またいつもの一週間が始まった。

「ねぇねぇマイ、最近中崎課長ちょっと明るくなったと思わない？」
　いつもの仕事中、こっそり耳打ちするように隣の席の同僚エミが話しかけてきた。
「えっ、そ、そうかな？」
「だってね、あんなに笑顔で契約を喜ぶような人じゃなかったし、さ」
　言われて見ると、中崎は部下と一緒に契約書をチェックしながら嬉しそうに笑っていた。
　マイの心がうずく。
（やっぱりあたし、中崎さんが好きだ・・・）
　そしてあの日の夜のことを思い出していた。

-----残業後の思わぬ情事の後。
　中崎はマイを気持ちよくさせるだけさせて、何も言わずに背中を向けた。
「ま、待って、待ってくださっ・・・な、中崎さぁんっ！」
　快楽の余韻に浸ったままでまだ動くこともままならないマイはどこか舌足らずの口調で叫んだ。
　言いたいことはたくさんあるのにマイはうまく話すことができない。
　口を開いたのは中崎だった。
「リストおつかれさま。戸締りよろしくな、須藤さん」
　中崎は振り返らずに冷たい口調で言い放った。
　マイは何も言い返せずにドアを出て行く中崎の後ろ姿を見送った。
（じゃあどうして、どうして中崎さん・・・どうしてあんなこと・・・！）
　マイはわけがわからず恥ずかしい姿のままでひとり、残された事務所で呆然とするしかなかった。

　そんなふうに冷たくされても、マイはやはりあのときの中崎の指が忘れられなかった。
　思い出すとところかまわず体が熱くなってしまう。
　またいじめてほしい、また熱くしてほしい、またあの舌で・・・
　仕事中だというのにまた中崎の愛撫を思い出しては身体をうずかせているのだった。

「須藤さん、ちょっと」
　急にマイは中崎に呼ばれはっとした。
「は、ハイ」そう言ってマイは立ち上がり中崎のデスクへ近づく。
　近づくにつれて中崎のいつもの香水の匂いを強く感じ取れるようになる。
　中崎のデスクを見るとどうしてもあの夜のことを思い出してしまう。

（やだもーダメダメ、仕事中なんだから！）

　雑念を追い払うように頭を振り、「仕事の顔」をしている中崎の横に立つ。すると中崎が立ち上がり、自分の椅子に座るように促してくるではないか。マイはまた体が疼き始めた。
「悪いんだけどここ座って。これ、ちょっと教えてほしいんだ。こないだ君が作ってくれたリストのことなんだけど」
「は・・・い、わかりました」
　はやる気持ちを抑えて抑えて、マイは何食わぬ顔で中崎の椅子に座る。「あの椅子」に。そして中崎のパソコンをたたき始めた。

「ここなんだけどね・・・」
　そう言って横に立っていた中崎が前かがみになったと同時に、その指をマイのスカートの中に忍び込ませてきた。
「！！！」
「・・・声出したら周りに聴こえるよ」
　マイだけに聞こえる小さな声でそう言いながら中崎の指がどんどん押し入ってくる。
　マイはもうそれだけで熱く濡れてくるのがわかった。

「そうそう、須藤さんがここをどういう意図で作ったか教えてほしくてね・・・」
　普通に仕事しているように見えて、中崎は指をどんどん侵入させてマイのパンティの上からクリトリスを探し出していた。
「っ・・・・！！！・・・は、ハイえっとあの、ここは・・・」
「あぁそうだったのか。・・・普通に仕事してる顔をしていないと、周りにばれるよ」
　また小さい声で中崎がマイにささやく。
　中崎の指はパンティの上をゆっくりと行き来している。しめっているのがわかる。
（あぁ、やだ、あたし、もぉ・・・・ダメぇ）
　マイは感じ始めた身体を抑えようという気持ちともっと感じたいという気持ちの狭間で葛藤していた。

　中崎のデスクは窓際の端に位置していて、その前に二列になって並んでいる部下のデスクとは少し離れている。
　デスクも部下のものより大きい。しかもデスクの上に積まれている書類や棚類も多く、今マイが座っている中崎のデスクの空間は完全にみんなからは死角になっているのだ。

（だからって、だからってこんなとこで、や、あぁ・・・気持ちい・・・）

　すぐに見つかりそうな距離にみんながいることも、我慢しないとばれてしまうという意識をおこし余計に感覚をとぎすませてしまう。
　もうマイはほとんど話せなくなっていた。
　スカートはすっかりパンティが見えるところまでまくりあげられてしまっている。
　そこを中崎の指がくるくるくるくると動く。
　さらさらとパンティの上を行き来していた指が、とうとう中に入り込んできた。

　くちゅ・・・

　マイにははっきりと音が聞こえた。

「はぁっ・・・」
　思わず喘いでしまったマイの声をかき消すように中崎がまた話し始める。
「あ、そうそう須藤さん、ついでにこのファイルなんだけどね」
　中崎の左手の指は、十分に潤ったマイの中からたっぷりと蜜を取り出し、それをクリトリスに塗りだした。

（あぁ、くぅ・・・た、たまんなぁい、き、気持ちよすぎるぅ・・・・・！）

　くちゅ、くちゅと音が聞こえる。もしかしたら周りにも聞こえてるのかもしれない。そう思うとマイは余計に蜜をあふれさせた。
　それを見逃すことなく中崎は指をとぷんとその蜜の中に入れるとかき回し始めた。
　ぬちゅぬちゅと蜜があふれ、中崎は指の動きを速める。

（や、だめだめ、声でちゃいそうぅ）

　とうとうマイの体が震えを止められなくなった。
「そうか、そうやったら確かにファイルは整理しやすいよね・・・」
　中崎は構わず壷の中をかきまわす。そしてその潤った指でまたクリトリスを押した。
　初めやさしく動いていたその指は次第に速さを増し、感じる中心部を的確にピピっピピっとこねくり回した。

（はぁうぅん！イイ、気持ちいぃ！）

　マイはカタンと音をたてて我慢できないというふうに身体を震わせた。

「須藤さん、顔色悪いね。ちょっと救護室へ行こうか」
「え、あっ、ハ、ハイ・・・」
　中崎に言われるまま立ち上がらせられ、ふらついた足で中崎のあとをついていく。
「課長、それなら俺代わりに行きますよ」
　そう申し出たのはマイの同僚の橋本だった。
「いやいいよ、俺もちょっと薬ほしいんだ。橋本はもうちょっと残ってる仕事あるだろ」
「わ、それを言われると厳しいっすよー」
　笑って橋本が席につく。それからマイを心配そうに見上げた。
「須藤大丈夫かよ？顔赤いし熱あるんじゃねー？」
「平気・・・ありがと、橋本くん」
「マイ、お大事にね」
　他の同僚たちも声をかけてくれる。

　しかしマイはそれどころではなかった。
　中崎の後ろを歩きながら考えていたことはただひとつだけ。
（早く、早くあたしをのぼりつめさせて・・・）
　中途半端な状態で止められたマイの全身は、快感だけを求めていた。