第８章　２人の夜　〜もう一つの時間〜

　ここ数日の私の精力はどうなってしまったのでしょう。
　自分でもあきれてしまうほど、湧いてくるのです。異常と言っても良いほどです。やはり、若過ぎる処女との交わりが、私のエネルギーをどこからか汲み上げて、燃やしてしまうのでしょうか。
　いえ、それなら妻とも可能なことが説明できません。しかし、現実に、まだ可能な私がいました。
　２人で身体を洗い流し、ふらつく茜ちゃんを抱き上げて、リビングに戻っても、先ほど大きくなった怒張は、元に戻ってはいません。
　短い交わりだとばかり思っていましたが、気づいたら、もう、１２時を回っていました。ダイニングとの境界を兼ねて置いてあるソファに私達が座ったときのことです。
　突然電話が鳴りました。
　驚いた私が、反射的に取ると、妻からでした。
　どうしたの？
　妻からの電話と知った茜ちゃんは、ニコッと笑うと私の足下にうずくまり、ぱくっと言う感じで、私の隆としてそびえ立ったままの物を飲み込んでしまうのです。
　それでも、電話に出た以上喋らないわけにはいきません。
「え、ああ、もう寝たんじゃないかな」
　唇で私のモノをギュッと締め付けます。はいはい。
「うん大丈夫だよ、こっちのことは心配いらない、で、どうしたの？」
　妻の声は、どこか愁いを帯びたような、艶めいたような、不思議なトーンでした。そして、さして、急でもない用件をあれこれと指示してきます。
　その様子は、まるで、私と話していたいだけ、のようにも思えました。
　どうしたの？なんか、あったの？
　その時、茜ちゃんが手真似で、私に横になるようにと伝えてきます。私はごろりとソファに寝ころびました。
　別に、と答えた妻が、しばらく黙った後、ちょっとだけ声を潜めるようにして、言いました。
「ね、明日さ、昼間　…ちょっと、ね、あの、ね、外で、会わない？」
　さんざん言いあぐねてから、妻は、初めて用件らしい用件を切り出したのです。何事につけ能率的な妻にしては、珍しいことでした。
　その時、茜ちゃんが、私の片足をソファの背もたれに持ち上げました。驚きましたが、そのままにします。何となく、素直に従ったらどうなるのか興味があったのです。
　うん、いいけど。
　声だけは、妻に答えましたが、私のもう一つの足は、抱え込むようなポーズをつけられています。
　まあいいけど、さ、これじゃあ、あんまりかっこよくないなぁ。
　私は心の中でそう考えていましたが、茜ちゃんは楽しそうです。
「じゃ、また、明日」
「うん、わかった、僕はいったん病院に行って、圭司君を見舞ってから仕事に行くよ。うん、大丈夫、そこから直接、うん」
「おやすみなさい、あなた」
　何かが起こったことを確信しました。外で会うと言うことは、セックスしたいと言っているのも同じです。妻が自分から、しかも、夜中に電話してまで、誘ってくるとは、いったい何があったのか。さっきの、艶っぽい声が私の確信を裏付けてくれるような気がしました。ビデオにはどこまで写しているのか。
　私は、明日、ビデオをどうやって回収しようか思いを巡らせました。
　それにしても、と私は自分の股間を見ます。さっきから、本当に無心に私の怒張をしゃぶり続けています。しゃぶるだけではなく、袋の方までなめ、さすり、両手と口を全てフルに使って、電話する私に、奉仕してくれています。
　そして、驚いたことに、茜ちゃんは、私のアナルにまで舌を使いました。私の足を抱え込ませたのは、そのためだったのでしょう。
　君はそんなことをしなくて良いんだよ。
「だって、さっき私にしてくれたから」
「ということは、茜ちゃん、気持ちよかったってこと？」
　自分が気持ちよかったことを私に返してくれようというのでしょう。とりもなおさず、それは、茜ちゃんが尻孔で感じていたことの告白でした。
　茜ちゃんは、それがわかったのでしょう。急に慌てたように、ムキになって、私の尻孔に舌を差し込んでこようとします。
　スレンダーで、真面目そうな少女です。その少女が私の尻に舌を入れようとしているのです。
「茜ちゃん、そっちも気持ちいいけど、口に入れてくれた方がうれしいな」
　舌を入れようとしている間も、その右手は微妙に動かされています。さっき出さなかった「つけ」が回ってきたようです。
　もう背中の方まで、射精直前のむずむず感がやってきていました。
　茜ちゃんは、いささか、名残惜しそうにして、また、私の怒張を喉の奥まで飲み込んでくれます。
　ねえ、僕はもうすぐ出ちゃいそうなんだけど。
　そう言うと、茜ちゃんは、急に口の動きを速めたのです。
　きっと、さっき、自分だけが逝ってしまったことを気にしているのでしょう。私の射精を待っているに違いありません。私は、高まってきた感覚を、我慢せずにそのまま放ってしまう道を選びました。
　あ、うう、出るよ。
　そう言うと、茜ちゃんは、ちらっとこっちを見て、目だけでニッコリと微笑んできます。その瞳は、昼間と同じように、純真な、真面目な光に輝いていました。教室で、黒板を見つめているような目です。
　それなのに、口には、男の怒張を、これ以上ないくらい、艶めかしく、しっとりと包み込んでいるのです。
　再び、一心に私の怒張に舌を使い始めた、その顔を見ながら、私は茜ちゃんの喉の奥に男の精を、たっぷりと放ったのです。
　
　私達は、その後、茜ちゃん達の部屋に布団を敷きました。
　最初、茜ちゃんの身体から、快感を掘り起こすことに集中しすぎてしまったようです。茜ちゃんは、私を置きざりにしたまま、指と舌だけで、逝ってしまったのです。
　まだ、回復しきっていない茜ちゃんを待ちきれない私が、そのまま入ると、すでに、茜ちゃんの感覚は限界まで高まっていたようです。私が何度も動かないうちに、激しく反応してしまい、そのまま、すとんという感じで、崩れるように意識を失いました。
　やはり、肉体そのものは、若すぎて、幾度もの激しいオーガズムに体力の限界だったのです。それに、私の前で、オシッコをしてしまったこともそうですが、茜ちゃんにとっては、考えたこともないようなエッチなことを、次々と経験して、神経が飽和してしまったのかもしれません。
　さすがに疲れ切ったのか、すうすうと寝息を立てるその横で、私だけが、怒張をもてあましている姿は、いささか滑稽だったかもしれません。

　翌日、私がゆっくりと新聞を読み終わったころ、ごめんなさいと泣きださんばかりの顔で、起きぬけの裸のまま、私の膝に取りすがってきました。
　心配しなくて良いんだよ。ちょっと昨日はいじめすぎたね。
　私の笑顔を見て、少し安心したのか、私のズボンの前を探ります。
　あれからどうだったのかと聞きます。
　心配ないよ。
　茜ちゃんは暗い顔になります。こんなときは、慰めより、納得する形にしてあげた方がと思い立ちました。
「ねえ、昨日のことが申し訳ないと思ったら」
　私がそう言いかけると、そこには、裸の胸を隠そうともせずに、私の目を真剣に見つめる茜ちゃんがいました。
「何でもします。何でも言ってください、私、何でも我慢できますから」
「ここも、経験しちゃおうか」
「あっ」
　私は、そっと手を伸ばし裸のお尻を探り、昨日いじめるだけいじめた尻孔を探りあてながら、にこりとします。
　さすがに、ビックリした様子です。しかし、私の手を片手で押さえる力は決して強くありません。やはり、本当に拒絶しているわけではなさそうです。
　やや、湿り気を帯びた粘膜の感触を指先で楽しんでいました。
「ここにも、僕のを入れたいな」
「あの、こんなところに、本当に…」
　大丈夫さ。ちゃんと指で感じてたでしょ？
　ちょっと、あきらめたような顔で、それでも最後の抵抗をします。
「あの、でも、もし、汚い物がついちゃったりしたら…」
「大丈夫、ちゃんと、方法があるからね」
　それなら良いだろ？
　ため息を、一つついたようにも見えました。
　しかし、再び私の目を見ながら、答えたときには決心が付いていたようです。
「何でもするって言っちゃったの私ですものね。うん。好きなようにしてください。がまん…できると思います」
　そう言いながら、でも嫌いにならないで、と泣きそうな声を出すのです。
　どうやら、尻孔を捧げることの怖さより、排泄物の方が心配なのでしょう。
　嫌いになんてなれるわけないだろ。そう言ってキスしたときには、うっすらと涙が溜まっているのが見えました。
　
　私が病院に着いたとき、まだ、朝食後の、なんとなく、バタバタした時間だったのが幸運でした。ガーゼを換えるためだとかで、部屋は空っぽでした。
　それでも、私は興奮を抑えかねて、手が震えてしまい、ビデオカメラを抜き出し終わったのは、結局タッチの差でした。
　ちょうどポケットに大事にしまい込んだ瞬間、ドアが開いたのです。
　どうだった？と苦し紛れに声を掛けると、そこで初めて、圭司君は私に気がついたようです。かわいそうに、顔が真っ赤になってしまい、おどおどと、私の目を避けるかのようにベッドに入ったのです。
　あれ、熱でも出たんじゃないのかい。まだ、動き回るのは良くないかもしれないね。
　そう言いながら、わざわざ、毛布をかけ直してあげます。じゃあ、具合が悪いみたいだから今日は帰るよ。また、夕方、亜希子先生が来るからね。
　そう言って部屋を後にしましたが、亜希子先生と聞いた瞬間、目が輝いたような気がしたのが印象的でした。
　そんなに昨日は刺激的だったのかい。私は心の中でそう尋ねていました。
　はたして、妻は、いったい、何をされたのでしょうか。いえ、された、というより「した」が正しいのでしょうね、きっと。
　私は一刻も早く見たかったのです。
　私は邪魔されない場所で、中身を見ようと、勤務先に行きました。夏休みのこと、案の定、誰もいない研究室で、私はじっくりと中身に取りかかることができました。

　バッテリー切れを起こしていたと言うことは、たっぷりと撮してくれたと言うことです。
　一刻も早くとはやる気持ちを落ち着かせながら、ＡＣアダプターに繋ぎます。
　画面は予想以上に鮮明でした。音声も予想以上に良く拾ってくれています。足の方は少し切れていましたが、広角レンズの画面は、向こう側に座る妻と、ベッドの上の圭司君を鮮明にとらえていました。
　私は、どうせすぐには何もないだろうと、少しテープを進めたところから見ることにしました。どうやら正解だったようです。
「あ〜あ、それにしても、入院患者にしてはずいぶんばっちいわね」
　腕はまだベッド上で器具に固定され、動かせないようになっています。妻が布団をはぐと、圭司君は裸のままでした。病院に運ばれて、来ている物を全て取られてしまったようです。
　今朝見たときは、病衣を着ていましたから、きっと、その時に腕のギプスだけになったのでしょう。個人病院では、看護婦さんの手が足りないのか、圭司君の身体は、昨日の事故にあったときのままだったようです。それで、妻がせめて身体を拭いてあげようとしたのでしょう。こういうとき、個室だと、同室の迷惑を考えなくていい分だけ、便利です。
　そう、何をしても、朝まで、誰も来ないのです。

「ほらほら、大人しくしなさい。ちゃんときれいにしておかないと、気持ちよく眠れないでしょ」
　そう言いながら、妻は怪我をしていない腕の先から、手際よくタオルで拭いていきます。私は早送りした画面を思い出しました。さっき画面に持って入ってきたのは、多分このためのお湯だったのでしょう。
「はい首あげてー」
　指示することに慣れた口調は、有無を言わせない物でした。圭司君は大人しく言われるままです。
　妻は、普段着のままです。
　ジーンズにゆったりしたＴシャツ。
　あ、っと思いました。ゆったりしたシャツは、かがみ込むと、胸元が大きく開きます。一生懸命、圭司君の身体を拭く妻は、シャツの中が丸見えになっていることに気づきません。
　一方の圭司君は、すぐにそれに気づいたのでしょう。最初、ちらりと見たのです。
　そして、次第に大胆になったのか、首を持ち上げ、じっと覗き始めました。圭司君の視点からは、Ｔシャツがまるっきり用をなさず、ブラジャーに包まれた妻のふくらみを間近で鑑賞できるはずです。いえ、真上から見るわけですから、場合によってはブラの中にある丸みさえも、見えてしまうことでしょう。
　視線を感じた妻が、ふと圭司君の顔を見上げます。
「あら、どうしたの？」
「ううん」
　あわてて顔を背けましたが、その反応で、妻は気づいたのでしょう。今度は背中を向けるようにして、また、かがみ込んだのです。
　しかし、その時には、圭司君は反応してしまっていたのです。
　足の方を向く妻の身体の手前で、若く、これ以上ないくらい硬くなった怒張がカチンと音が出そうな勢いで、立っていました。
　妻はまだ気づいていないようです。圭司君は、それを隠すべきか、迷っているかのように左手が、上がったり下がったりしています。
　しかし、足を拭き上がれば、やがて、そこにたどり着くのは当然です。
　妻は、そこにたどり着いたとき、一瞬だけ、あら、という表情をしましたが何も言いませんでした。表情を殺したままの妻が、そっと屹立のまわりを拭き始めます。圭司君は、よほど恥ずかしいのでしょう。カメラの方に向かって顔を背けます。
「ごめんなさい」
　小さな声で謝ります。
　妻は、その小さな声で、圭司君の心中を慮ったのでしょうか。表情がほどけたように、優しげな微笑が浮かびます。
「どうしたの。謝ることなんてないのよ。元気な男の子は、自然にこうなるの。別に悪いことなんてないわ」
　これ以上ないくらいの優しい声でした。おそらく、その瞬間に妻のためらいが消えたのでしょう。そっと指先を硬直したものに添えたのです。
　その指先はあくまで優しげです。他人のペニスをつかんでいるはずなのに、私には妻がとても愛しくなってしまいました。妻の表情も、まさに、聖母さながらの、慈しむ顔つきでした。
　硬直した鉛筆のようなペニスをつかむ、ひどく淫蕩な指先とは対照的なものでした。
「あうう」
　思わず漏らしてしまった声が、苦痛による物ではないと、さすがに知っていたのでしょう。手の動きは止まりません。はたして、妻としては、まわりを拭くために、邪魔な物を押さえただけにすぎなかったのでしょうか。しかし、気のせいか、妻の指先が微妙なビブラートを奏でている気がしました。
　それが気のせいではないことは、その声を聞いて、ニコリと微笑んだ、その表情でわかりました。
『楽しんでるのか？』
　妻の表情は、慈母から、淫蕩なモノへと変わろうとしています。
　ゆっくりと足の間にもタオルを入れ、拭き上げていく仕草は、必要以上にていねいなものだと感じました。
　妻は左手の指先で、そっとつかんだまま、ゆっくりと、根本を拭いています。付け根の、まだ無毛のままの陰嚢も、そっと、ゆっくりと拭いています。
　その結果、左手は、さっきの、微妙なビブラート以上の動きで、妖しげに弄られる結果になります。
　包皮に包まれていた筒先が、にょきっと赤い顔を出してきました。
　顔を出した亀頭を、そのまま見つめ、動きが止まります。
「圭司君、ここはちゃんと洗っているの？」
「え、あの、いえ、えっと」
　突然、声を掛けられて、答えるどころではありません。おそらく、妻の微妙な動きで味わう快感に夢中になっていたのでしょう。快感に浸っているところに、急に声を掛けられたのせいか、しどろもどろとはこのことかという反応です。
　画面ではよくわかりませんが、今朝のように真っ赤になっていたに違いありません。
「男の子は、ちゃんとここも、洗わなくちゃね」
「でも、洗い方が、わからないし」
「あら、簡単よ。ここをほら」
　と言いながら、手首の動きだけで、完全に剥いてしまいました。尖った亀頭が、ピンクと言うより真っ赤な姿を現します。
　その時の妻の顔は聖母の顔から淫婦の顔に変身していたのです。
「ほら、簡単に剥けるでしょ」
　と言った瞬間でした。
「あうっ」
　張りつめた声が小さく漏れたと思うと、圭司君の怒張がびくんと爆ぜたのです。
　さすがに、セックスには奥手の妻も、その瞬間は握っていて欲しいと言うことくらい知っています。手のひら全体で優しく握りしめ、次々にあふれ、飛び出してくる白い液体を絞り出すように、ゆっくりと、にぎにぎと動かしています。
　昨日は出していなかった分もあるのでしょうが、高く飛び出したその最初の分は、高い放物線を描いて圭司君自身の首まで飛んでいました。
　あふれる、若いオスの精液は、私の出す量の倍はあったような気がします。妻のブラに付いた、あの強い匂いをふと思い出していました。
　妻は、とみると、ゆっくりとですが、やわやわと、ペニスを包み込んだ手を動かし続けていました。もう出てくるものがなくなるまで、ゆっくりと。
　オスの快楽に、かいがいしく尽くすメスの動きです。
　ようやく、落ち着いたと見ると、まず、自分の手をそっとぬぐってから、圭司君のお腹のあたりに飛び散ったものを拭き取ります。
「先生、ごめんなさい」
「いいのよ、誰でもあることだもの。別に悪いことじゃないのよ。もう知っているでしょ、自分ですることをオナニーって言うの。恋人ができたら、女性の中で今みたいに出すのがセックスよ」
　そう言いながら、ふと視線を移して、妻は驚いた顔になりました。
　首からお腹まで拭き取り、後は本体を拭く段になって、出したばかりの圭司君が、少しも衰えていないのを知ったのです。
「ま、元気ね、でも、ちゃんと拭いとかないと」
　最後までとろとろと出たもので、圭司君の怒張は、ぬめぬめとしたものに包まれていたのです。妻がそっとタオルを先端にあてた途端です。
「いたい」
　妻は慌ててタオルを引っ込めたのです。射精後の男性が敏感なことくらい知っていましたが、さすがに、成長途中の敏感さまでは知らなかったのです。
　もう一度、そっとあてますが結果は同じです。そそり立ったまま、天井の蛍光灯にぬらぬらと光っています。
　ようやく根本だけはタオルで拭けましたが、先端部はまだです。
「困ったわね」
　そう言いながら、妻はちっとも困った顔をしていませんでした。むしろ、興奮に目を輝かせているように見えます。
「圭司君、これからやるのは、しかたのないことなの。ここはきれいにしなくちゃいけないし。それに、先生も誰にでもしてあげることじゃないから、圭司君も黙っているって約束してちょうだい」
　根本の方を右手でつかみながら、カメラの方に顔を背けた圭司君に声を掛けます。もちろん、何が行われるか圭司君はわからなかったでしょうが、圭司君は、うんうんと何度もうなずきます。
　すると、圭司君の怒張に向かって、妻が顔を寄せて行くではありませんか。
「よせ、やめろ」
　私は、思わず画面にそう叫んでいました。もちろん、画面の中は昨夜です。私が叫ぼうが、どうしようが、すでにこれは行われてしまったことなのです。
　妻が他人のペニスをくわえるところ。これから映るであろう光景を拒否する自分の中に、ひどく興奮を味わっている自分がいたのです。
　妻が、圭司君の股間に被さっていきます。表情までは見えませんが、妻のやや肉厚の唇の中に、ゆっくりと圭司君の屹立が隠れていきます。
「ひっ」
　少女のような短い悲鳴をあげて、圭司君は目を閉じたまま上を向きました。
「どう、痛くない？」
　一度、身体を起こして、優しく尋ねた妻は、圭司君の首がカクカクとたてに動くのを妖艶な目つきで眺めます。その間も、根本を握りしめた妻の右手は、ゆっくりと動いていました。
　よしんば、妻が献身で圭司君のものを口で清めようとしただけなら、この動きは何でしょうか。
　そして、圭司君に確かめた妻は、今度は、口に入れるのではなく、舌先でチロチロと、細いカリ首を掃くように舐めては、舌先ですくい取ったものを飲み込んでいくのです。
　驚きました。そもそも、私との時でもフェラを嫌い、まして、出した後のものを舐めてくれるなど、なかったのです。それが、画面の妻は、圭司君の怒張を一心に舐め、飲み込んでいます。それも、自分から。
　そして、ハッと気づきました。舌先ですくい取り、飲み込む仕草。それは、昨日、茜ちゃんが、私に対して行った舐め方とそっくりだったのです。
　私がおろおろしている間も、妻はぐるりと舐めていきます。
　もうきれいになっただろう、もうやめるんだ、私は一人、画面の前で大声で叫びたい気分でした。
　しかし、それが画面の妻に伝わるはずもなく、ゆっくりと舐める姿が映し出されています。
　そして、ぐるりと舐め終わったのでしょう。一度、口を離すと、改めて、口の中に入れていったのです。
「先生、あの、もう、もう」
　圭司君は、妻に訴えます。おそらく、初めての刺激に、また、出してしまいそうになったのでしょう。
　しかし、妻は意地悪く、口を外してしまい、あらどうしたのと声を掛けます。
「あぁ、そんな、せんせぇ」
　と情けなさそうな声を圭司君は出してしまいます。
「どうしたの？」
　そう嫣然とささやくように話しかけながら、右手は根本をつかみ、ゆっくりと動かしていました。
　しかし、ここで圭司君は、舐めてと言う代わりに、ビックリすることを言い出したのです。
「せんせい、あの、お、オッパイを、触らせて…ください」
　さすがにビックリしたのでしょう。しかし、妻はそこで圭司君のものから手を離してしまいました。圭司君は、自分の頼みが図々しくて怒らせてしまったのかと、脅かされた兎の表情で妻の動作を見ています。
　妻はつかつかとベッドの足下の方を回り込みました。
　大きく映し出された妻の背中。
　後ろを向いた妻の背中から、ゆっくりとＴシャツが持ち上がってきました。
　妻は脱いだＴシャツを圭司君の顔に掛けてしまいます。Ｔシャツの下で身動きもしない圭司君を見ながら、妻の両手が背中のホックにかけられます。
　ブラを外した妻はゆっくりとシャツを顔からどけます。
　そして、圭司君の顔にかがみ込む妻。
　きっと、キスをしているのでしょう。妻の頭に隠れ見えませんが、圭司君の顔の上で、長く、長く、妻の頭が動いていました。
　ある意味で、こちらの方が、私にはショックだったのです。
　私に言われたわけでもなく、妻が自ら、私以外の男に唇を許している。いえ、許すのではなく、むさぼっているのです。
　さっきまで、妻の淫靡な姿に、嫉妬も交えて、最大限に膨張していた私の怒張は、急速に力を失ってしまいました。
　一方、途中でやめられた上、あこがれの人のキスをたっぷりと注ぎ込まれた圭司君は、もはや、爆発寸前のようすです。時折、ヒクン、ヒクン、とヘソの方にまで反っくり返ったペニスが動きます。
　どうやら、妻の背中で見えなかっただけで、圭司君は、すでに妻の柔らかな胸をいじっていたようです。ゆっくりと、怒張に向かって顔を近づけていく妻の胸にはぴたりと左手がくっついています。残念ながら、背中越しで、その手つきは見えませんが、慣れない手つきできっと、力が入っているに違いないということはわかります。
　乱暴に胸を触ると、普段なら痛がるのですが、その時の妻は、少しもそんな風に見えませんでした。
　胸をさわらせたまま、圭司君の股間に顔を埋め、ゆっくりと上下に動いています。もはや、それは、清めるという言い訳さえ越えた、明確な愛撫でした。
　しかし、限界に近い圭司君が長くは持ちこたえることなどできませんでした。
　妻がカメラの方に突き出したようになっている丸いヒップがうねるようにわずかに動き始めたときに最後が訪れました。
「先生、もう、だめ、離して、でちゃうよう」
　その声を聞くと、妻は、離すどころか、いっそう、頭の動きを速めるのです。
「せんせぇ、で、でるよぉ、あ、でる」
　一瞬、妻の動きが止まったのは、きっと、口の中にドクドクと、あの青臭い元気の良い、牡の精をたっぷりと出されていたからに違いありません。
　そのあと、慈しむようなゆっくりとした動きのまま、いつまでも吐き出す仕草がありません。妻は、生まれて初めて、男の精を、たっぷりと飲み下したのでしょう。
　妻が生まれて飲み下した男の精は、私のものではなく、青臭い匂いの強い、若い教え子のものだったのです。
　妻が顔を上げたときの表情は見えませんでした。自分がしてしまったことにビックリしたかのように、やっと力を失った圭司君のものに顔を向けたまま茫然としていたのです。
　まるで、若いペニスの魔力に魅入られていたかのような行動だったのでしょうか。その魔力を失った今、妻はハッと本来の妻に戻り、後悔しているように見えました。
「せんせい、せんせい」
　ハッと圭司君の方を向きます。その顔には狼狽が見て取れました。
「あのぉ、さ、せんせい」
「どうしたの？言ってごらんなさい」
　それでも、精一杯、優しさをこめて答えます。
「あの、先生のオッパイ、吸っちゃダメ？」　
　その言葉を聞いたときの妻の中でどのような考えが回転したのでしょう。横顔の妻は、これ以上ないくらいの優しい笑顔で微笑んだのです。
　そっと、圭司君の方に身を寄せます。頭の上にある柵に手を掛け、妻は身体を倒していきます。
「うっ」
　今度は妻がうめく番でした。
　おそらく、今、妻の右胸は、圭司君に吸われているはずです。それも、赤ん坊のように吸うのではなく、明らかに、妻の反応を引き出そうという「オトコ」の吸い方そのもののはずです。そうでなければ、妻がこれほど反応するわけがありません。
　いつの間にそんなことを覚えたのでしょうか。それとも、男というものは、本能に乳首への愛撫の仕方が刻み込まれているのでしょうか。
　素肌をカメラにさらした妻の背中は、ひくん、ひくんという反応をダイレクトに見せてくれます。まだ、無駄な肉が付いていない背中で、ヒクンヒクンと筋肉が動くのが見えました。
「ああ」
　妻の声が、わずかに聞こえます。妻が身じろぎしました。どうやら吸わせている胸を左側にしたようです。
　いつまでさせている気でしょう。それは、長い、長い時間でした。
　もうやめろ。私は妻の乳首の感触を思い出しながら、今、それを目の前で、私以外の男が味わっていることを思い知らされます。
　妻は、どっちにしろ圭司君が気の済むまで吸わせるつもりだったのでしょう。
「あ、それは、ダメ、やめて」
　慌てたように妻は左手を前に持ってきます。私もそれで気がつきました。圭司君の手が妻のジーンズにかかっているのです。
　ダメっと言いながらあらがう妻は、なぜか体勢を崩しません。離れてしまえば、動けない圭司君の手から逃れるのは簡単なのに、右手をベッドの頭上の柵にかけて、胸を与える体勢のまま、左手一つで、圭司君の手の動きを止めようとしています。
「ダメよ、ね、けいちゃん、おねがい」
「だって、僕だけ裸はずるいよ」
　もごもごとした声は、妻の胸を口に付けながら喋っているからでしょう。
「そんな、もう、だめよ。けいちゃん、ね、いい子だから、よして」
　妻のいさめる声も聞かず、相変わらず、妻のジーンズの前での手の攻防が続く中、圭司君が悲鳴を上げます。
「いたっ」
　きっと、力が入りすぎて、折れた右腕まで、動かしてしまったのでしょう。
「けいちゃん、大丈夫？」
　そう言って、あわてて右腕を調べます。
「うん、大丈夫」
　妻の動きが止まりました。
　ちょうど視線の先に、またも元気を取り戻した若いオスのペニスを見てしまったのです。
　魅入られたような表情です。
　妻はまた呪縛にとらわれてしまったのでしょうか。身体を硬直させ、じっと、先端が未成長の、ペンシル型と言っても良い怒張を見つめています。
　妻が動かなくなったのを良いことに、とうとう、妻のジーンズは前を外されてしまったようです。少し下げられたジーンズの腰元から妻の白いパンティーがのぞきます。しかし、左手一本で、ぴったりとしたジーンズを脱がすのはさすがに無理があります。
「せんせい…、おねがい」
　それが無理矢理の命令なら、妻は拒否したでしょう。しかし、その声は、主人にむち打たれる子犬のような声でした。
　精まで飲み下した相手の、そんな哀しそうな声のお願いでは、オンナは、何か、本能をシゲキされるのかもしれません。
　妻は、自らジーンズを脱ぐしかなかったのです。
　画面の中で、妻はゆっくりとジーンズを脱いでいきます。
　どんな表情をしているのでしょうか。画面は妻の後ろ姿を映しています。
　ためらいを捨てたように、素早く脱ぎ捨てた妻を待っていたのが、圭司君の左手でした。ジーンズを、簡単にたたんでおこうと両手で持ったとき、妻のパンティーは後ろに回った手で下げられてしまったのです。
　ジーンズを持ったまま、前で押さえますが、あっという間に太ももの半ばまで下げられてしまったパンティー。
　これにあらがってもしかたないと思ったのでしょうか。
「せんせい、おねがい」
　再びの切なそうな声が効いたのでしょうか。
　妻は、あきらめたように、ゆっくりとジーンズをたたみました。もちろん、パンティーは、そのまま画面の下の方に消えていきます。
　そのままゆっくりと妻が左右の足を踏み換える仕草をしたのは、足下に落ちたパンティーを完全に脱いだと言うことなのでしょう。
　そのとき、妻が素足にミュールの姿だったのを思い出しました。きっと、ジーンズを脱ぐ前に、素足になっていたに違いありません。
　ベッドに横たわるギプスをした少年。妻は、とうとう、深夜の病室で、少年の目に全裸をさらしてしまったのです。
　何一つ隠すモノもないヌードになって、妻は、初めて圭司君の方を向きました。
「どうしたいの？」
　妖しげな魅力を湛えた声でした。
　あるいは、この時、妻は初めからどうするのか決めていたのでしょう。だから、圭司君が、控えめな、本当に小さな声で漏らした言葉は、ひょっとすると妻が期待通りの言葉を言わせた結果なのかもしれないのです。
「せんせい、セックスって、どうするの？」
　もはや、妻に迷いは見えませんでした。
「あのね、けいちゃん、ほんとうはいけないことなの。でも、けいちゃん、こんなになっちゃたんだもんね。先生がいけないんだから、ちゃんとしてあげるね」
　圭司君の目が輝きました。
　画面には病院のベッドに横たわる少年。その前に、全裸で立つ妻。
　これは、アダルトビデオの画面ではないのです。
　昨日の病室を写しているのです。
　そして、画面の中の全裸の女は、ＡＶ女優ではなく、紛れもない私の妻でした。
　妻のキスを見て、力を失っていた私は、なぜか、また、最大限に膨張していました。私は、職場の研究室にいることも忘れ、思わず自分のものを取り出してしごかずにはいられなかったのです。
「じっとしてて良いのよ」
　そう言いながら、妻はゆっくりと圭司君の上に登ります。膝ではさむようにして圭司君の上に立つと、その場所は、怒張の真上でした。そのまま、腰を下ろせばあのペンシル型の、音が出そうなくらい硬そうな怒張が妻の中に入ってしまうのです。
　いいえ違います。入ってしまうのではありません。妻は、私以外の男の怒張を自分の意志で入れようとしているのです。
　和式トイレにしゃがむような格好で、ゆっくりと身体を沈めていきます。
「ああ」
　それは、私のため息だったのでしょうか。それとも、妻のため息だったのでしょうか。
　妻が一度、ぴたりと動くのをやめました。どうやら、一番奥まで飲み込んだのでしょう。すんなりと入ったところを見ると、妻は、これまでの出来事で、そうとう濡らしてしまったのではないでしょうか。
　いくら私のものより小さく、そのうえ、硬いと言っても、妻の入り口は大変締め付けがすごいのです。最初から、手も添えずにするりと入ってしまうには、相当、潤滑液があったに違いありません。
「どう、これがセックスよ」
「先生、気持ちいいよ、先生の中で溶けちゃいそうだよ」
　目を閉じたまま、女の子のような、細い声を出しながら、不自由な身体を揺するような仕草をします。妻のひだひだにとらえられたものを、早くその、柔らかく、ヌルヌルしたものでこすって欲しいのでしょう。
　妻は身体を前に倒すと圭司君の両肩の脇に手を置き身体を支えます。こんなに興奮していても、圭司君の身体を気遣っていたのです。
　その間も、大きく妻の腰は動いていました。私とのセックスでも、妻が上になったことはほとんど無かったのです。この見事な腰遣いは、いったいいつの間に覚えたのか、不思議なくらいでした。
　妻の頭の中では、もう、セックスを教えるなどというのはどこかに行ってしまったのでしょう。ただ、若い牡のエキスを搾り取ろうというオンナの本能だけが、妻を突き動かしているのかもしれません。
「ああ、いい」
　妻がはっきりと快感を口にしました。身体は前に倒しながら、目を閉じたまま、首だけをのけぞらせています。
　くそう、今、あの中は。
　私は、絶頂寸前の妻の中の動きを思い出しました。怒張を締め付け、うねうねと全てのヒダが別に生き物のように動きながら、奥へ奥へとぬめぬめと引っ張り込んでいく。あの動き。
　私は、思わず、自身をしごく手を速めてしまいました。
「せんせい、きもちいいいよ。もう、だめだ。せんせい、せんせい」
「良いのよ、出しても、先生の中に出して。良いのよ。ああ、早く、いいの、お願い、ああ、くぅっ、いくっ、あああ」
「せんせいぃ」
　私も、つい、場所もわきまえず迸らせてしまいました。慌てて左手で受けたものの、昨日何度も放出したとは思えないほど、たっぷりとでてしまいました。
　急いでティッシュでぬぐいながら、画面を見ます。
　２人の動きが静かなものへと変わっていました。
「ああ」
　と妻は、ゆったりと身体をかぶせながら、圭司君に顔を重ねていきます。
　妻は、精を吐き出した怒張をそのまま身体に留めておくことを望んだのでしょう。
　オトコを入れたまま、先ほどに負けない、長い、長いキスです。
　私より、数段小さいはずの、成長途上の怒張から、妻は、たっぷりと快感を掘り起こされたようです。
　ろくな前戯もなしに、逝ってしまったのです。
　画面では、まだ妻の頭が動いていました。
　そのうち、えっと言う感じで妻が頭を起こしたのです。
　驚きと期待、そして淫靡がないまぜになったメスの顔つきでした。
「あ、また…」
　確かにそう言ったとき、画面が不意に途切れました。長い淫蕩な時間が、バッテリーの限界を超えてしまったのです。
　ブルーになった画面を見つめながら、最後の言葉の意味を考えました。
　たしかに、またっと言ったのです。それは、どう考えても、圭司君が復活したという意味でしょう。そして、復活した圭司君を身体に入れたまま、それで終わりなどということはあり得ません。　
「何度やったんだ」
　私は思わず、乱暴に電源ボタンを押していました。
　妻に会うまでに、あと二時間でした。