ります。
「オンナはね、相手が変わると、けっこう、許せてしまうものなの」
　何の慰めにもなりません。
　しかし、後孔を弄られながら、もはや、紛れもない淫声を漏らして、許しを請う妻へのいらだちをぶつけるように優子さんの秘所に手を伸ばします。
「あん、あぁ、いいわ、あぁ」
「あ、あ、あ、あう、あぁ〜」
　二人の淫声が重なります。
　経験のためでしょうか。
　つたない私の指遣いでも、あっという間に優子さんの身体はトップギアになってしまったようです。
　生暖かい優子さんのナカをかき回しながら、後孔を弄られる妻から目が離せません。
　右手を手綱のように遠藤氏に捕まえられながら、左手だけで上体を支えながら、妻はあえぎ続けています。
「奥さん、ここは、ご主人と使うのかな」
「あぁ、そんなこと、あう、ない、あう、ありません、だから、許して、あうぅ」
「そうか、じゃあ、ここは、ご主人の許可が出てからだな。今度にしておこう」
　今度という言葉が出た瞬間、妻は、ドキリとしたかのように肩が一瞬だけヒクリと動きました。
「大丈夫、今度は、旦那さんも一緒だからね」
「ああ、いやあ、言えない、できないのぉ、あう、あ、ダメ、また、イクっ！」
　ハアハアとあえぐ妻が落ち着くまでまってから、速い動きで再び腰を遣います。
「ああ、そんな、まだ、なのに、あう、だめぇ、オカシクなっちゃう、ゆる、あ、し、てぇ、あぁ」
「おねだりを忘れてるぞ」
「ああ、そんな、さっき、言いました」
「じゃあ、こっちに出すのか？」
　指がわずかに後孔に沈んだ気がします。
「ああ、お願いそっちは、ダメ。今、今してるところに」
「ほれ、さっさとおねだりせんと、こっちに出させてもらうぞ」
「あ、そんな、あ、そ、そこは、あう、だめ、あう、また、逝きそうに、おう、おゆるしを、あう」
　わずかに沈められた指先が妻の後孔をこじるように動いています。
「あう、お願い、逝っちゃう、お願い、出して、出してください、あう。もう、いいの、出して」
「どこに出すんだ！」
「あ、あ、あう、いいの、どこでもいいから、お好きなところに、あう、お願い、イク、逝っちゃいますから、お願い、どこでもいいから、だ、し、て、あうぅ、いくぅ！」
　妻が、右手を後ろに取られたままの不自由な姿のまま、思いっきり背中を反らしながらイキます。壮絶な表情でした。

　深々と怒張を突き立てた遠藤氏の尻がヒクンヒクンとケイレンするように動きます。
　胎内深くにオトコの精をたっぷりと浴びて、さらなるオーガズムに突入しようとした、その瞬間でした。
「あら、ずいぶん遅くなると思ったら、いいことしてらっしゃるのね」
「あぁ、いやあ、ダメ見ないでぇ、いやあ」　　 　
　私ですら、今になって気がいたほどひっそりと現れた緑川さんが、妻の目の前に立っていたのです。
「ああ、みない、あう、で、あうう、ああ、また、あうう！」
　妻は夫以外のオトコに後ろから貫かれたまま、素裸で見下ろす緑川さんの目の前で、逝ってしまったのです。
　ぐっと背中を伸けぞらした妻は、なぜか、緑川さんの視線とまともにぶつかりながら淫声を噴きこぼします。
　ほんの一瞬だけ時間が止まってから、ゆったりと妻の目が閉じられ、そのまま床に崩れ落ちたのでした。
　抜け落ちた遠藤氏の怒張は、まだ、湯気が立つようにいきり立ったままでしたが、先ほど放った精をつと先端からしたたらせます。
　緑川さんが、いそいそと遠藤氏の怒張に跪くのを見ながら、思わず、優子さんの秘唇をかき回すのを再開します。
　縮こまったモノが復活する気配をかすかに感じながら、ぴくりとも動かない妻の満足げな顔が頭に刻みこまれていました。