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Ⅱ－３
【画像投稿掲示板】
ビデオの中では彼女が目隠しをされ、若い男のモノをくわえさせられていた。彼女はそのときの屈辱感をまざまざと思い出した。その後、カメラが動き、彼女の口元や陰部がアップで映し出されると、その感情は絶望感にも近いものになった。
（こんなビデオ、ゼッタイに誰にも見せられない！）
改めて彼女がそう思っていたときに、男が服の上から胸をさわってきた。
「奥さん、もうそろそろ服を脱ぎましょうか」
隣の男の方に向き直ると、男はにやにやと笑っていた。
（どうせわたしが恥ずかしがってモジモジとするのを眺めて楽しむつもりだろう。いっそのこと、「あなたが脱がせて」って言って抱きついてみようか？）
追い詰められて発想が極端に走ってしまう。
（いや、そんなマネ、お芝居でだってできない。それに脱がされるのはもっとイヤだ。）
実行できそうもない案に囚われている暇はない。目の前の男は二重三重に彼女の弱みを握っているから。
（ああ、せめて脱いでる途中くらいは見られずにすまないだろうか？）
ゆっくり立ち上がりながら、やっと思いついた妥協策を口にする。
「あの・・・」
「なんですか？」
「脱衣室で脱いできていいですか？」
「ああ、そうしたいならそうすればいい」
どうせダメと言われると思っていたのだが、予想外にもそうではなかった。
男の気が変わらぬうちに、と彼女はいそいそと浴室へと向かい、洗面台の前で服を脱ぎ始めた。ぐずぐずしているとまた何を言われるかわからない、彼女は手際よく裸になっていったが、最後の一枚であるパンティに手をかけたところで手が止まった。
バスローブと言うべきか、洋風浴衣というべきか、綿でできた簡単な部屋着が目に入る。
（やはりコレを着ていくのはマズイだろうか？）
逡巡しながらゆるゆるとパンティを下ろす。それを脱衣カゴにいれたあと、身体を起して、今度はバスタオルに目をやる。
（せめて、バスタオルを巻くくらいは・・・）
彼女にとって、浴室でもなんでもない部屋に何も身につけずに歩いてくなんて想像もできないことだった。恥ずかしいというよりも、当然あるはずのものがない自然に反した状態と表現した方がいい感覚だ。
そのとき向こうの部屋でごそごそと何か音がした。彼女は時間がかかり過ぎていることに気付き、バスタオルを身体にぐるっと巻いた。
（いいや、これなら何か言われたときにすぐに取り除けられる。）
彼女はさんざん迷ったことが表情に表れないように気をつけて、脱衣室を出た。
＊ ＊ ＊
女が恥ずかしそうに一枚一枚と脱いでいく姿を眺めるのも悪くない、キスをしながら体中を愛撫しゆっくり脱がせていくのも嫌いではない。だが、それは次の機会にとっておいてもいい。彼女に言っておかなければならないことがある。
さっきまで再生されていたムービーを止めてパソコンをスリープさせ、LANケーブルをつなぐ。
（ラブホでカラオケ、ＰＳ２、そして最近はブロードバンドだけど、実際、利用者はたくさんいるんだろうか？）
そんなことを考えながら、パソコンをスリープから戻し、インターネットの設定をすませ、ブラウザを立ち上げる。実際、今日、このホテルを選んだのは、部屋から簡単にインターネット利用ができるからだった。
ブックマークから画像投稿掲示板を、それもかなりイカガワ系の画像投稿掲示板を選ぶ。手際よくやったつもりだが、思っていた以上に時間がかかった。それでも彼女が戻ってきたのは、目当てのウェブページが表示されてからだった。
オレがパソコンに向かっているから何をしてるんだという怪訝に思っているに違いない。振り向くと顔は予想通りの表情だったが、身体にはバスタオルをまいてた。たぶん、全裸というのが恥ずかし過ぎたのだろう。しかしタオルは、彼女の胸の膨らみのすぐ上から股下すぐあたりくらいまでの文字どおり最小範囲を隠していて、かえってエロチックに見える。
「おや、全部脱いでくるはずが、わざわざ何か身につけてきたみたいですね。」
「ごめんなさい、ダメならばすぐに取ります。」
と言いつつも、バスタオルがほどけ落ちないように手は端をしっかり抑えている。バスタオルだけをまいた姿が思った以上によかったので、しばらくはそのまま楽しむつもりだったが、それとは裏腹なことを言って彼女の反応を試してみた。
「なら、すぐに取ってもらいましょう。」
案の定、身体がこわばり、すぐには手が動かない。
「いや、後からわたしが剥ぎ取りましょう。一枚くらい脱がす楽しみは残しておいたほうがいい。」
彼女は安堵感と不快感が入り交じったような複雑な表情をした。
「ところで奥さん、インターネットはしますよね？」
彼女の顔がサッとさきほどの怪訝な表情に戻る。
「デジカメで撮った写真なんかを投稿しあう画像掲示板って覗いたことがありますか？」
「ありません...」
何を言い出そうとしているのか察したらしい、顔が動揺を隠そうという表情になっている。オレはわざと遠まわしに説明を続ける。
「いや、風景や人物の、ほら、プロカメラマン並みのクオリティーのものがアップされるところもあるんですよ。単なる自己満足以外の何の価値も無い駄作がほとんですがね。」
テレビが載せてある棚にパソコンも載せている。オレはパソコンの前に立ってるから、脱衣室から出てきたところで立ち止まった彼女とは、ソファーをはさんで立ち話をしていることになる。まるでリングの両端でゴングがなるのを待っているレスラーのようだ。
「それよりもソファーにかけたらどうですか？」
そう言いながらオレもスツールを引き寄せ、それに浅く座る。彼女は言われたとおりソファーに腰を下ろしたが、そうすると案の定、バスタオルのすそがずり上がってあやうく茂みを露出させてしまいそうなくらいになる。彼女はもぞもぞと気まずそうにバスタオルの端を抑えた。
「それでですね、夫婦や恋人たちが、自分たちのセックスのときの様子をデジカメで撮って投稿するっていうところもあるんですよ。ほら。」
パソコン画面が映ったテレビに彼女の注意を向ける。
「でも、これなんか恋人どおしっていうより援助交際って感じですなぁ。」
とりあえず、どれでもいいので画像を拡大してみた。それはハメ撮りってやつで、つながっているはずの局部には当然モザイクがかけてあった。女の顔は画面に入ってないが、裸の日焼けしてない部分がなんだかスクール水着っぽく、体形も幼さを感じさせる。
オレはさらに画面をスクロールさせながら彼女の様子をうかがってみる。彼女はさっきと同じように黙ったまま表情をこわばらせていた。
「あ、これなんて奥さんにそっくりですよ。」
プレビューには小柄な女性が全裸で後ろ姿を見せていた。画像を拡大するとやはり彼女と体形が似ていたし、偶然にも髪型も同じような感じだった。
しかし彼女はオレが嘘をついたと思ったらしい。つまり、予め投稿しておいてわざとっらしく「似てる」だなんて言ったと。
「ひどい、何てことをするの！」
興奮してガバッと立上がった。期待通りの反応だ。オレはことさらに落ち着き払ってそれに対応する。
「ほら、よく見てくださいよ、これは奥さんではありませんよ。」
彼女はあわててテレビの画面をのぞき込む。その画像のなかの女性は、顔は写ってはいないけれども、よく見れば彼女でないことは明らかだ。
「落ち着いてくださいよ、わたしは奥さんの写真を投稿なんかしたりしてませんから、、、まだね。」
思わず興奮してしまったことを後悔したような表情を彼女は浮かべた。
「そうですね、奥さん次第ではちゃんと顔の写ってるところをアップして、奥さんのお知りあいにお知らせしてもいいですね。」
さっき車の中でした娼婦のまねごとの話をしたときと同じように必死で内面の動揺を押え込もうとしているのがわかる。
「わたしは今までだってちゃんとあなたの言いなりに振る舞ってきたわ。」
「ええ、そうですね。でももっと従順になってもらってもらうのも悪くはありませんね。」
と言いながらバスタオルに目を向けた。
「あ、実際にやってみせましょうか、手順を。簡単なんですよ。ほら、ここにさっきのビデオのキャプチャー画像がありますけど・・・」
と言って画像を開く。それは彼女が鈴木にフェラをしている後ろ姿だった。全裸だし、何をしているかもわかる画像だったが、彼女の顔はまったく写っていない。
「お願いです、そんなことはやめてください。」
彼女は血相を変えてこちらに走り寄ってきて、オレの腕にしがみついた。
「別に構わないでしょう、これなら。顔みえないから誰かわかりませんよ。」
「そういう問題じゃありません。お願いですからやめてください。」
それからハッと気づいたように慌ててバスタオルをむしり取り脇に投げ捨てた。
「お願いです、何でも言うことをききますから、そんなことはやめてください。」
娼婦のまねごとの話よりもリアリティがあるからだろう、彼女はすっかり動転してしまっている。オレはにっこりと彼女に微笑み、何も着けていない小柄な身体を抱き寄せ、かるく唇にふれるキスをした。それから彼女の目をのぞきこみながら反応を試してみた。
「何でもするんですか？・・・じゃ、駅前の広場を端から端まで裸で歩いてもらいましょうか。」
彼女は驚いて目を見開いた。
「この、裸の上からコートを着て、車で駅前まで連れて行きましょう。駅ビルの西口のところでコートをおいて車をおりるでしょう？それからゆっくりと広場をあるいて、行けば反対側の交差点でまた拾ってあげますよ。」
オレはリアリティを出すために具体的に「プラン」を描写する。
「今からセックスして、終わってからだから7時前ですか。薄暗くなっているし、人通りも一番多い頃だからかえって目立ちませんよ。あ、道路は渋滞するでしょうから、広場はゆっくりと歩かないと車のわたしのほうが到着が遅くなるかもしれませんねぇ。」
彼女の目に、驚愕、絶望、軽蔑、哀願、悲哀、さまざまの極端な感情が現われては消えていく。唇は何か言うために開こうと動いているが声はいつまでも出てこない。
せっかく手に入れたオレのオンナだ。オレだけのオンナだ。こいつの裸をよその男に見せてやろうなんて気持ちは、実のところ、まったくない。しかしそういう気持ちは慎重に隠しておく。
「まあ、いいでしょう。何でもしてくれるというから、何をしてもらうかは考えておきましょう。」
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