−−開放「真樹」−−

　恵子は、ベットに腰掛ながらバックの中を物色し、最初に赤い首輪を取り出し、自分の横に置いた。恵子は、真樹の前で雌犬となってお座りし、首輪を嵌めて貰うことで、まず、精神面での服従を真樹の前に誓いたかった。

　天涯孤独の野良犬が、人間の手から餌を貰った瞬間、野良犬は、そのプライドを捨て、人間の前に平伏し尻尾をふるようになる。人間は、野良犬を飼い馴らしたという優越感に浸りながら、野良犬を自分の所有物にするために首輪を嵌める。

　恵子は、真樹にも、この女を飼い馴らしたという優越感に浸って貰いたかった。真樹の勝利に酔いしれる表情を見たかった。そして、自分も一人の男性に溺れ、快楽の餌の前に屈服し、敗北を認めた証として、犬のように首輪を嵌められ、侵略者に捕われた捕虜のように、永遠に屈辱的な行為を強いられたいと願った。ましてや、敗北を認めた相手が、年下の子供である。吉岡のときのように「株」のためという敗北を正当化する理由もない。
「たかが子供に・・・。」
「私は負けたのね・・・。」
　一回覗かれただけの、あの真剣な瞳に、恵子は女として負けたのである。恵子にとって最大の敗北。そう、真樹を真剣に愛してしまったのである。

「さあ、恵子、真樹君に首輪をつけてもらいなさい」
　恵子は、ベッドから滑り落ちるようにして、静かに両膝を床に落とした。ベッドの上に置き去りにされたバスローブのお尻の部分が捲くれ上がり下半身が露出した。
「ちょっと待ちなさい。雌犬が、そんなシルクのバスローブなんて身に着けてるの？」
　恵子は、窓の方を向き、羽織っているバスローブを両肩から外した。バスローブは何の抵抗もなくストンと床に落ちた。一糸まとわぬ恵子の裸体が窓ガラスに、薄ぼんやりと映し出されていた。
　恵子は、膝を抱え込むように、しゃがみ直すと窓に向けて大きく両膝を開いた。股間は、一目で恵子が淫乱なマゾであること分かるほど、既に内腿まで、びっしょりと濡らしていた。

「ああっ・・・。」
　恵子は顎を上げ、半開きにの妖艶な瞳で窓ガラスに映る自分を見つめながら、手探りでベッドに置いた首輪を探し当てた。そして、興奮で小刻みに震える手で、自分の首に不器用に首輪を巻きつけた。
「真樹君・・・、きょ、今日から・・・　あなたの・・奴隷となる・・・恵子です。」
　恵子は、これまで、男性との恋愛に興味はなかった。別れた夫に対してもパートナに徹し、対等か、それ以上の関係を維持してきた。それには、理由があり、死別した母親に原因があった。
　いつも誰かを愛し、理性を忘れて男に尽くす。男の身勝手な喜びを自分の幸せだと勘違いしている母親のような「馬鹿な女」に嫌悪感すら感じた。恵子は、必然的に異性への恋愛感情を心の奥底に封印したのである。

　しかし、吉岡に屈していた恵子は「俺にとって一番、可愛い女だ。」と、吉岡に抱かれながら耳元で囁かれると、本心から嬉しいと思った。自然と吉岡に覆いかぶさり、何度もキスをせがみ、自然と涙が零れるほど幸福感に満たされたのだ。このとき、初めて母親の「女の性」が理解できた。吉岡に素直に尽くす、母親のような「馬鹿な女」になりたいと思った。そして、自分にも母親の「馬鹿な女」の血が流れていることを悟った。

　しかし、思春期の頃から、雑巾のように使うだけ使い、絞れるだけ絞られ、使い捨てにされる母親の姿が、深く心に刻まれている恵子には、妻子ある吉岡の言葉に疑問も湧き上がった。
「どうして、私にそんな、優しい言葉をいうの？」
「あなたを頼りにしている奥さんも、お子さんもいるのに。」
「あなたは、妻子を捨てることができるの？」
　湧き上がる疑問を整理できない恵子は本能的に身構えた。吉岡を本気で愛した分、反動も大きかった。心の封印を解こうとする吉岡に、恵子の愛は敵意に変わった。
　恵子は一ヶ月前の「株」の仕手戦で、吉岡を裏切ったのも、この「やさしい言葉」が原因だった。

「さあ、恵子。次は、あなたの体が真樹君の前で絶対服従を誓う道具を手にしなさい。」　恵子は横にあるバックから、男根型のバイブレータを手にした。
「そう・・・、それが恵子の体を狂わすのね・・・。」
「それには、恵子の流した愛液がたくさん染み付いているのよね。」
　恵子はベッドに這い上がると仰向けに横たわった。
「それが、真樹君のオチンチンだと思ってお口で気持ちよくしてあげなさい。」
　恵子の、バイブを見つめる瞳からは、妖艶な愛しさが伝わってくるかのようだった。

　恵子は、「女性の性」を全て封印していた。それが、吉岡によって封印の紐が緩んだ。この紐は、恵子の心に少しだけ刺激を与えれば、簡単に解けてしまうほど緩んでいた。
　真樹に覗かれ、鏡の中の真樹と、恵子の目と目が合ったとき、その紐が完全に解け、封印していた「女性の性」が、一瞬で恵子の心を支配した。

　恵子の中に、突然溢れ出た、男性を慕う女性の本能は、まだ汚れを知らず、恵子の優しい表情を、雅やかな優しい美しさへと異変させた。そして、恵子自信も、これまで全く感じていなかった、母性本能までが息吹き、あっという間に大樹となって、真樹への愛情を優しく包み込んだ。
　しかし、それらの本能を中心で結び付けているのは、吉岡が恵子に深く刻んだ、今や抑制できなほど肥大化し続ける「被虐愛」であった。ベッドに横たわる恵子の裸身からは、世界中のサディストが恵子の前に平伏す程の、淫靡な色香をオーラとして放っていた。

　恵子は目を閉じて、舌先で、そっとバイブの先端を味わい、舌から伝わる唾液が、バイブの先端を光らせた。そして、ゆっくりとバイブを口の中に挿入させた。
「おいしい・・・。」
　恵子は、瞳を潤ませながら、喉の奥までバイブを咥え込んだ。
「いやらしい女・・・。おいしいだなんて・・・。」
　口の中では、ズブズブと音を立て、たっぷりと唾液を含んだ舌が、蛇のようにバイブに絡みつき、バイブがピストン運動のように動いていた。
「そんなに奥まで咥えて・・・。恵子のお口がオマ○コみたい・・・。」
　恵子は片方の手で、乳房を被い、人差し指のネイルアートで整えた爪先で、既に立っている乳首を、引掻くようにして苛めた。
「あっ・・・」
　恵子の体がビクッと反応した。そして、口から出できた、唾液で濡れたバイブで、もう片方の乳首を、円を描くようにして乱暴に押さえつけた。
「あぁぁぁ・・・」
　そして、乳首を苛めていた手が、下半身へと蛇が地面を這うように、恵子の体を這っていった。
「その手はどこに行くの？真樹君を受入れるために自分で濡らすのね。」
　恵子は頭を上げ、何とか半分だけ開けた潤んだ目で窓の方を見つめた。そして、既に濡れたクリトリスを、乱暴に刺激した。
「はあぁぁぁ・・・。」
　恵子は、大きく背中を仰け反らし、後頭部をベッドに押し付け、口から出た喘ぎ声は、泣き声に近かった。
「恵子、そんなに嬉しいの？」
「さあ、足を大きく開いて、恵子の濡れ具合が、真樹君の好みになっているか見てもらいなさい。」
　恵子は中指に力を入れ、愛液が溢れ出る陰部へ深々と突き立てた。
「あっ・・・あっはぁぁぁ・・・。」
　恵子の腰が宙に浮き、両足は自然と大きく広がった。
「なあに、恵子のオマ○コは、指一本くらい、簡単に咥え込んじゃうのね・・・。」
「真樹君に、指が出たり入ったりするところを見てもらいなさい。」
　恵子の愛液は手の平まで滑らせ、肩で息をしながら、中指を乱暴に出入りさせた。
「あん・あん・あん・あん・・・・。」
　恵子の口からは、指の動きに合せて、泣き声に近い声が出ていた。
「さあ、そんな声を出してないで、四つんばいになって、後ろから真樹君に犯してもらいなさい。」
　恵子は手を止めて、余韻に浸る体を無理やりうつ伏せにし、腰を高く上げ両肩をベッドに押し付け、顔は肩越しに窓のほうに向けた。そして、股の下から、さっきまで中指が出入りしていた陰部にバイブを押し当てた。
「恵子、そんなに濡れた恥ずかしいオマ○コを真樹君の前に晒して・・・。」
「真樹君、真剣に見てるわよ。」
「それに、お尻の穴まで丸見えじゃない。しかも、ベトベトに濡れてるし。」
「恵子・・・。全部、真樹君に見てもらって嬉しいでしょ。」
「ほら、早く、真樹君のものを突き立てなさい。」
「後ろから、恵子のオマ○コを串刺しにしてもらいなさい。」
　恵子は、バイブのスイッチを入れ最大にした。そして、躊躇することなく、バイブを深々と陰部に突き立てた。
「はあぁぁぁぁ・・・。」
　恵子は絶叫した。泣き叫んだ。
「恵子、真樹君は若いのよ。恵子のことなんか、お構いなく激しく突いてくるの。もっと、乱暴に、激しくバイブを動かしなさい。」
　恵子は、激しくバイブで陰部を突き、子宮が壊れるくらい乱暴に掻き回した。
「いく、いく・・・。あぁぁぁ・・・」
　恵子は簡単に絶頂に達し、バイブを陰部の奥に突き刺したまま手が止まり、そして果てた。腰がベッドに崩れ落ち、肩で大きく息をしながら頭の中が真っ白になるほどの快楽の余韻に意識が薄れていった。
　恵子の股間からは、バイブが怪しい音を立て蠢きながら、シーツについた染みの上に抜け落ちた。そして、恵子の太腿の間で光沢を放ちながら、奇妙で単純な蠢動を繰り返した。

（つづく）