幸枝は翌日礼子ママの面接を受けていた。昨夜の多岐江と同じ仕事内容を聞いて絶望のどん底に落ちていた。幸枝の見たＨＰの内容はバンスではなく、出稼ぎに来た２５くらいまでの女性向だと説明された。パーティに一回出れば延長なしで２０万になり、三日に一度、月十日の仕事で、３ヶ月で終了できるとも説明された。月に４回の川越のＳＭパーティでもあんなに辛かった。三日に一日も出来るのであろうか。
「最初の仕事は明後日新日本空輸ホテルの鳳凰の間で６０人の慰安パーティ。二週間前からやっている多岐江さんと一緒に出てもらいます。二人でストリップマッチをやって負けた方が拷問ショーの生贄に成る嗜好です。今回は多岐江さんが負けて犠牲役をやってくれます。貴方は最初なので様子を見てください」
　そこに芳谷社長から電話が入った。
「どうもいつも御世話になります。礼子でございます」
「多岐江さんなんだがね」
「多岐江が何か」
「泊まりで個人プレイの方は出来ますか」
「はい、ありがとうございます。多岐江もきっと喜ぶと思います。８月で多岐江はパーティを終了しまして、個人プレイの方で続けて行く予定ですので、是非ごひいきにお願いいたします」
「ああ、それはもう」
「ただあ、パーティの方がかなりハードですので今出来ますかどうか予定の方を確認して折り返しご連絡させて頂きます」
「そうだね、昨日けっこうハードだったから、デートぐらいの感じで軽くと言ってみてよ」
「わかりました有難う御座います。ではのちほど」
　多岐江はパーティの後２７階の託児所より子供を引き取り、１２時に目を覚ましてシャワーの最中であった。バスタオルを巻いて携帯の着信履歴から店に電話をした。
「多岐江です」
「多岐江さん御疲れのところごめんなさい。実は芳谷社長さんから御電話があって、社長さん多岐江さんと個人プレイしたいと仰るのよ。多岐江さん昨日ショーだったから確認してみると申し上げたのよ。社長さん昨日ハードだったから、今日はデートぐらいの感じで軽くどうですかと仰るのよ。多岐江さんバンスが終わってからも御仕事続けるでしょ、お客さんに成っていただけそうだけど」
　昨日は高見舞が出て来たのでものすごく辛かった、あの社長だけなら耐えられると思った。それに礼子ママの言う通り８月からの指名客を掴まないと若い子と競争ではやってゆけない。
「芳谷社長さんでしたら伺います」
「そう返事してもいいのね」
「はい、お願いします」
　多岐江は直ぐのその日の託児所の予約をして仕事の準備にかかる。泊まりならば２４万半金収入で１２万になる。ショーの半分の収入である。
　幸枝は電話を聞いていて借金が終わったら普通のプレイに就けるのか、ならば元々半年のつもりだったのだから長く借金を返して、ショーに出されないで済まないかと思った。
「あの、今の話なのですが、個人のプレイで長く掛かってもショーに出ないで返済して行けないでしょうか」
「はっきり言っておきます。指名が付かなければ個人プレイには出せません」
「フリーのお客さんはないのですか」
「貴方をフリーには付けられません。皆２０代前半でモデルみたいな子ばかりです」
　礼子ままはパソコンのマウスをいじって画面を見せる。本当に２０代前半と見られる女性の全身三面図、顔のアップ、胸、局部のアップ、他にデータが書き込まれている。会員ページで一般には見られない内容である。
「多岐江さんはショーでお客の指名を集めて借金が終わったらフリーでやっていただく予定なの、でも多岐江さんは論外に男性受けがいいのよ。普通なら借金を返して１．２ヶ月延長して青線スナックってえとこかな」
「青線スナック」
「レンタルタイプのスナックがあるのよ、艮宮、生門寅町あたりのビルの３階一帯に、５か月分の敷金で直ぐ営業が始められるのよ。でもママが予約でお客と御付き合いするのが常識なの」
「何で青線と言うのですか」
「赤線ってわかる」
「いいえ」
「昔日本には赤線と言う公営の売春が有ったのよ。そして私営の売春を青線と言ったらしいのその復刻版じゃないかしら」
「日本には帰らないのですね」
「日本に帰って何が出来るの」
「家族とか友達とか」
「そんなもの私には関係ないわ、日本なんて政治家が、票欲しさに世間知らずの主婦に御世辞を使った挙句、金の回らなくなった貧乏国よ。同じ事やるなら合法でこの国の方がずっと稼げるわ」
　幸枝は礼子の言葉に日本に戻って再起しようと思う自分自身の心に暗澹たるものを感じずにはいられなかった。
「何故、あんな綺麗な子がＳＭなのですか、他でも稼げると思いますが」
「ＳＭが一番稼げるわ、それにクローンより見劣りしたら駄目なのよ」
「クローン」
「この国の風俗は人口人体から培養されたクローン女性が過半数なのよ。遺伝子の組み合わせで、スタイルが良くて美人ばかり。でも現在最高年齢が５歳なのＤＮＡ改造して３歳で大人の体になり、催眠学習で２０歳ぐらいの学力を注入されるけど、特徴が少なく本来の大人のステータスを持った女とは違うわ。そこが実際の女の勝ち目ね。でもスタイル、若さ、美が欠けては駄目ね」
「それで私たちの仕事は一番きついＳＭパーティなのですね」
「そうよ、でもこれが一番儲かるわ。私も半年泣きながら頑張ったわ。私がやっていた頃は客から４０万で自分には１０万しか入らなかったのよ。並木会長の指示で働いた本人に５０％以上払う事に成ってから２０万もらえるように成ったのよ」
　幸枝は暗い気持ちのままクラブを出た。少し街を歩いてみようと思った。

　多岐江は２７階の託児所に娘を預け、待ち合わせの滝停ホテルに向かった。滝停ホテルは兌宮、西の外れにあった。海沿いの温泉ホテルである。芳谷社長は離れの海側がガラス張りの洋間にチェックインしていた。
「昨日は御見苦しい姿を」
「多岐江さんならどんな姿でも見たいよ」
「そんな」
「大変だったね」
「辛かったです。でも社長さんが途中で洗って下さったのでほんとに助かりました」
「あのホテルの女体刺し盛に前からソーセージが付いていてね、あそこに入れて食べさせる嗜好なんだが、誰かがマスタードを要求してそれがあまりにも効果があったので定番に成ってしまった。以前に今のシャトーのママにもやったんだが、相当に辛かった様で翌日さめざめと泣かれたよ」
　芳谷社長は多岐江の手を引っ張り自分の横のソファーに座らせる。抱きしめてきつく唇を重ねる。既に抱きしめた腕は右手で千鳥格子のワンピースの後ろのファスナーを下ろしている。ワンピースは背中で真っ二つに割れ、純白のブラジャーの後ろ部分が丸出しになる。一挙に前から剥いてしまう。
　方紐のないブラがＤカップの胸を半分だけ隠している。多岐江の躰は白い、そして柔らかさを感じさせる肌である。だが太ってはいないスマートだが筋肉質な感じや、コリコリしたイメージはなく、また肉にたるみも無いが柔らかい。
　芳谷は多岐江を立たせワンピースを床に落とす。ブラも外し、パンティも脱がす。サンルームの向うは海で、手前はガラスのフードを被った露天風呂である。芳谷は多岐江を露天風呂に促す。冷房が効いているがサンルームを開ければ南国の熱さである。国全体ほとんど外に出ることがない。総て温度が調整されているのである。
「社長さん礼子ママともプレイされたのですか」
「この国が出来た頃最初のＳＭパーティーコンパニオンだったんだよ」
　芳谷は多岐江を湯の中で抱き寄せ、胸の後ろから腕を廻し、右の乳房を掴み、もう一方の手は女陰をまさぐる。
「半年くらいやったかな、もう既に歳だったし、若い子が増えるとまったく相手にされなく成って、普通は熟女ソープか、青線スナックなのだが、上手にＳＭクラブを始めちまったのさ」
「お金は有ったのですか」
「有るわけないさ、俺たちが貸したんだよ、企画が良かったしそんなに金は掛からなかったんだよ。事務所の保証人と、女の子のバンスの保証をしてやれば成り立つのさ」
「バンスの保証」
「極東バンクの場合、代位弁済はしなくていいんだよ。保証だけすればその期間取立てを猶予されるのさ、お店だけの保証じゃ最初は弱かったから、俺たちが後ろ盾に成ったのだよ」
「本人が逃げてしまったら社長が御支払いに成るのですか」
「それはまずない。むしろクラブが給料を払えなかった場合が問題で、本人が逃げたら期限の利益が止まるだけだ」
「期限の利益って」
「約定で一定の期日までにいくらずつ払えば一括請求される事がないのが期限の利益だ。それが一括請求され、当然払えないから債権処理機構に売られてしまう」
「そうするとどうなるの」
「まあ逃げられはしないらしいが、何処に売られるかはわからないな。どちらにしてもこの国では働けないらしい」
「今でも礼子ママと続いているのですか」
「まさかあの年齢だよ、もうとっくに終わっているよ」
「だって奥様おいくつですか」
「そんなもんとっくにＳＥＸはなくなっているよ」
　芳谷の二本の指は多岐江の女の部分に深く浸透している。少し動きを早める。多岐江は湯の中で顔を紅くして、眉間に縦皺を寄せている。
「ああん・・ああ・・あああ」
　芳谷は多岐江の唇に唇を強く重ねる。唇を重ねたまま多岐江がイッてしまうまで許さない。
　湯から上がって多岐江は紅く火照った顔で白いバスロープを着ている。既に放心状態である。
「雷沢帰妹五爻、易という東洋占いで本妻を表す卦だ。物事を八割で納得せよとか、形だけ安定した立場と言う意味だ」
「何かそれじゃ女は普通に結婚しても不幸みたいですね」
「そんな事はないさ、日本では俺が一代で作った財産の半分の権利があるんだぞ。ただ俺のＳＥＸの対象外になったと言うだけだ。昔の中国では正妻が嫁ぐとき？ていをつれて嫁ぐ習わしが有った。？てい妾は身分の賤しい女だが着飾り容貌で王を喜ばし、正妻は尊貴で着飾り容貌で王を惹き付ける事をしない。今のファーストレディそのものだよ」
「凡てそうなのですか」
「俺の年齢で同年代くらいの妻とＳＥＸが続く訳無いだろう」
「私、あと五年したら仕事ないですか」
「なんとも言えないがＳＭは無理だよ。熟女ソープか青線スナックだな」
「私ＤＮＡ改造しようかな、いくら位掛かりますか」
「この国は風俗を１０年続ける条件ならば無料でやってくれるよ」
「悩むけどそれしかないですね」
「子供が出来ないのと人生５０年で終了だ。４８位まで手術時の若さを保てるらしい」
「後１８年子供が大人に成ったら私の人生終了と言う事ね」
「子供がいたのか」
「ええ娘が一人」
「ＳＭを続けなくても子供くらいこの国では育てて行けるがね。俺には今のあんたが１８年続く方がいいけどね」
　ルームサービスが運ばれた。多岐江の希望どおり和食のミニ懐石を注文した。一回の御膳で運ばれるが少量の料理が品数多く艶やかに御膳を飾っていた。
　食事が済むと芳谷は外のバーで飲もうと言い出した。
　だが多岐江の下着も着て来た服も取上げ用意した下着を芳谷の手で着けられる。前は全面レースのブラである。乳房の下の部分と後ろに回るベルトが白い生地であとは枠以外レースで、多岐江の真紅の乳首は丸透けである。パンティも女の部分と腰の部分、枠以外が丸透けで、お尻の割れ目、剃毛された恥丘がくっきりとわかる。着せられただけで多岐江の表情は既に真紅である。
　スカートは膝上２５センチ、黒のオーソドックスなタイトなのに、多岐江のお腹の下で止りパンティの先端がぎりぎり隠れる長さで、ボディコンでもないのに多岐江の腰の線にぴったりである。更に前は中心を３センチくらいずれてレースが縦に入っている。下着の白いレースとスカートの黒いレースが重なって辛うじて腹が透けてない。
　上はブラウスともカットソウともつかない上部は乳房に引っ掛っている感じで前ボタンでぴっちり留まっている。さらに左右同じ場所に二本のレースが縦に入っており、乳首の位置を外して両側が透けている。ブラが透明でかつ白いレースである事は外からわかる。いや乳首の紅さが白の布地に染みるように反映されている。
　通路ですれ違う男性は多岐江を舐めるように見てゆく、日本と違い目を反らせる人はいない。この国では美しい女性は隅から隅まで見るのが女性への評価とされている。目を反らすのは醜婦と避けているようなものである。だがすれ違う連れの女性も多岐江に劣らずきわどい姿である。自分のこんな格好でプレイにでないといけないかと思わされる。だが今のホテルのパーティは全裸で会場に入るのでジーンズでも変わらない。
　バーのテーブル席に着くと照明はレースの内側を浮きたたせる。
「明後日の新日本空輸ホテルの慰安会もきみだろ」
「ええ」
「うちの高見君が虐めるプランをいっぱい計画していたよ」
「え」
　高見と聞いただけで多岐江の背筋に悪寒が走る。いや既に心臓が鼓動を早めている。
「あいつ派遣の田柄美佐枝にきみが似ているから余計虐めたがるようだ」
「・・・」
「きみと共通点はどっちも帝國ＢＢＳの高梁麻希子に似ているところだ。彼女の方がきみより少し脚が太いが」
「なぜその方に似ているといけないのですか」
「高見の方が正社員なのだが、田柄の方が役員から受けがいいんだよ。ま、高見があまり使えないから田柄を派遣で雇っているんだが」
「わたし、怖いです」
「まあ限度はあるし、何処の宴会もそれなりにきついんじゃないの。僕も見ているし、あの木野という若いのも居るし、うちの役員たちもきみを気に入っていたから」
「はい」
「それに今回は他の会社もあるし、並木会長が来られるんだ」
「この国のオーナーとお知り合いですか」
「いや大間海産の会長から今度初めてご紹介いただくのだ」
　芳谷は次に多岐江をホテルの屋内ビーチにあるバーに案内した。ビーチと言っても人口でかつ温泉である。温泉に浸かって一角のカウンターで酒を飲める嗜好である。ビーチ内は水着ではなく、男女とも全裸である。
　このビーチはカップル以外入場できない。従業員は全員女性で全裸に等しい。乳房と剃毛された女陰は丸出しである。ただ従業員とわかるように白い水泳帽とお腹に太目のこれも白いベルトをしている。
　中にはビーチで情交の最中のカップルもいる。ビーチに入る前に脱衣が御約束である。二人は壁に備え付けの棚の脱衣籠に衣服と脱いで入れる。情交の最中のカップルは二人とも多岐江の脱衣を見ている。
　芳谷はビーチの中で多岐江に求めてきた。多岐江はコンクリの塀に掴まり、うつ伏せに大の字で湯に浮いて芳谷をバックで受け入れている。芳谷は多岐江がイクまで許さないようである。ここでイクのは多岐江にはものすごく恥かしかった。だが受け入れなければならない。
　昨日のマスタードの痒みの中で、芳谷にバイブを強く操縦され、頭が真っ白になりイってしまったのがよみ返って来る。もう成されるがままにするしかない。
　翌日は遅めの朝食を取って二時間の延長で終了した。
「また呼んでいただけますか」
「ああそのつもりだよ、明日は頑張ってね」
「はい、また助けて頂けましたら」
「ははは、今度はちょっと事情が違うからな」
　貰った金額はチップを含んだ３０万、こんな感じで行ければ楽だと思う。

　翌日クラブで待ち合わせ、マネージャーの黒田に連れ立って多岐江と幸枝は新日本空輸ホテルに向かった。控え室に用意されたツインルームに入る。ここで裸になって交代でシャワーを使う。数人のボーイがワゴンを持って迎えに来る。荷物用エレベーターで３階に下ろされる。
　腰と胸に僅か白いトーションが掛けられている以外は全裸である。多岐江は完全に剃毛されている。幸枝の土手には僅かな陰毛が付いている。剃毛してないのは本日のサービスでパイパンの筆卸をするためである。
　元々は幸枝の陰毛は濃かった。僅かな理由は若いころ高校生仲間と一人の男性の部屋に居た。男は４人、友達が帰ったので女は幸枝一人だった。男たちは誰が始めたか幸枝に触り始めた。スカートを脱がされパンティを取られた。４人がかりで端から少しづつ陰毛を抜かれた。泣き喚く幸枝に一人の男が考え直した。自分にも妹がいる可哀想だから皆にやめてくれと頼んだ。お陰で僅かな陰毛を残している。
　宴会場のある３階で板前四人と合流する。バイキング形式の宴会である。その中に二人の女体カウンターが加えられ板前が寿司を握る。女体の上には大きな葉が置かれその上にお好みが握られる。
　芳谷側は２０名うち女性は二人高見舞と唯一セクハラ秘書でない派遣の田柄美佐枝である。大間海産は男性のみ１５名。並木会長は彌貴を連れて会場に入っていた。
　本日はセクハラＯＫ秘書の代わりにコンパニオンが配置されている。スーパーコンパニオンという言葉はこの国に無い。凡てにお触り以上のサービスのほかＳＥＸまでＯＫである。だが宴会によって服装を指定でき、全裸もありである。ピンクサービスを必要としない宴会の場合値引きされる。それでもお触りの拒否はありえない。
　本日のコンパニオンは腰に前掛け、胸に前掛けの短いような幕を着けている。下着は着けていない後ろからはお尻は丸出しで、背中と腰に二本の紐が結ばれているのみである。上も下も捲れば乳首も、陰毛も丸見えである。それどころか後ろからは体形によっては女陰の一部が覗いている。
　田柄美佐枝は自分がここに出ること事態が不愉快である。だが役員たちは一日も早く美佐枝を他のセクハラＯＫ秘書と同等にしたい。派遣会社を代わるようにさえ進められている。
　ここに来て芳谷通商の業績は破竹の勢いである。だが社内の荒廃ぶりは極東コンサルの派遣ＯＬが入ってから目に余る状況である。制服が乱れたまま来客に御茶をだすＯＬは度々見かける。スカートのファスナーが空いている子を引き止めて美佐枝が御茶を出したこともある。
　時間給計算の派遣なのに宴会時間の給料は出ない。この国への出張も日本と同じ時間給で、ただ宿泊食費が会社負担というだけである。
　美佐枝は上司との不倫関係のもつれで前の会社を辞めた。既に再就職は無かった。派遣会社に登録して当座を凌いだが、一度派遣になると前歴が派遣ではと正社員の道は遠のいてしまう。Ｅｘｃｅｌ、ワードが出来、経理がわかり、業務経験があっても派遣でさえ若い女性優先である。
　芳谷通商は２０００人規模だが社員は社長を含め僅か５人で、役員といえども出向である。こういう会社がここ２年で一挙に増えた。芳谷通商は何社かの受発注業務を代行している。業務委託元の会社は社員を徐々に整理し基幹業務を他社に委託してしまう。依託された会社は芳谷通商の様に派遣社員主体で業務の波を常に人員調整できる体制である。
　極東コンサルのセクハラＯＫ秘書が始まってから状況は顕著になった。男性は協力会社の社員＋協力会社の雇った派遣社員が主流となった。芳谷通商でもマネージャー、チーフは協力会社の部長、課長である。セクハラＯＫ秘書の殆どが協力会社経由である。だから同じ会社のＯＬは弄り放題という訳である。
　二次派遣は日本の法律に違反するとお考えかもしれないが、現実何処でも存在する。単価の高いＩＴ関連は中に４件位がざらである。芳谷通商と協力会社間は業務依託契約であり、協力会社と派遣会社間が派遣契約である。美佐枝は芳谷通商に直接派遣されている。芳谷が気に入ってくれなければ今の仕事さえ無かった。
　女躰をカウンターにした寿司の振る舞いが終わりかける頃、高見舞は木野青年を伴って多岐江の女躰カウンターで最後の寿司を食していた。男性客が二人を散々おもちゃにして飽きた頃である。
　並木会長は彌貴がいるのでまったく動かない、芳谷も一度多岐江に励ましの言葉をかけただけで大間海産の会長と伴に並木会長の傍にいる。高見舞は食べかけの寿司を多岐江の口に放り込む。多岐江は甘受してそれを噛んで飲み込む。
「高見さん、止めて下さい。みっともないですよ」
　木野が見かねて注意する。
「こういう女にする事は別よ」
　また一昨日のソーセージにマスタードを塗り始める。
「ああ、それはどうか、お許しを」
「だーめ」
　丸い木の棒に刺さった真っ赤なフランクフルトに幾重にもマスタードが塗られている。多岐江の女陰の近くに持って行く。
「木野君、またこの女のあそこ広げて」
「高見さん止めて下さい。この間どうなったか皆に聞いたんですよ可哀想です」
「私は見てないの、今日は私がこの女の醜態を見たいのよ」
　木野青年はやむを得ず多岐江の女陰を広げる。高見舞はソーセージを女陰に捻じ込む。
「ああぁぁぁ」
　多岐江は刹那そうである。
　続いて幸枝にも捻じ込む。今度は木野青年も躊躇無く幸枝の女陰を広げた。
　だがこの後ストリップマッチのため全裸の二人は一旦控え室に引き上げた。控え室に入るなり多岐江は幸枝にさっと洗うように勧め、自分もセペで一回洗浄する。時間が無いので一回しか出来ない。幸枝は埼玉県警本川越署での拷問を思い出す。クリームを塗られたときは辛かった。入浴時間が短く完全に落とせないで夜中に自分の指で掻き回した。
　本日のストリップマッチは、打ち合わせで多岐江が最後のパンティを取られて、攻めを受けることになっている。だがサービスで幸枝もブラを取られ、アンダーヘヤが見えるところまでは脱がされる段取りである。
　会場には既に４枚のマットが敷かれている。
「これより本日の二人の生贄にストリップマッチを行なって頂きます。負けた方が本日の残酷ショーの生贄と成っていただきます。勝敗は相手の衣服を全部脱がした方が勝ちです」
　黒田が司会とレフリーを行なう。その間に高見舞は苛めの道具を用意していた。開帳台、縄、吊るしの足場、足場は組まれていてキャスター付きで運び込まれる。蝋燭は既に火を点けて蝋涙を溜める用意をしているかと思えば、アルコールランプにボールを乗せ、その中に潰して芯を抜いて入れる。さすがに火は蝋燭が溶ける程度の弱火である。横に小型のレードルが置かれている。
　それ以外に一メートル四方の鉄板に直系１０センチ位のアームが立てられた道具が台車で運ばれる。アームの長さはまた一メートルくらいで中間にハンドルが付いている。高さを調節するためである。先端部は細くなりシリコン製で男根の形をしている。多岐江にも幸枝にも見るだけでぞっとする内容である。
　二人とも相手を見据えて左方向に円を描くように動く。少しずつ間を詰めて双方とも掴みかかる体制である。躰に傷が付かないように双方白手をしている。
　幸枝が先に多岐江のスカートを掴む。二人とも即座に座り込む、幸枝は多岐江のスカートを引っ張る。多岐江は幸枝のブラウスを引きちぎる。二人ともスカートの中は丸見えである。幸枝は多岐絵を蹴倒し、スカートを引きずり取る。
　立ち上がった幸枝は既に上半身ブラだけである。多岐江は幸枝のスカートにしがみ付く。幸枝は多岐江のブラウスを引っ張り、ボタンを飛ばし、引っぺがす。多岐江は幸枝のスカートのファスナーを下ろし、フォックにしがみ付き外す。スカートは下に落ちる。幸枝も多岐江も下着姿である。
　正面からブラジャーの引っ張り合いをする。方紐は取れても後ろのフォックは頑丈である。二人ともブラジャーが付いたまま乳房は丸見えである。どちらもスマートだが幸枝が腰のつくり太腿とも頑丈である。多岐江は華奢なイメージであるが、乳房は遥かに多岐江が大きい。どっちもなかなか相手のブラが外せない。
　多岐江は後ろに回ろうとするが、マットに叩きつけられる。上から背中のファスナーを外される。幸枝のブラはフォックのはまったまま胸から外れている。幸枝は多岐江のパンティを引っ張る。多岐江も自分のパンティを掴んで防衛する。暴れまわるが、膝まで下ろされると力尽きてしまう。
　負けた多岐江はそのまま全裸で高見舞の待ち構える鉄柱のところに引っ張られる。高見舞は鉄柱の先端の擬似男根にマスタードをたっぷり塗りつける。
「ああ・・もうそれは」
「何言ってるの、さっき塗ったのは洗って来たのでしょう」
「そそれは・・・」
「ちょっと木野君と矢吹さん彼女を持ち上げて」
　矢吹が多岐江を持ち上げるので木野も手伝うしかない。高見舞は多岐江の性器を男根に導く。男根は多岐江の女陰に奥深く収納される。
「つま先がぎりぎり着くところまで持ち上げて」
　ハンドルを緩めて高さを調整する。爪先立ちで男根が女陰に深く入った状態でもう自分では逃れられない。男根はバイブレーターになる仕様である。
　高見舞いは男性を呼び集め洗濯バサミを配る。一人づつ洗濯バサミを多岐江の躰に着けてゆく。多岐江の両方の乳房には２０個くらいの洗濯バサミが着いている。
　高見舞は幸枝を開帳台に載せる。幸枝の女陰にもマスタードを指で奥まで塗りつける。幸枝は多岐江のように許してくださいとは言えない。高見舞をじっと睨みつけている。鞭を持った男性が多岐江の胸の洗濯バサミを叩き落とす。
「うぎゃーああああああああぁぁぁーー」「ああ・・」
　半分以上が吹っ飛んだが、幾つかはずれて中途半端に引っ掛っている。次の男性に鞭を譲る。
「うわあああああ」「ああーあん」「ああー」
　男性には生唾シーンであり、美佐枝には見るに耐えない光景である。役員の話に相槌しながらも、あまりの光景を耐えられず、かえって擬視してしまう。
　洗濯バサミが飛んでも、乳房への鞭は続けられ、多岐江は悲鳴を上げ続ける。
　誰かが擬似男根のスイッチを入れる。多岐江の膣の中で動き始める。その女陰めがけて鞭が振り下ろされる。
「ぐああああーーーーん」「あはあん・・ああん」
　強烈な悲鳴である、既に涙を流している。
　高見舞はボールに溶けた蝋燭をワゴンで近くに運ぶ。洗濯バサミの摘まんだ痕がつき、鞭の痕がついた多岐江の乳房に、溶けたローソクをレードルでしゃくって掛ける。
「あああーーん」「ああああーあーあーあーあ」「あはあはあん」「あはんあはん」
　濁った蝋燭の液体が乳房を覆って一枚の膜と化している。熱そうである。美佐枝は思わず立ち上がってしまう。思い直して直ぐに座る。
　多岐江の目はマスカラが溶けて滲んでいる。涙は既に頬をつたっている。
　次は太腿に、そして片脚を持ち上げて女陰に掛ける。片脚つま先立ちの苦しいスタイルに溶けた蝋がクリトリスを直撃である。
「ううああ・・ああああーーあーあーあーあー」
　美佐枝はもう見ていられない状態である。
　高見舞は次に浣腸の準備をすすめる。多岐江を男性二人でアームから持ち上げて抜き取る。一度マットに降ろす。股間が痒いとみえて腰を捩じらせている。開帳台の幸枝も広げた股間を捩らせ始めている。顔は眉間皺がくっきりと浮かんでいる。
「お願いで御座います。バイブを・・ああバイブを私の」
　この痒みには勝てない。本来とても恥かしくて言えない台詞を言ってしまう。
「何よ、何処に入れるの」
　高見舞は意地悪く聞きただす。
「ああ・・私の膣に」
「えー、ちつ・・あたしパアだからもっとわかりやすく言って」
「ああ・・ああ・・私のお○○こに・・お○○・・」
　多岐江にとって既にこの場での恥などどうでもいい。少しでも楽をしなければ持たない。でもあっさりと恥かしい事を言わないのが、これ以上これでもかと、ハードにさせない手法である。
　一人の男性が多岐江の女陰にバイブレーターを入れる。レザーで出来た褌の様な物を腰につける。前はＴフロントだが、後ろは膣の部分でバイブレーターを引っ掛け、二本に割れてアナルを避けお尻のふくらみの上を腰から繋がっている。
　男性が一人幸枝にもバイブを挿入に行く。こちらは固定せず、手で操縦する。気丈な幸枝とて痒みから開放されるべくバイブの攻撃を受け入れるしかない。男性は片手でバイブを操縦し、片手は小振りの幸枝の乳房を掴んでいる。幸枝は痒みからの開放と一番敏感な部分を入念に擦るように奥までピストンする動きに躰を委ねざるを得ない。既に頭は真っ白である。
　多岐江は後ろ手に乳房の上下に廻したロープで縛られ、普通に立った状態で、鉄パイプで組んだ足場の天井部分の、横に渡した鉄パイプから、下がったフックに上から引くように固定する。右脚の膝を縛り、天井部分の、横に渡した鉄パイプの右端に固定する。脚は床に着かないが、空中で動かす事は出来る。
　左脚も同様に少し床との距離を変えて吊り上げる。前方の天井部分に渡した鉄パイプからロープを引っ張り、胸の上下のロープを纏めて引っ掛け、前方に軽く引っ張る。立った状態で吊られ、両足は立ち泳ぎの状態である。乳房は上下のロープが強く寄り変形して外に飛び出している。
　多岐江の真紅の乳首に、厚さ１センチくらいの書類を止めるクリップがつけられる。
「ぎゃああああああーーー」「ぎゃはあーーーん」「あーあーーん」
　脚をばたつかせ、顔を左右に振って泣きじゃくる。
　クリップに凧糸を通し、前方の鉄パイプより引っ張る。軽く張っている程度だが多岐江が動くと強く乳首が引っ張られる仕組みである。
　男性が鞭を持つ。一本鞭である。多岐江の表情に恐怖の戦慄が走る。
　女陰をかばっていた左脚の内腿に炸裂する。
「あーはあーん」「あああーん」
　脚の防御が緩んだ隙に女陰に当る。それでも手加減はしている。
「うう・・うう・う・う・う・う」
　きつく瞑った目から涙が散っている。顔を小刻みに左右に振って目は許しを訴えている。
　幸枝はバイブを操縦されながら、既に悲鳴に近い歓喜の声を上げている。
「駄目、駄目、もう駄目・・・・あああーあああーーん」
　男性は美佐枝と話していても異様な表情で多岐江の拷問を疑視している。生唾の境地が伝わってくる。股の一物はコチコチに違いない。若い男性など近づくとスペルマの匂いがほんのりする。美佐枝には言うに耐えない状態である。
　男性は多岐江の表情をみて６回位でやめてしまう。高見舞は不満そうだが上司だから何も言わない。直ぐに浣腸器を準備する。
　脚のロープを短くし、脚を高く上げ、アナルを良く見えるように調整する。２０００ＣＣのグリセリンが容赦なく注入される。汚物入れは大きな白く塗られたホーローのたらいのようなものが置かれる。
　本日は多岐江は腸の中を綺麗にして来ている。だがお腹の苦しみは襲ってくる。アナル栓をしてなかったので、数分間の後に、茶色い水だけが、たらいに下向きの噴水で叩きつけられる。高見舞は苦々しい顔である。
　幸枝を弄っていた男性から幸枝を借り受け、多岐江のところに連れて来る。多岐江は脚の縄から解かれ、鉄パイプから外し胸の縄は後ろ手に縛ったそのまま仰向けにマットに寝かせる。幸枝に多岐江の顔を跨がせる。
「そこでこの女の顔に小便して」
　高見舞は幸枝に命令する。
「できません」
「何言ってんの、それも仕事の範囲でしょ」
「そんな、とてもでません」
「高見さんもうやめましょう」
　木野青年が止めに入る。
「何言っているの、貴方この女が好きなんでしょう、そっちの女の時は躊躇しないであそこ広げたじゃない」
　そう言われて黙ってしまう。
「小便が出来ないならあんたを拷問するよ」
「出来ません。私を拷問してください」
　遂に堪りかねた美佐枝が立ち上がり高見舞と幸枝の間に割って入る。
「いい加減にして下さい、貴方が何でそこまでするのですか」
「これはＳＭパーティなのよ。私はドミナの役をしているだけよ。会社の接待に積極的に協力しているのよ」
「うそよ、この人あたしに似ているから苛めるのでしょう」
「なに寝言っているの。あんたなんかもうじきおばさんよ。うちの社長が気に入らなければ派遣だってもう通らない歳よ。後二三年すればめっきりおばさんになってその太い足だけが目立つわよ」
　美佐枝は思わず高見舞の顔に平手を食らわす。
「何すんだよこのババア」
　高見舞は美佐枝のブラウスを掴み向う脛をヒールで蹴飛ばす。ブラウスのボタンが幾つか飛び、下着がはみ出て横倒しになる。
「高見さん止めて下さい」
　後ろから木野が高見舞を押さえようとするが、高見舞はヒールで後ろ向きに木野の股間を蹴飛ばす。木野は痛そうに転倒して股間を両手で押さえている。高見舞は美佐枝に馬乗りになり、ブラウスを引きちぎり、顔に何発も平手をお返しする。男性たちにはショーよりこっちのバトルの方が見ものである。
　高見舞は容赦なく美佐枝のブラジャーを引っ張る。濃い紅色の乳首が丸見えになる。乳輪も２５ミリくらい有る、乳房の膨らみもやや垂れ気味だが両方均整が取れて形はよい。男性のほぼ全員、コンパニオンも数人、視線は美佐枝の乳首に集中している。
　高見舞はブラジャーを半回転して、フォックを強引に外し、取ったブラジャーを放り投げる。美佐枝は暴れて高見舞を振り落とす。スカートの中はストッキング越しの下着が、見る角度によって丸見えである。美佐枝は高見舞のスカートを掴み脱がそうとするが、男性数十人が割って入り二人を引き離す。転倒している木野を何人かでサポートして部屋に連れ戻す。
　高見舞に掴みかかろうとしていた美佐枝は、自分の姿に気付き、腕を離してもらい、ブラジャーとブラウスを拾って物陰で身繕いをして会場から出て行く。
　芳谷社長は多岐江の縄を解き、並木会長も近くに来て多岐江を眺めている。彌貴も近くに来て幸枝に気付く。
「幸枝ちゃん、どうして此処に」
「彌貴」
「幸枝ちゃんどうしてこんな事しているの」
「いろいろあって、また借金が」
　並木会長が不思議そうに彌貴に近づく。
「この子を知っているの」
「あの、川越で野洲課長に苛められていた幸枝ちゃんです」
「えー、あの時の幸枝さん」
「はいその節はいろいろ御世話になりました」
　幸枝は並木会長にこれまでの事情を説明する。彌貴は頃合を見て黒田の差し出したセペで幸枝の膣を洗ってやる。並木会長の連れのやる事には高見舞とて何も文句が言えない。芳谷も同じ様に多岐江の膣を洗っている。
　ショーはお開きとなったが、多岐江はもう自分で立つ事が出来ない。黒田の用意したバスロープを身に纏い、幸枝が荷物を持ち、黒田が多岐江を背負って会場を出る。
　部屋に戻った美佐枝は自分のベットに倒れて悔し泣きをしている。あれだけの人数におっぱいを見られてしまった。もうこの会社には居られない。泣きながら自分の身の振り方を考え、眠ってしまった。

　久下少佐は幕僚仲間と飲み会をしていた。中宮にある建物の３階の大衆居酒屋「将来」である。圭子ママはあすか女王の好意で此処に支店を出した。６人の幕僚がたらば蟹の七輪焼きを囲んでビールを飲んでいた。
「野洲課長をやった幸枝って女こっちに来ているらしいよ」
　久下少佐が話し出す。
「おれも聞いた」
　南條少佐である。
「また借金でＳＭパーティの生贄をしているらしい」
「会長が出席されたパーティに出て来たんだってな」
「俺たちで呼んで虐めないか」
「私刑（リンチ）はまずかろう」
「違うよ、合法的にＳＭパーティを開いて指名で呼んで虐めるのさ」
「いくらかかるんだよ」
「一回四十万だとさ、その代わりハードプレイがＯＫという訳さ」
「４０万か、６人で分担しても一人六万五千円だぞ」
　日本酒をひやで呑んでいる杉山少佐が計算する。
「一回ぐらいいいんじゃないの」
　南條少佐である。
「一回では効果がない。ハードなので三日に一度月に１０日しか働かない。５回位続けてやれば効果があるんじゃないか」
　久下少佐が提案する。
「効果って何だよ」
　南條少佐が確認する。
「逃げ出すくらい虐めて借金を放棄させれば、債券は店が保証しているだけだから、貸付会社は今度闇金融に売ってしまう。そうなればもうまともには済まない」
　久下少佐が説明する。
「躰切り裂きとか、火炙りの生贄だな」
「なるほど、合法的な処刑だな」
「金はどうする」
「俺たちの給料は月百二十万だ、六万五千円を５回も出せないよ」
「もっと仲間を集めればいい」

　美佐枝は一日仕事を休んだ。派遣会社には事情を説明し、派遣終了を願い出た。だが派遣会社は派遣先企業の言い分本位である。暴力行為は美佐枝が先であり、芳谷通商さんは、今回は不問にするとの事であり、契約期間終了まで続けていただきたいとの回答である。乳房が丸出しになった件は誰も見ていないの一点張りである。
　仕事に出られる訳がない。しかも高見舞からは再三「もう無かった事にしましょう」の一方的メールである。美佐枝の裸を見た男性が何人も居る職場に一歩足りとも恐ろしくて入れない。セクハラＯＫ秘書はおっぱいくらい見られているかもしれない。男性もあたりまえの様に成っている。でも自分には考えられない。有ってはならないことである。
　だがここで現実問題が浮上する。美佐枝は芳谷通商に来るまでブランクがある。預金などは使い果たして最初の頃派遣会社に給料日を待てず、途中までのタイムカードで前倒し支給をしてもらっていた。帰りの飛行機を自腹で帰れば、今月の家賃が払えない。芳谷通商に来てマンションを借り、芳谷に入居の保証人を頼んでいた。
　それまでは交際していた男性の家に居候していた。その男性とも別れた。芳谷通商を逃げて帰れば、マンションも移らなければならない。

　芳谷は美佐枝を励ましに行くつもりだったが、並木会長から呼び出しが掛かった。乾宮の並木邸を訪問していた。
　並木からは開口一番多岐江の話が出た。
「多岐江さんをお気に入りですか」
「え、あ、まあ」
「面倒を見てあげませんか」
「え、何故またいきなり」
「あの人には過酷過ぎます。面御を見てあげれば可愛い女になりますよ」
「会長は多岐江さんをお気に召されたのですか」
「芳谷社長が気に入られているのでしたら、無理に取ろうとは思いません。ただあのままは壊れてしまいます。芳谷社長が放っておかれるのでしたら、何とかしてやろうと思いまして」
「放っておきたくはないのですが、期間が終了しないと礼子というクラブのママがなかなか承知しない性質でして」
「何だそういうことですか。それなら極東金融に手を廻して何とでもしますよ。違約料の３００万位そのママに払ってやってください。あの女は可愛い女ですよ、付き合えば男の言い成りにあの美しい躰を任せてくれる貴重な女です」
「よろしくお願いします」
「ところで芳谷さんの会社は、鮮魚の量販店に対応する、受発注の代行を行なっていましたね」
「はい」
「実は私共で埼玉他の農場で大量の野菜の生産を行なっておりまして、日本国内の量販店の受注代行をやっていただけませんか」
「え、私共に日本向け受注代行をお任せ下さるのですか、それは願ってないありがたいお話です。何卒よろしくお願い申し上げます」
「半分は多岐江さんへのプレゼントのつもりなのですが」
「それはたいへん恐縮で御座います」
「あの人には若い男性では無理でしょう。ましてあのような姿を見られては、でも相手の存在が大きく、年齢も離れていれば甘えられるでしょう。芳谷さんが最適です」
　そこえ彌貴が御茶を運んでくる。昼間見る彌貴は清楚である。パーティで見た彌貴は男を魅惑の底なし沼に引きずり込むような妖気があった。
「彌貴、芳谷社長が多岐江さんの面度を見られるそうだ」
「よかった。でもあの高見舞って女酷すぎます」
「ドミナを雇っておられるのかと思いました」
　と並木も付け加える。
「いや御恥かしい。たった一度向うから応じられてしまい後はあの有様です。あんなことしか出来ないのですよ。仕事もあまり出来ないので田柄を派遣で入れていたのですが仲が悪くて、とうとう一昨日のざまです」
「なかなかすごかったですね。でもあの子も潔癖過ぎます。一度はああいう目に合ってもいいんじゃないですか」
「派遣会社を通して辞めたいと言って来ました。この後話し合いに行くつもりです」
「潔癖症で裸を見られちゃ続けるのは難しいでしょう」
「本人もうちを辞めたら困る事になると思うのですが」
「難しいでしょうね。彌貴ならああ成って職場に出られるか」
「お水商売なら行かれるけど、普通の会社だったら無理ね。どうしても行かなければならないところまで追い詰められたら死んじゃうかな」
「そうですか」
「問題は高見舞ですね。策に落として風俗に売ってしまいますか」
「そんなことが出来ましたら」
「こちらで手配いたしましょうか」
「え、そんな事まで」
「いいんですよ、多岐江さんが楽になって、あと私共の依頼を着実にやっていただければ」
「はあ、申し訳御座いませんお願い出来ますでしょうか」
「用意が出来たら、シャトーのママの件共々ご連絡差し上げます」
　彌貴が乾駅まで芳谷を送った。
「多岐江さん早く引き取ってあげて下さいね。とても可哀想です。あのままじゃ３ヶ月なんて持ちません。きっと気が狂ってしまいます。それにああいう女性は甘えられる人が必要なのです」
　彌貴は自分自身のことを多岐江に置換えて訴えているに過ぎなかった。パーティの間多岐江が狂ってしまうのではないかと自分のあの事の様に恐れていた。（第五章川越偏参照）
「わかりました」
「それと、田柄さんの事はパパに言っても駄目です。パパああいう潔癖な人ものすごく嫌いなのです」