中崎と過ごしたあの資料室での時間を忘れられないマイ。
　あれから中崎とは何もなく物足りなさを感じながらも、抱いてもらえたその事実はマイの中に快感と喜びだけを残していた。
　そのせいかぼーっとすることが多くなり、仕事でもよくミスをするようになってしまった。
「マイ〜最近変だよ、大丈夫？」
　隣でエミが心配そうにマイをのぞきこむ。
　愛想笑いでごまかしたものの、マイの頭の中は中崎のことばかりだった。

　しかし当の中崎は何もなかったかのようにいつもの冷静な「上司の顔」をしている。
「須藤さん、ここまた間違ってるよ！」
「須藤さん、先方に確認連絡した？え、まだ！？早くやって！」
「須藤さん、もういい加減にしてくれないか！同じところでミスするのはやめてくれ」
　いつものように冷たく言い放つ。

　そして当たり前のように残業になり、ひとり事務所に残ったマイは泣きそうになっていた。
（私って、ただ一度抱かれただけで何うかれてたんだろ・・・バカなあたし）
　パソコンに向かって指を動かしてはいるが、意識は違うほうへいっていた。
（そうだよ、中崎さんは何も言ってくれてない・・・ただあたしが舞い上がってただけ・・・）
（そういえばあたしには一回も笑いかけてくれない）
（ただ抱かれたってだけなんだよね）
　ゆっくり書類をめくりながら、マイはとうとう涙をこぼした。

　そのときドアが開いた。
「わっ、何泣いてんだ！？」
　入ってきたのは同僚の橋本だった。
「は、橋本くん・・・なんで・・・」
　マイは目をぐいっとぬぐって無理矢理笑おうとしたが無理だった。
　橋本は隣の席にどさっと座る。パソコンの電源を入れながら橋本は須藤のほうを向いた。
「あんまり調子悪そうだったからさ、手伝いにきたんだよ。その調子じゃ終わりそうにないだろ」
　書類を半分持ち上げて、橋本がパソコンに向き直った。
　だが橋本はすぐまたマイのほうへ椅子ごと近づき、マイの腕をつかんだ。

「なぁ、須藤。中崎課長が好きなんだろ？」

　マイはびくっと身体をふるわせた。まっすぐに見つめてくる橋本の目を直視できない。
「は、離して、橋本くん。仕事、仕事しなくちゃ・・・」
「ごまかさないで聞けって！」
　橋本はマイを自分の胸に抱き寄せた。
　がたん！と音をたてて、マイの座っていた椅子が壁に向かって投げ出される。
「わかるんだよ、見てるんだから・・・須藤。好きなんだ」
　マイを抱きしめる手に力が入った。
「は、橋本くん・・・」

　マイにとっては橋本は同僚でしかない。
　同僚の中ではいちばん頼れる橋本を、マイは恋愛感情ではないが好意を抱いていたのは事実だった。
（それでもあたしは中崎さんが・・・こたえられないよ、橋本くん・・・）
　マイがゆっくり腕を動かして橋本を押し返そうとしたとき、橋本が手をゆるめて無理矢理唇を重ねてきた。

「んんんっ！！」

　マイは咄嗟のことで逃げられない。
　それどころか橋本のキスはただ重ねるだけではなく、舌で唇をつつき、歯をわって押し入ったマイの口の中をはいまわり・・・・抵抗しないとという想いと同時に、マイの中に明らかに快感が生まれてきていた。
（き、キスだけでこんなに気持ちいいものなの・・・？）
　それは中崎のキスとはまた違っていた。
「・・・っ、ぷはぁっ、は、橋本くんっ、イヤ、やめて！」
　マイは身体全体を使って橋本を突き飛ばそうとした。
　橋本はネクタイをほどき、暴れるマイを器用におさえつけてマイの両手を椅子にくくりつけた。
「いや、いやっ！何するのっ！？」
　橋本はなおも暴れるマイに信じられないことばを吐き捨てた。

「課長のようなおもちゃじゃなくて、本物のほうがいいだろ」

　マイは絶句した。
　どういうことなのか飲み込めない。
　驚いた顔をするマイに向かって橋本が続けた。
「あれ、お前もしかしてこないだ資料室で本当に課長に抱かれたと思ってたのか」
　橋本はそのまま続けた。
「俺みてたぜ、あのとき資料室で課長がおもちゃ使ってたの」
　マイの心の中がまっしろになった。カタカタと身体が震えだす。

　じゃあ、じゃああのあったかいぬくもりは・・・！？

　放心状態になりかけていたマイを身体をはいまわる感触が呼び戻した。橋本がマイへの愛撫を再開したのだ。
「なぁ、須藤・・・好きなんだよ、俺ずっと前からお前が・・・」
　橋本はマイの耳元でそうささやきながら、両手でマイの乳房を包み込んだ。
　そのままブラウスの上から中指を乳房にぷにゅっとうずめてくる。
「いや、いやあっ・・・はぁ・・・っ」
　マイは抵抗しながらも思わず甘さを含んだ声を出してしまう。
「須藤の胸ってやわらかいなぁ・・・・はぁ・・・俺の指のみこんじゃうよ、気持ちいい・・・」
「あぁ、いや、いやいやっ！」
　息がだんだん荒くなってきている橋本は、とうとうマイのブラウスを乱暴に引き裂きブラを上に押し上げた。
　マイの乳房がぷるんと音をたてるように揺れた。
「いやあああっ！！」
　マイは必死に抵抗しようとするが両手が縛られている為に抵抗もままならない。
　椅子におしつけられているから身動きもほとんどできない。
　マイが橋本の力に叶うはずがなかった。
　橋本はたまらなくなって直接かたくなっている乳首に指を這わせた。クリクリクリと押しつぶす。
「あぁ、もうこんなにとがってるよ、須藤・・・ツンツンになってるよ・・・」
「いや、いやぁ・・・っ！はぁ・・・」

　マイはどうやら言葉に弱いようで、橋本の言葉に反応して身体をふるわせた。
　中崎とは全く違う、たくさんの言葉とともに攻める橋本の愛撫。
　抵抗しなきゃいけないというマイの理性がどんどん快感に飲み込まれていってしまうのも無理なかった。

　橋本は舌をかたくとがらせて、つんつんと乳首をノックするようにつついた。
「はぁうっ！」
　マイの身体が快感で跳ね上がる。
　橋本はそのまま口全体で乳首を包み込み、舌全体を乳首に押し付けて舐め回した。
　ときどきわざとぷちゅっ、ぷちゅっ・・・と音をたてて丁寧に乳首を愛撫する。
「あ、あ、あ・あ・あぁ・・・・ふぅ・・・んっ」
「あぁ・・・須藤・・・クチュ、おいしいよ、須藤のおっぱい・・・はぁはぁ、ピチャ・・・」
　逆の乳首に舌を移動させながら、橋本は指をパンティにかけて脱がせ始めた。
　もう抵抗する意識が完全に奪われているマイは無意識にお尻をあげてそれを助ける。
　乳首をピチャピチャ・ピチャピチャ・ちゅう・・っと丹念に吸い上げつつ、指をマイの秘められた壷に忍ばせる。
　ぐちゅ・・・といやらしい音がした。
　そのままぬちゅぬちゅと音をさせながら指の出し入れを繰り返した。
「は、はぁん！それダメえっ！あぁっ・・・！！」
（あぁ・・・気持ちいい・・・感じちゃダメって思っても・・・も・・・ダメ・・・）
　乳首と同時に蜜壷を攻められたマイは今や、快感だけを求めて身体を解放していた。
　理性はもう完全に飲み込まれていた。

「はぁ、はぁ・・・須藤のココ、もうぐっちゃぐちゃになってるよ・・・・すっごい濡れてる・・・」
「あっ、あっ、あぁぁあんっ！」
「すっげ、指三本入れたらすっごいしめつけてきて・・・俺の指ぐちょぐちょだよ・・・はぁはぁ」
「やぁん！あん、あんあん、ああんっ」
「なぁ、すどぉ・・・気持ちいい？なぁ、もっとぐちゃぐちゃになっていいんだぜ」
「あ、あんっ気持ちいいっ！橋本くんっ！あはあんっ！！」

　マイはもう橋本の言葉攻めの思うがままだった。
　橋本は壷への指の出し入れをやめないままで、舌をまたとがらせて先程と同じようにクリトリスをノックした。
「あっはあああんっ！！」
　マイの身体が今まででいちばん大きくはねた。
　じゅるるるるっ・・・・
　いやらしい音をたてて、橋本がクリトリスと周辺の愛液をすすった。
「いやっはあん！」
「すげ・・・須藤、まだまだあふれてくるよ、はぁ・・・おいしい・・・」
　そしてちゅるちゅると音をたてて吸ったりぐりぐりと舌をおしつけたりれろれろと舐めまわしたり・・・。
　橋本の舌はクリトリス中心の愛撫に変わった。

「須藤のココ・・・ぷっくりふくれあがって、俺に食べてって言ってるみたいだ・・・」
「あ、あぁっあああん！いい、いや、いっちゃいそぉ・・・いやあん！」
「あぁ、また大きくなったよ、ぷくって・・・クリちゃんが気持ちいいって言ってる・・・」
「あ、ダメ、そんなにしちゃ、あっいやいやいやっ・・・あ、あ、ああっ、あはあああっ！！」

　絶頂を迎えてぐったりしているマイの横で橋本がズボンを脱ぎ始めた。
　もう興奮してこれ以上ないくらい勃っている橋本はマイが今まで目にしたどれよりも大きかった。
　マイの足を思い切り開かせ、橋本が勃起しきっているそれをクリトリスになでつけた。
「あぁ・・・マイ・・・俺も気持ちいいよ、ぬるぬるだ・・・」
「あっ、はぁっ、あたし、あたしも・・・っ、すごいいい・・・」
　マイのとろとろとあふれ出る液体と橋本のぬめぬめした液体が混ざり合い、快感をより深いものにした。
「マイ、マイぃ・・・・・」
「あ、ああんっ！」

　橋本はもはや我慢できないと言わんばかりにそのまま一気にマイの中へ突き進んだ。
「あああっ！！！」
「うわ、すげー気持ちい・・・マイ・・・」
　橋本は少しでも長い時間マイと交わっていたいという想いからまだピストン運動を始めなかったのだが、マイの中が予想以上に気持ちよかったために我慢の糸が切れた。
　息を荒くしてピストン運動を始める。
「はぁっ、はぁっ・・・」
「あっ、橋本くぅ・・・んっ、す、スゴい、おっきぃ、こんなに奥まで・・・っ！！」
「マイ、マイ、マイ・・・はぁはぁはぁはぁ・・・・俺、も・・・気持ちいい・・・！」

　ぐちゅっぐちゅっぐちゅっ・・・
　パンっパンっパンっ・・・

　結合部がいやらしくたてる音と二人の肌がぴったりとぶつかりあう音が響き渡った。

「やべ、やべぇ、俺もうっ・・・」
「あはあああん！！やあん、気持ちいいぃ！いやっあ、ダメ、きちゃう、波がきちゃうっ！」
「気持ちよすぎるっ！あぁっ、マイっ！イク・・・！」
「ああっ、ま、また、ああん！またいっちゃういっちゃういっちゃうぅ〜っ！！」

　橋本はそのままどくんどくんと自身をひくつかせて一気に放出した。

　マイはまた違った気持ちよさを体験しながら先程知った事実を思い返していた。
　-----こないだのぬくもりは中崎さんのものじゃなかった。みんなニセモノ・・・・・
　それを思い出すとまた目頭が熱くなる。
　そしてマイは心の中でつぶやいた。

（もう、この会社にはいられない・・・・・）