第11話　ブロークンアロー

　女というものの恐ろしさを改めて感じました。
　何一つ変わった様子がありません。
　あれほどの快楽を教え込まれてしまったはずの妻が、つまりは、結局、何一つ変わった様子を見せなかったのです。
　昨夜、引き留める優子さんの腕を振り切るようにして逃げ帰った私は、まんじりともできずにアトリエに閉じこもりました。
　妻が帰ったと優子さんから、メールが届いたのは、昼過ぎでした。
　そのメールを読んだ瞬間、私の心に浮かんだのは「後悔」の文字でした。
　昨夜、泊まっていくようにしきり勧められたのに、飛び出してしまったのです。
　力尽きたように眠る妻の身体に毛布を掛けた時、たっぷりと妻の胎内に射精したはずの遠藤氏の怒張は、既に回復していました。
　年齢を考えなくても「驚異の回復力」を見せて、緑川さんと一戦に及ぼうという遠藤氏の迫力には圧倒されてしまいました。
　緑川さんに見下ろされながら逝った妻の姿に、私のものは微かな復活の気配を感じたはずでした。
　しかし、その微かな気配は、その凶暴なモノが緑川さんのナカに埋め込まれるシーンを目の当たりにして、あっという間に吹き飛んでしまったのです。
　妻を女奴隷のように意のままに操った遠藤氏の凶暴なモノを前にして、自分が男として負けた気がしたのです。
　縮こまってしまった自分がひどく惨めでした。
　そんな私にやさしくいたわるように技巧を使う優子さんの前で、いたたまれなくなってしまったのです。
　遠藤氏のマンションを出た途端、おかしなもので、私のモノはズボンを突き破らんばかりに膨張したのが皮肉でした。
　いえ、ひょっとして、妻だけではなく私までもが、あの遠藤氏の怒張の呪縛にはまってしまっていたのかもしれません。
　解放されてみると、息苦しいほどのいらだちを覚えました。
　それはズボンに押し込められた怒張のせいだけではありませんでした。
　アトリエまでの道のりで、頭の中にぐるぐると巡る思い、いえ「恐れ」は一つだけでした。
『私が帰った後、妻はいつ目覚めるのか』
　目覚めるだけなら問題ないのです。
　私が与え得なかった深い快感にくたびれきった妻は、回復するために深い眠りが必要なのでしょうから。
　しかし、目覚めた「後」が問題なのです。
　目覚めた後、はたして、もう何もないのでしょうか。
　あの驚異の精力を見せる遠藤氏が、再び妻を求めはしないのでしょうか？
　もし求められれば、呪縛にとらえられた妻が、もはや断るはずもありません。
　断ろうにも、その意志を発揮できるとは思えませんでした。
　私が見ていないところで、妻がどんなセックスを受け入れてしまうのか。
　そう思うと、引き返したい気持ちがムクムクと頭をもたげますが、かといって逃げ出してきたあの部屋に戻ることなどできません。
　プライドと焦り、なによりも、妻への募る思いが、アトリエにかかる柱時計を凝視させていました。
　秒針の動きが短針の動きのように感じられたのです。
　妻がぐったりとしたのは、まだ、早い時間でした。
　あのまま、妻は遠藤氏の家を出る直前まで目覚めなかったのでしょうか。
　そんなはずもないと思うのです。
　目覚めた妻に遠藤氏が、あの、放っても、なお隆としている凶器の持ち主が何もしなかったのか。
　遠藤氏の精をたっぷりと載せた指を舐め取っていた妻の、オトコに媚びるメスの顔がちらつくと、何も手が着く状態ではありませんでした。
　しかし、一方では、画家としての何者かが取り憑いた私は、描かずにはいられなかったのも事実です。
　アトリエの床には、描きかけの乱れた妻の姿が、何枚も乱舞していました。
　
『それにしても』
　あらためて「女」というもの怖さと、そして深さを感じずにはいられません。
　混乱と嫉妬と、いらだちで憔悴しきった私を迎えた妻の笑顔には、微かに恥じらいが浮かんだ気がしました。
　しかし、それ以外に、何の変化もなかったのです。
　一晩の時間があったせいかもしれません。
　あるいは、緑川さん達と何かを話したのかもしれません。
　それでも、悲壮なまでの覚悟を決めて、妻の変化に気がつかないふりをしようと心に誓ってドアを開けた私を待っていたのは、いつもと変わらぬ笑顔の「おかえり」でした。
　アトリエに籠もった後は、じっくりと風呂につかり、それが何時であれ、妻の手料理とワインを少々たしなんで、爆睡するのが習慣になっています。
　湯船につかって、思い浮かべているのは、一枚の絵。
　白々と夜が明けてから、やっとの思いで描き上げられた、たった一枚の絵でした。
　現代の絵描きにとって、仕事で描く絵と芸術の神が無理矢理描かせる絵の二つの絵があります。
　もちろん、仕事で描く絵といえども、それなりの感性が込められ、決して芸術的に劣るわけではありません。
　しかし「神が宿る瞬間」というのは、その出来映えに関わらず、描かずにはいられないものなのです。
　あの、遠藤氏を身体の奥まで受け入れた瞬間、のけぞった妻の白い頤。
　ぐっと反り返った白い背中。
　お世辞にも美とは無縁な遠藤氏の裸を、抱え込むように広げられた太ももの淫らなうごめき。
　絵描きの宿命です。
　自分のパトスに衝撃を与えた瞬間の光景は、ちょうどシャッターを切った印画紙のように焼き付けられ、忘れるということが許されません。

　あの瞬間の、反り返った妻の足指の形、汗に濡れた髪の毛一筋に至るまで、鮮明な姿で脳裏に再現されてしまいます。
　そして、その姿を私はこの世に再現したのです。
　いえ、芸術の神、あるいは悪魔に、再現させられてしまったというのが正しいのかもしれません。
　絵の具の乾く間も惜しくて、何枚もの殴り描きのようなスケッチを床に描き散らしながら作り上げた、あの瞬間。
　今、この瞬間、誰もいないアトリエの真ん中で、妻の至福の瞬間がぽつんと柔らかな光の中で再現されているのです。
　目の前で、いつもの通り、私好みの白ワインに良く合う、特製サラダを盛りつけているエプロン姿の妻。
　こころなしか、ダイニングを滑るように移動する妻の足取りが、いつもにもまして軽やかな気がします。
　向こうをむく妻の尻に、視線が止まります。
　フラッシュバックのように、妻の白い尻をなで回す遠藤氏の枯れた手が、目の前のジーンズにクルンとくるまれた尻と重なってしまうです。
　食卓でワインを開けるのは私の役目です。
　ピエロをかたどったオープナーの両手が、スクリューをひねる度に広がります。
　広がったピエロの両手の向こうで、幸せそうな笑顔で見つめる妻の顔と、遠藤氏の怒張を求めて許しを請うた妻の唇が、頭の真ん中でショートしていました。
　不意に、空っぽのはずの胃の中が、何物かを絞り出すようにケイレンした気がしました。
　収縮を繰り返す胃を押さえながら、笑顔を作り出そうとします。どうすれば私の顔が笑顔に見えるのか。
『今は、ワインをつぐことだけを考えるんだ』
　ピエロの両手を握りつぶせば、コルクが抜けます。
　握りしめようとした瞬間、妻の手があの黒い怒張を握りしめている絵と重なります。
　笑顔って、どんな風にすれば良いんだっけ。
　グラスだけを見つめるようにして黄金色の液体を、グラスに注ぎ分けます。
　黄金色に反射した光が、グラスの向こうの妻の顔に映った気がしました。
　ワインが唇を湿した瞬間でした。
「あなた？どうかなさった？」
　妻の心配そうな顔にはっとしました。
　笑顔で頬をゆるめていたはずの顔に、二筋の熱い線が。
　いつの間にか、泣いていたのです。
「あなた？」
　とっさになんとか取り繕おうとしました。
「き…」　
　紀美と言いかけた瞬間、それ以上言葉を出せば、嗚咽しか出てこない自分に気がついたのです。
　テーブルに肘を置いたまま、顔を覆いました。
　ガタッと妻が立ち上がり、駆け寄ってきました。
　優しい手が、背中に当てられます。
　その手は、昨日、遠藤氏の背中に当てられた手なのです。快感に惑う妻の手は、遠藤氏のシワの寄った背中を愛しげになで回していました。
　慣れ親しんだ妻の匂いが後ろから私を包み込みます。
　包まれながら、ふと、妻の匂いの中に、遠藤氏のオーデコロンの匂いが混ざっている気がして。
　いえ、かすかに、精液の匂いが混ざっている気がしたのです。
　もちろん、そんなはずはないのに。
　そんな妄想を追い払うように、大きく頭を振ってふと、心配そうにのぞき込んでいる妻と目が合います。
　心配そうに、ぱっちりと見開かれた妻の目が、遠藤氏をおねだりした瞬間の目と同じだと思えて、目線が落ちてしまいます。
　かがみ込んだエプロンが前に垂れ、ザックリとした妻のブルーのシャツも妻の痩せたからだから大きく離れ、小さな胸が目に飛び込んできます。
　小さな胸の女性にありがちですが、小さいのを気にしてパッド入りの硬いブラをつけてかがみ込むと、かえって胸の肉から離れてしまうのです。
　今の妻がそれでした。
　妻の小さな乳首が見えました。
　私の視線が不意に遮られます。
「莫迦…　もう、心配したのに」
　妻のしなやかな手が、私の両目を覆っていたのです。
　その両手は、目を覆いながらも、私の頬をまさぐるようにやさしく撫でてきます。
「どうしたの、あなたったら」
　ひょっとして、平静な私であれば、そこに幾ばくかの妻の不安を嗅ぎ取れたかもしれません。
　優しい妻の両手に、子どもが抱かれるようにして包み込まれた安心感と、何より、さっき目に映った乳首に、私の本能が刺激されていました。
　ズボンを突き破らんばかりの勢いで膨張したモノに、痛みに似た快感が走ります。
「あん、もう、何よ。あなたったら、どうしたの」
　返事もせずに、だだっ子をなだめるような手を押しのけて、ただ、胸元に手を突っ込んでしまいます。
　妻は逆らいませんでした。
「あん、あっ」
　弾力を十分に感じさせる柔らかな乳首を指先で玉を転がすように転がします。
「あっ、あっ、あっ」
　小刻みに、何かに耐えるような言葉が漏れてきます。
　イスに座る私に向かってかがみ込んだ不自由な姿勢のまま、差し込んだ腕に掴まるようにして妻は耐えていました。
　いつもと違って、せっぱ詰まったような反応をしている気がしました。
　手のひら全体で微乳を包み込みます。
「ああぁ」
　ねっとりした声が、妻のものと思えないほどいやらしく響きます。
　薄い肉が掌でひしゃげ、ぷっくりと硬くなった乳首だけが、存在を主張していました。
　人差し指と中指の付け根で、しこりきった乳首を挟み込んだ瞬間、妻の唇が「だめ」と動いた気がしたのです。
　我知らずに何かをこらえていたのでしょうか。
　わけのわからない衝動に突き動かされていました。
　妙になまめかしい唇をどうにかしようとしたのか。あるいは、このまま抱きしめようとしたのか。
　ひょっとすると妻の身体を引き裂こうとしたのか…
　気がつくと、自分でも何が何だかわからないまま、身体だけが本能に任せて動いていました。
　妻の背後にいきなり回り込んで腰をとらえたのです。
　しなやかで、わずかに脂の載った細い腰でした。
　デニム越しの感触が、妻の腰の肉感を、裸の時以上に伝えた気がしました。
「あ、あん、ちょ、ちょっと、あなたったら、あん、どうしたの」
　細身の割に尻が丸く発達した妻は、ベルトをしないと、デニムは穿けません。
　真面目で、堅い妻にとって、下着が見えるようなローライズを、などということなど考えても見ないことでしょう。
　後ろからのしかかるようにして、細くしなやかな皮でできているベルトを抜き取ってしまいました。
「あん、あなたったら、どうしたの、ちょっと、やめて、あなたったら」
　なぜか、妻の抵抗は、形ばかりのものです。
　ベルトを抜き取る私の手を押さえるでもなく、上に手を添え、いやいやと顔を振るだけです。
　抜き取ったベルトを一度、ギュッとしごきます。
　その間も、なぜか、妻は、荒い息をしたまま、身動きしませんでした。
　後ろから抱え込むようにして妻の細い両手を背もたれにつかまらせます。
　そのまま、ベルトでグルグルと巻き付けてから、イスの背もたれの孔に通すと、パチンとバックルを留めてしまいます。
　フリーの留め金ですから、ゆっくりとやれば簡単に外れるはずですが、しなやかな皮は、思ったよりもぴったりと妻の両手を拘束しています。
「あなた、やめて、とって！これ！どうしたのよ、あなたったら」
　驚いた妻がもがきますが、手を簡単に抜くことはできないようです。
　あるいは、優しい妻のことですから、ただごとならぬ私にしたいようにさせるために、抜けないような振りをしたのかもしれません。
　しかし、今の私にとってはどちらでも良いことでした。
　妻は、ガタガタとイスを動かしながら、なんとか手を抜こうとする動作を繰り返します。
　なぜか、その両手は決して外れないような気がして、前に回した手で、ジーンズを降ろす時には、むしろ落ち着いてきていました。
「あなた、ダメ、こんな明るいのに、あん、あなたっ、どうしたの、ああ、いやぁ」

　うろたえているはずの妻でしたが、なぜか、ばたばたと動く脚から、簡単にジーンズが脱がせてしまいます。
　いえ、むしろ、バタバタと動く脚は、私に協力しているようにも思えました。
　もちろん、妻は、いやいやを繰り返しています。
　脱がした瞬間、心臓が大きく鼓動したような気がしました。
　見慣れたはずの妻の尻を包んでいる下着。
　目の前にある物は、いつもの実用一点張りの妻のパンティーではなかったのです。
　尻を覆うシャツの裾を、背中にまくり上げると、それははっきりと見えました。
　Ｔバックと言うのでしょうか。
　白く、ぴっちりとしたパンティーは、覆う面積よりも、軟らかな肉がむき出しになった面積の方が圧倒的に広く、クリンと丸く白い尻によく似合っていました。
「こんなパンツ…」
「ああ、いやあ、試しになのぉ、遠藤さんにいただいたから、ちょっとイタズラしてぇ、あん、見ちゃいやあ」　
「ゆ、え、遠藤さんの奥さんにもらったのか？」
　妻がコクリと頷くかとごく自然に思っていましたが、妻の頭は、何かに耐えるかのごとく、動かないままでした。
　妻は、一夜の淫らな経験の後、その相手の遠藤氏にもらった下着を着けて、私を迎えたのです。
　一瞬、頭の中が真っ白になって、動けませんでした。
　くなくなと尻を振る姿は、あのとき、遠藤氏の前で尻を差し出した姿とそっくり重なってしまいます。
　しかし、あのとき、妻は白い尻を差し出したまま、イヤとは、決して言わず、まるで、支配者の前の奴隷のように従っていたのです。
　恥ずかしさのためでしょうか、見つめる先で、しきりに、いやいやと言いながら尻を振っています。
　両手を縛っているとはいえ、本当は、しゃがみ込んでしまえば、今よりは尻を隠せるはずです。
　それなのに、遠藤氏にもらった下着を着けたままの尻を目の前で振っている。
　妻にはそのつもりはないかもしれませんが、妻が遠藤氏のモノを受け入れたことを、いえ、遠藤氏に支配されてしまったことを見せつけられた気がしました。
　遠藤氏に完全に負けた気がしました。
　勝手な思いこみかもしれません。
　しかし、妻の尻にぴっちりとまとわりつく白いＴバックは、妻がまぎれもなく、他人の物を受け入れた象徴でした。
　しかし、今、私と妻しかいないのです。
　妻を支配するオスとして振る舞わなければならない。
　そんな言葉が、頭のどこからかいつの間にか湧き出していました。
「もっと尻をこっちに出せ」
　言葉が強くなっていました。
「ああん、あなた、どうしたの、ね、怖い」
「いいから、こっち、ほら、こんないやらしいパンティを穿きやがって、こうしてやる」
「あん、痛い、あなた、ああ、どうしたのぉ、怖いわ、ね、お願い」
　気がつけば、思わず軟らかな肉をパチンと叩いていました。
　普段の私は決して暴力的なつもりはないのですが、妻の恥じらいの抵抗までもが、遠藤氏に差をつけられた気がして、何かをぶつけなくてはいられなかったのです。
「ほら、もっとだ、尻を突き出せ」
　パチン、パチンと音が響く度に、妻の尻がおずおずと差し出されます。
　見る間に白い尻に朱が差します。
　ふと気づいて、叩いたその手をすべすべとした尻肉にそのまま這わせました。
　指先が谷間に集まった布地をたどるように、さわさわとなで下ろした瞬間でした。
「あ、あぁ、いい」
　はっきりとした快感の声が、聞こえたのです。
　たったこれだけ、いえ、尻を叩いただけです。
　それだけで、妻がこれほどねっとりとした声で、快感を告げるとは思ってもみないことでした。
　動揺した私は、無意識のうちに同じ動作を繰り返してしまいました。
　パチンと振り下ろした左手を、そのまま、さわさわと白い尻に動かし、また振り下ろしては、尻の谷間を探る。
　十数回振り下ろした手の感覚が痺れた頃、白いはずの尻が、まるで発情した猿の尻のように、真っ赤になって、白いパンティーと鮮やかなコントラストを作ります。
　理不尽な私の打擲にじっと耐えながら、そのくせ、今では完全に白い尻を差し出して、私の手の中に委ねきっていました。
　妻から漏れる声は、叩かれる瞬間の嗚咽と、撫で回される時の甘いため息。
　そして、こらえきれずに漏らす、快楽を告げる言葉だけ。
　ペロリと剥くように、妻のパンティをしゃがみ込むようにしてしごき降ろします。
「あぁ」
　妻は、ダメとも、見ないでとも言いませんでした。
　ただ、降ろしたパンティーの底の部分は、ねっとりとした粘りけのある糸を引いて、秘唇とつながっていました。
　糸を引いた秘液を断ち切るように一気にパンティーを下までしごき降ろすと、妻の脚が、ごく自然に片方ずつ持ち上げられます。
　その動作のせいでしょうか、一筋の秘液が、太ももに流れ出します。
　さっき、私が流した涙のように、それは熱いものだったのでしょう。
　太ももが反応して、ヒクリと震えます。
　その動作で、さっきよりわずかに脚がもっと広がってしまいました。
　足下で抜き取ったばかりのパンティーを片手に見上げると、クリンと丸い、可愛らしいはずの妻の尻が、秘唇の闇を飲み込んだ、圧倒的な姿で存在していました。
　うねうねと動き始めた妻の尻は、まぎれもなく怒張を欲しがっています。
　ヒクリとイソギンチャクのような動きで秘唇がうごめいたのです。
　シャツを脱ぐ間ももどかしく投げ捨て、下着ごとズボンを脱ぎ捨てます。
　妻は尻を高く掲げたまま、待っていました。
　何も言わず、ただ、尻だけをモジモジとうごめかせて。
　戒められたベルトを解こうともしませんでした。
　妻の柔らかな腰を抱えた瞬間、あの、遠藤氏に尻を捧げた妻の姿が浮かびました。
　しかし、昨晩のことがウソのように、今、かつてないほどの勢いで屹立していました。
　一気に深々と貫きます。
「あうう！」
　妻の美肉がこれほど心地よいとは。
　夢中になって奥まで入れては、先端まで抜き出し、大きなストロークで突き立てていました。
「あぁ！あう！」
　立て続けに短い声を放って、妻が早くも達したのがわかります。
　美肉の奥でプルンという感触にあたりました。子宮です。
　そのプルンとした入り口に、巨大化したモノを、奥へ奥へと、突き立てます。
　パチンパチンと、妻の尻肉と私の腹があたる音がします。
　ぴっちりと私を包み込んだまま、そのくせ、ヒクン、ヒクンと、痙攣するように、柔らかな肉のどよめきが怒張を扱き上げます。
　こういうことがあるのでしょうか。
　たった一晩で、妻の美肉は私が知っているものとは全く違ってしまいました。
　ぴっちりと締め付けてくる美肉は、前よりも少しだけきつくなった気がします。
　一番奥にある、プルンとしたすぼまりは、やわやわと先端を撫でつけてくる感触こそ同じですが、微妙に私のモノを包み込むように広がる気がします。
　なによりも、美肉が扱き上げるように動きながら、時折、キュウッと締め付ける動きは、妻がしたこともない動きでした。
　どれもこれも、一つずつは、ほんのわずかに感触が違うだけの気がしましたが、包み込んでいる美肉全体が全く違う印象の物になっていたのです。
　今、まさに自分が突き立てている美肉。
　妻であることが信じられないほどしっとりとした、やわらかで、スケベな肉筒でした。
　おまけに、突き出した腰が、うねうねと微妙に上下します。
　いやらしい腰遣いです。
　したことのない動きをしながら、そのくせ、いかにも気持ちよさそうに腰がうねうねと動き続けていました。
　特に抜き出すタイミングと妻が尻を下げるタイミングがピタリと合うと、怒張の顎の辺りが肉にこすられ、えもいわれぬ心地よさでした。
　微妙にうねくる丸い尻は、白いままの部分が、わずかにひんやりしています。
　有無を言わせない打擲に赤くなった場所だけが、熱を帯びていました。
　いかにも痛々しげです。
　そのくせ、そっと、赤くなった場所の輪郭を指先でたどると、ああ、と、ねっとりとした粘液質の淫声を放ちながら、妻の尻が、いやいやをするように左右に動きます。
『昨日、この尻が』
　腰を激しく使いながら、思い浮かべずにいられません。
　あれから、まだ丸一日もたっていません。
「あなた、いくぅ！」
　何度目かも分からないオーガズムが訪れます。
　私が、動きを緩めないので、妻は一度達した頂点から降りることが許されません。
　うわごとのように、何事かを呟きながら、尻を振り続けていました。
　ギシギシとイスが音を立てて揺れています。
　なぜか、一向に訪れない放出の気配の中で、ギンギンと張りつめている怒張を狂ったように妻に突き立て続けています。
　それでも、尻を差し出している妻の白い背中に、遠藤氏の姿が重なってしまいます。
　妻は、他人の、そう、夫以外の精液を胎内に注ぎ込まれることを、自らの口で望んでしまったのです。
　さんざんに焦らされたあげくの、オンナの崩壊と言えば、それまでです。
　しかし、注ぎ込まれた精液を掻き出したあの指。
　胎内に放出された精液を掻き取った指を差し出されて、嫌がる気配すら見せずに、じっとりと舐め取ったのは、焦らされた快楽のせいではなかったはずです。
　支配者に従う、女奴隷。
　その奴隷の媚びのようなものが、あんなにも屈辱的な行為を、あんなにもうっとりした顔でさせてしまったのではないでしょうか。
　高く尻を差し出したまま、遠藤氏の怒張を待っていた光景が浮かんでしまいます。
　同性に見下ろされながら、尻を抱えた夫以外のオトコに精液を注ぎ込まれ、そして、逝ったのです。
　妻の肉ヒダが、なぜか、急速に締め付けを強くしてきました。
「あっ、あぁ！あぁ！あなた、もう、もう、あうう。ください。あなた、一緒に」
　せっぱ詰まった用に、白い背中がねじれながら、私のモノを深く受け止めようと尻を突き出してきます。
　その尻の動きと、急速な締め付け。
　なによりも、間近に、砕けるように反応した妻の新たなオーガズムの様子に、私の射精も急速に近づきます。
「ああ、逝っちゃう！あなた、うあうう！また、お願い、もう、おかしく、なっちゃうから、あうう、お願い！」
　考えもしないことでしたが、私とのセックスで、今までにないほど高まった妻の快感の様子に、いつの間にか私の口が動いていました。
「紀美、遠藤氏とセックスしろ！」
「あうう、え？え？あなた、何を、あう、いったい、あうう！ああ、ダメ、いっちゃう！」
「遠藤氏と俺の前でセックスするんだ！昨日みたいにな！」
「え、うそ！あなた、そんなあ、うそ、うそ、あうぅ！だめえぇ、逝く、あうう、おかしくなる、だめぇ！」
「いけぇ、出すぞ、出すぞ、紀美ぃ！」
「あなた、一緒に！来てぇ！あう！あうう！」
「見せてくれるな」
「あうう、え？何を？あう、ハイ、見て、あなたぁ、あう、はぁ〜う！いい、いいのぉ」
　妻の背中がピーンと反り返ったまま、尻だけを高く掲げて、つかの間、全身に力が込められたように張り詰めていました。
　その背中を見ながら、頭の後ろがスパークしたような、強烈な光が見えました。
　腰から身体が溶け出すような快感の中で、いつまでも続く噴出を注ぎ込みながら、私も、そして妻も、禁断の快感に踏み込んでいたのです。
　考えたこともないほどの放出感の後で、ゆっくりと抜き出すと、妻の身体は、スローモーションのように崩れ落ちていきました。