第１８話　ゲーム×ゲーム

　真っ白になっていた時間は、結局じらしたようなモノでした。
　だから、我を取り戻して指名した永田さんが、先輩に遠慮しつつも、一気に押し込んだ瞬間、妻は軽く逝ってしまったようでした。
　順に指名した、永田さん、森さん、川島さんが、それぞれ、懸命に妻の身体を掘り返し、軽いオーガズムは搾り取っていますが、１０秒だけの交代では、オンナの身体は、なかなか、本当には逝けないようです。
　だから、全員が、終わっても、妻は、息も絶え絶えになりながら「ゲーム」に答えるよりも、あえぐばかりです。
「あぁ、ひどい。あうう」
　その声は、ひどく悲しげで、そのくせ、これ以上ないほど淫靡な匂いが付いていました。
「さあ、奥さん、楽しんでばかりいないで、当ててください」
「はぅ、あぁ…」
「奥さん、さあ、旦那さんは、何番目？」
「あぁ、もう、やめ、て、あう、ヘンになちゃう…　から、あぁ」
「奥さん。さあ、楽しんでばかりいないで。ゲームですからね」
「だって、もう…」
「う〜ん、奥さん、身体がスケベすぎて、このゲームはできないみたいだなあ。じゃあ、罰ゲームといきましょうか」
　妻の身体が、ヒクンと反応します。
「そうですねえ、こうしましょう。奥さんが、あと５回やって当てられなかったら、全員が奥さんのナカに出していい」
「ひぃ！」
　妻の微かな悲鳴が聞こえた気がします。
「それに、罰ゲームの追加もしときましょう」
「罰ゲームの追加？」
　森さんが、思わず聞き返します。
「スケベな奥さんが、楽しんでばかりいないように、追加です。もし、奥さんが、途中で逝ってしまったら、スケベな身体だってことでお仕置きする」
「それはいい、それは、ふふふ」
　いかにも楽しそうに森さんが妻の身体を下からのぞき込みます。
「いかにも、スケベな身体だものなあ、おっと、こりゃ、失礼」
　私のことを忘れていたのか、あるいは、わざとなのかはわかりませんが、森さんが、真面目な顔で私に謝るのです。
「いやあ」
　妻はアイマスクを着けられたままの顔をでいやいやと繰り返し頭を振ります。
　そのくせ、男達に向けて差し出したままの尻は、そのまま、うねうねと動き、広げている足は、さっきよりも心持ち広がったままでした。
「そして、ね」
　遠藤氏が、さらに話し出すと、妻の身体は一瞬で硬直してしまいます。
「そうだなあ、最後まで、もちろん、中に出した後ですけど」
「いやっ」
「それでも、旦那さんを当てられなかったら罰ゲームをさらに追加」
「ほう、いったい何を」
　森さんは、上司に相づちを打ちながら、もはや、遠慮もなく、妻の太ももを、きわどいところまで撫で回しています。
　妻は、いやいや、と言いながらも、相変わらず、なされるがままで、逃げようとしません。
「二つだなあ。一つは、奥さんの、あそこの毛をツルツルにしてしまいましょう」
「そりゃいい」
　遠藤氏の目は私に向けられていましたが、私は返事をするどころではありません。森さんは微妙な手つきで、妻の秘毛を触り、妻のつややかな悲鳴を絞り出していたのです。
「もう一つは、絡み」
「絡み？」
　今度は川島さんが、さりげなく手を妻の尻に伸ばしながら、それでも、少し不思議そうな声で聞き返したのです。
「女房達だけなんてずるいじゃないか。この中で運良く、奥さんを逝かせた人間が、女房達のモデルをする。先生の奥さんと絡みのシーンをね」
「そんな。それは…」
　川島さんが、真面目そうな顔をゆがめます。まさか、上司に面と向かって反論もできず、かといって、そんなことはできないと言いたげでした。
「逝くって言えば、条件は奥さんが、イクって叫ぶこと。奥さんが自分で、イクと言わない限りダメ。奥さんは何度逝っても良いが、声を出したときの相手が、後での権利を持つってこと」
「となると…」
　川島さんは、素早く察します。
「そう。奥さんには、後で絡む相手を考えてイクと言う権利がある」
　つまり、相手が私だと思った時にだけイクと言えということでした。妻には、さらに高いハードルが課せられた気がしました。
　緊張させた尻をつかみ締めたまま、森さんが、控えめに尋ねます。
「絡みって、あの、どのくらいまで」
「そりゃわからんだろ。だけど、こういう絵のモデルは、写真と違って、ずっとその姿勢を取るんだ。ね、先生」
　硬直していた部下達の視線は、一斉に私に向けられます。
　遠藤氏の視線が、私に、否定をさせてくれません。曖昧に頷くと、部下達の顔は引きつっていました。
　もちろん、妻も身体を硬くしたままです。
「な〜に、あくまでもポーズだ。しかし、チ○ポが硬くなったら、ポーズ次第では入ってしまうことだってあるだろう」
「しかし、それじゃ、女房の前で入れちまうことに…」
「なに、大丈夫さ、嫌なら、自分が代わりになるかと言えば、何も言えん。そうだ、もう一つ役得を付けよう」
　暴走し始めた上司に、既に、部下達は顔を引きつらしていました。
「こんな役得はどうだ？その日は、他の誰かにもモデルをやってもらえばいい。なにしろ、モデル役を務めたんだ、出て行けとは言えまい。どうだ？誰かのカミさんのヌードを見るチャンスだぞ」
「そ、それは…」
「森君、なんだか、目が嬉しそうだ。まあ、君の奥さんが永田君に見られるって可能性もあるが、君が、永田君のヨメさんを見られるかもしれないな」
「え、いや、そんなことは、しかし、あのぉ」
「何、どうせ、カミさん達は教室であったことを君たちにはいわんだろう。まして、誰かに見られたなんてな。女房達が言わない以上、誰にもわからんよ」
　疑心暗鬼。
　そうなるしかない仕掛けでした。自分以外の誰かが、その役得を手に入れれば、ひょっとして、自分の妻がその人間に見られてしまうかもしれない。
　一方で、人妻のヌードを、それも、よく知っている人間の奥さんのヌードを見るチャンスは、きわめて魅力的なはずでした。
　何よりも、自分が、その役得を手に入れれば、自分の妻が見られることだけはないのです。自分の妻が見られたかどうかは、絶対に、わかりそうにない以上、自分がその座を射止めるしかなありません。
　ここまで、乱れたことを一緒にしている以上、部下達は、遠藤氏に表だって反論もできそうにありません。そうなると、部下達の顔は、自分こそがと、決意を固める表情になるのは当然のことでした。
「そうそう、何でも、もう一人若い奥さんが来てるらしいし、その人は、なかなかに、長い黒髪の清楚な美人だと言うことだ」
「え、そ、それは、みたい、でも、あの」
「ははは、森君、まあ、ゲームの最後に決まることだ。見たければ、頑張るしかない。おやおや、みんな、さっきより威勢が良いな、それは、誰のことを考えているのかな？」
　遠藤氏の顔がゆったりした笑顔になっていました。遠藤氏に言われて見渡すと、全員の怒張が、さっきにもまして、高い角度になっていました。
「誰を想像しているのかわからんが、目の前の奥さんを逝かさないと、自分の女房をそいつに差し出すことになるかもしれないんだ。せいぜい、頑張ろうじゃないか」
　その時、永田さんがいかにも神経質そうな表情で、おずおずと発言しました。
「あの、妻は、私しかしらないし、あの、きっと、皆さんの前では、あの、その、モデルなんて、えっと」
「ははは、君は若いから、オンナの怖さを知らんのだろう。もちろん、無理矢理させるなんてことはない。そうですよね、先生」
「そりゃ、えぇ、はい」
「ほら、先生も、こうおっしゃってる。それに、忘れてはいかんぞ。君の、きれいな奥さんも、既に先生の前で、何度も裸を見せてるんだ」
　永田さんの顔が引きつります。
「ウチのやつの話では、そろそろ、絡みのシーンを描くことになっていて、モデルを探していたらしいぞ。丁度良いってやつだな。まあ、森君なんて、だいぶ、ご執心みたいだし」
「そんな、滅相もありません」
「はは、かくさんでもいい、さてと、そう決まったら、ゲームに戻るとしようか。さ、奥さん、先ず、最初の答えをいってもらおうか。忘れちゃいけないよ。５回目までにあたらないと、ここの毛は」
「あん！」
「きれいにツルツル。まあ、いまでも、面積は少ないから、あんまり変わらないかもしれないが。絡みのシーンは描きやすくなって、ウチのも喜ぶだろ」
　ああ、いやあ、消えたげな声がして妻がクナクナと頭を振ります。
　すっかり遠藤氏のペースに乗せられて、もはや、異を唱えることなど誰にもできませんでした。
　毛をそり上げられてしまうことを承知してもいないし、まして、他所の奥さんの前で「絡み」など。
　そもそも、普通の絵のモデルに、男性との絡みのシーンなど、あるわけがありません。
　しかも、遠藤氏の深みのある、低い声は、限りなく、その「絡み」はホンモノのセックスをしろというツヤを持たせてあるのです。
　真面目な妻が、本来なら怒り出すようなことを遠藤氏はサラリと言ってのけ、その上、妻に一切の口を挟ませない雰囲気は、はたして、話術のためなのか、それとも「入会の儀式」に妻の理性が既に飲み込まれてしまっているのか。
　イヤイヤと頭を振り立てながら、妻は、結局は遠藤氏の問い詰めるままに、ぼそぼそと答えました。
　遠藤氏が妻の頭に近づいて、小さな声で聞き出すと、厳かな託宣を下すように、言い渡しました。
「奥さんは５番目と答えました」
　ニコリと笑いながら一道を見渡し手間を取ります。妻の尻が緊張に硬くなっていました。
「残念。違います」
　妻の尻がヒクン、と震えるのが見えました。
　もはや、ゲームを進めるしかないと思ったのでしょう。川島さんは、自分が間違われたことに、小さくガッツポーズをしました。
「１回目は、ハズレです。さ、続けましょうか」
　妻の丸い尻が小さく震えたのは、私を間違えた無念なのか、それとも、この後に続く挿入を期待したのか、とにかく、妻は、すべてを飲み込んで、ゲームを承知したのです。
　アイマスクの下にある妻の瞳は、今、何を見ているのかと思いながら、遠藤氏が自分を指さしてくれる順番待っている私が、そこにいました。
　しかし、妻はこの時、おそらくは恥ずかしさからだったのでしょうが、大きな間違いをしていたのです。
　それは２回目の挿入が一通り終わった時にはっきりしました、
　今度は、最後が私でした。
　そこまでに、何度も妻の背中がヒクヒクと動き、小さなオーガズムの波が妻を駆け抜けていったのは、はっきりとわかったのですが、１０秒ごとに、抜かれてしまっては、最後まで登りつめるのは難しいようです。
『紀美、俺だ、気づいてくれ』
　心に祈りながらのストロークに、妻の美肉が何度も、ヒクンヒクンと反応します。
　しかし、私が抜き出した後、また、遠藤氏が頭を近づけ、妻の答えを聞き出すと、即座に言い渡したのです。
「違います。さ、次」
　妻は気がついたかどうかわかりませんが、もし、妻が「ゲーム」を乗り切るつもりなら、小さな声で遠藤氏にだけ伝えるべきではありませんでした。
　妻がなんと答えても、遠藤氏が「違う」と言えば、正解を確かめる方法はないのです。
　遠藤氏の視線が、私のもの尋ねたげな視線を受け流しているのは、あるいは、ひょっとして、今回はあてていたのではないかと、勘ぐりたくなります。
　しかし、私も、妻は何番目と答えたのか、と改めて聞くのははばかられたのです。
　この瞬間、この「ゲーム」の結末が決まったのと同じでした。
　おそらくは、男達にも、それがわかったのでしょう。３回目からの動きは、一気に加熱したのです。
「罰ゲーム」が確実になってしまった以上、自分が逝かせないと、自分の妻が誰かに見られてしまうかもしれない。
　いえ、今こうして、自分たちが他人の人妻を弄んでいる以上、自分の妻がモデルになれば、こうならない保証はないとまで思えてしまうはずです。
　先までとは必死さが違っています。妻の腰をつかみ、必死に、角度や、深さを加減しながら、小さく逝き続ける妻から「イク」という言葉を引き出そうとします。
　しかし、たった１０秒の壁が、男達の思惑を邪魔します。
　残念そうな顔で引き下がると、次の順番で、どうすればいいのか、他人が上手くいったらどうしようと心配と思案のない交ぜになった表情でじっと次の男を見つめるしかありません。
　そして、厳かに、遠藤氏の「違う」という託宣が下されて、男達は、次のチャンスにかけるのです。
　もはや、託宣によって、ゲームに「夫をあてる」という要素は無いも同然でした。
　妻が私をあてることなど不可能であると分かってしまっては、何をしても妻の口から「イク」という一言をシボリだそうとします。
　森さんも、突き出したお腹が、妻の尻にあたらないようにしていたのは初回だけで、ピタリと身体をくっつけて、妻の乳首をコリコリと刺激しながら、背中に舌を這わせます。
　永田さんは、前に回した手が妻の股間に入っています。おそらく、クリトリスを弄りながらのストロークなのでしょう。
　セックスレスに近いはずの永田さんが、あれだけ懸命に動いているのを見ると、複雑な気持ちになってしまいます。
　あの清美さんが、この中の誰かと絡むシーンを見たいような、見たくないような。
　そして、永田さん自身は、まさか、清美さんが、私と何度も密会を重ねて、モデル以上のことをしているなんてことを夢にも思っていないはずでした。
　胸の奥がチクリと痛むのは、私の心に、良心がまったく残っていないというわけではないということでしょう。
　川島氏は、先ほどと、さほど変わらないように思えました。さすがに、川島氏は、勝負が後になると思っているのでしょう。
　いえ、違いました。年長者らしい落ち着いた、そのくせ、妻の美肉をしっかりとむさぼる動きで、いやらしい声を吹きこぼさせるだけではありません。尻に手を差しのばします。
　妻の今までとちょっと違った狼狽するような声に、あわてて身を乗り出すと、川島さんのいかにもデスクワークしか知らないといった繊細な指が、たっぷりとこぼれた秘液をまとわせて、妻の尻孔をほじっていました。
　イヤイヤと言っていたクセに、最後には、やや低い、おぉっという声を噴きこぼして、妻の身体に、わなわなと震えが走ったのは、妻にも、その感覚があると言うことなのでしょうか。
　そしてなんと言っても、遠藤氏の時に一番、切ない声を上げているような気がします。やはり、今日、初めて妻の身体に触れた人間との違いでしょうか。
　さっきと同じように腰の動きだけですが、腰の動き一つでもそれだけの快楽を送り込む、遠藤氏のテクニックがすごいのかも知れないと思わせます。
　１０秒ずつの、男達の全力を浴びながら、妻の身体に、何度もケイレンが走りましたが、やはり１０秒では、どこか無理があるようです。
　私自身も頑張りましたが、妻の肉がヒクヒクとケイレンするくせに、妻の反応は、それ以上にはなりません。
　そんな男達の意地の張り合いが繰り返された後に、託宣が厳かにくだされ、また、男達は勝負を挑む。妻の身体には、いつしか、汗が浮かんで、もはや、どうしてイイのかわからないといった体で、低い嗚咽のような声が漏れる、見たことのない反応になっていました。
　おそらくは、小さなオーガズムの果てにある、女の頂点を身体が要求しているに違いありません。しかし、たった１０秒で相手が変わっては、肉体がそれを許さないのでしょう。
　もはや、妻の頭の中には、どれが私なのか、というより、あと、ほんの少しだけおのれの肉を掘り返す相手だけを望んでいる。それだけが頭にある。
　そう思えたのです。
　淫靡で残酷なゲームの果てに、とうとう、５回目の託宣が下された瞬間、妻は、あぁと、悲痛な叫び声を上げました。
　男達のしわぶきを、その身のうちに受け止めなくてはいけないのだと告げられたのと同じだったのです。しかし、その瞬間、妻の腰が、大きくうねったのを目撃してしまいました。
　妻は、男達のしわぶきを予感しながら、それを嫌がると言うより、大きな快楽の訪れをからが期待している証拠のように思えたのです。
「さてと、じゃあ、罰ゲームといこうか」
　男達の目に、欲望の光と、そして、緊張が走ります。
　すぐそばに夫がいる、真面目そうな人妻の子宮めがけて、欲望の液体を注ぎ込む瞬間を期待しない男などいません。
　一方で、ここで、自分がイカせなければ、ひょっとして自分の妻が、こうなるかもしれないと思わせる淫靡な空気があったのです。緊張するのも当然でした。
「そうそう、奥さん一人に、５人がかりというのは、ちょっと卑怯だよな。第一、これだけ感じてしまうと、最初の人間で勝負がつきそうだ」
　遠藤氏は真面目な顔をして続けます。
「これは、少しハンデを付けないとな」
「ハンデといいますと？」
「そうだな、実は、さっきから、女を一人待たせてある」
「え？ど、どこですか？」
「慌てるな、森君。もう、ドアの向こうで出番を待っている。もっとも、こっちは、金で連れてきたオンナだが、感度はすこぶる保証付きだ」
　直感的に、優子さんのことだと思いましたが、遠藤氏が自分の妻をカネで連れてきたオンナ、などと見え透いたことを言うのを訝しく思いました。
　部下達は遠藤氏の自宅に招かれたことくらいは、何度もあるはずで、全員が、優子さんのことを知っているはずでした。もちろん、その身体までは知らないでしょうが。
「このオンナは、あっという間に、そして、何度でも逝ける」
「はあ」
　川島さんは、酢を飲み下した子どものような顔をしています。真面目に生きてきたらしい川島さんにとって、既に常識外の世界に、思考回路がショートしているのかもしれません。
「ルールはこうだ。このオンナを先に逝かせる。大丈夫、こっちは簡単だし、逝く時はすぐわかる。一度逝かせたら、奥さんに取りかかれるってことでどうだ？」
「そんな、殺生な。なんだかんだで、けっこう、来てるんで、もし、逝かせる前に、こっちがイッちまったら、どう…」
「逝きそうになったら、しょうがない。奥さんに移って、たっぷり出せてもらえ」
　じっとしたままの妻の背中が、ヒクンと震えました。
「全員が、奥さんに出すんだ」
　妻のすぐ後ろに立っている私には、妻の太ももを伝って垂れてくる秘液が、しっかりと見えました。
『感じてる』
　これから、男達全員の精液を、胎内に注ぎ込まれるという事実が、妻の気持ちにどう作用しているのか、わかりません。
　しかし、妻の秘液がつとこぼれたのは事実です。
「その代わり、もし、奥さんを逝かせても、自動的に役得の権利を失う。これなら公平だろう。もう、奥さんは限界みたいだから、あっという間にイクかもしれない」
　遠藤氏は、頬だけでニヤリとします。
「しかし、その分、こっちのオンナが、いくら逝きやすいと言っても、トップバッターは、その分、力を使う。なかなかの名器だからな、イカされないようにしろ」
　森さんが、自信ありげにニヤニヤとします。人妻のナカに出すことを保証された上に、違うオンナも味わえるのですから、森さんにとっては、棚ぼたなのかもしれません。
「そうそう、間違って、こっちのオンナに出してしまった場合は」
　遠藤氏が、一番若い永田さんに視線を送ると、神経質そうな顔に、ドキリとした表情になります。
「モデルは、決定ってことだな」
　さすがに、川島さんも、森さんも、自分がそうなるとは思わないのでしょう。遠藤氏の視線の意味に気づいて、微妙な雰囲気の中で、うんうんと黙って肯く仕草でした。
「さ、入ってこい！」
　ドアから入ってきたのは、レザーと思われる黒い全頭マスクを被ってはいましたが、妻が最初に入ってきたのとそっくり同じ格好でした。
　今日の最初の光景が、まるで再現されたかのようです。
『優子さん』
　一瞬、視線があったときに確信しました。やはり、それは、紛れもなく優子さんです。
　マスク以外の姿は、完全に一緒でしたが、動きが違います。妻とは違い、ふわりとケープをなびかせた、まったく体重を感じさせない動きで、私の横に、すっと、しゃがみ込むのです。
「うっ」
　いきなり絶妙のテクニックで握られた私は、思わずうめいてしまいます。
「ははは、このオンナは、先生が気に入ったらしいな。おい、そっちじゃない。こっちに来て、一緒に尻を出せ」
　全員が息を呑んで見つめるなかで、優子さんは、ささやかな衣ずれの音をさせてケープをスッと取ると、妻と並んで、尻を差し出す姿勢を取りました。
　二人の女が首輪をつけただけの姿で、男達に尻を差し出していました。
　まるで、古代の女奴隷を見比べているような、サディスティックな雰囲気があたりを支配します。もちろん、男達は、二人の女を見比べています。
　そこにある姿は、本来の人格を全て奪われて、一つの肉奴隷として、存在しているかのごとくでした。私自身も、妻の心の中より、この光景自体に心を奪われてしまったのです。
　スタイルと、肌の張りは、比べるまでもなく妻の方が上ですが、優子さんの柔らかく、豊かな肉付きの尻は、いかにも抱き心地が良さそうに見えます。
　そして、そのプロポーションは、いささかも衰えていませんでした。
「ま、こっちの方が、ちょっと年がいってるが、その分、中身は、なかなか味わえないような具が詰まってる。森君も気をつけた方が良いぞ」
　照れ笑いを浮かべる森さんの横で、川島さんが、突然、ハッとした顔で優子さんと遠藤氏の間を、素早く視線を走らせました。
　明らかに、その目に、緊張を走らせましたが、やがて、目を軽く閉じて、首を振りながら大きく息を吐き出しました。
　まさか、ね、と川島さんは心の中でつぶやいていたに違いありません。おそらく、川島さんは、限りなく正解を思いつき、そんなことがあるはずないと心の中で、その正解を捨てることを選んだに違いありません。
　まさか、上司が自分の妻をこんな場所に、しかも部下である自分たちに「提供」したりするはずが無い、それが普通の感覚に違いありませんでした。
「さて、と。誰からいこうかな」
　 遠藤氏がいかにも思案げなセリフを吐いた瞬間には、その指は、永田さんをさしていました。
　永田さんの顔が不安げに歪みます。
　しかし、遠藤氏は一切容赦なく、指をそのまま優子さんに向けたのです。
　行け、と命じていました。