第１５章　お帰り！

　お帰りぃ。
「ただいま！」
　さすがにうれしそうです。
　いろいろあった入院生活も、後半は、何もなかったはずでした。
　圭司君の頬が紅潮しているのも、単に「帰ってきたうれしさ」だけではないような気がします。
　さ、とりあえず、さっぱりしておいで。お風呂湧かしておいたよ。
　遅れて入ってきた妻には目もくれず、圭司君に微笑で、声をかけました。
　圭司君は「はい」と素直に答えます。茜ちゃんはあいにく登校日で、昼過ぎに迎えに行くことになっています。
　すねる茜ちゃんを学校に出すのは大変でした。
　私は、そのまま、目だけを動かして、玄関で靴を脱ぐ妻にも声をかけます。
　ねえ、圭司君、不自由だろうから、君も付いていてあげたら。さっぱりさせてあげなよ。
　帰ってくる早々の私の言葉に、妻は、一瞬けげんな顔をします。
　しかし、さっぱりと、という言葉に思い当たったのでしょうか。
　どぎまぎした顔をちらっとのぞかせた後、そのまま無表情になりました。
　私は、妻が腹を立てたのかとも思いましたが、しかし、その目元が、ほんのり赤くなるのを見逃しは、しませんでした。
　その目が、どこか淫靡な気配を漂わせたように感じたのです。
　妻が黙って私の前を通り抜けます。
　通り過ぎる瞬間、私は、イタズラ心を起こして、さっと、軽いタッチで妻のヒップをなで上げてみました。
「あん」
　思わぬタッチに、妻は不意を突かれたせいでしょうか。ヒップを軽く撫で上げただけとは思えぬほど、色気のある声を出してしまいます。
　慌てて、私の手を振りはらうと、口の動きだけで「莫迦」とすねたような、それでいて甘えるような表情。
「も〜う」
　媚態を含んだ、見たとこもない妻の表情。たしかに、そこには、妻のオンナがありありと出ていた気がします。
　くるりと振り返って、圭司君に声をかける妻。
「行こ、圭ちゃん。ちゃんと洗ってあげるからね」
　ちゃんと、出してあげるの間違いでしょ、と心の中で突っ込みを入れていると、妻は圭司君の背中を押すようにして、足早に廊下を歩いていってしまいました。
　私は、ちょっと遅れて、足音を忍ばせるように、こっそりと風呂場に向かいました。
　いつもは開け放たれているはずの脱衣場の戸がぴたりと閉まっています。
　ぴしゃりと閉ざされた扉こそが、中で行われている淫靡を物語っている気がしました。
　でも、こんなことを予想していた私は、ちゃんと細工してあります。今は便利なものでビデオカメラの映像を電波で飛ばすことができるのです。
　モニターとのセットは、私には痛い出費でしたが、どうしても見たい気持ちには、換えられませんでした。
　持ち出したモニターの電源を素早く廊下のコンセントに差し込むと、ちゃんとモニターには、見慣れた我が家の脱衣場が映し出されます。
　画面は鮮明でしたが、声は聞こえません。しかし、それで十分でした。
　なぜなら、戸一枚で隔てられた中の物音は、耳をつけるまでもなく、しっかりと聞こえてくるからです。
　妻は、圭司君の下着を脱がしているところでした。
　下着を脱がす時に、手を入れて、なにやら動かしたのは、硬くなった怒張を引っかからないようにズラしたのでしょう。
　たとえ、一瞬であっても、妻の柔らかな手に包まれたのです。
　その時の、気持ちよさそうな圭司君の顔。
　現れたのは、成長途中のペニス。
　若いからこその勢いで、早くも、ヘソにくっつきそうな角度で、硬くなっています。
　妻は、それから目を反らせるようにして、今度は自分が脱ぎ始めます。
　妻は圭司君と目を合わせようとはしませんでした。圭司君は切ない目をして、次々と、こともなげに脱いでいく妻を見つめています。
　さすがに、最後の１枚を脱ぐ瞬間だけ、いささかのためらいを見せた気がしました。でも、ひょっとするとそれは、私がそうあって欲しいと思って見ていただけかもしれません。
　一度脱ぎ始めると、するすると足から抜き取る仕草には、とまどいも、ためらいも見えませんでした。
　この姿だけを見れば、普段、一人で風呂に入っていくような姿そのままです。
　しかし、今は、その露わになった白い肌を、羨望と欲望のまなざしで見つめている「男」が、すぐ側にいるのです。
　目の前には、まだ生白いカチカチになった強張りがあります。その硬直したモノは、オトコの欲望そのものでした。
　妻は一糸まとわぬ姿で無言のまま、圭司君の前に立ちます。
　フルフルと揺れる乳房の先端で、ピンと勃った乳首が見えています。
　まだ、妻の方が背が高いので、ややうつむいた圭司君の目線は、ちょうどその揺れている乳首の位置でした。
「せんせい…」
　妻の頬がほんのり赤くなって、興奮しているのがわかります。
「また、大きくなっちゃったね」
　そう言いながら、妻は、ごく自然な動作で、右手を伸ばし、圭司君の強張りを柔らかく握りしめました。
「あうう」
　圭司君が、目をつぶりながら、感嘆のため息を漏らします。
　妻の白い手が、やわやわと握りしめ、なでさすると、圭司君は自然に腰を突き出し、足を広げたまま、はあはあと息が速くなるようです。
　まだ、いくらも動かさないうちでした。
「せん、せい、ああ、もうでちゃうよぉ」
　最後は、悲鳴のような、せっぱ詰まった声を、それでも押し殺して妻に告げます。いつの間にか、圭司君はジリジリと後退りしていて、今や、洗面台の縁に半ば腰掛けているような状態でした。
「いいのよ、一度出しておこうね」
　妻は、そう言いながら圭司君の足の間に跪きます。
「ほら、ほら、いいのよ、一度出しておけば、後で大丈夫だから」
　え？後で？
　妻は、後でどうするつもりなのでしょうか。
　もちろん、溜まっているオトコが久々にセックスをするときは、そう言う物言いをする場合があるのは知っています。
　欲望が溜まりに溜まっていると、女性のナカで我慢する暇もなく、暴発してしまうから、その前に出しておく。
　妻が言っているのは、そう言うことです。
　そうすると、妻は、「後で」セックスまでも、してしまうつもりなのでしょうか。
　病院でするのとはわけが違います。
　同じ家の中に夫がいるのです。もちろん、賢い妻のことです。私が覗いているかもしれないことは承知しているはずです。
　それでも、してしまうのでしょうか。
　私が混乱している間に、妻は、全くためらうことなく、圭司君の尖ったものを口に含んでいました。それも、いきなり、追い込んでいくような、前後の速い動きです。
　明らかに、妻は、そのままで圭司君が射精することを望んでいました。もちろん、そのまま飲み込んでしまうつもりでしょう。
　あるいは、ひょっとして、と思います。
『妻は、青臭い精液そのものを、本当は飲みたいのか？』
　ふとそんなことを思わせるような、性急で、激しい動きでした。
「したい盛り」の男の子が、他人の目を気にして、数日といえども、オナニーをたやすくできない環境にいたのです。
　おまけに、オンナのナカに射精することを覚えてしまっていたのですから、溜まっているという表現ではすまないほど、欲望は、せっぱ詰まっていたのでしょう。
　限界は、すぐ、訪れました。
　ほんの数分と保ちませんでした。
「せんせい、で、るっ」
　圭司君も、私が同じ屋根の下にいることが気になったのでしょうか。
　押し殺した声で、そう叫びながら、伸び上がるように背筋をピンとさせて、足まで反っくり返ったような姿勢になります。
　そのくせ、自由になる左手は、妻の頭に置かれています。
　遠慮がちではあるけど、しっかりと頭を押さえ込み、妻の口の奥深くに引き金を引き続けていました。
　圭司君が、逃すまいとした口は「そんなことは心配する必要がないのよ」と言わんばかりに、深く、深く、圭司君のモノを飲み込んでいました。
　妻は、顔を圭司君の股間に押しつけるようにしたまま、ゆっくりとした動きです。きっと、舌は、男のエキスを搾り取るように、ぬめぬめと動かし続けているに違いありません。
　妻はなかなか、舐めるのをやめようとしませんでした。
　小さくても鮮明なモニターでは、コクリ、コクリと飲み下す動きを見せる喉が、見えています。
　これ以上ないほど、美味しいものを与えられた、善良なる乙女のような、神々しい表情に見えました。
　実は、ただでさえ、ここ数日間、妻を「飢え」させていました。
　寝る前に、ほんのわずかばかり、戯れのように触れながら、妻が濡れた声を漏らし始めると、わざと寝てしまうのです。
　寝たふりをした私を揺り起こそうとする妻の顔には、媚態と、怒りすら浮かんでいたのを、しっかりと盗み見ていたのです。
　そんな、酷な焦らしをされてきた妻には、圭司君とは違う、性への渇望があるに違いありません。
　あの日、ベッドで叫ばせた、圭司君への欲望。
　連日、私は悪魔と化して、あの日のベッドでの狂乱を囁き続けてきています。
　妻の頭の中は、もはや「夫に洗脳されたから」という言い訳を自分にしてもおかしくはないはずでした。
　もちろん、目の前の若いオスは、もっと、もっと、本能的な部分で「飢え」ています。
　そのオスの目の前に、裸の魅力的な女性がいるのです。ひざまずく妻を見下ろせば、ふるふると揺れる乳首が見えるはずです。
　しかも、オスは、その女性の美肉の味を知ってしまっています。
　これで刺激を受ければ、いえ、受けなくたって、こんな狭い場所に２人きりでいれば、オンナの匂いが、姿が、たちまち、オスを可能な状態にさせてしまいます。
　おそらく、妻の温かい口の中で、欲望を放ったばかりなのに、再び力がみなぎり始めたに違いありません。妻の頭の動きが、それに合わせるように大きくなっていきます。
「もう、大きくして、ふふ、やっぱり元気ね」
　妻はようやく口を離すと、実に楽しそうに笑いながら、そっと、右手で撫でさすります。
　唾液に濡れて光るモノが、妻の細い指の間から逞しい顔を出していました。
「もういっぺん、出しておく？」
　そう言いながらも、妻は、ゆったりとした手の動きを変えません。
　いつの間にか、妻の目つきが変わっていました。
　あの、いつか病室で見せた、何かに魅入られたような目つきです。
　そんな妖艶な目で、見上げられれば、圭司君ではなくても、その妖しい魅力に勝てないに違いありません。
　まして、圭司君にとっては初めての女性です。
　圭司君は、目の前のオンナの、柔らかくて、それでいてみじんも隙間ができない肉襞に包み込まれる快感を知ってしまったのです。
　そんな彼にとって、せっかく裸で向き合ったのに、口で出してもらうだけでは我慢ならないに決まっています。
　もはや妻の妖しい美しさに飲み込まれ、私が同じ家にいることすら頭に浮かばなくなってしまったのでしょう。
　押さえようのない、叫びが、圭司君の口からこぼれてきました。
「せんせい、せんせいのなかへ、おねがい…」
　妻はその言葉を待っていたかのように、そのまま、すっくと立ち上がります。
　そして、やわらかい胸を圭司君に押しつけるように首に手を回し、唇をゆっくり重ねていったのです。
　最初に、圭司君がためらったのであれと思いましたが、すぐに思い当たりました。そうです。いましがた、妻の口の中にたっぷりと出したばかりなのです。
　さすがに、経験が浅く、自分が、ついさっき、出したばかりの口にこだわってしまったのでしょう。
　しかし、あこがれの女性の唇が嫌なはずがありません。
　妻と圭司君は激しいキスをしています。いえ、むしろ、妻が圭司君の唇を奪うような姿でした。
　そして、徐々に妻の下半身が圭司君の、再び力をみなぎらせた強張りにピタっとくっついていきます。しかし、角度から言って、妻の入り口をこするのがせいぜいのはずでした。
　そう思った時、妻がぐっと背が伸びたように感じたのです。妻がつま先立ちをして高さを調節したのです。
　そのまま、圭司君の痩せたお腹に滑るように降りていけば、角度が付いた、カチンと硬くなったモノはそのまま妻の中に滑り込みます。
　しかし、妻は心から楽しむように、圭司君の目を見つめながら、ゆっくりと身体を降ろします。圭司君の切なそうな顔。
　妻は、若い牡がとまどい、じらされる顔を楽しいんでいたのです。
　心から、若いオスの性を楽しんでいるメスの表情、そのもの。
　しかし、妻は計算していませんでした。相手の若さを。
　待ちきれないオスは自ら背伸びをすることでメスの中心を一気に貫いたのです。
「あうん」
　今度は悩乱するのは、妻の方です。
　思いも寄らないタイミングで、女性の中心にいきなり若いオスが入ってきたのです。
　不意を突かれたオンナの中心は、それでも、既に迎え入れる準備が整っていたに違いありません。
　すんなりとその全体が入ってしまって、その硬いものであちこちをかき回されれば、たちまち、受け身一方です。
「あうう」
　かすかな婬声を響かせながら、突き立てるオトコに合わせて、腰を振ってしまいます。快感を貪っているメスの仕草でした。
　妻までも、私のことが頭から離れてしまったのでしょうか。それとも、私の意を受けてしているつもりなのでしょうか。
　いえいえ、そのつもりなら、私が見ている前でしてくれなければいけません。モニターで映るこの姿ではなく、直接手を伸ばせば妻に触れられる、すぐ目の前で。
　キスを貪りながら、妻は積極的に腰を動かし始めました。
　ぴちゃぴちゃとしめった音がかすかに聞こえてきます。
　ほっそりとした妻が、それよりもほっそりした少年をくわえ込み、腰を動かしている様は、まさしく官能的な絵でした。
　洗面台に寄りかかった圭司君の腰をまたぐようにして、自ら少年の怒張をくわえ込んで、快感を貪っているメスの姿なのです。
　私は、しばし見とれてしまいましたが、ハッと気づき慌ててしまいました。
　こんなビデオ越しではなく、私はその場にいたいのです。
　圭司君を弄ぶ姿を直接この目で見たいのに、このまま、こんな所でセックスさせてしまってはなりません。
　せっかく、この間、「次の交わりは、私と一緒に」と約束させたのです。
　絶対に、このまま、この場で終わらせてはなりませんでした。私は茜ちゃんが帰ってくるまでに勝負を決めようと覚悟を決めました。
　私はモニターをそっと切ると、息を整えます。懸命に深呼吸し、股間を鎮めると（まあ、気休めですが）いきなり戸をあけました。
「あ」
　誰の声だったのでしょうか。
　妻は私の前でつながったまま、叫びとも悲鳴ともつかない細い声を出し、動けない様子です。
　しかし、一瞬で我に返ったのか、とっさに、圭司君から降りて向こうをむいてしまいます。とっさに動けない、圭司君の尖ったままのモノは、妻の秘蜜で、びっしょりと濡れていたのが見えました。
「圭ちゃん、先に温まっていなさい」
　浴室に追い立てます。
　妻も無言で後に続こうとします。私は、その右手を後ろからつかんで引き止めます。
「だって、あなたが、あなたがいけないんだから…　ヘンなこと言うから…」
　私に目を合わせず、小さな声で言い訳とも付かないことを口にします。
　いいんだ、何しても。ボクが望んだことだからね。でも、こんなとこではずるいよ。
「え？」
　私の口調が優しかったせいでしょうか、妻はとまどった様子でした。
　なかなか、君もエッチだよね。
　そう言いながら、妻の右手を引き寄せ、私の前を触らせます。依然として私は大きいままだったのです。
　妻は、驚いた表情をしましたが、そのまま大人しく、逞しくなった私のモノをなで続けました。
　圭司君を洗ったらすぐ出てくるんだ、いいね、そのまま寝室においで。
　妻は、黙ったままでしたが、その目は妖しく潤んでいました。私が何をしたいのか、伝わったに違いありません。
　いいね、待っているよ。君は先に上がって、そのまま、来るんだよ。
　私がゆっくりと妻にキスすると、かすかに、私ではないオトコのエキスの匂いがしたような気がしました。
　もちろん、気のせいではなく、ついさっき、若いオスのエキスをたっぷりと飲み込んでいる妻の口です。
　じゃ５分後に。
　そう言い残して妻の背中を押しました。
　妻は、無言のまま、ドアを開けると、あふれ出てくる湯気と引き替えに、男の待つ風呂場に背中が消えていきました。
　
　私は、裸になりながら、寝室の時計で、時間を確認します。
　茜ちゃんを迎えに行くまで、あと２時間。
　長い一日になりそうでした。