１．−−成り立たない交換条件「吉岡」−−

「ああ、今日も暑いわね。」
　恵子は、少しでも涼しい午前中に買い物を済ませてしまおうと近所のスーパーマーケットに出かけ、今しがた帰宅し、買ったものを手早く冷蔵庫にしまうと、ノートＰＣがある自分の部屋へと向かった。
　恵子は２８歳。今は個人トレーダとしてかなりの年収を得ていた。
　恵子は画面を更新し、自分が投資した会社のチャートを確認した。
「やった。やっぱり上がってる。」
「この会社・・・もう、キスしてあげたい。」
「買い物している間に１２０万の儲け・・・。あん・・もう私を好きにして・・・。」
　恵子は浮かれながら、舌先で唇を舐めながら怪しく微笑み、目はしっかり画面を見つめネイルアートで綺麗に飾られた人差し指でマウスのボタンをクリックし「株」で「勝ち」を確定させた。

「シャワーでもあびようかな。」
　恵子はノートＰＣの蓋をしめると、自分がかなり汗をかいているのに気がついた。
　午前中とはいえ外は３０℃もあるなか買い物に行き、高額の勝利を得た余韻から手に汗もかいていた。

　恵子は浴室の脱衣所に行き、体全体が写る姿見の前に立ち、そこに自分を映した。鏡を見つめながら片手でレーバンのサングラスをはずし、ブラウンの髪をかきあげた表情は優しく明るい人柄を感じさせた。

　上半身は体にフィットした丈の短い白のタンクトップ。胸には、くっきりと黒のブラが浮かび上がり、大きく開いた胸元からは、細い血管が浮かび上がるほどの綺麗な白肌の谷間ができていた。その谷間に光るネックレスをはずし、腕からはブルガリの時計をはずして洗面台の奥に置いた。

　恵子は少し前かがみになり、腰ではいている着慣れた細身のＧパンのベルトを外し前のジッパーを下ろした。くびれた細いウエストはＧパンを脱ぐ前から露出し、下半身にまとわりつくＧパンも白く長い足から引き抜いた。

　恵子がふと鏡に目を移すと、前かがみになった胸元の谷間から黒のブラが覗き、下半身には黒の小さなショーツが白肌とは対象的な色をして浮かび上がっていた。
「胸元はこんなに大胆だったのね。」
「これで外に出てたなんて。ちょっとＨだったかも・・・。」
　恵子は、鏡に写る大胆な自分に苦笑した。

「私がホステスを辞めて、こうやって「株」で生活できるのも、あの人のおかげね。」
　恵子はそうつぶやくと、何かを思い出したように、真剣な表情になった。
　鏡に映る自分に「見て」とつぶやくと、ショーツに親指を引っ掛け両足から抜き取った。
　そして、そっと両手を背中に回して、ゆっくりと鏡の前で姿勢を正した。

「あの人、ソファーに座って、水割りを飲むのが好きだった。」
「私を目の前に立たせて・・・。眺めながら・・・。」
「下半身だけ裸にされ、一番恥ずかしい部分をさらしている私の姿を。」

　恵子は捕われた囚人のように背中に手を回し、恥ずかしさで下を向き、目をつむりながら、床にうずくまりたい気持ちを抑え、羞恥心を快感として受入れていた過去の自分と吉岡のことを思い出していた・・・。

　吉岡は羞恥に耐えている恵子の表情が好きだった。
「さあ、恵子。ここに立ちなさい。」
「はい・・・」
　恵子は返事は震えていた。そして、いつものように、吉岡の足元へ立った。
　吉岡は手で恵子の露出した薄く手入れがされたヘアーを撫で、ときには太ももを指先で弄びながら、何かを哀願するような恵子の表情を見ながら水割りを楽しんだ。
「あぁっ・・・」
　恵子も吉岡に「株」の情報を流してもらうために素直に従っていた。確かに最初はそうであった。しかし今では「株」のために、というのは嘘で横暴な吉岡のＳＥＸに征服された、淫乱な自分を正当化する理由であることを自覚していた。恵子はこれから始まる吉岡の行為を期待し、立っているのが辛いくらい感じ始めていた。
「お願い。もう、じらさないで。」
　恵子は心の中で叫んだ。そして、その思いは表情に表れ、吉岡は恵子の心の中が手にとるように分かっていた。

　恵子は離婚したあと、銀座でホステスをしていた。そのときに客として自分を指名してくれたのが、外資系証券会社の部長である吉岡だった。
　吉岡は優秀なトレーダで、毎晩のように店で恵子を指名しで豪遊してくれた。男と女の関係になるのも時間はかからなかった。

「恵子、グラスが空だぞ。」
　低い吉岡の声で恵子は我に返った。恵子は、蛇の生殺しのような愛撫に膝をぐらつかせながら必死に耐え、グラスが空になっていることに気がつかなかった。
「ご、ごめんなさい。」
「こんな、ねむたい愛撫に感じてたのか。」
　吉岡は小ばかにしたような表情で恵子の目を見ながら再び恵子のヘアーに手を伸ばし、人差し指で恵子の割れ目をなぞった。
「あぁ・・。」
　恵子は吉岡から顔を背け再び小さなあえぎ声を上げてしまった。
「感じてないで早く作りなさい」
　吉岡はポンと恵子の白いお尻を叩き催促した。
「あん・・。」
「すぐに、すぐに作るから・・・。」
　恵子は水割りを作るために、ふらつく足取りでテーブルに手をつきながら吉岡の足元にひざまづいた。
「すぐに作るから何なんだ。」
「すぐに作るから愛撫を止めるなと言いたいのか。」
　恵子は、空のグラスを見つめたまま小さくうなずくと、グラスにスコッチを注いだ。吉岡は恵子のしぐさに興奮した。
「恵子、水割りの作り方を忘れたのか」
　恵子は吉岡の顔を一瞬見つめ、そしてグラスに目を戻し観念したように、床にひざまづき整えていた両膝を少しづつ広げていった。吉岡の前で両膝を開き、女性の一番恥ずかしい部分をさらさなければならない。恵子はわかっていたができなかった。いつもと違い、先ほどの吉岡のいたづらで恥ずかしいくらい濡らした部分をどうしても吉岡の前にさらすことができなかったのだ。恵子がそう意識した瞬間、ロックアイスを入れていた手も膝も自然に止まってしまった。
「恵子、どうした」
　恵子は、止めた手を動かしグラスにロックアイスを入れ、ミネラルウオータを注ぎマドラーで軽くシェイクし水割りを完成させた。しかし、膝のほうは動かすことができなかった。恵子は水割りを吉岡に手渡した。恵子は命令に従わず水割りを完成させてしまったことに吉岡のお仕置きを覚悟し、両手を再び背中に回し吉岡の足元で正座した。吉岡も恵子の行動を理解した。
「恵子、濡らしたオマ○コは見せられないか・・・」
　吉岡はそういうと自分の足を強引に恵子の股間に割り込ませ足の裏を恵子の股間に押し当てると、昔のコントドラマで流行した電気あんまのように足の裏をグラインドさせた。
「はぁぁ・・・」
　恵子はいきなりきた快楽に驚き思わず吉岡の足を手で押さえていた。しかし、吉岡は構わずに足のグラインドを続けた。
「あぁぁ・・・。ご、ごめんなさい。開く、開くから」
　恵子はあわてて大きく両膝を広げた。そして、吉岡の足の裏でもっと感じるように床に尻餅をつき股間を吉岡のほうへ突き出し、自分から股間を足の裏に押し付けた。さらに、吉岡の足を持った恵子の両手は吉岡の足のグラインドを手伝っていた。
「恵子、お前は僕の足の裏で感じるのか。」
「俺の足の裏はベトベトだぞ。」
　恵子はいつのまにか、両足を大きく開き、床の上に仰向けに寝ていた。その姿は、吉岡の足をバイブ代わりにして吉岡の前でバイブオナニーを披露しているかのようだった。
「いい、気持ちいい・・・。」
「いっちゃう・・・。だめ、いっちゃう。」
　吉岡は足の指を恵子のオマ○コに容赦なく突っ込み出し入れした。
「恵子、足の指でも感じるのか。足の指でも濡らすのか。」
　恵子は吉岡の足で、これだけ感じるのは屈辱的であった。しかし、足で征服される敗北感がこれまで以上に恵子を乱れさせた。
「はぁぁ・・・。もうだめ、いく、いく、いっちゃう！！」

　恵子は、足の裏でいかされる自分を思い出しながら、脱衣所の姿見の前でしゃがみ込み後ろの壁によりかかりながら体を支え、あの時と同じように両膝を広げ、その妖艶な姿を鏡に映していた。
　恵子のヘアーは綺麗に手入れされ、ピンクに充血した濡れたクリトリスの上で、指先と共にネイルアートで整えられた爪が、それ以上の光沢を放ちながら小刻みに動いていた。
「はぁぁぁ・・・。」
　恵子は軽く痙攣しながら絶頂に達し、しばらく下を向いたままじっとしていた。そして、無理やり顔を上げると後ろの壁に頭をあづけて鏡に映る淫乱な自分の顔と、大きく広げた両足の間で濡れている股間をしばらくの間眺めていた。

　吉岡は数週間前、大きな仕手戦に敗れ責任を取らされ退職に追いやられ今は行方不明になっていた。恵子は逆に吉岡を裏切り逆目に賭け大金を手にした。

「次、次よね。バイバイ、吉岡さん」
　恵子は微笑みながら何かを吹っ切るように鏡に映る自分の股間を蹴飛ばし、鏡に映る自分の顔に軽くパンチを入れてゆっくりと立ち上がり、タンクトップ、ブラを脱ぎ捨て全裸になると浴室へと入っていった。