第１１章　小さな裏切り

　どうだった？
「ああ、とっても、ああ、だめぇ、あなた、もう、お願いだから、あん」
　妻の美肉は、失神から覚めても中のヌルヌルはそのままでした。
　妻は、私の怒張を受け入れて目覚めたのです。
「私、あん、ああ、わたし、どうして、たの」
　気持ちよくて気を失ったんでしょ。
「そんな、ああ、あん、あなたが、ヘンなことをさせるから」
　感じちゃったんでしょ？
　しばらく、ためらった後、横を向いてコクリとうなずきます。否定するには、身体があまりにも過激な反応をしてしまったからでしょう。
　その上、一度、放出したのにもかかわらず、まだ、大きくなったままの私の怒張が、先ほどに劣らぬ快楽を送り続けていたせいもあるはずです。
　妻の腰が大きくうねります。目を閉じたまま、口が開きます。
「ああ、もう、もう、お願い、このまましたら…」
　どうなるの？
「あん、わから、ないけど、ああん、もう、ああ、身体が、あううぅ、おかしくなっちゃうから、ねえ、もう、やめて」
　ほんとうにやめても良いの？　
　私は、思い切って妻から怒張を抜いて見せました。一度放出した余裕がそれを可能にしたのです。
「ああ、いじわる、そんな、ああ、どうしたらいいの、ああん、おかしいの、ねえ、身体がぁ、ああぁ、へんになるぅ、あなたあ！」
　そう言って、妻は胸の前で手をクロスするように自分の乳房をつかむのです。身体が震えていました。
　自分の乳房を、揉みしだきながら、甘いうめき声を立て続けに放ちます。
「お願い、ねえ、もう一度、ねえ、ねえ、お願いよ、いじわるぅ、あなたったらあ！ああ！もう、もう、もう、ああ、おかしくなっちゃうぅ」
　妻の言葉は脈絡がなくなり、手はハッキリと乳房を揉みしだしていました。形の良い妻の乳房が、妻の細い指にぐねぐねと形をゆがめています。
　身もだえする妻を抱き起こすと、床の上に跪かせました。ベッドに座る私の膝の間にです。
　妻の目の前には、秘液でびっしょりと白い膜を張ったようになった私の怒張がそそり立っています。
　無言の私の頭にあるのは、先ほどオモチャ屋のオヤジの前で同じ体勢でフェラをした妻の姿です。
　妻も、それを重ねたのでしょうか。
　一度、大きく息を吸う妻の潤んだ視線に熱が込められています。
　私が何も言わなくとも、そこから、ためらう一瞬すらありませんでした。いきなり私の怒張をくわえ込んだのです。
　自分の秘液に濡れそぼった私の物を舌でこすりたてるように動かしています。
　そして自分の秘液をためらうことなく、喉の奥で懸命に飲み下しているのです。
　それは、まるで、贖罪の尼僧の祈りを思わせる表情でした。
　さっきのオヤジにいつの間にか仕込まれていたのでしょうか。私の物を口いっぱいに頬張ったまま、時折、私の目を見上げてきます。
　目の前にいるのは、見たこともない妖艶な女。一匹の淫婦。
　動きも今までのように単純ではありません。舐め、こすりたて、カリに沿って舐めまわし、時には尿道の先にまでその動きは及びます。
　その上、ズルズルと音を立てながら吸い上げ、唇でしごき立てながら、喉の奥まであたるほど深くくわえ、時に浅く吸いたてます。
　普段なら教室で子ども達にピアノを弾く細い指先は、袋の裏側にまで伸ばされ、繊細な指遣いで優しく撫でてきます。
　その動きは、紛れもなく、私以外のオトコによって磨き立てられたオンナのスケベな姿そのものでした。
　その秘唇の奥にオトコを受け入れることこそありませんでしたが、紛れもなく妻が私以外のオトコを知った証だったのです。
　あるいは、妻は圭司君の怒張を受け入れたとき以上にオトコを知ったのかもしれません。
　上手だね。誰に教わったの？
　もはや、冷たい声を出す必要はありません。私はいつもの、ベッドで妻を愛撫するときの声で、そう聞いたのです。
　一瞬、ビクッと動きを止めたあと、目を閉じて、そのまま、また奥にくわえ込みます。
　圭司君？それとも、あのオヤジかな？
「ああ、ごめんなさい」
　確かにそう言いながら、今度は妻は私を見上げ、潤んだ瞳でじっと私の目をのぞき込もうとするのです。
　もちろん、その間も、口の方は動きを止めません。
　いいんだよ。僕は君にこうなって欲しかったんだ。
　妻は明らかにホッとした顔をしながらも、一抹のなぜ？という表情を隠せませんでした。
　こんなにいやらしくなった君を見たかったんだ。
　そう言いながら、妻の乳首をきゅうっと指先で捻ります。
　喉の奥まで私を受け入れながら、くぐもった声で快感を訴える声が隠せません。
　ほら、僕のを飲み込むんだよ。さっきのオヤジのとどっちがおいしいかな。
　妻は、それを聞くと、一瞬だけ私から口を離します。
「もう、莫迦ぁ！気持ち悪かったんだから」
　手でヌルヌルと幹をこすりながらそう言います。
　僕のも？
　ううん、と言いたげに首を横に振りつつも、舌が怒張に絡みついたままでした。
「お願い、飲ませて」
　恥じらいを隠すように口早に言った後、再び私を飲み込むと、先ほどよりもダイナミックに唇でしごき始めたのです。
　妻が自分から、こんなことを言うなんて。
　今日の体験が妻にとってどれほどの意味を持ったのでしょう。
　妻は熱心にしゃぶっています。
　時には先端だけを舐めまわしながら、幹をこすりたて、時には喉の奥のヌルヌルした粘膜に押しつけるように飲み込みます。その濃厚な妻のフェラに、私は限界を迎えたのです。
「うっ、出すよ」
　妻は、直線的な動きに変え、私の物を吸い立てます。
　そのまま、私は妻の温かい口の中に、放出したのです。
　私の放出を受け止めると、ゆっくりとした動きのまま、喉の奥で懸命に飲み込んでいます。それは、２度目とは思えないほどの量だったかもしれません。
　半ば力を失った私の怒張から最後の一滴を絞り出すようにしたあと、私の目を見つめてきます。
　いいよと目で語りかけると妻はようやく、ゆっくりと口から解放しました。
「おいしい」
　そう言った後、急に照れたように、いやん、と言って、そのまま私に抱きついてきました。私のお腹に顔を押しつけるようにしたまま、ギュウッと私に抱きつきます。
「さ、今度は君の番だよ」
　だって、いま、独り言のようにつぶやいて、妻は私を見上げます。
　その目には、疑問符と一緒に、オンナの媚びが浮かんでいます。
　今さっき放出したばかりの私が、可能なのかといいたいのでしょう。
　そして、もし可能なら、もう一度、我が身に挿入して欲しい。
　そうです、先ほど中途半端で放り出された身体は、私に奉仕している間も、うずうずと欲望に震えていたのです。
　私は、無言のまま、ベッドの上に妻を抱き上げて仰向けにします。妻の両足は私に命じられることなく、膝を立てたまま広げられていました。
「これは、入れやすいね」
　私の言葉の意味がわかったのか、いや〜んと言ったまま、妻の両手は秘唇をかくそうとしますが、何となくと言った風情で、手をひらひらさせるだけで、隠し切れていません。
　足は広げたままでした。
「君のお気に入りをあげよう」
　妻が、えっと言った瞬間、右手に構えたバイブは妻の柔らかい肉の間に挟まっていました。
「あああん、だめぇ、それ、だめぇ、あん、あん、だめだ、ったら、あん、それ、とってぇ」
　妻はそれでも抵抗したのです。しかし、言葉では取ってと言いながら、肉体はもっともっとと求めるかのように、迎え入れるように腰を動かしてしまいます。
　なによりも、取ってほしいはずなのに、その両手は、けっして、オモチャを挿入した手をつかもうともしません。
　それどころか、足は、あっという間に、さらに広げられていました。目一杯広げられた足の間に、イソギンチャクを思わせる秘唇に黒いバイブが埋め込まれます。
　埋め込んだまま、スイッチを入れると、ブーンという感じでくぐもったモーター音が響きます。妻の整った眉が苦悶するかのように歪みます。
　わたしの動きを止めるはずの両手は行き場を失い、シーツに爪を立てるように、クシャクシャと必死になって握りしめています。
　そして、私は、この疲れを知らない「分身」で、妻を操りながら、昨夜の「秘め事」を聞き出したのです。
　幾たびも、言いよどんだり、隠す素振りをするたびに、バイブを半ば抜き出して、妻の欲望を操ります。この期に及んでさんざんじらされれば、妻は私の尋問に答えるしかなかったのです。
　もちろん、妻は私がビデオを見ていることなど知りませんから、できる限り、隠そうとします。
　私は、そうと悟られない程度に、嘘をついてない？と何度も聞き直すことで、ほぼ「本当のこと」を聞き出すことができたのです。
　私にとって少々意外だったのは、妻が最後まで圭司君のオトコのエキスを飲み込んだと認めなかったことでした。いったい、どういう心理なのか謎です。
　しかしそれ以外は、ほぼ全て喋りました。
　妻はやはり、若い牡がたくましく反応する姿を見て、オカシクなってしまったというのです。
　最初は我慢しようとしたのだと言います。
　しかし、圭司君が暴発して、牡のほとばしりを見た瞬間、体の中の何かが崩れてしまったような気がして、気づいたときには、圭司君のものを体内に納めてしまっていたと言います。妻があえぐ合間に聞いたのはこんな感じでした。もちろんさんざん言いよどんだり、嬌声とあえぎの合間、合間にしかしゃべれませんが。
　圭司君のはどうだったの？
「硬かった。なんだか、からだに突き刺さってしまいそうなほど。それに」
　それに？
「熱かったわ。あっという間に出しちゃったんだけど、それが体の中で、熱い！って感じなの」
　あっという間に終わっちゃったんだ。
「うん、お腹に熱いものが広がって。それで、ああ、私、あなた以外の人としちゃったんだって、思ってたら」
　……たら？
「ほんと、あっという間なの。入ったまんまで、すぐ、また大きくなっちゃったの」
　で、また、しちゃったんだ。君は逝った？
「最初の時はあっという間だったから」
　ということは…
　言いよどんだ後、うんとうなずいて
「ごめんなさい。そのまま大きくなって、今度は、さすがになかなか逝かなかったから。私、我慢できなくなっちゃって」
　結局、妻は圭司君の若いほとばしりを３度、その体内に受け止めていたのです。いくら若くても、立て続けに５度の放出をしたのには驚きでした。（妻の説明では口に発射したことが省かれているので４度目ということになります）
　もっとも、最後には、ほとんど何も出なかったようですが。
　一方で、涙と淫声をこぼしながらの告白をする間、妻はさんざんに焦らされたのです。
　さんざん、じらされた妻は、最後に半狂乱といってもいいほどの姿になり、総身が震えださんばかりで、涙を流しながら最後の一突きを求めることになったのです。
　私はある「命令」をします。
「おねがいぃ、もう、お願い、何でもするから、おねがい、ねえ、あなたが言うなら、今度、ちゃんと見せるから、何でもするからあ」
　セックスするんだよ、できるの？
「セックスするのぉ、ああ、圭ちゃんのオ○ン○ン、入れるから、おじさんのオ○ン○ンもいれるから、おねがい、あん、もう、なんでもするからぁ、ああん、ひどいぃ、いやあ」
　そして、妻は、私の前で圭司君との再びのセックスを自ら約束しながら、待ち望んだオーガズムが与えられたのです。
「いく、いく、いく、あっ、あっ、あっ、いくっ、いくっ、いくう！」
　すでに、声すらかすれ始めた妻は、そのまま、生まれて２度目の失神を経験することになりました。
　手を離しても、妻の奥深くは言ったバイブは振動したまま、しばらく奥に留まります。そして、ゆっくりと吐き出されてきたバイブは、妻の足の間に落ちると、ヴィーンといううなりとともにゆっくりと動いていました。
　それは、まるで妻の快楽の残り火のうねりのように、シーツの上で振動しながらゆっくりと動き続けていたのです。

「うちに帰ってからね」
　妻にそう言われながらも、やはり納得ができないのでしょう。
　圭司君は、お願い、お願いと画面の中で繰り返しています。
　私は今日も学校に来ています。もちろん、病院に寄って昨夜のビデオを交換してからです。
　茜ちゃんは、戯れることもなく寝た私に、ちょっぴり不満そうでした。それでも私の腕枕で幸せそうに寝て、今朝も新婚夫婦のように見送ってくれました。
　そして、目の前に映っているのは、昨夜も病院に泊まった妻が、圭司君の「お願い攻撃」に困っているところでした。
　それは、そうでしょう。
　圭司君は単純な骨折です。入院生活では、その若さと幼さが混じった肉体は、その、ありあまる若いエネルギーの行き場がないのです。
　そこにもってきて、セックスという最高の快楽を教えてくれたメスと二人っきりなのですから、覚えはじめの快楽にばかり意識がいくのはあたりまえのことです。
　おそらく、昼から妻のことを思い、何度も勃起しながら妻が来てくれる時を心待ちにしていたのです。
　もちろん望むのは妻の顔を見ることだけではありません。一度味わった女の肉体から、濃厚な快感をむさぼることばかり考えていたに違いないのです。
　若い牡の本能のようなものです。
　おそらくは、たった一人の病室中にムンと言う、オトコの性臭をまき散らしながら、快楽をもたらすメスを待ち続けていたはずです。
　二人きりになれば、
　しかし、私は、それを知っていて妻を送り出していました。
　妻には、こう言ってあります。
「うちに帰ってきたら、目の前でセックスさせてあげるから、病院では２度としたらダメだよ。何と言っても、看護婦さん達に知られちゃっているんだからね」
「そんなぁ、あの時は、どうかしていたの。もう絶対にしないわ。あん、もう〜、あなたの前でもしませんよ〜だ」
　ふうん、じゃあ見えないところでならするんだ、と混ぜっ返すと、妻は、可愛くすねながら、またぁ〜っと私の背中を叩きました。
　しかし、そう固く約束したはずの妻の目の前には、すでに妻を待ちかねて硬くそそり立っている圭司君のものがあるのです。
　なぜか、昨日と違って、何もしてくれない「亜希子先生」に苛立ったのか、突然、毛布をはねのけたからです。毛布の下の病衣は既にはだけられ、メスの味を覚えたばかりの若さに猛るオスの武器がそそり立っていました。
　その先端部分は、画面できらりと光りましたから、すでに先走るものをこぼしているのでしょう。
「先生、苦しいんだよお」
　教え子の泣き声一歩手前の「お願い」には、さすがに抵抗ができなかったようです。それとも、肉体を交わらせた者同士の特有の親密さがそうさせたのでしょうか。
　私には、若い牡のオトコそのものが妻の快楽中枢を刺激して、妻を虜にしたようにも見えました。
　それをフェロモンと呼ぶのでしょうか。
「そうよね、苦しいんだよね」
　それは、自分自身への言い訳をしたようにも聞こえます。
　女という生き物は快楽に浸るときにも、言い訳が必要なのでしょうか。それとも、私に対する背徳間への言い訳だったのでしょうか。
　妻の右手が吸い寄せられるようにペンシル型の怒張に伸びていきました。
　たった一日で、いえ、半日で進化した妻の手技に若い牡は１分も持ちませんでした。
「せんせい、でる」
　そう、せっぱ詰まった声を聞いた瞬間、妻は明らかにあわてたようでした。
　そうです。若さにみなぎった強張りからは、勢いよく白い液体が飛び出すことは昨日経験しています。あちらこちらに飛び散るはずです。
　まさか、こんなに早くという油断が、妻にはあったせいでしょう。若いオスの濃い精を受け止める用意を全くしていなかったからです。
　とっさに、妻は、自分の口で受け止める決心をしたようです。
　ひょっとして、枕元にあるティッシュで受け止めることだってできたかもしれません。昨日までの妻だったら、多分そうしたはずなのです。
　だから、自分の口の中で爆発させることを選ぶのは、きっと妻に受け止めたいという気持ちがあったからに違いありません。
　若いオスの精を受け入れたがってしまうのは女の本能なのでしょうか。
　画面には、足をピンと突っ張って、快感の引き金を引いている圭司君が映っています。　その股間に顔を伏せ、ゆっくりと顔を動かしている妻の顔。
　ゆっくりと動き続ける妻は、もちろん、そのまま飲み下しているのでしょう。
　いくら若いといっても、５度の放出の翌日です。それほどの量ではなかったかもしれませんが、ためらうことなく飲み下しているのです。
　それにしては、ずいぶん長く口に含んでいます。右手は、股間の影に入り込んでいますから、きっとその細い指先は、まだ、大きく垂れ下がってはいない「付属品」を優しく撫でているのでしょう。
　妻の細い首が圭司君の身体の上でゆっくりとうごめくのを見ながら、女という者の業の深さを思い知らされた気がしました。
　実は、この時、妻のバッグには高性能のボイスレコーダーを入れてあったのです。もちろん、妻は知っています。
「君が変なことをしないように、証拠を撮っておいて」
「もう、しないってばぁ」
「エッチな奥さんの真実を証明しておいで」
「もう。やだなっ」
　というやりとりで、無理矢理持たせたものだからです。
　妻は、だから、自分のしている音が録音され、翌日、私に聞かれるのを承知の上で、若い牡の精を貪らずにいられなかったことになります。
　もちろん、音だけではわからないかも知れません。しかし、妻自身は、夫に耳で監視されているのを知っていて、オトコを飲み下しているのです
　圭司君はそのまま２度目の発射を迎えたようでした。
　出したばかりとは言え、あの妻のフェラです。圭司君は、３分と持たせることはできなかったのです。
　はあはあと胸が大きく上下し、圭司君はすっかり出し切ったようでした。
　今度こそ妻は、顔を上げると圭司君の顔を見つめます。その目は、潤んでいるようにも見えました。とっさに思い浮かべたのが、昨日、後ろから胸を揉みしだかれながら、後ろ手にオヤジの怒張をいじっていたときの妻の表情でした。
　しかし、妻は、その潤んだままの表情で圭司君に告げたのです。
「ほら、２回も出したのだから、もう大丈夫でしょ」
　おいおい、２回も飲んであげた、と言わないのかよと心の中で突っ込みながら展開を見つめます。
「せんせい、でも、まだオッパイ触ってないし」
　明らかに圭司君は、セックスをしたがっていたのです。それでも、さすがに、そうとは口に出せなかったのでしょう。だから、女の象徴であるオッパイにこだわったのかもしれません。
「だめよ。苦しいのはもう治ったでしょ？」
　そう冷たく言い放ちます。
　あれ、何で離さないんだよ。
　妻は細い手首をひねるようにして圭司君のものを離しません。しなやかな指先で、圭司君の柔らかくなったものをゆっくりと撫でさすっているではないですか。
　あれでは、落ち着くどころではないでしょう。
　一方では、ダメと言いながら、他方では精を放った後の柔らかくなったオトコを、やわやわと弄ぶ妻の行動に、圭司君も戸惑ったに違いありまん。
　ダメと言いながら、妻の表情はひとつも「ダメ」ではありませんでした。
　戸惑っていながら、幼くても、牡の本能がきっとそうさせたのでしょう。
「せんせい、オッパイ触らないと眠れないよう。お願い。ちょっとで良いから、オッパイ吸わせてよう」
　悲しげな声でおねだりを繰り返すのです。
　あれ、触るのがいつのまにか、吸わせてになっているぞ、おやおやと思いながら見ていると、やはり妻はその気だったのでしょう。
　妖しい目をしながら、いかにも、しかたないという風情を装って、
「じゃあ、ちょっとだけよ。そうしたら今日は、もうおとなしく寝るのよ」
　そう言いながら、妻はあっさりとサマーセーターを脱いでしまったのです。
　あまりにも、あっさりと脱いでしまったことに、怒ると言うより驚きの方が大きかったのです。
　私が驚きから立ち直らないうちに、妻はあっという間にブラジャーも外してしまいます。
　ベッドの横に座る妻は、上半身に一糸まとわぬ姿になってしまったのです。
「ほら、ちょっとだけよ」
　一度立ち上がった妻は、上半身を圭司君の顔の上に倒します。
　かすかに、あん、という妻の声が聞こえた気がしました。
　きっと、妻の、やさしく、コリっとした乳首を圭司君が舐めているのに違いありません。
　そして、妻は、また右手をいつの間にか圭司君のものに伸ばしていたのです。
　圭司君のものは、早くも固さを取り戻し始めていました。そこに妻が触れたのです。３たび、圭司君のペンシル型のものが、怒張と呼ぶのにふさわしい姿になるのに、時はかかりませんでした。
　指先で確かめるように、妻の右手は強張りに沿って表面を動いています。
　その、微妙な感触に焦れたように、圭司君の怒張がぴくりと指先をはじき返すように動きました。
　妻の右手はそのまま、優しく包み込むように動きを変えました。
　ときおり、ぶちゅぶちゅという吸い付く音が聞こえます。妻の身体に隠れて見えませんが、圭司君が妻の胸を吸い立てているのでしょう。
　妻は、その度に片から落ちた髪を揺らしています。
　背中がひくり、ひくりと動いているのは、きっと、快感を貪っているからなのでしょう。
「せんせい、おねがい、せんせいに、せんせいのなかに、入りたいよう」
「だめよ、それだけは、だめなの、ね、ここではダメよ。ね、我慢して」
　あれ、もうしないと言っていたのに、ここではダメということは、他の場所、つまりは、家でなら良いのでしょうか。
　この時の妻の一言に私は考え込んでしまいます。
　圭司君を何とか、なだめようという一心なのでしょうか。それとも…
「そのかわり、ね、退院したら、いっぱいしてあげるから。ここではダメなのよ」
　そう言い聞かせると、妻の身体の下からの声は聞こえてこなくなりました。
「じゃあ、ごほうびに、口でしてあげようか？」
　あれ、さっきもしてたじゃないと私は妻の物言いに不思議な感じがしたのです。
　あっ、と突然、その意味がわかったのです。
　妻はやはりボイスレコーダーを意識しているのです。
　妻は、音だけなら、何をしてたかどうせわからないだろうと思ったに違いありません。だから、きっと、あとで言い訳するつもりでしょう。
「どうしても、って聞かないから、代わりに口でしてあげなきゃならなかったの、仕方がなかったのよ」
　つまり、さっきのフェラは私に秘密にするつもりに違いないのです。
　その証拠に、今度のフェラは、昼間私にしたように、ぶちゅぶちゅ音をさせながら、激しいものになっています。
　さっきは、きっと、極力、音が出ないよう、妻なりに気にしていたのでしょう。
　激しい動きに圭司君はいくらも持ちこたえることができませんでした。あ、あ、せんせい、と女の子のような声を出しています。終わりが近いのでしょう。
　すると、妻は急に口を離し、手でしごき始めたのです。
　左手にはいつの間に用意したのか、ティッシュを構えています。
「いいのよ、ここに出してちょうだい。ティッシュをあててるから大丈夫よ」
　そのまま、大きく動かした右手の中で、先端をティッシュに包まれたまま、ヒクンと爆ぜたのが見えました。
　妻はティッシュを何枚も音を立てて引き抜くだけ引き抜くと、そのまま床に落ちるに任せていました。
　もちろん、出した瞬間こそはティッシュの中でしたが、柔らかくなった圭司君の先端は、その時妻の口の中で清められていたのです。
　そうです。音だけを聞けば、フェラをしてあげたものの、最後の瞬間は、ティッシュに出して、そのまま拭いてあげた、と思わせる形を作ろうとしていたのです。
　それほど、オトコのエキスを飲むことは、妻にとって、秘密にしたいことなのでしょう。
　あるいは、と考えてみます。もし、オトコのエキスを飲むことに、女の喜びを覚えていたとしたら…
　そうです。昨日オヤジのエキスを飲み下したのも、命じられたからではない。妻のオンナが「飲みたい」と思ったからに違いないのです。決して、気持ちが悪いことを「我慢」していたのではないのです。
　そして、それを知られれば、妻は自らの淫乱さを私に追及されると恐れたのでしょう。
　私が研究室で妻の淫らな行動を全て見ているとは知らず、妻は、やっとおとなしくなった圭司君の毛布を優しく掛けているところでビデオは終わっていました。　
　淫らにうごめいていた妻の背中が目の前にちらつくような気がして、私のものは目一杯大きくなっていました。
　私はムラムラと猛烈にセックスをしたくなっていました。
　不思議なことに、妻の姿を思い浮かべながらも、怒張を包み込む感触を想像したのは、茜ちゃんのキツイしまりの、そのくせ弾力性に富んだナカでした。
　これも、オトコの悲しい性というものでしょう。
　しかし、茜ちゃんは、いま部活中のはずです。でも、いますぐしたい。そう思うと居ても立ってもいられなくなりました。あのみずみずしい肉体を腕の中に。
　今すぐ…
　そして、あのびっしりと肉が詰まったように窮屈な美肉に怒張を今すぐ突き立てたくなったのです。
　居ても立ってもいられず、一つのアイディアを思いつきました。
　茜ちゃんの担任に電話することにしました。
「あ、どうも、先日は。ええ、おかげさまで退院も予定通りいきそうです。ええ」
　突然の電話に森先生は、どこか緊張気味です。そうです。事故が知られれば、それなりに難しいことになるのです。学校へ電話してきたことを明らかに心配しているのです。
「で、あの、お姉ちゃんの方なんですが。学校の様子はいかがですか。いえ、圭司君のことがあってから、どうもふさぎ込みがちでして。ええ、部活に行っているはずなんですが、学校の様子が心配なもので」
　こう切り出せば、安心した森先生が「部活姿を御覧になりますか」と言ってくるのも当然でした。
　本来は、保護者ではなくとも、こう言うときに地元の高校教師であることも役立ちます。森先生はたちまち私が学校に入る許可を取り付けてくれたのです。
　私は、茜ちゃんの学校に堂々と入り込むことができたというわけです。
　その上、同じ職業に就いているものとしての安心感なのでしょうか。それとも、根っからの人を疑うことを知らない性格なのでしょうか。
「お忙しいところをご迷惑かけられません。見学させてもらったら、すぐそのまま失礼しますから」
　体よく森先生を追い返せば、私の行動を妨げるものは何もなくなったのです。
　会う前から、すでに私のものは膨らんでいました。
　校舎のコンクリートが焼けて、空気までがどんよりと澱んでいる午後のことでした。