第６話　すき

「なんかヘンなことになっちゃった」
　ポツリと小さく呟いてから、私をすり抜けて皆さんの方へと歩いていきました。
　ひょっとすると、私に囁いていたのかもしれません。
　さすがに緊張して、うっすらと汗をかいているせいなのか、素足がピタピタとフローリングに音を立てています。
　モデル台の上で覚悟を決めた妻が、恥じらいに胸を隠す手を脇に降ろしました。女同士だと、秘所よりも、むしろ、気にしている微乳を隠したくなるのかもしれません。
　わずかに妻が唇を噛みしめたように見えました。
　しかし、私の緊張はひょっとして妻以上かもしれませんでした。
　とうとう来るべき日が来てしまったのです。
　今日が妻の番です。
　奥さん達が信じているとおり、いえ、なによりも、妻が信じているとおり、女性だけの視線だったらどんなに良かったでしょう。
　しかし、この、何一つ身にまとっていない妻の姿を見ているオトコがいるのです。
　遠藤氏のことは、とうとう妻に言えませんでした。
　私にしか晒したことのない肌が、男の視線にさらされています。
　小さいけど感度の良い胸が、くびれに続くクリンと丸い尻が、そして、淡い秘所の翳りが、アトリエの柔らかな明かりの中で遠藤氏に見つめられているのです。
　遠藤氏は、あの窓から、今、この瞬間も食い入るように見ているはずでした。
　胸が締め付けられるような息苦しさに、歯を食いしばって絶えていると、早くもポーズを指示する優子さんの声が聞こえます。
　「ヌードセッション」が始まって以来、いつのまにか、ポーズを指示するのは優子さんの特権のようになっていました。
　今日はいつになく、派手なポーズで始まった気がします。
　台の上でしどけない姿の妻が、困惑したような顔のまま、緊張で固まっていました。
　体育座りというのでしょうか。あの姿から、やや膝を下げて座り、両手は後ろにつけています。この姿だと、膝が小さな胸を隠してはくれません。
　それどころか、後ろに傾けた上半身は、つっかえ棒のように出した手で支えているので、まるで、その微乳を見てくれと言わんばかりのポーズです。
　その時、優子さんが立ち上がって、つかつかと妻に近づき何かを囁きました。
　いやいやと顔を振る妻が、チラリとこちらを見ます。つかの間、視線が交錯してから、妻は、小さく何かを呟いたように見えました。
　まるで、だだっ子に言い聞かせるようなやさしい表情のまま、優子さんが、さらに二言、三言、囁いています。
　妻の頬は、見る見るうちに朱に染まっていました。
　さらに、何事かを耳打ちされて妻はこっくりと確かに頷いたのです。
　にっこりと満面の笑顔を浮かべながら、優子さんは妻を見守ります。
　ため息のように大きな呼吸を静かに吐き出してから、目が静かに閉じられます。
『え？おい、まさか』
　なんと、左膝がゆっくりと外側に倒れ始めたのです。
　どんな偶然なのか、妻の両脚は、ちょうど黒い窓の方に向かっています。つまり、このまま足を広げてしまえば、むき出しの秘所は、ちょうど窓に向かってしまうのです。
　それは、遠藤氏に向かった秘所を広げてしまうことに他なりませんでした。
　私の位置からは見えませんが、遠藤氏には、この日のために形を整えたヘアどころか、コーラルピンクの秘唇の奥までもが見えているはずでした。
　数日前、妻は、深夜の風呂場でなにやらやっていましたが、その時は見て見ぬふりをしたのです。
　次の日、妻のヘアが大幅にカタチを整えられていたのを見てしまいました。
　優子さんのつけたポーズは、まさに、妻の整えられたヘアの奥、私以外の誰に対しても秘めやかにすべき部分までも開放させる姿なのです。
　優子さんは、そうとは知らぬまま、自分の夫に対して、大サービスのポーズをさせていることになります。
　もちろん、妻は、こんな姿を私以外のオトコにさらしているなどとは思ってもみないことでしょう。いえ、普段の妻なら、こんな姿を私に見せることも拒否したはずです。
　それでも、頬を紅潮させた妻は、言われるがままに、皆さんの前で、女唇までもが広がってしまいそうなポーズに耐えていました。
　ゆっくりと開けた目はひどく潤んでいます。小さな膨らみの先端は、私の唇を求めるかのようにプックリと膨らんでいます。
　小さいだけに、まだ垂れてはいませんから、身体を起こしていると意外なほど、膨らみを感じさせてくれる乳房が、呼吸と共にわずかに上下します。
　今、この瞬間の妻の秘唇の奥までもが、遠藤氏に視姦されているのです。
　私以外のオトコのいやらしい視線に秘所をさらしている妻。
　息苦しい思いの中で、ズボンの中が痛いほどいきり立っていました。
　ふと、目隠しして妻を攻めた時に想像したように、このまま、誰かが妻に快楽の声を上げさせてくれたら、と思ってしまう自分を、持てあますしかなかったのです。

　帰り際に妻に近づいて話しかける優子さんの姿がチラリと見えましたが、そ知らぬ振りをするしかありませんでした。
　もちろん、遠藤氏のその日の興奮ぶりは、いつも以上です。
「いやあ、すばらしい。もう、最高ですよ、先生。もちろんお気づきになりましたよね。やっぱり、彼女、濡れてましたよ」
　もちろん知っていました。
　最初のポーズが始まってから、程なくして、さりげなく妻の秘所が見える位置に移動していました。
　妻は、明らかに狼狽した表情をしましたが、さりとて、動くわけにもいかず、視線だけを私から外すしかなかったのです。
　大きく脚を広げたポーズの真ん中で、さっきまで、私しか見たことのないはずだった場所が見えています。
　案の定、濡れていました。
　それも、美唇の内側までもが、ぐにゃりと広がってしまっています。誰が見ても、オトコを欲しがっているメスの身体になっていました。
　私の視線を受け止めて、妻の腰がわずかに揺れるのが見えました。
　私は、一応、立場上は、先生というわけですからいやらしさを丸出しにして覗くわけにも行きません。
　しかし、後ろの窓から覗く遠藤氏は、じっくりと見ていたに違いありませんでした。
　妻の視線が私を避けて泳いでいます。
　明らかに感じてしまった身体を持てあましているように見えました。
　思えば、さっき、頬が上気しながら目を潤ませていた、あの瞬間から、確かに妻の中で何かが、いやらしく、くすぶってしまったのに違いなかったのです。
「先生の視線で、彼女、感じてしまったのですなあ」
　うれしそうに遠藤氏が笑いかけてきます。
　妻が、視線を感じて濡れるようになるなんて、私が密かに望んでいたことです。大いに喜ぶべき事だったのかもしれません。
　しかし、だからといって、それを他人に指摘されると、ずきんと胸の奥が痛みます。
「う〜ん、あの身体。いいなあ。旦那さんは、きっと知らないのだろうなあ。あんなに魅力的なのに。ああ、もったいない」
「でも、胸、小さいですよ」
「大きさなんて、高校生でもあるまいし、関係ありませんよ、先生。肝心なのは、いかに感じるかですよ。あぁ、一度でいいから、抱かせてもらえないかなあ、残念だなあ」
「う〜ん、山崎さん真面目そうですからねえ」
「いや、あの身体だ。一度身体に触れさえできれば、自分から私のムスコを求めてくるようにして見せますよ」
　あまりに自信たっぷりなので驚いてしまいましたが、遠藤氏は、大言壮語をしているつもりでもなさそうな、いたって落ち着いた、真面目な顔です。
　むしろ、妻の淫らさを指摘されたような悔しさと、いらだち、そして、わけのわからない興奮のようなものが絡み合って、私の方が平静でいられません。
「まさか、いくら遠藤さんでも。山崎さん、男性経験少なそうだし。ムリですよ」
　だから、この話題を打ち切るべく、いささか無理矢理後ろを向いて、そこにあるイーゼルをいつもの場所に動かします。
「先生、もし仮に、仮にですよ、山崎さんがプライベートで私のモデルをしてくれたら、先生も協力していただけますか」
「え？」
「実は、これから、頼もうと思っているのですよ。なんだかうまくいきそうなんです」
　にこりと笑う笑顔の奥に、何か底知れないものがあった気がしました。いったいなぜ、そんな風に自信が持てるのでしょう。
　かといって、なぜ、そんなことを私に言うのか、いったい何を協力するのか、なにやら、その先にあるものが怖くて聞けずにいました。
「お願いしたいことがあります」
　つと遠藤氏が私の前に立ちます。品の良い、痩せた身体に何かがみなぎっていて、途方もなく大きく見えました。
　射すくめられたように、私は立ちつくすしかありません。
「その時、先生に隣の部屋から見守っていただきたいのです。最後まで」
「み、見守るって」
「大丈夫。先生のお世話は、優子がいたします」
「お世話？そんな、あの、いったい、何を」
　いったい何を「お世話」されるのか。第一、隣の部屋で見守っていて、妻に何かあるというのでしょうか。
　そもそも、妻が素人の男性にいくら説得されても、モデルをすることなどＯＫするはずもありません。
「先生、絶対に後悔させません」
「いや、あの、私は…」
　遠藤氏の語り口がふと熱を帯びてきた気がします。
「先生、優子が先生をぜひ、ウチへお招きしたいと申しているのです。ぜひ、優子と話だけでもしてやっていただけませんか。これ、この通りです」
　攻め口を変えて、深々と頭を下げられると、私としては、これを断るのは難しくなっていました。
　第一、私は「山崎さん」とは何の関係もないのです。どうこう言う方がヘンでした。
「えっと、あの、まあ、話をするだけなら。でも、山崎さんがなんて言うか」
「あ、ありがとうございます！ありがとう、ありがとう」
　両手をぎゅっとつかむ手には驚くほどの力がこもっています。
「もちろん、先生が隣にいらっしゃることは内密にいたしますので。はい」
　瞳の奥の深い光からは、遠藤氏が何を言いたいのかまったく読み取れませんでした。
「あ、でも、いや、山崎さんがモデルをやるかどうかも…」
「それは、もちろん、これからですが。大丈夫、お任せください。いやあ、良かった〜」
　先日、大学に来て、いつの間にかＯＫを勝ち取ったときのように、いつの間にか、私はＯＫしてしまい、あの時と同じように喜色満面の笑みで感謝されています。
　妻がＯＫするはずもないと思いながら、この遠藤氏の不思議な説得力に「よもや」の危機感を持ったのも事実でした。
　妻のカラダに遠藤氏の手が這い回る。
　それを頭の奥で可視化してしまった瞬間、私の中に、ためらいと不思議な興奮が呼び起こされました。
　不思議な幻視に包まれます。
　あらゆる色彩が、それも、強烈な原色の塊が、周囲をふわふわと浮かびながら、渦を創り上げている。その色彩が織りなすグラデーションの渦は、まがまがしさと淫靡さの匂いで満ちていました。
　その渦の中にいるのは、一匹の魔なのか、それとも、至福の空間なのか。
　遠藤氏の深い色の瞳の奥に、その両方が見えている気がしました。

　妻から、メールが入ったのは、遠藤氏が帰った直後でした。遠藤さん達とお茶を飲んでいるという、素っ気ない連絡でしたが、ドキリとしてしまいます。
　妻が、原色のグラデーションに飲み込まれていく。そんな姿が見えた気がしますが、だからといって、今の私に、それをどうこう言うこともできません。
　まさか、優子さんと話をしてはダメだと言うわけにも行きません。もちろん、妻を信じたい気持ちもあります。
　一方では、遠藤氏の前で、恥じらいながら素肌をさらす妻を見てみたいという欲望が、なぜか、いくら消そうとしても心の中で燃え上がってしまうのです。
　先ほど、妻のカラダを余すことなく遠藤氏に視姦された時のどす黒い興奮がそうさせている気がします。いえ、実は、そんな欲望を昔から持っていた気もしました。
　しかし、私の興奮はそのせいだけではありませんでした。
　目の前に、清美さんがハーフカップのベージュのブラだけの姿で立っているのです。
　すっかり、関係が定着してしまいました。
　妻とは全くタイプが違う若い肉体に、私自身ものめり込んでいたのですが、清美さんにも事情があったのです。
　ご主人に、突然、長期の出張が決まったそうです。
　人事異動ならともかく、出張では、清美さんもついて行くわけにはいきません。知り合いもろくにいない東京の片隅に、一人残されているのです。
　そうなれば、身体だけではなく心までも寂しくなります。
　かといって、東北の雪国で純朴に育った清美さんにとって、テレクラや、その辺でオトコを求めるというのは、抵抗があるはずです。
　セックスの味を覚えている人妻が、肉体と心の寂しさを安全に埋めてくれる相手として、私は絶好の相手だったのでしょう。
　夫に話すのだって、上司の奥さんと通っている絵画教室に行くのですから、堂々たるもののはずです。
　かくして、これで四度目の逢瀬となってしまいました。
　つまり、今週、妻としない日には清美さんと、清美さんとしてない日は妻としてたのですから、最近の私は、まさに、十代の頃を取り戻したかのような性欲でした。
　妻がヌードをさらすことが決まった日から、汲めどもつきぬ性欲が湧きでるかのような状態だったのです。
　こうなってくると、むしろ、ムダ撃ちをしないようにする分だけ、妻の身体も、清美さんの身体も十分に楽しむことができるようになります。
　もちろん、それは、女性の方にも深い満足感を与えることにもつながります。
　だから、私のモノへの愛着も、心身ともに、性を知った若妻としては当然のことだったのかもしれません。
「先生、山崎さんのことずいぶん、お気に入りなんですもの。妬けちゃう」
「え、なんだって」
「もう、先生ったら、はっきりしすぎ」
　清美さんの手の中で私のモノが、ヒクンと動いてしまったのです。
「だって、いつもよりも、すっごくエッチな目で見てるし、こっちだって」
「うっ」
「しってますよぉ、ここ、大きくしてたこと」
　いつの間に清美さんに観察されていたとは。
　確かに、遠藤氏の目にさらされた妻のヌードを見て、いえ、妻が遠藤氏に見られていると思っただけで、私のものが膨張するのを止められなくなったのです。
　立ちつくす私の前に跪くと、清美さんの白い指が私を取り出します。
「ああぁん、もう、妬けちゃう。こんなになっちゃって」
「いや、それは、清美さんの胸のせいで」
　ハーフカップのブラからこぼれ落ちそうな豊かな胸が、すぐ目の下で揺れています。
　思わず、揃えた指先をするりとカップに忍び込ませると清美さんがクスリと笑います。
「あら、お上手だわ、先生ったらぁ、あ！　あうん！」
　柔らかな肉がびっしりと詰まったブラの中で、手の動きに従って、乳房が形を変えていきます。それだけでも、清美さんは感じるようです。
「あぁあん」
　指先が、コリンとしこった乳首をとらえると、早くも、清美さんの声に甘やかなものが混ざります。
「あん、オイタはだめぇ」
　少しも「だめ」そうではない声で、甘い吐息を漏らしながら、プックリとした唇を広げて、私のものをぬぷりと飲み込んでいきます。
「うっ」
　うめくのはこちらの番でした。
　温かく柔らかい唇が私を包み込んで、先端部分にレロレロと舌が使われます。
　負けてはいられません。身をかがめて、ブラの二つのホックを片手で外して、ゆっくりと腕から抜いてしまいます。
　怒張を呑み込んだまま、脱ぐのに協力して、またクスリと笑ってこちらを見上げます。
　秘め事を共有している者同士の、そして、身体をつなげあった者同士の連帯感のようなものが込められている気がしました。
　じゅぼっ、じゅぼっという濡れた音を立てながら、清美さんの唇が動いています。
　柔らかな舌先が、その度に怒張のカリをこすってきます。
　複雑な動きではありませんが、夫との愛情の込もったセックスで身につけたテクニックを私に使っているのかと思うと、なんだか、大きな征服感があります。
　もちろん、一方で、豊かな胸を握るのは、オトコの最も原始的な欲望です。
　力を入れて握りつぶすようにしながら、先端を指先で転がすと、うっとりと目を閉じながら、私に吸い付く力が少し強まります。
「あふ、らめ、ほぐっ」
　ふと思いついて、思い切って私を口から抜くと、一気に清美さんを抱え上げました。
「え？あん」
　清美さんが来るときはモデル台を出すことがいつしか習慣になっていました。ここをベッド代わりにしていたのです。
　それは、まるで観客のいない、セックスショーのような舞台効果を生んだようです。
　清美さんは決して認めませんが、見えない観客の視線を受け止めて興奮しているのがよく分かります。

　今日も、そうやって、決して乱暴にならないように清美さんを台に横たえ、逆しまに清美さんの上に被さっていきます。
「あう、先生、恥ずかしい」
　そう言いながらも、ちゃんと私のしたいことを清美さんは分かってくれるのです。
　いきり立った私のモノは、たちまち清美さんに下から吸い付かれ、呑み込まれ、舌全体で扱かれるのです。
　柔らかな太ももにちょっと力を込めると、恥じらいながらも、そのまま両脚は広がります。
　蜜をたっぷり含んだ美肉が、私の舌を待っていました。

　柔らかな肉が付いた太ももに挟まれたまま、プックリと飛び出したクリトリスを舌先でつつくと、くぐもった清美さんの嬌声が漏れてきます。
　そこだけを舌先でいじめるようにすると、目の前の秘唇がヒクンヒクンとケイレンするのが見えます。
　焦れたように、腰がうごめき始めていました。
　太ももを回り込ませた指先で、秘唇を浅くかき回します。
「はっ、う、う、う、あん！」
　私のものもくわえていることができなくなってしまいます。
　私を乗せたまま、ヒクンと腰を一度大きく突き上げる動作をしたということは、ひょっとすると、早くも軽く達してしまったかもしれません。
　ぐったりと力抜けてしまった清美さんを一度開放します。
　ドサリと、力が抜けた白い太ももが崩れました。一度立ち上がってから、その太ももを抱え込むようにして、正面から、ぐっとのしかかっていきます。
　二人の間で柔らかな膨らみがつぶされます。
　ぐにゃりとした感触が胸にあたります。
　腰だけで、位置を合わせると、清美さん自身が腰をあわせるように私のモノを迎え入れてきます。
「あう、あん」
　一度、ビッショリと濡れそぼった狭いナカに、奥まで届くようにゆっくりと突き入れると短い声が漏れてきます。
　妻にはない感触が心地よくて、合わせた胸をぐりぐりと揉みつぶすようにこすりたてると、清美さんは、苦しがるどころかひどく感じるようです。

　身体を密着させたまま、今度は腰だけをガクガクと高速で動かすと、一突きごとにあん、あん、と可愛い声が漏れ出てきます。
　本人はそれが恥ずかしいのか懸命に手で押さえようとしますが、手を口に当てる度に、わざと奥深くまで突き入れて感じさせ、声を抑えられません。
「あん、あん、いじわる、せんせ、あうん、あん、あん」
「え？何が？」
「あん、あう、もう、わざと、声を、あん、あぁ、そこ、そこ、あん、もっと、ああん」　腰の動きで自由に清美さんの恥ずかしい声がコントロールできるのはオトコとして、これ以上ないほどの楽しい遊びでした。
　しかし、油断はできません。肉厚の美肉が私を締め付けてきます。中までみっちりと軟らかな肉が詰まった清美さんのナカは、限界をたやすく招いていてしまいそうです。
「あん、あん、センセ、あう、センセ、あう、あはぁ、う、ね、センセ、お願い、そこぉ、いやいや、あう、来ちゃいそうなの、もう、あん、そこ、もっとぉ、いや、だめぇ」
　矛盾した叫び声を上げながら、清美さんが無意識に腰をしゃくり上げるように動かし始めました。思わぬ摩擦が生まれて、たちまち私の限界が近づいてしまいます。
「あぁ。だめだ、清美さん。動いたら、出ちゃうよ、そろそろ抜くよ」
「ダメ、ダメ、あう、ぬ、抜いちゃ嫌あ、もうちょっとなの、あううん、だめ」
　清美さんの白い太ももが私の腰に回されます。これでは抜くことができません。
　焦りました。暴発が迫っています。
「あ、清美さん、これじゃ、今、危ない時期なんだろ？もう、危ないんだ、出ちゃうよ」
　実は、私は無精子症と呼ばれる体質です。しかし「無」といいつつ、精子が全くないわけではありません。
　相手はこんなに若く、夫婦間のセックスでさんざんに開発された若妻なのです。
　危ない時期に、こんな風に奥深く、子宮のナカにまで届きそうな奥で出せば、あるいはと言うこともあります。
「いいから、いいのっ。このまま。ああん、嫌、今抜かれたら、いや！あうう、お願い、センセ、お願い、このまま出してぇ、あう、い、逝っちゃいそうなの、あふぅ」
　情けないことですが、清美さんの脚に抱え込まれたまま、腰まで使われると、いくら押さえようとしても、背中を危険な感覚が登ってきてしまいます。
　もはや我慢ができそうにありませんでした。
「清美さん、このままだと、出しちゃうから」
「あう、もう、いいから、出していいから、ううん、お願いこのまま、一緒にナカで逝ってぇ、あう、う、う、う、う、いくう！」
　若さゆえに窮屈で、ぴっちりと私を包み込んでくる柔肉がヒクンヒクンと、立て続けにものすごい締め付けをしてきました。
　もはや、私も、限界でした。
「出すよ」
　それでも、最後の確認に、そう短く言った瞬間、背中をつらぬく衝撃が、私の頭に届いたのです。
「あう、センセイ。あう、いい、いいの、あ、また、あう、あう、出てる、センセイのがぁ〜　ああん、またぁ」
　私の胸の下で髪を振り乱しながら、身体を痙攣させて仰け反ります。
　それを見下ろしながら、ぎゅっと、清美さんの腕と脚に締め付けられて、人妻の子宮の中に、白い毒液を放出し続けたのです、
　
「清美さん、本当に大丈夫だったの？いくら、僕のが薄くっても、絶対にあたらないってわけじゃないんだよ」
　そうなのです。よほど条件がそろわない限り、私の精液には女性を妊娠させるほどの力はありません。しかし、絶対ではないのです。
　そのことは、清美さんとの身体の関係ができた時に、真っ先に話したはずでした。
「へへ、タブン、大丈夫ですよ」
「そうなの？」
「ええ、今日は蠍座のラッキーデーなんですから」
「は？星占いを信じて中に出して…」
「あ、やだ、本気にしてるぅ〜　先生ったらあ。私は、夏の子。七月十日生まれの蟹座ですよ。もう〜　お誕生日にごちそうしてくれる約束だったじゃないですかあ〜」
　軽く背中をつねられても、なんだか、よく分かりません。
　確かに、そんな話を聞いた記憶もありますが、このところ、肉の洪水に溺れるようにして、妻と全く違う清美さんの肉に浸っていたせいか、すっかり忘れていました。
　困った顔の私に、チュッとキスをしてから清美さんが首をすくめて見せます。
「あのですね、カレが今度の週末、帰って来るんです。その時にしちゃいますから。大丈夫」
「おい、それって」
「大丈夫ですよ。私、先生を困らせる気なんて全くありませんから。ちゃんとカレを大事にしてますもの」
「しかし、ねえ」
「それに、ね、先生」
　ヒミツめかした表情があどけない顔に浮かぶと、まるで女子高生と話しているような錯覚をします。いえ、今時こんな純朴な「女子高生」などいないかもしれません。
　もちろん、ダイタンな話の内容とオトコをナカに入れたままだ、というシチュエーションを抜きにすれば、の話ですが。
　そんな清美さんが、口ごもります。
「えっと、ちょっと恥ずかしいな」
「言いかけないで、ちゃんと言ってよ」
「あの、ですね。あのぉ、あの時ぃ、えっと…」
　突然、ギュッと首にしがみついて耳元に唇が寄せられます。
「ホント気持ち良くて、抜かれたらオカシクなっちゃうと思ったんです。もう、ぜったいに、このまんまって…」
　チュッと耳へのキスがひどく扇情的に感じます。
「スキ。ホントですよ。カレの次に、スキになってしまったの。だから、いっぱい、欲しかったの。先生のが」
　潤んだ瞳は、けっして、まだ入ったままの私のモノに感じているせいではありません。
　この瞳は…　いえ、なにも自信過剰なわけではないのですが、しかし、この熱い瞳は、紛れもなく恋する瞳でした。
「だから、どうなっていいから、もっとしてください。先生」
　下から私の唇に吸い付いてきます。
　誘うように、舌を少しだけ入れて、私の舌に絡みつかせながら、しきりに、自分の口の中に誘ってきます。
　もちろん、若妻の甘い口の中に舌を入れるのは、それも、こうやって上から、押さえつけるようにして、口の中を蹂躙するのはオトコの征服欲をそそられて、大好きです。
　長いキスでした。
　舌を吸い、吸われ、絡みつかせているウチに、私の唾液が容赦なく清美さんの甘い口の中に注ぎ込まれます。
　それを、ねっとりとした舌遣いのまま、コク、コクッと飲み込み、あまつさえ、何度となく「おいしい」と声を上げるのです。
　もちろん、オトコへの自然な媚態かもしれません。
　しかし、いかにも陶然とした顔で、何度も訴えられれば、私のオトコも反応しないではいられません。
　清美さんの肉は、多少私が軟らかくなってもオトコをそのまま包み込んでいます。
　嬌声をずっと上げていたせいで、少しハスキーヴォイスになった清美さんが、もう何度目になったか分からない言葉を囁いてきます。
「先生、おいしい、もっと。あぁ、先生、もっと、いっぱい、ください」
　その瞬間、清美さんの美肉が確かに、ザワザワとうごめいたのです。
　一瞬ぎょっとしました。清美さんのナカに、別の生き物がいるような、そんな動き。
　肉ヒダ一つずつが別々の方向にザワザワとうごめく。
　これは、ひょっとして、話に聞くミミズ千匹というヤツでしょうか？
　元気になりつつあった怒張は、不思議な気持ちよさで、あっという間に、再び逞しい姿を取り戻してしまいました。
　もちろん、それはすぐに清美さんに伝わります。
　早くも迎え入れる腰をうごめかしながら、私を確かめるようにヒクヒクと締め付けてきます。相変わらず、ヒダ一つ一つが動いているようでした。
　清美さん自身は気がつかないのでしょうか？　
「先生、ああ、もう、あう、ホント、スキです、あぁ、もっと、あう、メチャメチャにしてぇ。先生、もっと、あう、好きなように、ああん、して、してぇ、あう」
　その姿があまりにも可愛らしく感じられて、年甲斐もなく、我を忘れて、清美さんの豊かな胸をギュウッと握りしめてしまいました。
「あう！っくぅ」
「あ、ごめん、痛かった？　ごめん、力がはいっちゃって」
「ううん、良いんです。もっと、して、先生の気の済むように、あぁ、こんな感じ、初めて、あん、なんか、ヘンなのぉ」
　痛みに眉をしかめながら、瞳がうるうると潤み、私を迎え入れているそこには、一瞬のうちにどっと蜜があふれていました。
　そのうえ、これだけ、ビショビショになりながら、締め付けてくる力はさっきよりも強くなっています。
　偶然の産物ながら、清美さんの、あたらしいセックスを開花させてしまったのかもしれません。
「あん、センセ、あん、いやあ、だめ、あん、そこ、あん、あん、きちゃう、もっとぉ」
　清美さんは、懸命に爪を立てないようにしながら、私の背中にギュッと掴まってきます。また、達してしまっているのでしょう。
　どこもかしこも柔らかで、そのくせ、肉がびっしりと詰まっている若妻の身体にオトコを使いながら、大きな快楽の予感を感じていたのです。