−１−

　光のない闇の中、茂蔵は走っている。
　村の仲間に最後の綱と期待を込めて送り出された茂蔵、奥深い山林をただひたすら走り続け三度目の日が暮れ、手持ちの食料も底をついている。
　飢饉に喘ぐ村の最後の頼みとなる光臨寺を目指して、茂蔵は走り続けてきた。
　今にも止まりそうな重い足を、村の仲間のためにと必死で前に進め、寺の大きな参門にたどり着いたときには真夜中を過ぎていた。
　虫の声さえも茂蔵を避けているような静けさの中、茂蔵は最後の力を振り絞って叫んでいる。
「ごめんください」
　ひたすら叫び続ける声にやっと反応して、障子越しに点いた黄色いロウソクの小さな光すら眩しく目を瞬かせる茂蔵。
　そんな茂蔵の目に飛び込んできたのは、ロウソクの光よりも眩い真っ白な顔をした尼僧の姿である。
（こんな所に女が…）
　茂蔵は狐に摘まれた思いで声も出ない。
「どうなされました、こんな夜遅く…」
　掛けられる声は間違いなくかぼそい女の声。
「そんな所に立っておらずに、中に入られよ」
　返事のない茂蔵を促して、尼僧は大きな部屋にロウソクの火を増やしていく。
「和尚に会わせて欲しい、急いでいるのです」
　段差の大きな階段を昇ると、背を向けた尼僧にガクッと膝を折った茂蔵は訴えるように叫んでいた。
「お名前は、なんと申されます」
　尼僧に慌てる素振りはない。
「茂蔵です。和尚にお願いが…」
「この寺には私しかおりません。…茂蔵どの」
　尼僧の言葉にポカンと真の抜けた顔で応える茂蔵。
「話がおありでしたら伺いましょう」
　座布団を２つ用意した尼僧が正座して、茂蔵に座布団を差し出していう。
「奥耶麻村の茂蔵です」
　あらためて素性を名のると飢饉による村の状況を吶々と話始める。

　由緒ある武家の娘として育てられ、殿と呼ばれる男のもとに嫁いで７年を過ごした娘は、男の死によって尼僧となっていた。
　尼僧の名は紫光院。
　未亡人の尼僧にとって仏門は厳しい環境だった、沸沸と湧き出る肉の欲望を山奥の寺にすごしているからといって抑えることなどできはしない。
　一人の男の妻として、長年のうちに培われた肉の喜びを、時として身体が思い出しては疼きだす。
　そんな忍耐の世界にどっぷり浸かって３年、いよいよ脱皮の時を迎えている。
　茂蔵の話が、切っ掛けとなり引金は引かれようとしていた。

　茂蔵の長い話が終わるころには、紫光院は思いつめた表情である。
「茂蔵どの、話はよく分かりました、しかしこの寺には村を救うほどの資金などありません」
　法衣に隠された尼層の顔をまじまじと見つめる茂蔵。
（なぜ、こんな美しい尼僧がこんな所に？）
「ただ…、ただ一つ村に資金を宛がう手立てが無いではありません」
「それは？」
　尼層の美しさにぼんやりしていた茂蔵が、ピクンと反応して問い返す。
「茂蔵どの、村に帰って嫁を娶る準備をなされませ」
（なに…？）
　茂蔵は鳩に豆鉄砲そのままに驚いている。
「…嫁を娶ることと、村を救うことに、どんな繋がりがあるのです」
　茂蔵の問いに紫光院は落ち着いてさも当たり前のように話し出す。
「毎月のようにこの私に使者を送られるお武家様がおられます、私を嫁にといわれてはや１年が経とうとしているのです、…寄せられてくる金品があれば村を救うこともできるでしよう」
「それと、私の嫁娶りとどんな関係が？」
　話の理解できない茂蔵は戸惑っている。
「わたくしは、あなたの嫁になります、と同時にお武家様の妾にもなります、……そうすれば、あなたの村に資金を用立てることができるでしょう」
　このとき茂蔵は、やっと尼僧の思いつめた表情を理解した。
（そこまでして…）
　尼僧の真剣な思いに感動で体中に痺れの走るのを感じる。
「出家された思いを捨ててまで…」
　茂蔵は、尼僧を気遣っている。
「そのような事は、……茂蔵どの、あなたこそ嫁にした女が、同時に他の男の妾であることに耐えられますか」
　出家した清い思いはすでに薄れ、肉欲の煩悩が大きく頭をもたげている、俗世への復帰だけがただ一つの解決策、と紫光院を衝き動かしている。
　そんな思いをよそに、厳しい問いを茂蔵に突きつける。
「…」
　永い沈黙の後、やっと茂蔵は決断する。
「…分かりました、さっそく村に帰って嫁をとる準備に掛かります」
　このとき茂蔵は、村の存続のため、純粋な男女の愛と結婚を捨てたのである。

「その覚悟がおありなら…」
　手早く帯を解きバサバサと法衣を脱ぎ捨てた紫光院は、頭と頬を白い布に隠されただけの身体は生まれたままの姿となって、しみひとつない身体をさらしてしまう。
　あっけにとられてポカンと上を向いた茂蔵。
「さあ、私を抱いて覚悟をしっかり決められよ」
　紫光院は、茂蔵の動きだすのを待つように、じっとたたずんでいる。
　白い素肌の中ほどにある秘草から目を放せないでいる茂蔵は、意を決して立ち上がると、疲れも忘れ湧き上がる欲望に押されて柔らかい肉に包まれた尼僧の肩を押し倒した。
　茂蔵の力を大して感じることもなく自ら崩れるように、なよっと倒れる紫光院。
「あぁ」
　男の荒い鼻息を頬に浴びただけで、股間をヒクッと疼かせてしまう。
「さあ、早くぅ」
　戸惑って、動きを止めた茂蔵の手を取ると紫光院は自らの胸元へ引き寄せる。
　ズルッと体をズリあげ、あらためて尼僧の顔を見下ろし唇を寄せる茂蔵。
（こんな美人が…狐つき？）
　赤子の肌のようなスベスベした頬を頬でなぞって軟らかい唇を重ねると舌を伸ばして口を割る。
　溢れでる唾液を溢れるままに舌を絡めていく。
　茂蔵の手は、夢心地で白い身体をまさぐっている。
　きめ細かく絹のように滑らかな肌を農作業で荒れた手が、胸から腰へと移動する、茂蔵はこれは現実なのかと確かめるように、あちこち何度も尼僧の身体をなぞっているが、疑心暗鬼はぬぐえない。
「あっ」
　耳元で聞こえる女の喘ぎ声にさえ、狐の鳴き声か？と疑っている。
　茂蔵の太短い指がなめらかにしなう秘草を超えて、女の芯にたどり着く。
「あぁ〜っ」
　些細な動きにも極端に身悶える尼僧。
　さらに指を進めて秘裂をなぞると、そこはすでにねっとりした淫液をあふれさせ、陰唇をもふっくら充血させてなめらかに、男を誘っている。
　茂蔵は汗に汚れた着物を脱ぎ捨てると、どうにでもなれと、一も二もなく尼僧に覆いかぶさった。
　怒り立ち剛直と化した肉棒が秘裂を割裂き深い闇に消えていく。
「あっ」
　紫光院は電気ショックを受けたようにビクッと痙攣し、茂蔵は股間に暖かい淫汁を噴きつけられるのを感じると、すえた淫臭が鼻をつく。
　ゆっくりした抽送に欠かすことなく応える喘ぎ。
　はち切れんばかりに膨らんだ亀頭をコリコリした子宮が円を書くようになぞってくる。
　尼僧の浮いた腰はクナクナと蠢いて肉の快感をむさぼるように追い求めると、ビクビクとした痙攣を茂蔵に伝えている。
　深い闇の肉壷のソフトな感触が、じんわりと俵締めに変わると茂蔵は少し抽送を速くして応えてやる。
「あっ、あぁ〜」
　尼僧の喘ぎが切羽詰ってくると、すすっと気を抜いて抽送を止めている。
　茂蔵は早く終わってはもったいないと、そんな抽送を繰返して長々と美しい尼僧の肉壷をもてあそび、ただただ放出感を持続させ悦楽に没頭した。
　ご無沙汰していた淫事は、紫光院自身の予測を大きく超えて身体が．壷奥の子壷が敏感に反応し続けている。
（気持ちいい〜〜、どうにかなってしまいそう）
　溺れるように深みに嵌っていく紫光院、仏の教えを消し去った解放感の隙間に肉の喜びが雪崩れのように押し寄せ、快感に目覚める身体を抑えきれないでいる。
（もうだめ〜）
　茂蔵に身を任して極楽を間近にみると、すっと遠ざけられていしまう。
（いやぁ〜、もっとぉ〜）
　いやらしく熟した無意識の淫腰。
　紫光院の身体は夢中に極楽を追い求め、充血した壷口からは淫らな液を滴らせ神聖な御仏の座をも汚していく。
「あぁ〜、やめないでぇ〜」
　茂蔵の肩に手を回し、頭を上げて身体を丸くして抽送に応える紫光院、３年も貯めつづけた淫欲が尼僧を牝に変えている。
　蠢く蜜壷は茂蔵の肉棒を押し返すほど喰い絞まりクチャクチャと卑猥な音色を響かせる。
「いやぁ〜、もっとしてぇ〜、あっ、もっとぉ〜」
　無意識に発せられる言葉、スローな動きの肉棒に淫腰を振付けるて求め続ける紫光院。
「いい、あっ、いい、もっと突いてぇ〜」
　あっけにとられる茂蔵をよそに、激しさを増す尼僧。
（いい女（牝）だ、狐でもかまうもんか）
　淫らな尼僧の姿に肉棒をはち切れんばかりに昂ぶらせた茂蔵は、満足げに激しく腰を振る。
「あぁ〜、だめだめ、イくイく、うっ、イくぅ〜〜」
　喰い絞まる蜜壷の心地よい抵抗感を味わいながらズボッズボッと茂蔵はとどめの一撃をくらわしていく。
　肉欲に狂った尼僧は休むこともなく、淫腰を振りつける。
（失敗だったか）
　茂蔵は早くも、嫁にしょうとする女のあまりのできの良さに、他人の妾にすることに対して後悔の念を感じてしまう。
「あっ、あっ、あっ」
　そんな茂蔵の迷いをよそに激しい動きの紫光院。
（これよ、これ、あぁ〜）
　紫光院は、全身に淫らな悪魔を宿らせ、ひたすら淫欲に没入して子壷をヒクッ、ヒクッと蠢かせ刺激を求めて擦り付けている。
　茂蔵の目に朝日の眩い光を感じるころ、まだ二人の結合は解かれていない。
（やっぱり、これは狐か）
　疑心暗鬼を甦らせつつも、そろそろ限界だと大腰を使う茂蔵。
「あっ、そこそこ、あぁ〜、そこいい〜〜」
　いまだ覚めやらぬ淫欲に我を忘れて身もだえつづけている尼僧。
「イくぞぉ」
　征服感と満足感いっぱいの茂蔵は、ドクドクと溜めたものを放出する。
「あっ、うぅ〜〜」
　爛れた蜜壷に全身を強張らせて噴出を受け止める紫光院は、肉棒の蠢きを感じ取ろうとするように濡壷を締め上げると合わせてイき果てる。
　動きを止めた茂蔵は萎えかけた肉棒を、引き離すことをためらって長々と繋いでいる。
　茂蔵がやっと体を離すと、尼僧はとうぜんのお勤めといった様子で茂蔵の萎えかけた一物に戸惑いもなく唇を寄せると、自らの淫汁をなめ取っては吸い上げる。
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　朝日の眩い光に全身の汗を輝かせた尼僧は、手早く身づくろいを済ませると何もなかったかのように清楚なたたずまいで座を外していった。
　そんな尼僧をぼんやり見上げて、深海の底へ沈むように茂蔵は深い眠りについていた。

つづく