第２話　羞恥

「それって、遠藤さん、だっけ？その人の嫉妬じゃないかなあ」
　妻が、ベッドに入ってきます。
「嫉妬？」
「そう。だって、その清美さんって人、綺麗なんでしょ？」
「う〜ん、綺麗って言うのなら、みんな綺麗だし、遠藤さん本人も綺麗なんだけどね」
「わかってな〜い、本人が綺麗だった、から、よけいに嫉妬するってモンじゃないの」
　女心は分かりません。
　とりあえず、ひょんなことから、レッスンで、ヌードモデルを交代でやることになったんだよ、と妻には言っておくことにしました。めったにアトリエには来ませんが、何かのひょうしに、痛くもない腹を探られるのは夫婦げんかの元ですから。
　ただ、明後日、清美さんが一人で来ることだけは、さすがに言えませんでした。
　だって、ナイショにするって約束したもんなあ、と自分に言い訳しながらですが。
「ね、その遠藤って人、ぜったい、あなたに気があると思うわ」
「え〜、あの人、もう五十過ぎだぜ」
「そんなの関係ないわよ。女はいくつになって恋ができるんですもの」
　ふふふと笑いながら、私にくっつきます。
「だめよ、浮気しちゃ」
「う〜ん、とりあえず、五十過ぎに手を出す趣味はないなあ」
　そう言いながらも、その年齢にはとても見えない、あの色気を思い出して、ひょっとして可能になるかなあなどと、馬鹿なことを考えてしまいます。
「元はと言えば、私が言い出したことだけど、やめておけば良かったかなあ」
「なにを、まったく」
「だって、あなた、色っぽい人妻のヌードを毎週眺めて、ヘンな気を起こされても困るもの」
「おいおい、絵描きが、モデルといちいち関係してたら身が持たないよ」
「あら、芸術家とモデルの恋なんて、カミーユとロダンみたいに、よくある話じゃない」
「昔はそうかもしれないけどなあ。第一、俺がモテたことなんて、学生時代にチョコをくれたのはキミだけだぜ」
　そうです。妻は美大の四年後輩。
　私は、卒業制作が、とある権威ある賞を射止めたことで大学に残り、妻は、なぜか、今では売れない絵本作家です。
　まあ、出版した絵本は今までに二冊ですから、ほとんど専業主婦のようなものですが。
「だって、あなたの指先、とってもセクシーだったんだもの。それに、描いているときだけは、あなた、とっても素敵よ」
「え〜、描いてるときだけかあ」
「人間、一つくらいは取り柄があるものね。ね、そうだ、私、あなたの教室に通ってみようかしら」
「まさか。キミも先生をやりたいの？」
　妻の名前は紀美ですから、こういうとき、混ぜっ返すには絶好の名前です。
「なに、シャレを言ってんのよ。違うの。ナイショで。あくまでも一人の生徒よ」
「おやおや、水戸黄門ですか」
「そんなんじゃないわ」
「よっ！　天下の隠密同心」
「もう、怒るわよ。ちゃかしたら」
「だって、そんなのヘンじゃん」
「私、めったにアトリエに行かないから、分からないと思うの」
「分かるとか、そう言う問題じゃないだろ」
「あら、私が邪魔なの？」
「あのなあ…」
　ダメです。妻の目が、落とし穴を掘った悪ガキのように、きらきらと輝いています。
　何がそんなに楽しいのか分かりませんが、妻は、来週から、新入生ねと、はしゃいでいます。
「もう、どうなってもしらないぞ。遠藤さんにいじめられても助けないからな」
　そうなのです。今日の遠藤さんの発言は、どう考えても不可解だったのです。
　素人のお絵かき教室で、交代でモデルをやる。そこまでは、良くあることですが、それをヌードにするのは、ほとんどあり得ない話でした。
　ダンナのことを考えれば、奥さん達は逆らえるはずもないのですから、イジメとしか思えません。
「大丈夫。それに、私が入れば、自分の権力外の人間が増えて、遠藤さんも少しは控えるでしょ。緑川さんだってやりづらいでしょうし。このままじゃ、やめちゃうカモよ」　妻の言い分にも一理ありました。
「山崎紀美ですって旧姓で名乗れば、大丈夫ね。あぁ、なんだか、ドキドキしちゃう」
　こういう時の妻の目は、イタズラな少女の目に完全に戻っています。
　妻が私にピタリと寄り添ってきます。
「ね、大丈夫。任せておいて」
「何を任せるのかなあ…」
「ふふふ。人妻の色気に迷ったら、お仕置きしてあげる」
　どこまで本気か分からない顔で、キスしてくると、右手が下に伸びてきます。
　珍しく、妻が積極的でした。
「あら、あなた、人妻のヌードを見たせいかしら。今日はずいぶん元気ですこと」
　妻の手がトランクスに差し込まれ、私を握りしめてきます。
「その、清美さんて方、胸大きいんでしょ。私のじゃ目の保養にならないものね」
「そりゃ、まあ、なあ」
「もう！　そんなことないよっていうのが夫の務めでしょ！」
「痛てっ、違うよ、大きいってことだけ…　紀美のも立派になったじゃないっててて」
　もちろん、いつもの戯れのようなものですから、ぎゅっと握った後、今度は優しくいたわるように手を動かしてくれます。
　いくらかぽっちゃりした清美さんとは正反対で、やせ型で、胸もいまだにＢになったりＡになったりです。
　これでも結婚以来、私の愛撫のおかげか、だいぶ膨らんで、それでこれなのです。
　妻は、男性経験が私だけだというのは多分本当です。胸のコンプレックスで男性を近寄らせなかったらしいのです。　
　それが今や、結婚八年目ともなると、怒張の扱いも人妻らしく、巧みにつぼを押さえた、なかなかのものです。
「ごめんごめん、でも元気なのは、紀美がとってもエッチが上手だからだよ」
「もう、あん、あなたったら」
　無意識のうちに、左手が、すでに尖っている妻の乳首をとらえていました。
　妻は、胸が小さい人にありがちなように、胸は人一倍敏感です。胸だけ触ると感じすぎるとかで、ホンの少し触っただけで、我慢できなくなるようです。
　もし、今日の清美さんのように触ったら…
　思わず、清美さんにしたように乳首だけを指先でつまみ、さわさわと同じように動かしていました。
「あぁん、だめぇ、あなた、それ、あん、もうエッチなんだからぁ」
「あれ、だめ？もっとの間違いじゃないの」
「あう！えっち、いじわる！あぁん」
　鼻に掛かったような甘えた声を出します。普段はどちらかというと、きびきび、さっぱりした性格の妻です。
　おそらく、妻のことを知る誰もが、こんな嬌声どころか、夫婦のセックスをしている所ですら想像もできないと思うのです。
　サラサラと指先で妻の胸を触ります。敏感さは清美さんより上でも、残念ながら、乳房と言えるほど大きくはありません。
　でも、手のひらで包み込むようにして先端を絞り出して尖らせると、それだけで淫らな声を上げますし、グミのような感触の乳首に柔らかく歯を当てるとそれだけで、腰が動き始めるのです。
「ねぇ、あなた、あぁ、あなた。もう、ね」
　妻の細い指が私をとらえます。身もだえしながら感じているのに、慣れた手つきでカリに沿って指を這わせながら、やさしく握ってきます。
　いきり立った私が少し落ち着き、いっそうじっくりと愛撫に取りかかれるという物です。
　一方で妻は、いつになく長く続けた胸への愛撫で、溶けかかっていました。
「あぁ、ね、あなたぁ」
　私のモノをわずかに引っ張る仕草をしつつ、妻の両脚はしどけなく広がっています。
「わっ。ぐしょぐしょ」
「あう！」

　妻のヒダの中は、これ以上ないほどぬかるんでいたのです。秘液をすくい上げるように指を動かすと、とうとう私のモノを掴んだ手を動かす余裕が無くなってしまいました。
「あれ？下まであふれてる。お尻の方までこぼれてるよ」
「いや〜ん、いわないで、あなた。恥ずかしいの」
「え？やめて良いの？」
　私が指を引く振りをしてみせると、妻の腰が大きく突き上げられます。まるで、指を恋い慕っているようでした。
「いじわる。あなたぁ、ねぇ、いじわるしないで。ねぇ、お願いよ」
「どんなお願い？言ってくれたら何でも聞いちゃうよ」
「あぁん、もう。いじわる。分かってるクセにぃ。あぁあん」
　それでも、私がクリトリスを何度かいらえば、妻は我慢できなくなってしまうのです。
「ね、おねがい、あなた」
「入れて、って言ってみて」
「いやあ。言えない」
　そう言いつつも、入り口を軽くかき回すように焦らせば、切迫した妻は、いくらも我慢できません。
「あなた、あん、もう、恥ずかしいけど。あぁ」
　グッと私にしがみつくようにしながら、誰もいない寝室なのに、まるで誰かにはばかるかのごとく小さな声で囁きます。
「あなた。入れて。あぁ、もう、恥ずかしくて」
　そんな風に恥ずかしがる妻が可愛くて、いきり立った私をズブリと軟らかい肉に埋め込みます。
「あぁ、あうぅ、あなたあ」　
　しっとりと濡れそぼち、妻の美肉は私を迎え入れて、締め付けてきます。
　子供を産んだことのない妻のそこは、この年になっても、いえ、最近ますます、ピッタリと締め付けてくるのです。
「あなた、すてき」
　妻が動きを合わせてきます。突き入れる度に、ほんのわずかですが、腰を捻り、先端がえぐる部分を変化させるのです。
　無意識に快感を追っている動作らしいのですが、先端を包む感触がその度に変わり、私もとろけそうになります。
　舌を絡ませると、私の口の中で盛んに嬌声を上げます。どうやら、部屋中に声が響き渡ってしまうのは、恥ずかしいらしく、普段は声を抑えているのです。
　妻の乳首を捻り、尻タボを撫で、時には、妻の尻孔までいじると、その度に妻の快感は深くなっていくのが分かります。
　もっとも、尻孔だけは、ダメと言い続けていますが、軽く表面を撫でるだけなら抵抗しません。
　いつか、一度軽く入ってしまった時には、猛烈に、美肉を締め付けてみせて驚かせたものです。
　私はふと思いついたことがありました。
　清美さんは、明らかに、夫以外の、私という人間に見られながら感じていました。もちろん、それは私の目が芸術家ではなく、一人の男の目だったからでしょう。
　もし妻が、清美さんの立場だったらどうなっていたのでしょうか。
「あう、あなた、いい、あなた、あう、どうしちゃったの」
　いつのまにか、いつもより怒張が逞しくなってしまったようです。妻は敏感に変化を胎内で感じ取ったようです。
「ね、紀美」
「なに？あ、あなた、あぁ」
「紀美もモデルになったら、どうする？」
「え？何のこと」
「だって、三人が順番にやったら、次は緑川さんか紀美だよ」
「あん、やあん、恥ずかしいわ。できない」
「だって、生徒になるなら、順番だから仕方ないだろ」
「あぁ、そうね、恥ずかしいけど。あぁん、もう、何よ、エッチ」
　ヒクリと妻の腰が突き上げる動きを見せます。
「もう。何想像してるの。すっごく大きい。今日の人のこと？もうっ」
「当然、紀美のこと」
「あぁん、だって、他の人と同じことをするだけでしょ。あなたが、あう、エッチな目で見ないでくれれば、あうん、女同士ですもの」
　背中に回した右手を解いて、私を目隠しするようにふさいできます。
　直接その手を解かなくても、ズンズンと腰を突き上げてやると、たちまち、悲鳴のような嬌声を上げながら、元の通りしがみついてしまいます。
「いやらしい目で見ちゃおうか」
「いやん、ああん、エッチぃ。あん、あなた、ああ」
「そうだ」
　抽送をわざとゆっくりにして、耳たぶを軽く囓ります。
「あう」
「エッチな紀美にサービスしちゃおうか」
「なによぉ、あう、あなた、耳、それ、オカシクなっちゃいそう」
「紀美の番の時に、旦那さん達も呼んじゃおうか」
「え？え？どういうことよ」
「授業の見学だよ。みんなが描いているところを旦那さんが後ろから見る」
　妻の美肉が、ギュッと猛烈に締め付けてきます。
「いやあ！」
「モデルは、もちろん、君」
「いやいや、あう。だめ、恥ずかしくて」
「あれ、なんか、感じてない？」
「そんなことない。あう、いやあ、見られちゃう」
「そうだよ。思いっきり派手なポーズさせちゃおうか」
「だめ。だって」
「だって？」
「素人の男性だと、あう、エッチに、エッチな目で見られちゃうのよ」
「そうだよ。紀美の裸を、みんなが、とってもスケベな目で見るんだよ。ほら、みんな、こんな風に大きくしちゃうよ」
　大きく、何度も動かします。
「いやあ。だめ！恥ずかしすぎる、あう、あなた、あん、だめぇ〜。あぁ！」
　そう言いながら、妻は早くもオーガズムに達してしまったのです。
　ハアハア、喘ぐばかりの妻の中で、私のものは、まだ隆とした姿を保っていました。
　妻の達するのが早すぎたこともありますが、今日の清美さんと妻を重ねたときから、なぜか腹の下の方から力がみなぎってしまっているのです。
　目を閉じたまま、達したばかりのオーガズムの余韻に喘ぐ妻の白い胸が、ふと、まだ見ぬオトコ達の目にさらされる姿を想像してしまいます。
　仰向けになった妻の胸は、微乳にありがちなように、乳房の肉が流れ乳首だけがプックリと飛び出しています。
「この乳首も見えちゃうよぉ」
「あう、あなたあ」
　軽く乳首を捻っただけで、ヒクヒクと私のモノを締め付けるのは反射的なものだったのでしょうか。
「ほら、こっちも」
　大きく、すくう動きで、妻に秘部を意識させます。
「この中も見て貰おうね」
「あぁ、いやあ、あなた、そんなの、あん、だめぇ」
「いやらしい奥さんのアソコを見て、みんな、こんなになっちゃうよ」
「あう、あう、いや、ああん、いやあ」
　いつになく逞しい姿を保ったままの私を、回復した妻の美肉が私に絡みつくような動きを見せるのです。
「見られて感じてるんだ」
「そんなことないわ、うぅ、ああ」
「みんな見てる前で濡らしちゃったら、どうする」
「いやあ、ね、お願い、そんなこと言わないで」
「なんで？あ、感じちゃうんだ。見られてると感じちゃうだね」
「そんなこと、あ、あ、ないけど」
「でも、そんなところ想像したら、感じるでしょ」
　微かにコクリと頷いたのは、恥ずかしいけれども感じてしまうことを妻は思い知ったからに違いありません。
「ね、感じちゃったら、ついでに、ここ、みんなに触らせてあげようか」
「あん、な、なにを、あう」
「芸術は、見るな、感じ取れって言うじゃない。濡らしちゃったここ」
　大きく動かすと、もはや妻は私にしがみつくしかありません。
「みんなに、触って確かめてもらおうか。オッパイもついでに自由にね」
「あぁ！いや、そんなこと、できない。いやあ、言わないでぇ」
　イヤイヤと必死になって首を振っている姿は、拒絶していると言うより、感じるのを必死でこらえているように見えます。
　一度達したはずの美肉も、私のモノを飲み込むように奥へ奥へとヒダが絡みついてきました。　
「あれ、奥さん、感じてるね」
「あう、そんな、あん、だって、あなたの、今日、なんだかすっごいの、あうぅ」
「違うよ。奥さんがエッチになったんだよ」
「そんなことない」
「じゃあ、動かないから、想像してご覧よ」
「あう、あなた、何を」
　妻の奥深くに差し込んだまま、ピタリと動きを止めると、むずかるように妻の腰がヒクヒクと動いていました。
「みんなが見てるよ。奥さんのアソコ」
「だめぇ、言わないでぇ」
　ヒクヒクと妻の美肉がケイレンしています。
「奥さんのオッパイも見てる。硬くなった乳首もね」
「あぁ」
　妻が腰をこすりつけるように動かします。二人の間で、クリトリスがこすれたのでしょう。その快感を忘れられないかのように、腰の動きが止まらなくなります。
「オ○○コの中に、旦那さん達の指が」
「あぁ！ダメ！お願い。言わないで」
　下からしがみついた妻は、自ら舌をねだり、激しいキスになります。
　私を乗せたままの腰がビクンと、突き上げた後で、懸命に中の摩擦を求めて動きながら、じれったそうにする妻の顔がケナゲでした。
　こんな風に、我を忘れるほど感じる妻は初めてでした。
「感じるね？」
「あなたあ、あぁ、たまらない、ね、お願い、動いて、ね、お願い、あなたあ」
「見られて感じるだろ。認める？」
　わずかばかり、ツンツンという感じで突き上げただけで、妻のカラダがわなないてしまいます。
「ほら、動いてあげるよ。言ってごらん。見てって」
「あう、いやあ、エッチ。言えない。あぁ、あなた、お願い」
「言うんだよ」
「あぁ！お願い、もう、我慢が…　おかしくなってしまって、あう、ね、お願い、動いて」
「思いっきりミダラに、言ってごらんよ」
「あうぅ、もう、あなたったら。ああ、だめぇ、ね、お願い、言うから、動いて」
「さ、早く。ご褒美あげるよ」
　予告編のように、わずかばかり動かすとそれだけで妻の口から、聞いたこともないような低い、うわごとのような声が漏れ出ます。
「み　…見て」
「どこを？」
「いやん、エッチ。あぁ、でも」
　一度堰を切ったら止まるものではありません。
「あぁ！見て、紀美のアソコを見て」
「違う。ちゃんといやらしい言葉で言わないと。触ってって言うんだ」
「あん、ひどいぃ、あぁ、でも、我慢が、あん、見て、あうぅ、触って、触って、紀美のオ○○コ、触って、あうぅ、ね、お願いよ、動いて！」
　悲鳴のようになった妻の声に、私の我慢も限界に達していました。　　
　妻のピンと立った乳首を指先でつまみながら、大きく腰を動かします。
「あう、あなた、あん、いい、すっごい、ね、すごいの、あう、あなた、私、また」
　妻の美肉を、二度、三度とかき回し続けると、根本を包み込んでいる部分が、ヒクヒクッとケイレンするような動きを始めました。　
　妻が逝く時のサインです。
　ここぞとばかりに、一気に深く、強く動かします。
　根本に、かんぬきが掛かったように強烈な締め付けを受けます。
　これ以上ないほどしっとりと軟らかい肉が、怒張をぎっちりと、思いっきり締め付けてくる感触は、まるで、そこに別の生き物がいるようでした。
　私も心のストッパーを外して猛然と抜き差しをします。
　その時、ふと、昼間、清美さんの、あの、感じてしまった声が蘇ります。あの純朴な人妻の濡れそぼつ美肉を触ってしまった時の声です。
『清美さんは、どんな顔をして逝くんだろ』
　悪魔のような声がどこかで響いていた気がします。
「あなた、あう、あう！いっちゃう、あなた、あなたも、あなた、ね、あなたぁ！いく、いくぅ！」
　ギュッと私にしがみつく仕草をしている妻の美肉も、腕以上の力で締め付けてきます。
「出すぞ」
「あなた、あうぅ、出してぇ、あう、お願い、あ、また、い、いっちゃうぅ」
　ビクンびくんと背を仰け反らせる妻の胎内に、ドクドクと精を注ぎ込みながら、ふと、清美さんの美肉の感触を想像するのを、止められないでいたのです。　

「もう、あなたったら、ヘンなことばかり言うんだからあ」
　軽く肩をペシッと叩いた妻は、そのくせ甘えた表情で私の胸にもたれてきました。
　たっぷりの快感に包まれた後は、いつも、ひどく甘えん坊になるのです。
「ね、あなた、まさか、本当には」
「うん？」
「ううん、何でもない。あ、いや」
　妻が慌てて、ティッシュを秘唇にあてているようです。
　ティッシュを箱ごと渡しながら、妻の慌てたような仕草に、つい、にやにやしてしまいました。
「もう、見ないで。エッチ」
　怒ってもいない声でそう言うと、立て続けにティッシュをすばやく抜き取ります。
「あ、すごぉい。あなたったら」
　胎内からこぼれ出た「私」を拭き取っている姿に、妙なエロティシズムが漂っていました。
　じっと見つめていると、ようやく仕上げた妻と目が合います。
　恥ずかしいと言って、私の胸に顔を埋めながら、妻はあっという間にまどろんでいったのです。

　馴染んだ妻の細身の身体が、なんだかいつもと変わって見えたのは、昼間、清美さんの女らしい線のヌードを見たせいだったのでしょうか。
　いえ、私には分かっていました。
　他人に見られる想像をしながら、妻が激しく感じてしまったこと。その上、そんな想像をさせながら感じたジェラシーに、私自身こそが、ひどく興奮してしまったこと。
　ひどく息苦しいような興奮を思い出しながら、静かな寝息を立てる妻の肩を抱き寄せていました。