第４章　背中


　翌朝。結局、私が、一番寝坊してしまいました。
　妻がベッドまで来て起こしてくれます。新婚時代のようでした。
　私が目覚めると、腰がまだだるいんだからぁ、とささやいて、ベッドから去り際に、朝ご飯、食べちゃったよって言いながら、上機嫌で去っていきました。
　圭司君は、友だちと野球に出かるようです。我が家に住んでいることは内緒ですから、自転車に乗って出かけます。
　今日は隣の小学校との試合だとか。妻が圭司君にお弁当を作っていました。
　さすがに若いなあ。
　ちらっと、圭司君のペニスを扱いて放出させていた茜ちゃんの姿が浮かびました。
　茜ちゃんは、部活です。茜ちゃんの学校の方が遠いので、こちらは、妻の車に一緒に乗り、途中で、降ろしていきます。
　夏休みです。
　出勤する予定のない私が、部活を終えた茜ちゃんを迎えに行く役です。
　それまで、本でも読んで、と言いたいところですが、こんな場合は、先に主夫業をこなしておくに越したことがありません。
「行ってらっしゃいませ、ご主人さま」
　私がおどけると、茜ちゃんと妻は、２人そろってきれいなソプラノの声でひとしきり笑ってから、行ってきま〜すと肩を並べて出かけていきました。
　扉が閉まった瞬間から、すでに私は主夫モードです。
　朝食の食器類を食洗機に放り込んだら、洗濯物です。
　脱衣所に立つと、昨日のことをしみじみ思い出してしまいました。
　ふと気づいて、慌てて、妻のブラジャーを探してみます。
　すると、すでに妻の手で洗われてしまったのでしょう。一つだけ濡れたブラが、汚れ物の籠の下の方に放り込まれています。
　私の思惑などお見通しか、と苦笑いをしながら、久々の洗濯係です。そう言えば、２人がうちに来てから初めてです。
　私が、ひょい、ひょいと洗濯機に放り込んでいるうちに。
　ありました。
　妻のではない、シンプルな白い下着が。
　家に来てから妻と買ってきた新しいブラでしょう。年齢にふさわしくシンプルだけれど、なぜか、清楚なお色気を感じます。私は思わず、その匂いを嗅がずにはいられませんでした。
　若さゆえの、ちょっと汗のにおいが混じった、それでいて、その汗のにおいはちっとも不快ではなく、むしろ、甘さだけが感じられる匂いでした。付き合いだした頃の妻にも、微かに残っていた、少女特有の開きかけた花だけが持つ匂い。そんなかすかな残り香に、思わず、勃起してしまいそうになる自分に我ながらあきれてしまいました。
　さすがに昨日の圭司君の姿を思い出すと、苦笑するしかありません。一気に、ネットに入れて、洗濯機に放り込みます。思いっきりよくしないと、昨日の圭司君のようにしてしまいかねませんでした。
　ふと見ると、ブラの下にあるのは、やはりシンプルなパンティでした。
『あれ？どうして、もう一つあるんだろ』
　もう一つあったのです。こちらは、手洗いした跡が歴然としていました。
　なぜでしょうか。２つもあると言うことは、このどちらかは、朝か、昨夜、取り替えたものでしょう。そして、濡れ具合から見ると、手洗いしたのは、ついさっきという感じです。
　考えられることは一つだけでした。
　どうやら、茜ちゃんも、私達の夫婦の営みを見て、濡らしてしまったようです。もしかすると、弟のものとはいえ、男のペニスをいじって、射精に導くという行為が、まだ未成熟なはずの官能を刺激したかもしれません。
　パンティを汚してしまうほど濡れるというのは、あのくらいの年齢にしては、官能が豊かな証拠のような気がしました。
　もちろん、だからといって、あんな少女をムリヤリどうにかしようなどと思いもしませんでしたが、あれほど激しくセックスした翌日なのに、怒張だけは正直に硬くなったまま、いつまでも柔らかくなろうとしなかったのは事実でした。
　
　なんだか、落ち着かない日です。何かを考えようとしても、頭が働きません。でも、ぼんやりしていても、茜ちゃんを迎えに行く時間だけは覚えていました。
　いえ、正直に言います。
　茜ちゃんを迎えに行く時間だけが気になって仕方がなかったのです。
　気がついたら、風呂の用意をしていました。一緒に入れるはずもないのに。
『いいなあ、けいちゃん、先生とお風呂に入れて』
　頭の中で、昨夜の茜ちゃんのセリフが、何度も反響していました。

　約束の時間よりだいぶ早く、河川敷に来ていました。待ち合わせ場所です。
　太陽にじりじり照りつけられながら土手の上で待っていると、茜ちゃんがようやく現れました。
　土手の道を、きょろきょろしながら、ジャージ姿で歩いてきます。
　こっちに気がつかないようです。
　軽く手を挙げて、合図をすると、ぎょっとしたように立ち止まって、そして、ハッと気がつくと、ニコニコしながら駆け寄ってくるのです。あどけない、良い笑顔でした。
「ごめんなさい、気づかなくて。あ、あと、ありがとうございます、迎えてきてくれて」
「いいよ、いいよ。バイクで来るって言っておけば良かったよね」
　私の唯一の趣味と言っていい、イタリア製の大型バイク。今日はそれできたのです。茜ちゃんにヘルメットを渡して、後ろに乗せます。
「わあ、バイクに乗るのって初めて」
　無邪気に喜ぶ顔は、輝いています。
　飛ばすから、しっかりつかまっててね。しかし、バイクに跨った私に、少し戸惑ったような顔を見せます。
「はい。あの、でも、今日部活で…」
　どうしたの？
「あの、汗をかいてるから…」
　ああ、大丈夫だよ、ぼくも汗ならかいてるから。
「お互い様でしょ。茜ちゃんが、嫌じゃない範囲で、しっかり掴まって。うちに帰ったら、お風呂、湧かしてあるから入ろうよ」
「はい」
　茜ちゃんは、うれしそうに顔を輝かせると、一気に後ろに乗り、思いっきりしがみつくようにつかまってきます。
　しまった。
　乗り方をきちんと説明しなかったのがいけないのです。茜ちゃんは、しっかりとつかまるという言葉を、本当にその通りにしてくれました。
　ぴたりと私の身体に身を寄せて、私のおなかのあたりで回した両手を、結びます。
　背中に、茜ちゃんの身体がぴたりと重なり、思いっきり押しつけられるような格好です。
　その日は、暑かったのと、近くまでという気安さで、バイクジャケットではなく薄いポロシャツでした。そして、茜ちゃんも、上は、夏用の薄い白い体操着一枚です。
　つまりは、背中に、柔らかくて、ちょっとコリコリしたものを感じることになったのです。
　布地一枚、いえいえ、あの、可愛らしいブラも入れると三枚ですね。でも、それだけしか隔てるものがない感触は、ほとんど直に茜ちゃんの膨らみかけの胸を感じているのも同然でした。
　汗で、お互いの服も湿っています。だから、よけいぴったりくっついた感じがします。弾力性のあるふくらみの中央部には、そこだけ感触の違う部分があることすら分かる気がしました。
　カーブのたび、スピードを上げ下げするたびに、茜ちゃんはギュウッと私の身体に、さらにくっつき、その度に、背中に押しつけられた胸は、形を変え、くっつく方向を変えました。
　まるで、胸をわざと押しつけているかのようです。
　男の本能として、膨らみかけとはいえ、くっつけられた胸は、純粋にうれしいものです。一方で、これだけ無邪気にくっつけるということは、男への警戒心もまだ、芽生えてないのかなと、変な安心ができました。
　伊豆の踊子に出てきた、あの温泉で手を振る踊り子を見た「私」の気持ち、と言うのにも近い物があったかもしれません。
　そうだよ。彼女は、まだ子どもなんだもの。
　ひょっとして、昨日言っていた、私と風呂に入りたいというのは、妻の言うとおり「お父さんという存在」への憧憬のようなものかもしれませ。
　私は、必要以上に、彼女をＨな目で見てしまっていたのかもしれません。きっと、彼女は、子どもの部分がまだまだ大きいんだ、今は、そう思えます。
　その時は、茜ちゃんの手洗いした下着のことも、圭司君のものをそのきゃしゃな手で出していた姿もすっかりどこかに飛んでいました。明るい日差しが、茜ちゃんの中の「子ども」だけを照らしていたせいかもしれません。
　ともかくも、これだけ、無警戒に、恋人でもない男に自分の胸をくっつけるなんて、子どもでもなければ、とてもできるもんじゃない。そう思ったのです。
　
　あまりにも、バイクを喜んでくれたので、少々遠回りしてしまいました。もちろん、背中の感触がそうさせたということもありましたが、それでも、バイクで飛ばせば２０分ほどでした。
「ありがとうございました。おもしろかったあ、また、乗せてくださいね」
　地下の駐車場で、降りるなり、茜ちゃんは、そう言って、うれしそうにしています。初めてのバイクに興奮したのか、赤い顔をしています。
　身体をくっつけることに慣れたせいか、エレベーターに向かう一瞬に、茜ちゃんは私の手をとって、腕を抱えこむように回してきます。まるで、休日の親子か、恋人同士のように。
　私は、平然を装いながらも、動揺が隠せてなかったかもしれません。
　茜ちゃんは私の腕を抱きしめるようにしていたため、私の二の腕が完全に胸に押しつけられていたからです。
　背中とは比較にならない敏感な感触で、茜ちゃんの胸を感じながら歩くのは、たまらない喜びを覚えました。恥ずかしがり屋の妻とも、こんな歩き方をしたことがありません。
　なぜか、紅潮したままの頬と、気のせいか、私のことを熱い目で見上げているように感じる瞳に、年甲斐もなくクラクラしそうでした。それに、なんと言っても腕に当たる意外にボリュームを感じさせる胸の感触に心を奪われてしまいます。
　茜ちゃんは、ドギマギする私にはお構いなしに、バイクに乗って楽しかったこと、部活で起きたこと、とめどなく熱心にしゃべるのです。
　私は上の空でした。無邪気に腕にくっつけられた、弾力性のある胸の感触が私を誘惑していたのです。私は懸命に、腕をわざと動かして感触を確かめたいという欲望と闘うだけで精一杯だったのです。
　私の中の男の本能が悦楽に震え、一方では、茜ちゃんの無邪気さに、ホッと救われる思いがあったのも本当です。そのくせ、彼女の無邪気さを利用して、胸の感触を楽しんでいる気がして、チクリとした罪悪感の痛みも覚えもしました。
「ただいまあ」
　誰もいない我が家に入るときにも、茜ちゃんは元気にただいまあとあいさつして入ります。ついつい、そんな姿がうれしくて、後から入った私が返事をします。
「お帰りぃ」
　振り向いた茜ちゃんは、ふふっと笑って、なんだかうれしいと言ってくれました。ふわりと振り向いた瞬間に、髪の毛が広がって、昨夜のシャンプーの香りが広がります。
　女の子って、汗をかいても、こうなんだよなあ。鼻腔に届いた女の子の香りに、クラリとして、そのまま抱きしめてじっくりと匂いを嗅いでいたいという欲望がチラリと頭をかすめます。もちろん、そんなことを気取られてはなりません。
「さ、お風呂に入っておいで、食事は、その後だ」
「は〜い、あの、おじさんも入りますよね」
　なぜだか、はにかんだような表情の茜ちゃんに、一瞬ドキリとしましたが、別に一緒に入るか、という意味で聞いてきたわけではなく、汗をかいているから、私がお風呂に入りたいのか聞いてきたのに決まっています。
　そうだね、後から入らせてもらうよ。
「ほんとは、おじさんが先じゃなきゃ行けないんでしょうけど、恥ずかしいから、先に入らせてくださいね。すぐですから」
　茜ちゃんは、申し訳なさそうに、そう言います。
　ゆっくり入って良いんだよ。
　後ろ姿を見送る私は、腕に残る、あの弾力性のある感触の残滓を反芻していました。
　別に覗いたりなんてしませんが、若くて可愛い女の子が、すぐ側で風呂に入っているのかと思えば、誰だってドキドキすると思います。
　私は、なんとなく落ち着かなくて、見もしないテレビをつけ、新聞をめくりました。
　そんな落ち着かない時間は、１５分となかったでしょう。しかし、ずいぶん長く感じたのは事実です。
　予想していたのより、だいぶ早く、おじさ〜ん、どうぞ〜と声がかかりました。
　は〜いと返事をしながら、そんなに慌てて上がらなくても良いのにと思いながら、それでも、素早く、風呂場に行ってしまいました。
　着替えたばかりの茜ちゃんとすれ違えたらいいな、という下心があったのは認めます。
　しかし、脱衣場への戸を開けてみたら、すでに誰もいませんでした。いささかがっかりしながら、それでも、何気なく、汚れ物をチェックしてしまいした。
　今日の洗濯が終わったばかりです。汚れ物の籠の中には、茜ちゃんの下着とジャージだけが入っていました。
　ジャージの下に隠すように入っている、軽くたたまれた下着を、つい手に取ってしまったのです。
　ブラからは健康的な、甘い匂いがします。そして、パンティーからも。
　あれ？
　クロッチの部分です。
　そこには、分泌物がしっかりついていました。
　透明で、ねっとりとしています。
　生理前か何かでしょうか。まだ、乾きもせず、光る分泌物は、ついさっきまで、これが茜ちゃんのオンナの部分に密着していたことを思い知らせます。
　まるで、大人のオンナが興奮した後の下着のようでした。もちろん、茜ちゃんがそうなっているはずもなく、きっと、若さゆえにいろいろとあるのだろうと、ムリヤリにでも自分に言い聞かせている自分がいました。
　ただ、何よりも、思わず、勃起しそうになっている自分に困惑してしまいます。茜ちゃんが戻ってくる可能性を考えなければ、それを鼻に当てていたかも、いえ、昨夜の圭司君と同じことをしてしまったかもしれません。
　まさか、あんな可愛らしい少女に、そんな姿を見られるわけにはいきません。あわてて、自分のポロシャツを脱ぎ捨て、一緒に籠に放り込みます。
　ジーンズもしごき降ろすと、既に半ば以上堅くなってしまった私のものがトランクスの生地を突き上げて、テントを張っています。
　自分の節操のなさに、いささかあきれながら、まあ、シャワーでも浴びれば治まるだろうと、裸になってガチャリと風呂へのドアを開けたのです。
「えっ」
　湯船につかっている茜ちゃんと目が合いました。はにかんだように、ニコリとした後で、視線が下を向いてしまいました。
　私は一瞬、硬直してしまったと思います。
　面白いものです。硬直から解けた次の瞬間、さっき下着をいじっていたことがバレなかったかと、心配になりました。
　突っ立ったままの私に、再び顔を上げた茜ちゃんがニッコリ微笑んできます。
「おじさん、遅かったですね、のぼせちゃいますよぉ」
　その言葉で、初めて呪縛が解けたように、私も再び動くことができました。
　よかった、バレてない、す、すくなくとも、怒っていない…
　しかし、その瞬間、ハッと気づきました。私の怒張したペニスです。
　茜ちゃんの視線が、密かにそっちに注がれるのがわかります。
　体から突き出したペニスが丸見えです。これでは、スケベな気持ち丸出しで風呂に侵入してきた出歯亀そのものです。しかし、今さら隠すのもヘンです。言い訳することもできません。
　何しろ、本人に、君の下着を見てこうなったんですとは言えませんから。
　さりげなくと言いつつも、思いっきり、ぎこちなかったと思いますが、身体の角度を微妙に変えて、茜ちゃんの視線を極力、怒張から遮るようにしながら、シャワーを浴びます。
　後悔しました。
　せめて、タオルを持ってきてれば。
　手ぶらで入った私には、大きくなってしまった怒張を、茜ちゃんの素直な瞳から隠す方法がありませんでした。我が家の風呂場は、身体を洗おうとすれば、どうしたって、湯船と平行に身体を向けることになります。
　意識すればするほど、ガチンガチンになってしまい、そそり立つ怒張は、隠すどころか目立ってしまいます。
　悪いことに、フロ中に漂っているのは、茜ちゃんが使った女の子用のシャンプーや、ボディーソープの香りです。その香りが、茜ちゃん自身の若いメスの体臭と入り交じると、怒張は元気になる一方になってしまいます。
　横から見れば、きっと私の身体から角が立っているように見えるに違いありません。こんな少女に、完全に勃起した怒張を見せてしまっているのだと思うと、恥ずかしさと申し訳なさで一杯になってしまいます。
　そのくせ、怒張の方は、私の情けなさと裏腹に、これでもかと存在を誇示するかのように張りつめて、硬く大きくそそり立っていました。
　イスに腰掛けましたが、角度のついた怒張は、膝の角度からはみ出しています。
　茜ちゃんの方を見られません。きっと、私が大きくしている原因が自分であることに気づき、せっかく無邪気に慕ったのに、裏切った、スケベな男に怒りを持つに違いありません。茜ちゃんが、さっきから、一言もしゃべらなくなっていたのです。
　スポンジの感触が嫌いな私は、直接手に、ボディーソープをつけます。
　素手で、ごしごし、腕の先から無言のまま洗い始めました。茜ちゃんの顔が、怖くて見られません。
　その時、ザバアっと湯船から上がる音が聞こえました。ああ、きっと怒って出て行くのでしょう。無意識のうちにドアが開く音に身構えてしまいました。
「おじさん、背中、洗いますね」
　私の視界に茜ちゃんの手が見えました。ソープのボトルを取ります。
「スポンジは使わないんですか」
　う、うん、何となく嫌いでね。
　私は、意外な展開にうろたえながら、そう言うのがやっとでした。
　次の瞬間には、ヌルヌルとした優しい感触が背中にあたりました。
「あの、迷惑でしたか」
　え、何が？
「あの、さっきから、怒っているのかなって」
　そんな、怒るわけないじゃない、背中まで洗ってもらってさ。
「ホント？だって、迷惑だったかなって、あの、どうですか？これでいいですか？洗い方」
　茜ちゃんがホッとしたような声で、聞き返してきます。手がそっと、しかし、しっかりと動いて洗ってくれるのは、とってもうれしかったのです。
　もちろん。入っていると知らなくて驚いただけだよ。うん、背中、とっても気持ちいいよ。
「よかったあ。でも、じゃあ、それって怒ってるわけじゃないんですか？」
　茜ちゃんは背中を洗いながら、ホッとしたようです。いえ、表情を見たわけじゃないのですが、あきらかに、私の後ろの気配から緊張が緩むのを感じたのです。
　怒ってるって。ああ、これ。
　茜ちゃんは、どうやら、私の強張りを見て、怒っているととらえたのでしょう。もちろん、男の怒張と怒りは無関係ですが、男を知らない女の子にとって、精一杯硬くなった大人の怒張に、何らかの怖さを感じたのかもしれません。　
「えっと、あの、それって、ボッキしてるんですよね」
　ああ、恐れていた質問です。しかも、これほどダイレクトに聞かれると、ウソがつけません。
　私が答えをためらっていると、背中をまんべんなく洗い終えた茜ちゃんが言います。
「あのぉ、立ってもらえませんか」
　答えにくい質問から逃げられると思って、ホイっと立ち上がります。
　シャワーを掛けてくれるのかと。でも、その前に、前側も洗わなくてはなりません。ちょっと待ってと言おうとしたら、茜ちゃんは、そのまま、後ろから私に抱きつくような格好で、私の胸を洗い始めたのです。
「男の人って、背中も胸も広いんですね。あの、一度、こうやって洗ってみたかったんです。おじさんのこと。先生も、喜んでくれたし」
　え、いつの間に？
　茜ちゃんに洗ってもらったことがあるなんて妻は言いませんでした。
「先生のオッパイ、やっぱり私よりずっと大きいんです。それに柔らかくって。こっそり触っちゃいました」
　へへ、っと照れたような、それでいて密やかな声で笑いながら、私の胸を茜ちゃんの手が動き回ります。
　なんだか、まだ日の光が緩やかに差し込む明るいバスルームと、２人でヒミツの行為をしている緊張感の隔たりに、なんだか違和感がありました。
　内緒話のような密やかな声さえも、潜めるように、手は次第に下の方へ動きます。
　ドキリとしながら、でも、女の子の優しい手に洗ってもらう感触に負けて、やめさせることができませんでした。
　私の背中越しに手を回すため、茜ちゃんは、ぴったり背中にくっついています。
　つまり、泡まみれの背中に、あの、発育途上の形の良いオッパイがこすりつけられているのです。弾力性のある柔らかい感触の中に、直にくっついた乳首がコリっとしているのがわかりました。
　まさか、背中にヌルヌルとこすりつけて感じているわけではないでしょうが、茜ちゃんの乳首はコリコリと硬くなっているようです。妻の乳房と違って、確かに発展途上の、ゴム鞠のような硬さのある弾力が背中越しに伝わってきました。
　ヘソのあたりまで降りたとき、茜ちゃんの手が、すっかり硬直した私の怒張に偶然触れました。あり得ないほど硬くなった怒張は、１０代の頃のような角度でヘソにくっつきそうな勢いだったのです。
　あう、っと情けない声を出してしまいました。瞬間的だったのに、茜ちゃんの華奢なては、それほど気持ちが良かったのです。
「ごめんなさい！痛かったですか？」
　ううん、大丈夫だよ。
「あの、ひょっとして、私のせいですか。私がヘンな風にくっついたからこうなっちゃったんですか」
　違うよ。それはぼくがスケベなのがいけないんだ。しかし、そんなことは言えません。
「君のせいじゃないよ。ごめんね、茜ちゃんがあんまり可愛いもんだから」
　ああ、私はバカです。これでは、茜ちゃんに男の欲望を感じているせいだと言っているのと同じです。
　すると、茜ちゃんの動きが止まりました。おなかの下の方に回した手が止まっています。背中に、浅い呼吸をしている動きが伝わります。
　どうしたの。
「あの…」
　聞こえないほど小さい声で、茜ちゃんが何か言いかけます。
「せんせいに、ナイショにしてくれますか」
　何を？と言いかけた時に、茜ちゃんが、私の怒張を握ってきたのです。
　ソープでヌルヌルになった手で、思い切った力で握られた私は、あまりの気持ちよさにうっと思わず声を出してしまいました。
「あっ、ごめんなさい、痛かったですか？」
「いや、痛くないけど、気持ちよくって…」
　握る力を緩めながらも、それでも手を離さない茜ちゃんに、思わず本当のことを答えてしまいます。逝けないことですが、あまりの心地よさに、もっと続けて欲しいと願わずにはいられなかったのです。
「うれしい！あの、これ内緒にしてくれますか。あの、おじさん、これって、一度大きくなると、出さないとダメなんですよね、あの、私がしたらダメですか」
　私への好意もあったのでしょう。そして性への好奇心も、きっとあったのでしょう。
　それに、昨日、弟の射精を手伝った慣れもあったのでしょうか。
　何も知らないはずの茜ちゃんの、この絶妙な手の動きには、圧倒される思いでした。細い指先が、カリにそって、こすり上げることすらしてくれます。
　誰にも教わったことのない「男の急所」を、細い指先が撫で上げ、小さな手が、懸命に幹を包み込んで上下します。
「あかねちゃん、こんなこと、しちゃダメだよ。将来、好きな男性ができたら、してあげなよ」
　茜ちゃんの手に怒張を委ねたまま、口先だけは、私は良心的な大人でいようとしていました。
「おじさんのことが好きなんです。今じゃダメですか？あの、わかってます、先生がいないときだけで良いから、今日みたいに、くっつけるとうれしいんです」
　やはり、スキンシップに飢えて育ったのと、困り切っているときに現れたという信頼感が、茜ちゃんに、私とくっつきたいという気持ちを育てたのでしょうか。
　ひょっとしたら、男女の愛に近い気持ちと誤解をしているのかもしれません。
　しかし、この誤解は男として、私に都合が良いものでした。だから、懸命に、私の中の良心がダメだと叫んでいても、その誤解を解きほぐそうという気にはなれなかったのです。
　むしろ、この天国のような状況に甘えたいという欲望の方が圧倒的でした。
「あの、くっついて、もしおじさんが、くるしくなったら、ちゃんと今日みたいにしますから、あの、だから、くっついてもいいですか？　おじさん、気持ちいいって思ってくれますか？」
　天性のものでしょうか。必死になって私をかき口説きながら、手は、冷静に着実に快感を送り続けてきます。
　私の弱い理性は、とっくに崩壊していました。いや、バイクで背中にあの弾力性のある胸を感じた時から、とっくに理性が飛んでいたのかもしれません。
　もはや、茜ちゃんの動きを止める意志は少しも持てませんでした。
　背中に茜ちゃんの弾力性のあるオッパイを感じながら、自分でもあっという間に限界に達してしまったのです。
「あかねちゃん、ごめん、ほんとうに良いの、出るよ、出るよ」
　今さらながらの、最後の警告も、茜ちゃんのためだったのかどうか、自分でもわかりません。言ったときには、既に射精を止められない所に来ていましたから。
「あ、出る、やめないで、続けて」
　身体の奥底から発射する、あの、少年の日のような、ピュアな射精感でした。
　昨日、手を離してしまった茜ちゃんの姿がちらっと浮かんだのです。
　しかし、茜ちゃんは、昨夜、学習したのでしょう。私が、発射した後も、その、か細いながらも、極上の感触を持つ手の動きを止めないでくれました。　
　私は知らず知らず、射精の瞬間、手を後ろに回して、茜ちゃんの、かわいらしいお尻を、ギュウッとつかんでいました。胸と同じように、キュッと締まって、弾力性のある肉が私の手の中でクニュリと形を変えます。
　だらしないことに、茜ちゃんに支えられなかったら、その場にへなへなと座り込んでしまったかもしれません。
　はあぁ。
　ごめんね茜ちゃん。ヘンなことさせて。
　茜ちゃんは、後ろからひしと抱きついていました。
「私がしたいって思っちゃたんです。あの、ヘンな子だって思わないでくれますか」
　ひょっとして、茜ちゃんは、母親から、正真正銘の、男に尽くす才能を受け継がれているのかもしれないと思いました。全てを捨てても、男に尽くさずにいられないという遺伝子が。
　しかし、この思い切った射精が、私を落ち着かせました。毒を食らわば、皿までです。
「あかねちゃん、今度はおじさんが洗ってあげるよ」
「え〜、そんな、いいです、そんなぁ」
「え？僕に洗われるのはそんなに嫌かい？」
「違います。そんなんじゃなくて、あの、そんな、おじさんに洗ってもらうなんて、それにさっき、ちゃんと自分で」
「あれ？僕が洗いたいって言ってもダメ？もう一度くらい、洗っても、良いと思うんだけどな」
　どうやら、私に触られるのを嫌がっているのではなく、私に身体を洗わせては申し訳ないと思っているようでした。
　しかし、ちょっと私の目を見てから、ハイと素直に肯きました。
　恐らく、洗うという名の下に、茜ちゃんの身体に触りたいと言っているのを理解してくれたのかもしれません。
「さっき、くっつきたいって言ってたろ、いいから、そこに座って」
　あるいは、ひょっとして、茜ちゃん自身も、望んでいたのかもしれません。だから、私が多少、強引に肩を抱えても、大人しく従ってくれたのでしょう。少女の薄い肩が私の手の中で素直に動きます。座らせようとこちらを向かせた時に見えた乳首は、硬く飛び出ていて、ドキリとします。
「へえ、外見が似ると、こんな所まで似るんだ」
　妻の乳首の飛び出し方にそっくりでした。私は、つい、そう口に出して言いながら、何気なく、その乳首を指で優しく弾いてしまったのです。
「あん」
　その声は、紛れもなく、オンナの声そのものでした。
「今の、あの」
　茜ちゃんは、座らずにもじもじしています。
　どうしたの？
「あの、今の」
　ああこれ。
　ピン！
　調子に乗った私は、もう一度、今度は左の乳首を下からそっと跳ね上げたのです。
「あん！、おじさん、これって…」
　なんだか変な感じと言いながら、これ以上の刺激を避けるように、胸を抱え、座り込んでしまいます。力が抜けた様子です。
「先生も、昨日、こんな風に感じたのかな…」
「え、昨日、どうしたって」
「昨日、お風呂に入って、先生の背中流してあげたときに、ちょっとイタズラで、触っちゃったら、先生の先端が、私みたいになって」
　私みたいに…？
「うん、先生も、なんか、反応がいつもと違ってたから、先生もこんな風に感じてたのかなって」
　驚きました。
　寒い時ならともかく、風呂の中で乳首がこうなるとしたら、それは妻が感じているということです。少なくとも私が知っている妻は、感じてない時に乳首がここまで硬くはなりません。
　そして、反応が違っているとまで見抜かれています。妻はひょっとして、この幼い指のレズ技巧（もちろん本人は意識してないでしょうが）に、性感を刺激されたのでしょうか。ひょっとして、その感じてしまった顔を、圭司君は見ていたのかもしれません。そう思うと、なんだか、嫉妬心が湧くのが不思議でした。
　昨日の妻の乱れ方は、それも原因だったのでしょうか。私は、今さらになって、目の前の美少女に夫婦の営みを見せてしまったことに思いが及びました。
　嫉妬や、興奮、そして、妻への愛しさが頭の中で渦を作りますが、しかし、それすらも、目の前にある、まだ発展途上のメスなのに、明らかに性的な成熟の端っこを見せている華奢なヌードが、一瞬のうちに私の頭の中を占領してしまいます。
「さ、洗ってあげよう」
　私は、茜ちゃん背中に中腰になり、まだ薄い肩にそっと手を乗せました。
　これからすることが「洗うだけ」になるはずもなかったのです。