第９章 罪と罰　〜玩弄〜

　妻の待つ約束の場所に着いたのはぎりぎりになってしまいました。
　インターネットで店を調べ、電話で確認しているうちに、知らず時間が過ぎてしまったのです。
　やっと見つけました。
「お待ちしております」
　店主の低い声がとても、優しげでした。客商売とは言え、営業時間を早めてくれるとまで言ってくれたのです。最後まで迷っている私が、その声のおかげで決断してしまったと言ってもいいでしょう。

　私を一目見て、妻は怪訝な顔をしました。デートですから妻はそれなりにオシャレをしています。私ときたら、いつもの仕事用のワイシャツ姿なのですから、二人の格好はちぐはぐな組合せになってしまいます。
　妻はお気に入りのモスグリーンのワンピースです。アクセントの腰の細い革のベルトがポイントだとか。
　正直言って私にはよくわかりませんが、この格好をすると二十代前半の「お嬢様」に見えるのだとか。よく言うよ、とちゃかしつつも、実際、そう見えなくもないというのが、正直なところです。
　職場の飲み会に着ていって、帰りに大学生にナンパされたと、ついこの間言っていたような気がします。もちろん、妻が取り合うはずもなかったのですが。
　しかし、私は、妻がこれを着て飲み会に行ったのを複雑な気持ちで見送ったものです。
　確かに、真面目な妻の細い横顔が華やいで見え、よく似合っています。しかし、妻は涼しいとお気に入りですが、その深く開いた胸元は、横に並んで酌の一つもすれば、きれいな胸元どころかブラジャーに包まれた丸みが全て見えてしまうに違いないのです。
　妻は、物事をきちんとこなさないと気が済まないタイプです。だから、と言うわけではないのでしょうが、酒の席では積極的に飛び回り、酌をし、酔うほどに動きが活発になります。
　きっと、職場の男達全員に酌をしたに違いなく、妻の胸をじっくり鑑賞できたことでしょう。いつか職場の写真で見た、禿げた教頭が、下卑た目で妻のふくらみをたっぷりと楽しんだのに、違いないのです。

　私は、妻を乗せ高速に乗りました。妻はどこへ行くのと尋ねつつ、明るい表情で、よく喋ります。
　明るさの中にも、年齢に似つかわしくないほどの純真で、真面目さが伺える表情です。
　こんな清楚な表情をする人物が、淫婦さながらに自ら腰を下ろして、若いオスの怒張を迎え入れていったのです。
　今、妻の頭の中に、昨夜の淫らな出来事は少しも浮かんでいないのでしょうか。
　と言うのも、私には、なぜか、その明るさが不自然なものに感じられたのです。しかし、それが、ビデオを見た私が意識してしまうせいなのか、昨日の出来事で妻が不自然なのか、わかりませんでした。
　あのさ、昨日なんだけど、どうしたの？
「え？別に何でもないけど」
　女というのは恐ろしい生き物です。妻は、本当に何事もなかったように、サラリと言ってのけるのです。この瞬間、これから妻に強いる淫らな行為に、私は罪悪感を持たずにいられる決心が付いたのです。
　実はさ、朝ね、看護婦さんから、聞いちゃったんだ。昨夜のこと。
　妻が一瞬息を止めたのを感じました。
　もちろん、ウソです。当直の看護婦さんが昨日の痴態を知っているのかどうかは知りませんが、少なくとも私は、看護婦さんから何も聞いていません。
　しかし、ビデオで見たとは絶対に言えない以上、こう言うしかないでしょう。
　しかし、妻にとっては、そうとうの衝撃だったようです。
「別に、何にもしてないけど」
　そう突っぱねながらも、声がわずかに震えています。普通の人にはわからないでしょうが、恋人時代から十年近いつきあいの夫婦です。緊張で追いつめられていることくらい手に取るようにわかります。
　ふ〜ん。
「今朝、ね」
「何？」
「看護婦さん、シーツ換えてたよ」
　ウソではありません。帰り際、確かに、シーツを換えているところを見たのです。ただし、圭司君の部屋ではなく、下の階のことでしたが。
　しかし、妻は見事に引っかかりました。
「ウソよ！だって、ちゃんと確認したもの！」
　叫んでしまってから、妻はハッと気づいたようです。
「まあ、何を確認したのか知らないけどさ」
　私は、念を押しておいて、そのまま黙って運転していました。妻は、私への裏切りを、まさか知られているとは思わなかったはずです。そして、はからずも、自分の口で「シーツを確認する必要のあること」をしてしまったと告白してしまったのです。
　妻は、私から顔を背けるようにうつむいていました。
　表情はわかりません。しかし、ちらちらと見ると、肩が震えています。あるいは泣いているのかもしれません。
　それは、私を裏切ったことへの後悔でしょうか。
　あるいは、教え子に手を出してしまった後悔でしょうか。
　それとも、秘めていた淫らな欲望を、私に知られてしまった羞恥だったのでしょうか。
　沈黙の時間が流れました。
「あなた…　ごめん、な、さい」
　言いよどみながら、ぽつりとつぶやくように口にする「ごめんなさい」は、貞淑な妻が、してはならないことをしてしまった重大さを十分に思い知っているものでした。おそらく、妻は、自分がなぜ、そんなことをしでかしたのかわかっていなかったでしょう。
　しかし、考えてみると、私の怒張に貫かれての絶頂の時に、自ら口にしてしまった、あの「けいちゃん」という言葉が、全てだったのかもしれません。
　あの時、妻の頭の中には、すでに、若い牡との交わりが頭に染みついてしまったに違いないのです。
　そして、その時すでに、おのれの全てを見られ、肌を撫で回され、あまつさえ、快感をむさぼってしまった相手です。しかも、自分のブラジャーでオナニーすることさえ認めてきたのです。
　それは、近親相姦的な母性の一種かもしれませんが、妻は、それを見て濡らしてしまったのです。保護すべき母性も、オンナとしての本能も、全てが、若い牡を欲したに違いありません
　あとは、きっかけさえあれば、それを止めることなどできなかったのでしょう。
「謝らなくてもいいさ。でも…」
「でも？」
「まず、君がしてしまったことを全部話してくれないと。いいかい、ウソはダメだよ。」


　
「お仕置きが必要だね」
　けげんな顔で私の方を向きました。
　やはり。
　妻のせつない表情をたたえた顔には、既に幾筋もの涙が伝っていました。
「今日は、僕の言うことを聞いてもらうよ」
　私の断固とした宣言に、妻は怯えた兎の目でうなずくしかなかったのです。
　どうやら、これ以上の脅しは必要ないようでした。貞淑な妻としての後悔と神聖な教師という職業としての後悔が、妻を、がんじがらめにしてしまったのでしょう。
　むしろ、それを罰してくれると言うことは、妻にとっては救いになったのかもしれません。だから、妻は、ごめんなさい、と言ったまま、座席の中で小さくなりながら、むしろ、どこかホッとしたように見えました。

　私は、カーナビに頼りながら、その店を探し当てました。横浜からほど近い、ある街の中の雑居ビルです。目的の店は、この２階にあるはずです。
　ちょっと待って、と言い残して、私だけが車を降りました。不安そうな妻はそれでも、何も言いませんでした。
　電話で話した店主は、ちゃんと待っていてくれました。優しげな低音の持ち主は５０がらみの、大柄な体型でした。
　私を見て、薄い頭に手を当てながら、ほう、とうれしげに人なつこそうな笑みを浮かべます。私が電話をした相手だとわかると、これから起こることへの期待でしょうか、その笑みには、どこか卑猥さが漂った気がします。
「いや、最近はそういうお客さんが多くて、もう、こういう商売をやってて良かったって、ほんと、思いますよ」
　そういって、愛想笑いをする態度は、どこか、今まで隠れていた私の「趣味」が見透かされているようで、ドキリとさせられました。しかし、ここまで来たらあとへは引けません。
　私は、簡単に打ち合わせすると、一つだけ、小物を買いました。妻を変えるための小道具です。　　

　妻は案の定、不安そうな顔のまま、入り口を見つめていました。私と目が合うとホッとした表情をして、そして次の瞬間、下を向いてしまいました。
　これから起こることへの不安感でしょうか。それとも、私に対する申し訳なさなのでしょうか。
　さ、降りて。
「何なの、ここ」
　ちょっと心配そうに妻が尋ねますが、私は、それに答えずに、最後の追い込みにかかりました。
　悪いと思ってるよね。
「…はい」
　ちゃんと、お仕置きを受けるつもりはあるの？
「あの、お仕置きって、いったい、どんな…」
　まさか、お仕置きの内容で受けるかどうか決めるつもりなわけ？ふ〜ん。
　私は、わざと突き放した言い方をします。妻には、全面的に受け入れるかどうかの選択しか許さないようにしたのです。
　妻は、そうなれば受け入れるしかありません。
　真面目な性格です。
　子どものころから、素直な良い子で育ってきただけに、自分が叱られることには慣れていなかったのです。悪いことをしたときは、自分が何一つ主張できないと思いこんでも無理ないかもしれません。
　そして、罰はその罪の重さに比例するものです。妻のおびえは当然かもしれません。
　妻は、怯えてはいても、悪いことは償って当然であると思っていたのでしょう。
「ごめんなさい、そんなつもりじゃ…」
　みなまで言わせず、私は、その妻の弱々しい弁解の語尾に重ねて言います。
「いいか、俺がどんなに恥ずかしかったかわかるか」
「…すみません」
「恥ずかしいことには恥ずかしさで詫びてもらおう。いいか、これから一切喋ってはいけない。これから店に入るが、一言喋ったら、そのボタンを一つずつ外してやる」
「そんなの…」
「逆らうのは、約束に入ってないぞ」
「そんなつもりはないけど、でも、そんなのって」
　私は、妻の言っていることを聞かずに、妻の両手を後ろに回しました。戸惑いながらも、抵抗はしませんでした。
　ガチャ。
　それは、オモチャと言っても良いような「手錠」でした。しかし、手を後ろでつなげば、人間というのは、身を守るすべがなくなるのです。実に効果的な小道具なのです。
　これこそが、さっき店で買ったものです。
　そうなのです。私は昼から営業している、それも、親父が一人でやっているようなマニアックな、オモチャ屋を探したのです。もちろん、こんな風に、手が傷つかないように、皮の内張が付いているような手錠を売るのは「お子様向け」のオモチャ屋ではありません。
　なんなの、これ！　と言いながら懸命に引っ張りますが、その程度では外すことなどできません。本当は手首のつまみ一つで簡単に外れるのですが、妻はそれに気づくはずがないのです。
「取って」
　そう言って振り返った妻の、驚いている目をじっと見つめながら、重篤な病を宣告するように、ゆっくりと言い聞かせます。
　これから、恥ずかしい思いをしてもらうよ。それが、今日のお仕置きだからね。
「そんな…」
　しばし、無言での闘いがありました。しかし、しょせん、負い目があるのは妻です。妻がうつむくまでに、それほど時間はかかりませんでした。一度、負け犬の状態に追い込めば、あとは、いくらでも誘導できます。
　店の中で、一切逆らえないという「ルール」を飲み込ませるのは簡単でした。
　妻を先に歩かせて、ゆっくりと細い階段を上りながら、踊り場で呼び止めます。
「あ、そうだ」
「どうしたの」
　私はにやりと笑いました。
「しゃべっちゃったね」
　目が見開かれ、ヒドイと口は動きましたが、それ以上何も言いませんでした。
　妻はルールを承諾したのです。
　じゃあ、一番上のボタンを外そうか。いや、と身体を逃がそうとしますが、踊り場は狭い上に両手の自由が利きません。私は第一ボタンを外して、わざと胸元を広げてしまいます。
　すると、胸元から、妻の淡いブルーのブラジャーが見えてしまいました。カップ部分こそ、少ししか見えませんが、２つをつなぐ部分が丸見えです。
　これじゃ、下着が見えちゃうね。
　妻が一瞬ホッとしたような気がします。私が「見えるからやめておこう」と言うのを期待したんだと思います。
「ブラ、取っちゃわないとダメだね」
「そんな」
　あわてて、後退りしながら、首をぷるぷると横に振ります。
　私はぐっと妻を抱き寄せると、ワンピースの上からブラのホックを外してしまいました。半袖の袖口から、肩ひもを外すころには、妻もあきらめたのか、大人しくなりました。
　しかし、後ろ手に手錠をしている以上、このままでは取れません。
　私はあえて、引きちぎることを選んだのです。
　思った以上に力のいることでしたが、肩ひもが引きちぎれる音が、するたびに妻がビクッとなっています。妻にとっては、引きちぎるという荒々しい動作が、そのまま、私の怒りと感じられたのでしょう。
　だから、私が２つめのボタンを外したときも、無言で下を向いたままだったのです。

　ふたつめのボタンを外すと、妻の柔らかい膨らみは、裾野がすっかり見えていました。いいえ、もはや裾野とは言えないでしょう。柔らかい丸みそのものです。
　もともと胸元が開いている上に、ボタンがはずされれば、もはや乳首がかろうじて隠れているだけになるのは当然です。そして、歩くときの振動で、ゆっくりと、しかし確実に、広がっていくでしょう。
　そうです。妻は、オモチャ屋の親父に、この柔らかい膨らみをさらすことになるのです。
　ふと思いついて、ひょいと妻のはだけた裾を引っ張りました。
　あわてて身を振りますが、手を使えないので、よけい乳首が見えやすくなっただけです。
　そして、そのあらわになった乳首は、なぜか、尖っていたのです。
　尖ってるね。
　妻はうつむいて、頭を振るだけでした。

「じゃあ、これの好みのものを、見つくろってくれる？ああ、ちゃんと試着もさせてね」
　私はそう声を掛けると、店主であるオヤジは、揉み手をせんばかりに、うれしそうに近寄ってきました。
　その目は、すでに、妻のくつろげられた胸に吸い寄せられています。
「ちょっと、疲れたから、選んでいる間に休めるところはない？」
「どうぞ、どうぞ、こちらでビデオでも御覧になってください」
　そう言って勧められたのは、レジ脇の狭いブースの中でした。なるほど、小さなテレビとビデオがセットしてあります。ヘッドフォンもついていました。
　私が、そこに入ってしまえば、妻は店の中で、オヤジと二人っきりになってしまいます。
　妻は、あわてたようです。
　しかし、言葉を発せば、ボタンを外されてしまうことはわかっています。抗議の声も出せず、私が、ブースに入って、ゆっくりとヘッドフォンを被る姿を見送るしかなかったのです。
　そうです。手が使えず抵抗できない上、大きく胸元の開いたワンピースのボタンは半ば外され、しかもノーブラ。じっとしていても、すでに胸のふくらみの大半が見えている状態で、妻は誰とも知らない禿げオヤジと２人きりになるのです。
　自分を守ってくれるはずの夫は、守るどころか、見えないところに行ってしまう。それも、ヘッドフォンのせいで、「もし何かあっても聞こえない」のです。
　シャッと音をさせて、クリーム色のカーテンを引く瞬間に見えた妻は、流刑の島に取り残され、帰る船を見送る流人のような、哀しみに満ちた表情でした。
「待って」
　と妻の見開かれた瞳が訴えていたのです。
　妻は、これから、一人で、品物を選ばなければならないのです。いえ、一人ならまだ良いかもしれません。あの禿げオヤジがぴたりと寄り添うようにして、あれやこれやと「世話を焼いて」くれるはずでした。
　オヤジが気を利かせてくれたのでしょうか。それとも、妻への狼藉を私にできるだけ見逃させようという魂胆なのでしょうか。画面には、いわゆる裏もののビデオが映し出されましたが、私はビデオなど目もくれませんでした。
　オヤジには、あらかじめ「ホンモノの挿入以外なら何でもＯＫ」と言ってあります。つまり、妻はこれから４０分にわたって、見ず知らずの禿げオヤジから、商品を選ぶフリをした「玩弄」にさらされるのです。

「奥さん、胸、とってもおきれいですね」
「ああ、やめて、触らないで」
　一瞬の間。
「ご主人からうかがってますよ。何でも、言葉を発したらボタンを外せとか、まあ、私も商売なもので、お客さんの命令に従わなきゃいけないもので」
　オヤジのうれしそうな声と、妻のヒッという声にならない悲鳴が聞こえます。
　すこし、ガタガタと物音がしました。妻はどうしているのでしょうか。
　抵抗するにしても、両手が動かせないのです。外されてしまうのは時間の問題でしょう。それに、最初の妻の声は、オヤジに胸をさわられたからに違いないのです。
　妻に与えている罰は、「このあと、ホテルで自分に使って欲しい道具を３つ選ぶこと」というものです。私が与える罰を受けるつもりなら、妻は、この玩弄に耐えて商品を選ぶしかないのです。
　私は、そっと、カーテンの隙間からのぞいてみました。
　予想していたこととは言え、その姿に衝撃を受けました。
　妻は、ボタンを全て外され、形の良い胸がすっかりまろび出されていました。
　店が店だとはいえ、白昼の店先で半裸にされている妻の姿は異様な光景です。
　それだけではありません。後ろにぴたりとくっついたオヤジは、その大きな右手で妻の胸を揉みしだいていたのです。
　オヤジからすれば、亭主公認で、素人の、それも、まだ若く美しい人妻の乳房を自由にもてあそべるのですから、ためらう理由など何もないのでしょう。
「ほら、奥さん、真面目そうな顔をしてエッチだから、私のも、こんなになっちゃいましたよ」
　そう妻に声を掛けるので、よく見てみると、妻の背中にぴたりとくっついたオヤジの腰は、ちょうど背中に回された妻の両手があるあたりでうごめいていました。妻は嫌々をしながら、肩をくなくなと揺すっています。
「そう、そう、ほら、大きいでしょ、もっと、力を入れて良いんですよ。こんなの、奥さん好きでしょう」
　そんな声が聞こえます。ということは、覆い被さったオヤジの腹の下で、妻は見ず知らずの男の怒張を握っていると言うことなのでしょうか。
　妻は、しきりに逃れようとするかのごとく身体を揺すりますが、激しい動きはできず、かえって、オヤジを刺激するだけでした。
　そして、妻が、大きく動いた瞬間に、妻の背中が見えました。
　やはり、いつの間にか、オヤジは、怒張をズボンから取り出していたのです。
　妻は、手錠でくくられた不自由な両手で、オヤジの怒張を握らされていました。オヤジの左手はそのために、妻の手に添えられているのです。
　それは、太さこそ私と大差がないように見えましたが、妻の細い手では、両手に握っても、なお、先端が余りそうな長さだったのです。さすがに自慢するだけはあります。
　そして、オヤジが身体を再びくっつけて、妻の耳に何事かささやくと、妻は一瞬、ビックリしたような顔をしたあと、急に大人しくなったのです。その様子を後ろから確かめながら、今度は、そっと左手も前に伸ばしてきました。
「そうそう、それなら大丈夫ですよ」
　そう満足そうにオヤジが言うと、妻の胸を引っ張るようにして、目の前のショーケースの方に誘導します。
　いったい、妻になんと言ったんだ。
　少しのいらだちに気色ばんだその時に、見えてしまったのです。
　今や、支えられもせずに、妻は、しっかりと、オヤジの怒張を両手で握ったままだったのです。
　身体が離れた瞬間、もはや支えるボタンを失ったワンピースは、ふわっと言う感じで後ろに脱げてしまい、腰のベルトと腕の交差している部分でぶら下がっているだけでした。
　その時に妻は、確かに、耳には聞こえない悲鳴を上げたのが見て取れました。
　そんな妻の狼狽をオヤジは心から楽しんでいる様子です。
「さあ、最初の品物は、奥さん好みの、拘束具はいかがですか。ほら、こんなの」
　それは、なにやら輪っかの付いた革のブラジャーのように見えました。
　妻は、何かを身にまといたい一心だったのでしょう。それとも、この羞恥の時間を少しでも短くするためなら、何でもいいと思ったのでしょうか。よく見もせず、うんうんとうなずきます。
「ちゃんと試着しましょうね」
　オヤジは素早く妻の手錠を外して、腕をブラに通させます。
「ほら、奥さん、ちゃんと握っててくんないと」
　妻が、おずおずと、しかし素直に手を後ろに回し、再び握る動作をしたのに少し驚きました。ひょっとして、妻自身の中に、男の怒張に対する欲望が目覚めたのでしょうか。
　妻の胸は革のブラジャーに収められています。しかし、オヤジが言った通り、それはブラではなく「拘束具」だったのです。
　後ろの部分に付いている金具付きの輪っかは、妻の二の腕を捕らえ、胸を突き出すような姿勢で妻の両腕は固定されました。その上、胸のふくらみを包んでくれるはずのカップが、ピチリという弾ける音をさせて、外れてしまったのです。
　今や、妻の柔らかなふくらみは、革のベルトで絞り出されているように突き出していました。その先端は尖りきり、オンナの興奮を示しています。
　妻は、再びむき出しになってしまった胸を隠したそうに肩を揺すりますが、逃げられるわけもありません。
　それに、なぜでしょうか、相変わらずオヤジの怒張を握りしめたままのようでした。
「ほらほら、ぴんと尖っちゃってますよ〜。けっこう真面目そうな顔してるのに、いやらしいんですねぇ。ほら、どう？奥さ〜ん」
　そう言いながら、やわやわと、革のベルトに絞り込まれた胸を、その裾野から絞り出すように、乳首まで、何度もなで上げます。
「あん、あう、あん、ああ、だめぇ、ああ！」
　妻が一瞬ビクンっとなったのです。
　ひょっとして、妻は胸だけで達してしまったのでしょうか。見知らぬ、エロオヤジに、拘束された胸をほんのちょっといじられてだけなのに絶頂してしまう。
　まさか、と思いつつも、オヤジの腕に抱えられるようにしながら、はあはあ喘ぐ姿を目の当たりにすると、そう思わずにいられません。
　なんで、そんなに感じるんだ！俺以外の男のものを握ったまま逝ってしまったのか！
　私は、自分がそうさせたにもかかわらず、今すぐ近くに行って、妻に怒鳴りたい気持ちだったのです。しかし、一方で、苦しくなったズボンから解放した私の強張りは、今にも破裂しそうなくらい硬く、大きくなっていたのです。
　妻が喘いでいる間に、オヤジは器用にも腰ベルトを外してしまったようです。
「あっ」
　妻がハッとしたときには、モスグリーンの衣の山が足下に広がっていました。
「いやあ」
　さすがに、我慢ができなかったのでしょう。妻はとうとう声に出して抵抗します。しかし、オヤジは、そんなこといっこうに意に介しません。
「ほら、デートなんでしょ。こんな無粋なものを履いちゃダメですよ」
　そんな勝手なことを言いながら、おそらく、いつも履く妻のガードルを脱がしているのでしょう。妻が抵抗しても、しょせん腕が利きません。あっという間に、下げられてしまったのです。
　しかし、オヤジが脱がしたのはガードルだけではありませんでした。
　オヤジが、ほらと妻の前にかざしたものを見て、あれほど妻が抵抗したわけがわかりました。
　その手には、妻の薄いブルーのパンティーが提げられているのです。
「ほら、奥さん、このシミは何かな〜」
「いや！」
　顔を背ける妻を楽しそうに見守りながら、ほらほらと、突きつけながら、左手で妻の胸を揉むのが見えました。
　今や、妻は見ず知らずのオヤジの腕の中で、身に着けているのは、革の拘束具だけなのです。
　拘束具で絞り出された白い乳房も、ピンクの乳首も、どちらかというと淡い秘毛も、何もかもが白昼の店先でさらけ出していました。
　その姿は、一糸まとわぬ姿よりも、あるいはエロチックだったかもしれません。
　真面目で、貞淑な妻は、こんな姿にされることを想像すらしたことがなかったでしょう。
『そばで見たい』
　しかし、私の姿を見て妻の反応が変わってしまうことを恐れました。私は、このまま、見知らぬオヤジに玩弄されながら感じてしまう妻の淫らな姿が見たかったのです。
　オヤジは、そんな私の欲望が伝わったかのように、こっちに近づきます。通り際に、ひょいと言う感じでつかんだものは、革のアイマスクでした。　
「な、何を…」
　有無を言わせず、アイマスクを妻にかぶせます。
「やめ、やめて」
　不安そうな声を出す妻は、今や、アイマスクと革の拘束具だけを身にまとったまま、オヤジに押されるように目の前にやってきました。
　今にも座り込みそうな妻を抱えるようにして、オヤジは目の前のイスに座り、妻はその膝に乗せられました。
　一瞬、そのまま、さっきの長い怒張が妻の体内に入れられてしまったのかと、ヒヤッとしました。しかし、妻の足の間から角が生えたように突き出すものをみて、安心したのです。
　ただ、その瞬間、物足りなさを感じてしまった自分が確かにいるのを感じたのです。
　オヤジが、こちらを見て、ニヤリとしました。
　どうやら、のぞいていたのは先刻ご承知だったのでしょう。
　だから、アイマスクで妻の視界をふさいでくれたのかもしれません。
　私は、そっとカーテンから抜け出出ます。これで、男の膝に座る妻をすぐ側から安心して見ることができたのです。
「ほら、奥さん、こんないやらしい所、旦那さんに見られたら、大変ですね。奥さんのお○ん○、びしょびしょですよ」
「あぁ、いやぁ、言わないで」
「どうします、ご主人を呼んで見てもらいましょうか」
「あぁ、それは、だめぇ、お願い、やめて」
　助けてくれるはずの私を呼んで欲しくないというのは、どういう心の動きだったのでしょうか。あるいは、今、感じてしまっていることを私に知られたくなかったのでしょうか。
「奥さん、もっと、ヌルヌルにしちゃいましょうか」
　そう言いながら、傍らのボトルを取ると、妻の胸にかけます。それはピンク色をしたゼリーのようなものでした。
「マッサージ用のジェルでしてね、女性をいやらしくする成分もたっぷり入ってるんですよ。ま、奥さんは、そんなのなくても、いやらしくなってますけどねぇ」
「いやぁ…」
　と身もだえるのは、いやらしいと言われてのことでしょうか。それとも、にゅるにゅるとオヤジの大きな手の中で、ジェルにまみれて動かされるオッパイから快感をむさぼっているためでしょうか。
「あん、あん」
　にゅるっと全体を絞り込みながら、人差し指で妻の乳首をつぶすようにぐにゅりと動かすたびに、妻は可愛い声を出さずにいられなくなったのです。
「ああ、だめぇ」
　妻の拒否の声は甘い響きがこめられています。そして、おそらく、無意識のことでしょうが、妻の腰は、ヒクヒクと前後に動き、オヤジの怒張に我が身をこすりつけているのです。
「奥さん、気持ちいいでしょ、もっとお尻を動かして、そう、そう、お○ん○、もっとこすりつけていいんですよ」
「ああ、いやぁ、いやなのぉ」
　妻は、ベッドの中でも出さないような甘い声で、いやと言いながら、さらに腰を動かしています。おそらく、妻の秘所を男の幹がこすりたてているに違いありません。あの角度なら、妻の隠核も押しつぶされるようにこすれているでしょう。
　しかし、幹の部分では、おそらく、オンナが一番欲しい部分に届かないのでしょう。そうと意識してないにしても、もどかしげに、探るような動きになりがちです。
　おい、そんなに動かすと、そのオヤジのが入っちまうぞ、やめるんだ。
　私は心の中でそう叫ばずにいられませんでしたが、口の中がカラカラに乾いたまま、言葉を出すこともできませんでした。
　オヤジは、自分の服に付くのもかまわず、妻の胸をジェルまみれにし、さらにこねくり回しています。そして、その度ごとに、妻はあえぎ、腰の動きが速く、大きくなるのです。
　もし、この時オヤジに「入れて良いか」と聞かれれば、私はきっとＹＥＳと言ってしまったに違いありません。妻が本気でもだえる姿を見たいという気持ちは、もはや、何も止めることなどできなかったのです。
　もし、オヤジが、その先端を入り口にあてれば、きっと、妻は拒まなかったに違いないと思えるのです。
　あってはならないことですが、一方で、あって欲しいというどす黒い期待を禁じ得ませんでした。
　妻がもどかしげに大きく腰を動かしました。
　その時、入り口の戸が開く音がして、一人の男が入ってきたのです。