3.チャンス

（なんとかあの奥さんを抱けないものか、、、）

　亮介は前回からそのことばかりを考えていた。
　この２年間きちゃんと付き合っている彼女はいない。
　友達とのナンパが成功してやれることもあったが、バイトが増えてからそれすらできなくなった、、、飢えているのだ。
　ふだんならあまり見向きもしない年齢であるが、前回以来どうも気になっている。

（夕食の時に聞いた話だと、旦那さんは相当忙しいらしい、おまけに最近では太ってしまい体を動かすのも面倒になっているようだ、、、そんな状態なら夜の相手も満足にできてないだろう、、、うまく仕掛ければ面白いことになるかもしれない。）

　そんなことを考えながら、歩いていると川島家についた。

　インターホンをならし声をかけ、門を開け玄関まで行き、ドアをあけてからまた声をかける。

「こんにちはー。」

「はーい、どうぞー」と台所の方から奥さんの声がして、「せんせーい、こんにちはー」と祐二が２階から降りてくる。

　いつものパターンだ。

（しかしこれでは接点がない、手の出しようがないなー、、、）と思いながら階段をあがる。

　今日は遊びのない火曜日なので、終わって帰ろうとすると、奥さんに呼び止められた。

「先生にお願いがあるんですが、、、実は夫と相談しまして、遊んでもらっている金曜日なんですが、この間のように時間を遅くまで延ばしてもらえないかと思っているんです、子供もよろこびますし、、、もちろん夕食はこちらで用意させてもらいますし、時間が延びる分のお給金もお支払いしますけど、、、いかがなものでしょうか？」

（ラッキー、渡りに船とはこのことだ、なんにも知らないでいい気なもんだ、、、）
　と思いつつ、悩んだふりをしていると、、、。

「せんせい、ぜったいそうしてよ、お願い！」と祐二が頭の上で手をあわせる。

「そうですねー、、、わかりました。」と承諾した。

「ああよかった、では早速あさってからお願いします。」といいながら頭を下げる奥さんをみながら俺は心の中でほくそえんだ。

（これで、週に２回のうち１回は遅くまでいて夕食をいっしょにできる、、、接点が増えた、、、あとはどう仕掛けるかだ、、、じっくり楽しませてもらおう。）

　俺は、にやけながら帰途についた。

4.仕掛け

　あれから亮介は２回ほど夕食を一緒にした、その時に徐々に情報を聞き出したところによると、夫の秀雄はほとんど午前様らしく、泊まりになることもけっこうあるらしい。稼ぎはいいらしく家のローンも順調に返していっているようだ。
　職場で知り合い結婚したようで、忙しいのはわかっていたのだが管理職になってから更に拍車がかかったらしい。最近はそれが原因でぶつかることも増えたようだ。

　金曜日になり、門のところにきた亮介が庭を見る、と昨日の雨が残っているのか一部がぬかるんでいる。

（この状態を利用して、今日、仕掛けるか、、、。）口元に笑みを浮かべインターホンを押す。

「こんにちはー」いつもの様に、２階に上がり勉強をしたあと、遊びの時間がくる。

「今日はどうしようか？」と聞くと、「庭にでてボールで遊ぼう。」と祐二が言う。
　最近はサッカーがお気に入りなのだ。

　いつもなら、食事の時間まで遊んでいるだけだが、今日はやるべきことがある。

　庭のぬかるんでいるところにわざと何回もボールをころがし、祐二を泥だらけにしたあと、夕食まではまだ２０分あるのををみはからい、仕上げに自分も土の部分に、頭と顔とシャツが汚れるようにつっこんだ、、、。

「ありゃーやっちゃった、、、こりゃ洗わなきゃだめかな。祐二、今日はここまで、で、お母さんにシャワー使えるようにたのんでくれるか？」

「そうだねせんせい、こりゃあらったほうがいいよ。おかーさーん、ちょっときてー。」

　呼ばれてきて、２人の泥だらけの状態を見ると、祐二がなにも言う前に、

「あらー、２人してまあ、、、祐二はお風呂入っちゃいなさい。先生は、、、どうしましょう、、、よろしかったら祐二と一緒にシャワーあびます？ご飯までまだ時間ありますし、髪にも泥が入り込んでるみたいですよ、泥のついたシャツは次回までに洗っておきますから、、、幸いズボンはそんなに汚れてないようですし、、、シャツは夫のもので間に合わせてもらうとして、いかがかしら？」といってきた。

　もちろん断るはずもなく「そうですか？すいません、ちょっとすべってしまって、、、」
　と言いつつ、心の中で舌を出しながら、祐二に導かれ風呂場にいく。

　すぐに脱衣所に２人ぶんのバスタオルと、旦那のものらしいＴシャツを一枚もってきて、「汚れたものはこのカゴに入れてくださいね。」とプラスティックの籠をおいてキッチンにもどっていった。

　祐二は先に風呂に飛び込んでいった。亮介も泥のついた服を籠にいれるとタオル片手に風呂場に入っていった。

「せんせいすごい筋肉だねー、プロのスポーツ選手みたいじゃん。」

「んーそうか？」

「俺もせんせいみたいになれるかなー」

「鍛えれば大丈夫だよ、昔、俺は祐二よりやせっぽちだったんだから。」

「ほんとに？」

「本当さ、でも鍛えなけりゃだめだぞ。大人でもいろんなひとがいるだろう？やせっぽちな人、太った人、大人でもいろんな人がいるだろう？」

「そうだね。」

「先生はやせていたから、鍛えたんだ。」

「ふーん。」

「筋肉は鍛えれば大きくなるんだぞ。」

　それから亮介は祐二に近づくと小さな声で、
「そしてこれは内緒だけどな、ちんちんも鍛えると大きくなるんだぞ。」

「えー？そうなんだ、、、せんせいは、きたえたの？」

「もちろん鍛えたさ、お父さんと比べてみ？でもこのことは男同士の秘密な、特にお母さんには内緒だよ。」

「どうして？」

「お母さんは女だろう、ちんちんないしな。関係ないだろう？」とウィンクした。

「うん、わかった。」祐二はウィンクをかえした。

　泥を落とすと風呂からあがり服を着なおす。祐二はパジャマだ。
　旦那のＴシャツはＬサイズでなんとか着れた。

　楽しく夕食を終え、帰る時間になり玄関で見送ろうとでてきた２人の前で、亮介は祐二に近づき、わざと祥子に聞こえるくらいの小ささの声で、「男の秘密まもれるか？」と聞いた。
　祐二はうなずきながらピースサインをだした。

「なにをこそこそやっているのかしら？」と祥子がきいた。

「しーらない。」と祐二が返す。

「おしえなさーい。」とふざけながら祐二のあとを追い回す様子に、口元に笑みをうかべながら亮介は玄関をあとにした。