第９章　陥落

　遠藤氏は、少しも焦りませんでした。
　ゆっくりと、尻の谷間に差し込んだ指を外側に掃くような仕草で撫で広げます。
　ときおり、指先が妻の尻孔にでも触れるのか、指の間から、あぁという低い声を漏らしながら、わずかに尻が逃げるようにヒクリと震えます。
　その度に、妻の尻は、元の位置に戻ろうと動きますが、その動きは次第次第に大きくなり、いつしか、背中を反らして尻だけを高く掲げる姿勢になっていました。
　遠藤氏は、怒張を屹立させながらも、素知らぬ顔でその手触りを楽しんでいるように見えました。
　それどころか、夫だけしか知らぬ人妻の尻の匂いを嗅ぐように顔を近づけていました。
　途方もなく長く繰り返される動きに、危うく暴発しそうになったのは、私の方でした。
「優子さん、ちょ、ちょっと、待って…」
　優子さんの手は、さっきから、ずっと、足の付け根を撫でていましたが、妻が尻を撫でられるのに合わせるように、その動きが変わっていたのです。
　爪の腹が、ツツッと、私の幹を撫で上げてきます。
　たったそれだけのことでしたが、相も変わらず、左手で付け根をやさしく撫でられていました。
　どのまま、はち切れそうになった怒張を爪で刺激されることになったのです。
　妻のヒクヒクと震える尻を見ているだけで、いえ、その尻に、今にも遠藤氏の凶暴な怒張が突き立てられることを想像するだけで限界でした。
「ふふ、先生、ね、私に、これ、くださるかしら」
「あぁ」　
　恥ずかしくも、初めて男の手に嬲られる小娘のような声を出してしまいました。優子さんの指先が、怒張の付け根の部分をそっとつかんだのです。
　天国でした。
　付け根に指が添えられただけなのに、腰に途方もなく甘美な電流が流れてきます。
　しかし、その甘美な快楽は、流れてくれば流れただけ、もっと大きな快楽が欲しくなる、無間地獄への入り口でもあったのです。
　今にも暴発寸前だったはず私なのに、いつのまにか、射精までの距離に空虚な道のりが存在していました。
「優子さん、それ」
「センセ、ね、これ、いただいちゃっていいのかしら」
　入念に化粧を施して、パッチリとした瞳が、いささかいじわるな光を帯びて下から覗き込んできます。
　柔らかな指先だけで、幹の部分を微妙なタッチで支えます。　
　その微妙な感触は、格別の極楽と地獄を見せてきます。
「あぁ、それ、優子さん」
　情けない声を出して、おねだりしていました。
　しかし、優子さんは、その微妙なタッチを変えないまま見上げます。
「あら、でも、センセばっかりじゃ、山崎さん、可哀想でしょ。センセ以上に、燃えてるのに」
　もはや、私は、どうしようもない掻痒感を何とかしたい一心でした。
　ホンのあと、一回か二回、ギュッとこすってほしい。それしか頭になかったのです。
「センセ、奥さんをご覧になって」
　暴発したがっている私の切なさとつながっているように、目の前にある妻の白い尻が、うねうねとうごめいていました。
「奥さん、身体をこっちに向けましょう。そう、ほら、顔も上げて」
　覆っていた手を床に着いて、妻の状態が持ち上がりました。その姿勢のまま、尻に当てられた手に唯々諾々と従うようにして、妻の尻がこちらに向けられます。
　妻の真っ直ぐな背中が、ねじれる動きをすると、うっすらとした汗が反射します。
「奥さん、びっしょりですよ」
「いやぁ」
「ほら、奥さんも見てご覧なさい」
「いや、いや、許して」
「奥さんが見ないなら、私の手で、グッと広げてしまいますよ、それとも、旦那さんの指しか知らない奥さんのここに」
　介添えするように脇に膝立ちした遠藤氏が、指を妻の秘唇の外側にそっと這わせます。
「あぁ！」
　短い声を妻が放ちます。
　脇から手を伸ばす姿は、まるで、その指遣いを私に見せつけるためのようでした。
「入れちゃって良いんですかあ、奥さんのここ」
「あぁ、だめ、あう、そこは」
　妻は、懸命に顔を振り立てますが、ダメと言いながら、妻はちっとも逃げようとしません。むしろ、ごく自然な姿で、白い尻を突き出したようにも見えました。
「なら、ほら、ご自分の姿を見ましょうよ」
「ああ、許して」
「見ないなら。入れちゃいますよ」
　こんなにもヌラヌラと濡れ過ぎた秘所を、これほどまで露わに見たのは初めてでした。
　びしょ濡れの秘唇の外側をゆっくりとなぞる指先に、反り返った妻の白い背中がビクビクと痙攣します。
「いいんですか、旦那さんしか入れちゃいけないんでしょ？」
「あう、ダメなの、いれないでぇ」
「それなら、ほら、自分のを見るだけでいいんですよ。ほら、そのまま、ちょっと覗くだけですよ。そう、そのまま、鏡を、ね」
　膝立ちした尻がクリンと高々と掲げられ、腕で支えた上体との間を、背中が大きく逆アーチを描いて反り返っています。
　妻の首が恐る恐る下を向き、股間越しに、鏡を覗く姿勢になります。
　鏡のこちらでは、妻の股間を見上げるように私は寝そべっています。
　これ以上ないほど硬くしこった怒張をそっと包み込んでいる優子さんの手に、天国を味わいながら、遠藤氏の指にたどられる、妻の濡れそぼった秘所を見上げているのです。
　その私の目に、妻の顔が股間から覗きました。
　鏡に向かって尻を突き出したまま、顔だけを股間から覗き込ませると、ゆっくりと目が開きます。
「ああ！」
　私の視線と、妻の視線は、完全に一致していました。
　しかし、妻は、鏡に映る濡れそぼった自分の秘唇を見ているのです。
「紀美…」
　私の目を覗き込む妻の瞳は、逆さになったままでも分かるほど潤んでいました。発情したメスの視線を、私は見ていたのです。
「そうですよ、ほら、ダメ、目をつぶっちゃ。そう、そう、そうですよ。ほら、どうです。奥さん、濡れてるでしょ。綺麗ですね」
「いやいや、いやあ、おっしゃらないで」
　明るさが自慢の真面目な妻の姿は、ひとかけらも存在しませんでした。
　まぶしすぎるほどのライトに、陰一つ無く晒したままの秘部を、男の手に委ねきったメスの姿なのです。
　それは、オトコに、それも夫以外のオトコに媚びる、いやらしく発情したメス以外の何者でもありません。
「ダメですよ。ちゃんと見ないと、ほら、こんなになって」
　ゆっくりと、秘唇の外側を指がたどります。わずかに離れる指は糸を引いていました。
「あぁ、お願い、お許しになって」
「ここ、広げちゃいましょう。ね、ほら、ほうら、すごい、糸を引いてますよ」
「ああん、あう、あぁ、お願い、あう」
　腰がヒクヒクと突き上げる動きをします。それは、指から逃げるのではなく、むしろ、その指を突き立てて欲しいと言っているかのようでした。
「ね、センセ、そろそろ、逝きたい？　センセ、出して欲しいでしょ、でも、センセ、奥さんもよ。一緒に逝かせても良いのかしら」
　とっくに限界でした。
　紀美のことを「奥さん」といつから呼ばれていたのか、気にする余裕もなく、私はガクガクと頭を振っていたのです。
　その瞬間、私の横に座っていた優子さんは、一瞬、右手を怒張から離して、一度だけ強く、ドン、とガラスを叩いたのです。
　その音がわずかに伝わったのか、一瞬、妻の尻がヒクンと逃げたような気がします。
　遠藤氏の手がにわかに、生き生きと動くようになった気がします。
「奥さん、ほら、ダメですよ、見てないと、見てないと、あっちこっち、触っちゃいますよ。良いんですかあ、ここに指を入れて」
「あぁ、あう、ダメ、指、あう！入れないで、ああん、お許しを…」
　遠藤氏の指は、妻の美肉の入り口を、わずかに侵入する動きだけで、完全に妻をコントロールしていました。
　イヤと言いながら、妻は、その指を入れて欲しそうに、腰をますます突き出してくるのです。
「ほら、ちゃんと見ないと、ここ、入れちゃいますからね。ほら、奥さん見て」
　妻の目が再び開けられましたが、もはや、視点が定まっているようには見えません。
「そうですよ。あれ、奥さんますますぐしょぐしょですね」
「あぁ、言わないで」
「さてと、そろそろ、他の場所も」
「いやあ、お願いぃ、ああ！いやっ！」
　遠藤氏の手が、秘所からどけられた瞬間、確かに妻は、イヤと言ったのです。
「あれ、ここ、奥さん、お気に召していましたか？」
「あぁ、違うのぉ。あぁ、だめぇ、お願い、許して、ああ、あう」
　突き上げた腰がクナクナと左右に振られました。男を誘う動きでした。
　アーバンピンクの肉がさらけ出され、明るいライトを乱反射します。
「触りますか？」
「ああ、い、いやあ、でも、あう、ああ、どうすれば、あう、く、苦しくて」
　遠藤氏のテクニックに身を焦がしながらも、健気に耐える妻が、可哀想に感じていました。それは同時に、私自身の、届かせてもらえぬ射精感と、シンクロしていたのです。
「じゃあ、楽にしてあげましょうか？」
　とうとう、妻が、がっくりと、首を折った瞬間、妻の何かが奪われた気がしました。
　ひどく寂しく感じたのです。
『私以外のオトコに逝かされるのを、紀美は承知してしまった』
　同時に、ねっとりと怒張に絡みついた優子さんの唇が、私の射精を許してくれた気がして、ホッとしていたのかもしれません。
　寂しさと嬉しさと、そして、考えたこともないような興奮。
「ほら、奥さん、逝っちゃって良いですよ」
「ああう、あぁ、そんな」
「クリトリス、触りますよ」
「あぁ、言わないで」
「ちゃんと、ほら、ちゃんと言わないと。触ってって。ほら、早く言って」
「あぁ、いじめないで、ああ、もう、我慢が、あ、あう、ごめんなさい、あぁ！お願い！触って、お願い、触って！あぁ！いやあ〜あ、あ、あう、あう、だめぇ、あうう！」
　妻の言葉と同時に遠藤氏の指がクリトリスに猛烈な振動を加えていました。
　明るいライトに秘部の奥までさらしながら、遠藤氏の指に、妻は逝ってしまったのです。自らおねだりして…
　妻のヒクヒクと打ち振られる尻を見ながら、私もまた、優子さんの温かな喉の奥深く、射精していました。
　それは、腰の奥からズルズルと何かが引っ張り出されるような、いつまでも続く、経験したこともない射精でした。

　ドクドクと優子さんの喉に注ぎ込み終わって真っ先に考えたのは、妻のことでした。
　逝かされる、その最後の瞬間に、「ごめんなさい」と叫んだのは、私へのせめてもの気持ちだったのかと、妻への愛しさが募りました。
　一方で、それでも、逝かされることを望んでしまった、オンナの身の哀しさに、唖然としていたのも確かです。
　何よりも、妻自身が、呆然としていたに違いありません。
　だから、オーガズムに達した直後の、忘我の境地のまま、鏡と平行にされ、再び仰向けに寝かされても、抵抗などするはずもありません。
　ぐったりした妻は、目を閉じたまま、なすがまま…　
　いえ、寝かされる瞬間、そっと、遠藤氏の背中に右手が当てられたのが見えたのです。
　その手は、身体を自由にした者に対する愛情の表れ、いえ、快楽を与えてくれた支配者への媚びのような気がしました。
　仰向けになった妻の乳房は、肉が流れ、微乳が、さらに小さく見えていました。
　もちろん、子供を産んだことのない妻の乳房は、まだ、張りを残しています。
　その張りのある小さな膨らみの中心で、乳首だけがポッチリと突き出しているのです。
　乳首が敏感な妻にとって、そこに触れられずにセックスした経験などありません。まして、乳首の性感抜きにオーガズムを感じたことなどないのです。
　さっきのオーガズムが不本意だと言わんばかりに、乳首は立っていました。
「さあ、次は、こっちを確かめましょうね」
　微乳の周りをそっと撫でながら、乳首はさりげなく避けて遠藤氏の手が這い回ります。
「ほら、良いですね」
　ソファに座った私の前に跪いた優子さんの目の前で、私の怒張は少しも小さくなりませんでした。

　その怒張にそえられた優子さんの手を意識するより、妻の一言、わずかな身じろぎすら見逃すまいと、意識が集中していたのです。
「奥さん、ほら、ここ、触っても良いですねぇ？」
　まとわりつくような遠藤氏の声に、妻が、とうとう、白い頤をコクリと動かしてしまったのです。
　まぶしさを防ぐような仕草で、妻の右手が、両目の上にあてられました。
　私には、その姿が、これから自分がさらす恥じらいを妻が自覚しているかのように感じました。
　枯れた指先が、妻のピンク色の乳首をクリクリと捻る動きをした瞬間でした。
「あ！あ！ああ！」
　短い声を立て続けに放って、贅肉一つ無い背中が、ブリッジを作ります。
　その妻のケイレンをじっと見極めるように遠藤氏の両手が静かにどかされました。
　さっき、指先でクリクリと弄られた乳首は、ツンと尖りきって、その存在を主張していました。
　妻は、さっきの一撃で、また逝ってしまったに違いありません。
　それどころか、あれほど強い反応は、私とのセックスの時ですら無かった気がします。
　ぐったりと妻の身体が伸びてしまいました。
　両目を覆って載せられていた右手は、すでに、持ち上げる力もないように、頭の横に伸ばされています。
　パールピンクのリップを引いた唇がわずかに開き、荒い息が漏れる以外、まるで、眠り込んでしまったかのようなつかの間の静寂でした。
　しかし、その休息は、長く与えられることはありませんでした。
　再び、遠藤氏の右手が、妻の股間に伸ばされます
　枯れた指先が、サワサワと茂みを這い回ると、あん、あん、という可愛らしい声を押さえることができないようです。
　今日まで、いえ、ついさっきまでです。
　妻がこの遠藤邸に来るまで、妻の、このかわいらしい声は、夫である私が独占していたのです。しかし、今、その声を、遠藤氏の指先が自由に引き出しているのです。
「あん、あう、あん」
　再び脚が広がり始めていました。
「う〜ん、おかげさまで、奥さんの身体がだいぶ分かってきました、芸術のために、もうすこし我慢してくださいね」
　妻は、ぎくっとしたように一瞬身体をこわばらせます。
「大丈夫。もう少しで奥さんの美しいからだが懸けるようになります。夫以外の男性に触られるのは、奥さんもお嫌でしょうが、もう少し頑張りましょう」
　クナクナと妻の顔が弱々しく横に振られます。
「妻も、よく、感じてしまうのですよ。奥さんも感じて当たり前ですからね、全然おかしくない。どうせ、誰にも分からないことです、奥さんも楽しんでくれないと」
「そ、そんな…」
　謹厳な顔のまま遠藤氏は、そう言い放ちます。
　おそらく、妻は、言われて、初めて思い出したはずなのです。
　今、自分が夫以外の男性に触れられているのは、愛撫なんかではなく、芸術の為なのだと。
　芸術のために触られていたはずなのに、ついさっきオンナの最も恥ずかしい瞬間までもさらしてしまったのだと。
　遠藤氏の言葉に、妻は、壊れかけた羞恥心を取り戻したかのようでした。
　しかし、妻の身体は逃げることができませんでした。
「あぁ、もう！」
　顔を両手で覆いながら、嗚咽のような声が、わずかに漏れてきます。
　その姿は、恥ずかしい瞬間をさらしてしまった後悔に襲われているように見えます。
　そのくせ広がり始めた両脚は、閉じることもできません。それどころか、再び両脚の間に座り込んでくる遠藤氏の気配に、さらに広げられてしまうのです。
　遠藤氏の両手は、忙しく、妻の脇腹から、微乳の裾野まで動き回り続けています。
　妻の膝がわずかに持ち上がり、さらに広がっていました。その動きに誘われるかのように遠藤氏がじりじりと妻によって行きます。
　さっきから、遠藤氏の股間では「役に立たない」と言っていたはずの怒張が、凶暴な姿で隆とそびえ立っています。
　近づいた遠藤氏の怒張が、膝を立てるようにして広げられた妻の太ももに一瞬隠れました。
「あう！」
　わずかに、遠藤氏が腰を進めた瞬間、妻が仰け反りました。
『紀美！』
　思わず、腰を浮かせてしまいます。
『とうとう紀美が犯されてしまった』
　絶望的な思いと、甘美な何者かが交錯していました。
「そばで見てご覧なさい」
　優子さんに手を引かれ、鏡に顔をくっつけるようにして覗き込みました。
　ガラス一枚隔てた向こう。
　手を伸ばせ届く距離に、妻はいます。
　一糸まとわぬまま、脚を大きく広げきった姿で。
　その全てを自由にできる場所にいるオトコは、私ではないのです。　
　遠藤氏の硬くなった怒張が妻の股間に押しつけられ、先端がにょっきりと二人の間に飛び出しています。まるで、秘唇から生えたようでした。
　美樹が秘唇に押し当てられるこの角度なら、ナカに侵入することは不可能です。
　ホッとしていながら、それでいて、なんともガッカリしたような気もしますが、私だけしか知らない妻の秘唇に、オトコのモノがくっついているのは確かなのです。
『感じてる』
　くっつけた瞬間、確かに妻はうめき声を漏らしました。あれは、紛れもなくメスの声です。
　いえ、声だけではありません。

　身もだえするようにして、妻が僅かに腰を捻っています。まるで、秘唇をこすりつけているように。
　遠藤氏は、さっきまでと全く変わらない謹厳な顔のまま、あいかわらずソフトなタッチで、ひしゃげた乳房の裾野から先端のすぐそばまで指先を滑らせています。
　変わったことと言えば、撫で上げるときに、手のひらまで使って、脇腹も、腋下も、胸の谷間も、十分に擦過していることです。
　揃えた指先が、先端分のすぐ側までやって来ます。妻のカラダに期待が満ちているのか、身体が硬直します。
　無意識のうちに、乳首を触られる快感を、身体が期待してしまっているのでしょう。
　しかし、その期待はいつまでも満たされません。
　その度に焦れたように、腰が、ヒクンと動くのです。
　その瞬間、いつの間にか最大限に膨張していた私の怒張が、生暖かい場所にヌルリと取りこまれました。
「うっ」
　優子さんの甘い香りが股間から漂います。
　舌が、それ自身、生き物のように私の怒張に絡みついてきます。
　舌先でも、舌全体でも、カリを舐め上げ、全体にまとわりつき、時には先端部分にチロチロと。
　ジュボジュボといやらしい音を立てて、唇が幹を這い回り、深く含んでは、吸い込み、喉の奥にあたる感触までします。
　腰全体から力が吸い取られてしまいそうな、そんな気がするほどねっとりとしたフェラでした。
　私は早くも、再び、甘美な崩壊を迎えそうでした。
　懸命に、耐えます。
　耐えているのは私だけではありませんでした。
　妻もまた、懸命に耐えているのです。
　目を閉じている妻にとっては、きっと、永劫に続くかと思われるほどの間、先端部分を避けながら、サワサワと刺激され続けていたのです。
　ここから見ても、乳首が、硬くしこりきっているのが見えます。
　ついさっき感じた、甘美な瞬間を身体は記憶しているはずでした。
　おそらく、私になら、恥ずかしがり屋の妻であっても、とっくに要求してたであろう言葉も、おっと以外のオトコになど、羞恥から言えるはずもありません。
　なんと言っても、今は、愛撫されているのではなく、芸術のために耐えているはずなのです。
　それをついさっき、思い出させられていました。
　芸術家の卵だった妻にとって、ここで乱れてしまうのは、夫である私に対してのみでなく、芸術に対する冒涜であると感じるに違いないのです。
　しかし、これまでの夫婦生活で、それも、このところ急速に発達してきたカラダの中に芽生えている快感への欲求は、いつまでも押さえられるはずもありませんでした。
　何よりも、ついさっき、これ以上ないほど甘美な瞬間を迎えたばかりの身体でした。
　時々伸ばされる手が、再び鼠頸部に伸ばされ、手刀のカタチにした手を、付け根のラインに沿って、柔らかにこすってくると、とうとう、こらえきれなくなったようでした。
「あぁ、もう、やめてぇ」
　顔を覆った腕の下から、悲鳴のような声がしたかと思うと、ヒクン、ヒクンと腰が上下します。
「ああぁ」
　秘唇を遠藤氏の怒張にこすりつけながら、ホッとしたような、それでいて物足りないような、初めて聞く、もの悲しげな淫声でした。
「どうしましたか」
「ああ、く、苦しくて…」
「それはいけません、ところで、奥様、腰がだいぶ」
「え、あ、いやあ〜」
「イヤと言われても、動いているのは奥様ですから」
　妻は、自ら腰を、いえ、秘唇を怒張にこすりつける動きをしていることを教えられて、羞恥に顔を振り立てます。
「いやあ！いや、いや、だめなの、ああ、なんで、こんな」
　イヤと繰り返しながら、妻の手は遠藤氏を押しのけようともしません。むしろ、腰の動きが、大きくなった気がしました。
「あれ、これ、ダメですか」
　そう言いながら、遠藤氏が腰を引きます。
「ああ！いやあ！え？あ、あう、どうして、あう」
　秘唇にあてられていた怒張を恋い慕うように腰を大きくしゃくり上げます。
　夫以外のオトコの怒張がどけられて恥ずかしい声を出してしまう自分を恥じらったのでしょうか。妻はクナクナと顔を振ります。
　そのくせ、秘唇へくっつけられていた怒張の感触は、私が開発した妻の肉体を、もはや、無くてはいられないほどせっぱ詰まった状態に追い込んでいたのです。
「あれ、奥様、ひょっとして、これ、ここにあたっていた方が良かったのですか」
　懸命に首を横に振ります。
「じゃあ、外しましょうね」
「ああ！あうぅ、あぁ、許して」
「じゃあ、これ、くっつけて良いですか」
「恥ずかしい」
　そのくせ、怒張にこすりつけるように、妻の腰はちっともじっとしていられません。
「ほら奥さん、手を貸してください、そうこっち。ほら、早く」
　おずおずと差し出された右手をグッとつかむと、妻の秘唇から生えているようにそびえ立つ、怒張にくっつけます。
「奥さんがエッチな声を出すから、こんなになっちゃいましたよ」
「あ！いやあ、手を、そんな」
「ほら、ちゃんと触って、どうなっているのか確かめないと」
　もちろん、妻がいくら真面目だとは言え、私が何年も掛けて、処女から仕込んだのです。手を伸ばした先に何があるのか分かっていたはずです。
　ですから、手を出した時点で、どうなるのか心に決めていたのでしょう。
　器用な妻の指先が、言われるがままに、夫以外の怒張をやさしく触り始めたのです。
「そうですよ、ほら、奥さん、これどうですか」
「恥ずかしくて。あぁ、お願いします、もう、許して、ああ！堪忍して」
　啼き声を吹きこぼしながらも、妻の指先はやわやわと、凶暴な怒張の先端をやわやわと触り続けていました。
「奥さん、どうです、これ」
　重ねて尋ねる遠藤氏に、妻は、怖いと言って、寒さに震えるように肩を震わせます。
「あう、ああ、だめぇ」
　急にうろたえた声を出す妻に、身を乗り出してみると、押しつけられていた怒張が、わずかに引かれていました。
　しかし、妻の細い指は、相変わらず遠藤氏の黒々とした怒張の亀頭をそっとつかんでいました。
　妻が私以外のペ○スを、そのしなやかな指先で愛しげにつかんでいるのです。
「奥さん」
「あう、は、はい」
「この体勢は私も苦しいので、いっそのこと」
　遠藤氏の手が乳首をサッとかすめます。
「あう！」
「入れちゃいましょうか」
「あうう、だめぇ、あう、入れ、ちゃ、あああ、あう」
　クリクリと乳首を攻められながら、妻の身体が幾度もケイレンします。
「ほら、奥さん、これ、入れちゃいましょうよ」
「あう、あう！あぁ、ダメ、それだけは。お許しになって、あう」
「じゃあ、くっつけるだけなら良いでしょ」
「ああん、くっつける、だけ？」
「そう、今みたいにね、でも、この体勢は苦しいから、先っちょをね」
「ダメ、先は、だめぇ。入ってしまうもの」
　さすがに、処女の小娘を騙すようにはいきません。先端を許せば、濡れそぼった柔らかい秘唇を貫かれることなど容易いことであるのも、ちゃんと承知しています。
　そのくせ、秘唇にくっついた怒張の感触を離すまいとするかのように、腰がうねうねと動き続けているのです。
「じゃあ、奥さんが、持っていればいい」
「え？」
「先をくっつけるときに、今みたいに奥さんが手で持てば、大丈夫でしょ。奥さんがこのままチ○チ○を握ってくっつけてください。許せるくらいで良いですからね」
「そんな、でき、あう、ない」
「じゃあ、入れちゃいますよ」
「ダメ、あう」
「じゃあ、ほら、ちゃんとあてて、早く、そうしないと、このまま入れちゃいますよ」
「だめえ、それは、お願い」
「奥さんだって苦しいでしょ。ほら、大丈夫、奥さんが握っていれば、入ったりしないでしょ、ほら、早く」
　なんと、妻自ら、先端部分をあてさせる。つまりは、挿入の一歩手前にさせる気なのです。
　まさか、いくら何でも、妻が協力するはずないと思いました。
　しかし、妻がじっとしていたのは、一瞬でした。
「早く！」
　いくぶん叱りつけるような強い言葉に、妻の右手がグッと動かし、指先が幹に絡みます。
　妻の右手が動いた瞬間、悲鳴のような嬌声が、部屋に響いたのです。