2.きっかけ

　ある金曜日、遊んでいて遅くなり、帰ろうと玄関で靴をはいていると、キッチンの方から見送りに出てきた母親とともにのコロッケのいい匂いがしてきた。

（腹減ったなー）と思いながら２人の前で挨拶をしようした時、思いっきり「ぐ〜。」っとお腹がなっってしまった。

「はは、まいったな、あんまりいい匂いなんでお腹がなっちゃいました、では失礼します。」

　と言いドアを開けようとすると、祐二が、

「ちょっと待って、先生もご飯食べていきなよ、お母さんいいでしょ〜？ねえ〜？。」と、言い始めた。

　母親はちょっと困った顔をみせたが、すぐに思いなおしたらしく明るい笑顔で、
「そうね、今日は遅くまで引き止めちゃいましたし、よろしかったらどうぞ食べていってくださいな。」といってくれた。

「でもご主人の分がなくなってしまうのでは？」と、すまなそうに言うと、

「別に後でつくるから大丈夫よ。気にしないで、お腹すいているんでしょう？」といたずらっぽく亮介のおなかを指差し笑った。

「はは、隠しようもないですよね、遠慮なくごちそうになります。」といって、キッチンの方にあがりこんだ。

　初回、居間に通されてから以来、子供部屋以外のところに入ったのは初めてだ。
　きれいにしてあるダイニングテーブルに座り、はしゃぐ祐二と一緒に３人で夕食をごちそうになる。
　夕食が済むと、いつもは夕食の前に風呂にはいるらしく、母親に促され、祐二は「先生バイバイ」といいながら風呂にとんでいった。

「ご馳走様でした、お礼にお皿あらいましょうか？」と申し出るが、

「いいえ大丈夫よ、そしたらすいませんけど流しまでもってきてくださる？」と、皿を洗っている奥さんにいわれ、テーブルから洗っている流し台まで食器を持っていく。

　食器をもっていくと、
「ここに置いといてくれればいいわよ。」と泡のついた手で洗っている皿を寄せ、流しの中にスペースを作る。

　そこに置こうと横から手を伸ばそうとした時、身長差で斜め後ろから見下ろすような姿勢になった。

「あっ！」と思い、視線が一点に集中する、、、。

　その日、祐二の母のしていたエプロンはしゃれたカフェタイプの下だけのもので、上は襟ぐりの大きいシャツを着ていた。
　洗い物で前かがみになっているせいか、胸元から豊満でやわらかそうな胸の谷間がみえる。
　いままで初回以外そんなに話したことも無く、あまり女として意識した事もなかったが、指がすいつきそうな肌の胸をみて、もやもやした感じが下腹部にあつまってくる。

（やばい、勃ってきた、、、）

　感づかれないように、後ろに下がり、何食わぬ顔をして、いすに座ってお茶を飲みながら、奥さんの後すがたをみる。

　あらためてみると、年のわりにはスタイルは崩れていない。
　背のわりに大き目の尻がきつめのジーンズの中におさまっている、シャツ越しにブラの線がなんとなくわかって色っぽい。
　誘っているような後姿に、そのまま後ろから抱きしめてしまいたくなった。
　いろんな想像をしていると、風呂場から「もう出るよー」と祐二の声がした。
　我に返った俺は慌てて食事の礼をいい帰ることにした。

　その夜、俺はワンルームマンションにかえると、奥さんの後姿や胸を思い返しながら自分で放出した、、、。

　一方、夜遅く川島家では父親の川島秀雄が帰宅していた。
　食事は済ませてきたとのことで、せっかく新たに作った秀雄の分が無駄になっていた。
　太っっているせいか、疲れているのか、体を重そうに動かしソファーに寝転がるとテレビをつける。
　せっかく新たに作った食事が無駄になって、不機嫌そうにキッチンにいる祥子との話題に、秀雄はあたりさわりのない息子の祐二を選んだ。

「どうだ、祐二はまじめに勉強しているか？」とキッチンに声をかける。

「ええ、今日は家庭教師の先生と庭で元気に遊んでいましたよ。遅くなってしまったので夕食も食べていってもらったんです。」と台所から祥子が答える。

「なんだ、遊んでいるのか、なんのための家庭教師だかわからんなー、大丈夫なのか？そんなんで、その学生変えたほうがいいんじゃないのか？」

　その無責任な言い方に反感を感じたのか、食事の件が尾を引いているのか、祥子が不機嫌な顔で居間に入ってきて、
「外で遊んでもらうようになって、祐二は明るくなって、成績も順調に伸びてきたんです、変えるどころか時間を増やしてもらいたいところですわ、あなたももっと祐二と一緒にあそんであげてくださいな。いつも仕事ばっかりで、だいたい、、、」

　旗色がわるくなってきたと感じた秀雄は、
「わかった、わかった、先生には時間を増やしてもらっていいから、成績があがっているんなら問題ない、今重要な仕事で忙しいんだ、疲れているからもう寝るぞ。」と言いながら寝室にむかった。

（まったくいつも逃げるんだから、、、そういえば小室先生一人暮らしだと聞いているし、今日みたいに夕食を一緒に食べていってもらえれば、遊ぶ時間をふやしてもらえるかしら、、、今まで気づかなかったけど、そうすれば祐二も喜ぶでしょうし、、、たのんでみようかしら？）

　そう思いながら、祥子は寝室のある２階にあがっていった、、、。