個人授業で・・・

個人授業で・・・1

　僕は、昨年４月に某商社に入社したばかりの大卒社員です。
　名前を　杉本健一　と言います。
　以下は、昨年4月、入社した当時の話です。

　広報部門に配属されたのですが、いきなり壁に直面し困りました。
　実は、パソコンが使えないのです。ほとんど触ったことがありません。
　学生時代も、携帯電話で全て対応してきました。

　上司の課長さえ呆れるほどのレベルです。
　それを見かねた課長より、最寄りの駅前にあるパソコン教室に通うように勧められました。
　短期集中個人レッスンが受けられるそうで、マスターするなら、学費半額を会社で補助してくれるということでした。

　僕は、またとない話なので、この機会にパソコンをマスターしたいと決意し、課長さんの提案に従うことにしました。
　早速、当日、勤務時間を終えると、課長さんへ、行って参りますと報告し、課長紹介のパソコン教室に向かいました。

　1階がコンビニという雑居ビル５階に有りました。
　エレベータで５階に上がると、すぐガラスの扉があり、○○○パソコン教室と書いてあります。
　僕は、深呼吸して、扉を開けて、中に入りました。

　すぐ横に、テーブルカウンターが有り、５０代と思われるメガネをかけた男性が座っていました。

「こんばんは、　ご入会希望ですか？」
「はい、パソコンを短期間でマスターしたいのですが？」
「かしこまりました。どうぞこちらにお掛け下さい」
　僕は、勧められるまま、５０代の男性の向かいに、座りました。
「私、当教室のマネージャーをしております藤堂と申します。よろしくお願いいたします。」
「あっ・・・、こちらこそ、よろしくお願い致します」
「申し訳ありません。こちらにご記入して頂けますか？」

　僕は、藤堂さんの差し出した、入会申込書に記入することになりました。
　書き終え、差し出すと、藤堂さんから、パソコンに関するの説明などを受け、短期集中個人レッスン希望であること、学費半額補助を会社で受けることなどを伝えた。

「△△△商事の方でしたか、いつもお世話になります」
「それでは、いつもの特訓コースということで、ご用意します」
「授業は、明日からでも受講できます。基本的には、スクールは祭日のみお休みで土日を希望があれば受講が可能です、朝８時半からありますが御社の方はほとんどが午後７時から午後１１時に来られています、1時間５，０００円の個人レッスンです」
「△△△商事の方は、今までは、皆さん1日２～３時間受講されています」
「受講時間はどうされますか？」
「出来るだけ早くマスターしたいので、午後７時から午後１１時のフル４時間でお願いしたいのですが？」
「明日から、授業お願いします」

「おお～、それはご熱心な。分かりました。そのように設定しましょう。もちろん途中でも変更可能です。それと、欠席、お休みされる場合は、前日までにご連絡下さい。当日ですと、料金は、そのままフルにかかりますので、ご注意下さい」

「詳細の注意事項は、この書類を裏面をお読み下さい」
「明日、来られるときは、この書類に記入して、お持ちになって下さい。」
「ところで、今日なんですが、たまたま担当となる先生が来られて居るんですが、挨拶されて行かれますか？　１時間でしたら、本日分お試し授業がございますが、受けて行かれますか」
「えっよろしいんですか？　是非よろしくお願い致します」
「それでは、この廊下の奥にある、特別教室５番にてお待ち下さい。凄い素敵な先生ですよ」

　藤堂さんは、なぜか意味ありげな笑みを浮かべながら、僕を案内してくれました。

　ドアに特別教室５番と表示してある中に入り、すぐ前の椅子に座り、待ちました。
　その部屋はは１０坪くらいでしょうか、生徒用と思われるパソコンが２台と教師用と思われるパソコンが1台設置されている机が斜め前にあります。
　その他ホワイトボードとプリンターやその他に私の知らない機械類が目につきます。
　壁際にはパソコン関係の本などがびっしりと見えます。
　生徒用と思われる机は思いの外、小さく、デスクトップパソコンが１台乗るぎりぎりの大きさです。

　僕は、そんな部屋でドキドキ、キョロキョロ、そわそわして待っていました。
　５分ほどすると、ドアをノックする音がしました。
　僕は、おもわず「はい」と返事をしていました。

　すると、スラリとした、身長は１６５センチくらいで、白いブラウスにライトグレー色スーツを着た綺麗な女性が入ってきました。
　僕は、唖然としていました。

　この人は何をしに来たのか、まさか僕の先生？そんなはずはない
　そして毎日一緒に4時間も？瞬時に僕の脳裏には妄想が広がります。
　この女性のものなのか香水ではないような良い薫りが、ほんのりと僕の鼻腔を刺激します。

「初めまして。私、担当させていただきます、三好玲奈と申します」
「・・・・・・。どうかされましたか？」
「いっいや・・・・、あまりにお美しい方なので、驚いてしまいました」
「ははは・・・・・」

「あらっ、お上手な方なんですね、杉本さんって。うふふふ」
「あっ失礼しました。僕は、パソコン全く分からないんです」
「これから、よろしくお願い致します。」
「はい。私、パソコン検定公認試験官ですから、お任せ下さい」

　それから、1時間ほど、自分のパソコン知識の無さを彼女に説明した。
　その間、僕は玲奈さんの匂いに酔いしれ、あらぬ妄想に耽っていた。
　僕は、童貞ではなかったが、今まで彼女らしい彼女もおらず、性的経験もお世辞にも豊富とは言えない状態であった。

　漠然と、年上の女性への願望は持っていて、そして今、目前に理想的女性が現れたことで、その願望が脳裏に噴出していた。

「あっあのう・・・・、プライベートな質問してよろしいですか？」
「あら、どうぞ」
「三好さんは、ご結婚されているんですか？」
「あらら・・・・、杉本さんは、何を勉強しに来られるんですか？」
「いやっ・・・、ちょっと気になって」
「仰るとおり、結婚していますよ。結婚して３年目です。ほら、この通り」

　その手のまっすぐ伸びた左手の薬指には結婚指輪が認められた。
　僕は、軽い失望感を覚えながらも、彼女の瞳を見て、
『この人は何歳なんだろうと』考えながら、熱い想いを沈める隠す事が出来なかった。
　その日は、その出来事を思い出しながら、帰路につく。
　電車の中で、妄想はどんどん果てしなく肥大化し、先ほどの出会いに酔いながらその妄想が現実化することなど考えもしていなかった。

つづく。

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2010.9.17掲載

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