5.興味

　結局祐二は祥子に「男の秘密」を教えなかった。
　まあ、たいしたことはないだろうと思いその日はあきらめたが、なんとなく気になり次の日の夜、また祐二に聞いてみた。

「教えてよ祐二、秘密って何？」

「教えたら秘密じゃないじゃん？だめったらダーメ！」と祐二が舌を出した。

　その様子に我ながら半ば意地になっているかな？と思いながら、

「じゃあ、祐二がいったって絶対いわないから、ちょっとだけならいいんじゃない？」
「ほんとに誰にもいわないからお願い。」としつこく頼んだ。

　祐二もめんどうになったのか、お願いされ気分よくなったのか、
「じゃあ、ちょっとだけだよ。」と、ちょっと得意げにしゃべりはじめた。

「おかあさん、やせている人でも、鍛えればかっこよく変わるんだよ、筋肉って鍛えると大きくなるんだって、知ってた？」

「へーそうなんだー」と感心したふりをしながら、
（こんな程度のはなしか、なーんだつまんない、、、）

　すると、調子に乗った祐二は、
「でね、ちんちんもきたえるとおおきくなるんだって。内緒だよ。」

（え？！ちんちん？、、、なんの話をしているやら、、、）

　苦笑いしながら、
「そうなんだー知らなかった、祐二のちんちんよりせんせいの方がおおきかったんだー。どうやってきたえるんだろうねー？」と面白半分で聞いた。

（先生も子供相手になにを比べているやら、、、）と思いつつ真剣に考えこんでる祐二をみて微笑んでいると、

　考えながら祐二が、
「うーん、そこまでは聞いてないんだけどさ、、、でもせんせいすっげーきたえたと思うよ。お父さんのよりぜんぜんでかかったんだもん。」

（え？！）祥子の笑顔がこわばった。

（今、祐二はお父さんと比べてっていった？、、、確かに先生の方が体が大きいから、、、でも、、、、、どのくらいだったのかしら、、、）

「ゆ、ゆうじ？どのくらい大きかったのかな？」と、つとめて平静をよそおい聞いてみた。

「うーんとねー」といいながら、きょろきょろすると、「このくらいのでー。」と、自分の箸をもってきて、「で、こんな感じ。」とキッチンテーブルの足を指差した。

　テーブルの足は、直径が５センチ近くある。
　その太さに動揺しながら、
「そっ、そうなんだ、もう遅いから寝なさいね。」というと、
「絶対内緒だよ。約束だからね？」と言いながら、祐二は階段をのぼっていった。

　ひとりキッチンにのこった祥子は、見るとはなしに子供の箸をみていた、、、。
（まあ子供のいうことだから、、、あてにはならないと思うけど、、、でも夫と比べてって言ってたし、、、）

　ふと思いたち定規をもってきた。
　子供の箸の長さを測る、、、１８センチ、テーブルの足は、、、直径５センチ、、、

（まさかね、、、）
　と思いつつテーブルの足をその細い指でつかんでみる、、、

（やだ、指が回らないじゃない、、、そんなはずないわ、、、夫のはもっとこう細くて長さも、、、、でも、、、）

　はっと気づくと、
「あらやだ、私ったらなにを考えているのかしら、、、祐二が変なこと言うからだわ、まったくもう、、、。」と立ち上がり、洗い物を始めた。

　しかし、その日は何をしていても、ふと気づくとテーブルの足をみている自分に気がついた。
（やだ、私ったら欲求不満みたいじゃない、、、）と思ったが、よく考えてみると最近夫としたのはいつだったかもおもいだせない。
　これじゃあしょうがないか、とも思う。

　祥子は夫をふくめて２人しか男を知らなかった。
　夫は２人目だ。
　セックスのいいところをわかりかけてきたところで、祐二を妊娠した。
　夫は祐二が生まれると責任を果したかのように、めっきり求めなくなってしまった。
　仕事が忙しくなった時期と重なったことも原因かもしれない。
　体重も増え、体力もなくなり、一番最後にしたときなど、まだ濡れていないのに挿入し自分勝手にすぐいってしまったことを思い出した。
　それからは、祥子から求めることもしなくなった。
　まだ若い祥子の体が快感を欲しがることはなんどかあったが、そういう欲求を押さえ込んで、考えないようにしてきたのだ。

　しかし、亮介がきてからなにかが変わった。
　最初に夕食を誘った時、食器をもってすぐ後ろに立つ亮介にときめいた。
　それから気づかないうちに亮介を若い男として意識していたのかもしれない。
　そして、今日祐二から聞いた亮介の体の話が、祥子の体にくすぶっていた欲求に火をつけてしまった。

　悶々としたまま時が過ぎ、夫が帰ってくる。

　その夜夫に、「ねえ、あなた、、、ねえってば、」と久しぶりに催促するが、「なんだよ突然、疲れているんだ俺は、知っているだろう？今の時期忙しいのは。」と背中をむけられてしまった。
（んーもう、この疼きどうしろっていうのよ。）と怒りながらも、忙しさをしっているので無理も言えず、祥子も寝るしかなかった。

6.変化

　火曜日になり、「こんにちはー」と亮介が挨拶をしてあがってきた、祐二が２階から降りてこようとするが、亮介はシャツを返すから上で待つようにいい、居間のほうに入っていった。

「おじゃまします。前回お借りしたシャツです、ありがとうございました。」
　と言いながらシャツを置くと、

「はい、これ、この間の先生のシャツです。」と自分のシャツを渡される。
　なにか、微妙につっけんどんだ。

「それでですね、奥さん、厚かましいんですけど、この前みたいに汚れるといけないので、着替えを一式おかせていただけないかと思いまして、もってきたのですがよろしいでしょうか？」と顔色を伺うが、

「ええ、そうですね、、、わかりました、いいですよ、おあずかりします。」というものの、どうもおかしい。
　奥さんが俺の顔を見ないのだ、、、すぐにピンときた、、、仕掛けがきいているのだ。

（祐二がしゃべったんだろう、、、ならば確かめてみるか、、、）

「じゃあ、これお願いします。」と着替えを渡す時に意識的に自分の手が奥さんの手に触れるようにわたす。

　小さいながら、びくっと体がこわばったのを俺は見逃さなかった。
　よく見ると耳も赤みを帯びてきている。

（やっぱりな、、、）

　確信を得るが、今日は夕食もないし、収穫は十分だと思い、さっさと２階に上がった。
　上では祐二が決まり悪そうにしているので、笑いながら許してやった。

　帰るときの見送りでも奥さんは微妙に視線を避けている。
　亮介は顔がニヤつくのを抑えるのに必死になりながら帰った。

　その夜、祥子は湯船につかりながらつぶやいていた。
「もーあの子があんなこというから、先生の顔がまともにみれなかったわ、まったく、、、」
　祐二はもう寝ている。

「ここに先生の手があたったのよね〜、、、。」と小室の手とあたったところをみつめる。
　次第にその手が乳房にのびていく、
　上から滑らせるようにして手のひら全体で乳房を覆う。軽く刺激をあたえただけで敏感になった乳首が反応し硬くなる。
（これが先生の手だったら、、、）
　想像するだけで、下腹部の奥のほうからなにか熱いものが溢れてくる。
　そのまま手を下にのばしていくと、粘液のぬるっとした感触を指に感じた。

　祥子はその夜、久々に自分で慰めた。